偏波保持ファイバーの内部応力が直線偏光状態を維持


偏波保持ファイバーの内部応力が直線偏光状態を維持


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偏波保持ファイバはどのようにして直線偏光を維持するのか

 

 

偏波保持(PM)ファイバでは直交する「スロー軸」と「ファスト軸」の間の屈折率の差(複屈折性)が著しく、この複屈折性により偏波保持ファイバが入射光の偏光状態を維持することができます。しかし、入射偏光状態は、2つのファイバ軸のうちの1つに平行にアライメントされていなければ維持することはできません。

偏波保持ファイバはその複屈折性により、ファイバのスロー軸とファスト軸で速度差、より正確に言えば伝搬定数差があり、偏光を保持するためにはスロー軸・ファスト軸に対して平行な偏光とする必要があります。光が直交偏光に切り替わるためには、光の速度(伝搬定数)も直交軸の条件に合う必要が出てきます。ファイバの複屈折を小さくしないと、このような速度変化は起きにくくなります。このようにして、複屈折を有するファイバでは、偏光が維持されます。

Diagram of bow-tie stress-birefringent PM fiber showing stress rods (SAP).
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図2:ボウタイ型ファイバでは、2本のウェッジ型ストレスロッドを使用してコアで張力を得て、複屈折にしています。スロー軸に沿った応力は、製造後のファイバが冷却されていくにつれ、ストレスロッドがクラッドよりも収縮するために付与されます。

Diagram of PANDA stress-birefringent PM fiber showing stress rods (SAP).
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図1:PANDA型偏波保持ファイバは、2本の円柱型ストレスロッドを使用してコアで張力を得て、複屈折にしています。スロー軸に沿った応力は、製造後のファイバが冷却されていくにつれ、ストレスロッドがクラッドよりも収縮するために付与されます。

Diagram of elliptical core form-birefringent PM fiber.
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図4:楕円形コアの偏波保持ファイバのコアは、複屈折性を生じさせるのに十分な楕円形状です。

Fiber spooling (winding) techniques that will and will not result in microbends.
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図3:マイクロベンドを最小化するにはきれいに緩く巻き付けてください(上)。マイクロベンドは、巻き付けたファイバによる凸凹面を横切って巻き付けることにより生じます(下)。

応力の効果について
偏波保持ファイバを構築する方法の1つにファイバーコアに機械的な応力を付与する方法があります。応力によりガラスに複屈折(光弾性)が生じるからです。このように応力を利用した複屈折ファイバで最も一般的なのはPANDA型とボウタイ型で、ファイバのコアに張力が加えられています。

これらの製品では、ストレスロッドと呼ばれるガラスの構造がファイバの全長に渡り、ファイバのコアに平行に伸びています。図1と2の断面図で見ると、ストレスロッドとファイバのコアは直線状に配置されています。製造後のファイバが冷却されていくにつれ、ストレスロッド内のガラスは、周りのクラッド内のガラスよりも収縮されます。ストレスロッドの収縮からの引っ張りにより、コアでは張力が生じ(スロー軸)、直交方向(ファスト軸)にはコアよりも小さい応力がかかります。そのため2つの軸では屈折率差が生じます。

応力低下ともたらす影響について
応力複屈折ファイバのコアでの張力は、温度に依存します。これは、ストレスロッドのガラスとクラッドのガラスで熱膨張率(CTE)が異なるからです。ストレスロッドによりもたらされる張力は、動作温度が高くなると低くなります。これにより複屈折率、そして偏光を維持するファイバの性能が低下するため、結果、消光比(ER)が低下する場合があります。

コアでの張力は、ファイバを小さく巻きつけたり、急激に曲げたり、あるいは凸凹の面に固定するなど、取扱い方によって生じる応力によっても低下する場合があります。局所的な応力付与部におけるマイクロベンドが直交偏光に散乱光を入射し、消光比が低下します。マイクロベンドはファイバの不適切な巻き付け方(図3)、あるいはファイバ素線を表面に押し付けることによって起こる場合があります。

一般的にファイバーコネクタは消光比を低下させます。それは、ファイバを固定するために硬化した樹脂化合物が非対称性の応力の原因となったり、化合物内の樹脂泡がファイバに圧力をかけたり、またファイバとフェルールの内孔が接触し圧力が加わる場合があるからです。一般的に各メーカはファイバの消光比を最大化するために、これらの応力を抑える手段をとっていますが、これらの応力は完全に除去することはできません。

形状複屈折ファイバ
応力複屈折ファイバの温度依存性が好ましくないときには、温度に依存性のない形状複屈折ファイバがございます。これらの偏波保持ファイバの複屈折性は、ストレスロッドによる張力ではなく、楕円形のコアにより生じます(図4)。

偏波保持フォトニック結晶ファイバを含む形状複屈折ファイバは、すべての用途に適しているわけではありません。楕円形のコアと減衰量、そして小さなモードサイズは通信用途には適しませんが、ファイバーセンサでよく使用されています。

参考文献
[1] Chris Emslie, in Specialty Optical Fibers Handbook, edited by Alexis Mendez and T. F. Morse (Elsevier, Inc., New York, 2007) pp. 243-277.
[2] Malcolm P. Varnham et al., "Analytic Solution for the Birefringence Produced by Thermal Stress in Polarization-Maintaining Optical Fibers," J. Lightwave Technol., LT-1(2), 332-339 (1983).
[3] Zhenyang Ding et al., "Accurate Method for Measuring the Thermal Coefficient of Group Birefringence of Polarization-Maintaining Fibers," Opt. Lett., 36(11), 2173-2175 (2011).
[4] M. Shah Alam and Sarkar Rahat M. Anwar, "Modal Propagation Properties of Elliptical Core Optical Fibers Considering Stress-Optic Effects," World Academy of Science, Engineering and Technology, Open Science Index 44, International Journal of Electronics and Communication Engineering, 4(8), 1170 - 1175 (2010).

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最終更新日:2020年9月11日


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