偏波保持ファイバー出射光の消光比(ER)
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PANDA型およびボウタイ型偏波保持ファイバからの出射光の消光比(ER)を制限する要因
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図1:クロストークの影響により、偏波保持ファイバは一般的にやや楕円形状の偏光を出射します。偏波保持ファイバの温度を変えることで、出射する楕円偏光の状態を制御することができます。偏光の測定値はポアンカレ球上で円の軌跡をたどり、出射光の特性化に使用することができます。
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図2:3つの異なるデータの軌跡がポアンカレ球にプロットされています。いずれも入射偏光状態と偏波保持ファイバ軸の間の角度の不一致を示しています。軌跡はヒートガンを用いてファイバの温度を変化させ、出射偏光状態を回転させることで取得しました。角度の不一致度が減少するにつれ、温度に依存する偏光状態の範囲が小さくなり、消光比が増加します。各軌跡の消光比はdBで表されています。
PANDA型およびボウタイ型の偏波保持ファイバは、不適切なファイバへの光入力結合、ファイバにかかる外部応力の影響、あるいは不完全な状態のファイバの作用により、出射光の消光比(ER)が入射光と比べて低くなる場合があります。光の一部が直交偏光状態に変換されると、消光比は低下します。
ミスアライメントによるクロストーク量の概算
クロストーク(クロスカップリング)は、光の一部が直交方向に対して平行に偏光すると生じます。偏波保持ファイバへの光の結合は、光源とファイバの偏光軸間でミスアライメント(回転)があるとクロストークをもたらします。このとき、光源からの直線偏光がファイバのスロー軸とファスト軸によって別々に誘導される2つの直交する偏光成分の間で分岐されます。
ミスアライメントによるクロストーク量は大きく、出射偏光を測定中にファイバの温度を変化させることで概算することができます。出射光に直交する両方の偏光成分が含まれる場合、その成分の間の遅延は温度によって変動します。温度の変化に応じて出射光の楕円偏光が変化します。
温度の依存する偏光の測定値をポアンカレ球にプロットすると、その軌跡は円になります(図1と2)。ミスアライメントによるクロストーク量の概算値は、図1における角度(2φ)から求められます。
2φは楕円化の具合を表しています。半角(φ )をラジアンで表すと、クロストークの概算量(dB)は、下記の式で求められます。
Cross Talk (dB) ≈ -20 log (tan(φ )).
光源とファイバ間のアライメントを改善する方法の1つは、温度に依存するファイバの出射偏光状態の変動が最小限に抑えられるところまで、光源の偏光角度を光軸周りで回転調整することです。
出射光の消光比の概算
ファイバを伝搬する光は、不完全な状態のファイバであってもクロストーク量は小さいですが、外部からの応力の影響により消光比は著しく低下する場合があります。ファイバを小さく、あるいは凸凹面や鋭角な面にきつく巻き付けたり、ファイバ素線を固い面に固定したりすることも消光比を低下させます。ファイバーコネクタも、ファイバ素線、コネクタのフェルール、あるいは樹脂化合物との接触による応力によりクロストークの大きな原因となる場合があります。
消光比(ER)の概算値は様々な式で求めることができます。
ERδ (dB) ≈ -20 log (tan(φ + |δ |)).
上記の1つ目の式は、ミスアライメントによるクロストーク量の求め方と似ていますが、不完全な状態のファイバによるクロストーク、マイクロベンド、その他ファイバの長さ方向に渡り付与される影響が含まれています。これらの影響により、円の軌跡の中心がポアンカレ球の赤道から2δ角度分だけ変位します。
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上記はより確度の高い式で、偏光強度を合計の強度を割った偏光度(DOP)が含まれています。
参考文献
[1] Chris Emslie, in Specialty Optical Fibers Handbook, edited by Alexis Mendez and T. F. Morse (Elsevier, Inc., New York, 2007) pp. 243-277.
[2] Edward Collett, Polarized Light in Fiber Optics (Elsevier, Inc., New York, 2007) pp. 45-53.
「Insights-ヒント集」は下記リンクからご覧いただけます。 | 最終更新日:2020年9月11日 |
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