偏波保持ファイバーとビート長について


偏波保持ファイバーとビート長について


Please Wait

 

ビート長とは?ビート長が偏波消光比の代わりに偏波保持ファイバの仕様として明記されている理由

 

 

偏波保持(PM)ファイバの出射光の偏波消光比(PER)は、ファイバ製造メーカにとって明記することが難しい仕様です。その理由は、このパラメータがファイバ長、入射光の状態、偏光、アライメントに依存するからです。ビート長はこれらの要素に依存しないため、偏波保持ファイバのポテンシャルを数値化するのに便利なパラメータです。ビート長は短いほどよく、偏波保持ファイバとその動作温度を選択するうえで参照できる有用なパラメータです。ビート長により偏波保持ファイバのポテンシャルに関する情報が得られますが、実際の性能とファイバの出射光のPERは、最終的にファイバの配置に依存します

Waves polarized along the fast and slow axis of a PM fiber.
Click to Enlarge

図1:赤と青の曲線はそれぞれ偏波保持ファイバのスロー軸とファスト軸に対して平行に偏光する波形を表しています。スロー軸の方が屈折率が大きいため、この軸に対して平行に偏光する波(赤)の方がより速いレートで振動します。これは(球によって示される)波の振幅を2つの異なる位置から見ることで確認できます。

Waves polarized along the fast and slow axis of a PM fiber.
Click to Enlarge

図2:図1で示された波形の振幅を横軸を伝搬距離としてプロットされています(上図)。なお、この図の距離は図1よりも長いことにご留意ください。各波形の位相は0~2の範囲でプロットされていますが(中央の図)、これらは2で折り返されて表示されているため、実際の絶対位相はリニアに大きくなります。波形の位相差(下図、 の範囲でプロット)は、距離とともに直線的に増加します。

3つのグラフの緑色の菱形マークは、0~2のスケールで両方の波形が同じ位相であるポイントを示しています。マークとマークの間では、スロー軸の波形がファスト軸の波形に比べて2余分に位相を蓄積しています。なお、一般的にこの位相は周期の整数で得られるものではありません。ビート長は、この蓄積された位相差が2となる距離のことで、これは菱形マークとマークの間の距離でもあります。

偏波保持ファイバのビート長
偏波保持ファイバのビート長は、ファイバの2つの直交軸であるファスト軸とスロー軸に沿って伝搬する波を比較することで分かります。ファイバ内でこれらの波形が励起するには、単色の直線偏光を入射させ、入射光の偏光角をファイバのファスト軸とスロー軸との中間にします。

これにより直交する偏光波は、同じ振幅を持ち、同位相でファイバに入射されます。しかし波形は伝搬するにつれて同位相を保たなくなります。これはスロー軸の屈折率がファスト軸よりも大きいからです(nslow > nfast )。スロー軸に対して平行に偏光する波形は周期が短いため、同じ振動分だけ伝搬する際、ファスト軸に対して平行に偏光する光よりも伝搬距離は短くなります。

2つの波形の位相差は伝搬距離とともに直線的に増加します(図2)。2つの波形の位相差が2である点は緑色のマーカで示されています。図では、0~2のスケールでプロットできるよう位相や位相差は2で折りたたまれています。ビート長は、位相差が2となる距離です。なお、ビート長にわたって蓄積された位相差は2ですが、通常、全長にわたる位相差は周期の整数倍にはなりません。

ビート長(L)

は波長()に比例し、ファイバの複屈折率差(B = nslow - nfast )に反比例します。

ビート長の典型値について
2つのファイバ軸の間の屈折率差が大きければ大きいほど、複屈折は大きく、ビート長は短く、そしてファイバの偏光保持性能は高くなります。ビート長は、ファイバの複屈折性に変化がない限り、ファイバ長に沿って一定です。製造メーカーはよくいくつかの波長に対するビート長と温度の制限範囲を仕様に明記しています。

以前は、ビート長が1 mm未満の偏波保持ファイバは、楕円のコアで、かつ、標準的なシングルモードファイバに比べて著しく小さいモードフィールド径を持ちました。しかし、多くの用途では、円状のコアと標準的なシングルモードファイバに近いモードフィールド径を持つファイバが必要とされます。これらの基準を満たし、性能の良い偏波保持ファイバのビート長は1 mm~数ミリの間となります。標準的なシングルモードファイバにも測定可能なビート長がありますが、それはメートル単位の長さとなります。これは、コアが完全な円状の断面にはなっていないことに起因しています。コアの楕円率はわずかで、ファイバ長に沿ってランダムに変化するため、標準的なシングルモードファイバは、偏波保持ファイバとしては有用ではありません。

ビートパターン
偏波保持ファイバの場合、ビート長が示すのは、偏波保持ファイバの直交するスロー軸とファスト軸に平行に偏光する波の間で繰り返し示される位相の関係となります。ファイバの任意の位置での位相差が、その光の偏光状態を決定します。例えば同位相であれば光は直線偏光で、/2 (90°)の差があれば円偏光です。

>これらの波は互いに直交して偏光するため、振幅のビートパターンは生じません。振幅のビートパターンが生じるのは、2つの波に互いに平行に偏光する成分を持つときのみです。同じ理由により、フォトディテクタを使用して周期の異なる2つの直交して偏光する波を合わせた強度を測定するとき、干渉成分がゼロに等しい信号を得ます。

参考文献
[1] Chris Emslie, in Specialty Optical Fibers Handbook, edited by Alexis Mendez and T. F. Morse (Elsevier, Inc., New York, 2007) pp. 243-277.
[2] Malcolm P. Varnham et al., "Analytic Solution for the Birefringence Produced by Thermal Stress in Polarization-Maintaining Optical Fibers," J. Lightwave Technol., LT-1(2), 332-339 (1983).

「Insights-ヒント集」は下記リンクからご覧いただけます。 
一覧を見る

最終更新日:2021年7月30日
Content improved by our readers!


Posted Comments:
Martin Villiger  (posted 2021-07-22 11:09:00.81)
Your schematic explaining beat length in PM fibers is inaccurate. The length visualized is actually twice the beat length. The phase offset is already restored at the midpoint between the two red spheres. The beat length corresponds to the length after which the phase difference between the two waves is 2pi. Your examples has a 4pi difference.
cdolbashian  (posted 2021-08-10 11:39:33.0)
Thank you for being attentive to our various tutorials and lab notes. You have indeed found an error on our page, and we have corrected it appropriately. Thank you again for your feedback, it is always welcome.