レーザ光用に修正された薄レンズの公式


レーザ光用に修正された薄レンズの公式


Please Wait

 

レーザ光に薄レンズの公式を適用できるか

レーザ光に対しては、従来の薄レンズの公式よりも、回析を考慮に入れた、修正された薄レンズの公式を使用することをお勧めいたします。この修正された公式はレーザ光をガウシアンビームとして取り扱っており、多くのシングルモードレーザやファイバ出力型レーザ光源に適しています。また、修正された公式はレーザ光が完全なガウシアンの強度プロファイルを有していない場合でも適用可能です。[1]

Diagram showing lens in a Gaussian beam with beam waists, Rayleigh ranges, and distances noted.
Click to Enlarge

図1:焦点距離がの薄レンズがガウシアンビーム内に挿入されています。修正された薄レンズの公式では、物体は入射光のビームウェストに相当し、その位置はレンズの入射側からの距離にあります。入射ビームの半径(W )は、ビームウェストの位置ではWoで、レイリー長の範囲(±z)ではそれほど大きく変化しません。像は出射光のビームウェストに相当し、その位置はレンズの出射側から'の距離にあります。出射ビームの半径(')は、ビームウェストの位置ではWo'で、レイリー長の範囲(±zR')ではWo 'からそれほど大きくは変化しません。

Diagram showing where the origin is located when G
Click to Enlarge

図3:半径W(z)や波面の曲率半径R(z)などのガウシアンビームのパラメータは、ビームウェストからの距離zを用いて計算されます。 ビームウェストは常に原点に位置します。

aussian beam parameters, such as beam diameter and radius of curvature, are calculated.Diagram showing lens in Gaussian beam. Wavefronts are illustrated, and radii of curvature and beam diameters at the lens are noted.
Click to Enlarge

図2: このモデルの重要な点は、レンズにおける入射ビームと出射ビームの関係です。2つのビームの半径は同じで、ビームの波面曲率はレンズの焦点距離と関係します。波面の曲率半径はビームウェストではフラット(太い垂直線)であり、ビームウェストから遠ざかるほど徐々に球形になります。

Ray-Optics Thin-Lens Equation
Conventional Thin-Lens Equation
 
Gaussian Beam Equations  Lens System Relations
Beam Radius Beam Radii at Lens
Wavefront's
Radius of Curvature
 Wavefront Curvatures
at Lens
Rayleigh Range Magnification (m )
 
Gaussian Beam Thin-Lens Equations
Modified Thin-Lens EquationInput Beam Perspective
Output Beam Perspective
Magnification

物体、像、およびレーザービーム
従来の薄レンズの公式(表、上段)は光線光学モデルをベースにしており、レンズの焦点距離(f )用いて、レンズと物体の間の距離 ()とレンズと像の間の距離(s ')の関係を示しています。

修正された薄レンズの公式では、それらの距離がレンズと入射光および出射光の各ビームウェストとの距離に対応します(図1)。ビームの半径はビームウェストの位置で最小となり、ビームウェストから遠ざかるにつれて大きくなります。ビーム内にレンズを置くと、新たなビームウェストと発散特性を有するビームが出射されます。入射ビームのウェスト半径(Wo )は物体のサイズ、出射ビームのウェスト半径(Wo' )は像のサイズとして扱われます。

修正された公式には、入射側のレイリー長(zR )または出射側のレイリー長( zR ')も含まれます。レイリー長は、ビームウェストから伝搬方向に向かって、ビーム半径が√2倍の大きさになるまでの距離を測定することで得られます。発散が大きいビームのレイリー長は短くなります。

修正された薄レンズの公式
T入射光と出射光はガウシアンビームとして伝搬することを仮定しています(図2)。 修正された公式は、レンズに対する入射ビームおよび出射ビームの特性(表、中段)を関係付けることで導かれます。

  • レンズの入射面と出射面におけるビーム半径は同じです。

  • レンズの焦点距離は、レンズに入射する波面の曲率半径(R )と、レンズから出射する波面の曲率半径(R ')とを関係付けます。

  • 倍率(m )は出射ビームと入射ビームのビームウェスト半径(または直径)の比です。

なおビーム半径(W )と波面の曲率半径(R )は、ビームウェストからの相対距離(z )を用いて計算されることにご留意ください。修正された薄レンズの公式が2つあるのは(表、下段)、入射ビームパラメータ(zRs )または出射ビームパラメータ(zR 'と')のどちらが既知であるかによって式が異なるためです。

完全なガウシアンではないレーザービームのレイリー長は、同じビームウェスト半径を有する理想的なガウシアンビームのレイリー長よりも短くなります。この2つの値の比であるM2は、しばしばレーザービームの品質を表す仕様として用いられています。ビームのレイリー長にM2の値を乗じ、その積の値を修正された薄レンズの公式におけるzRまたはzR ' として用いてs ' またはsを求めます。

ガウシアンビームの独特な振る舞い
ガウシアンビームは、特に光線光学モデルと従来の薄レンズの公式による予測と比べると、驚くような振る舞いをすることがあります。

例えば、従来の薄レンズ(表参照)の公式においては、物体をレンズ前方の焦点に置いたとき、像は無限遠に生じると予測します。しかしガウシアンビームにおいては、物体側に相当する入射光のビームウェストがレンズからその焦点距離の位置にあるとき、像側のビームウェストはレンズの出射側から焦点距離の位置に生じます。

そのほかにも、従来の薄レンズの公式では、無限遠の位置に像を結ぶことが可能であると予測します。しかし、レイリー長がゼロではないガウシアンビームの場合は、無限遠の位置にビームウェストを生じさせることはできません。その代わり、像のビームウェストの最大距離は、

のように入射ビームのレイリー長に依存します。像側のビームウェストがこの距離に生じるようにするには、物体側のビームウェストの位置をレンズの焦点距離よりもさらにレイリー長だけ離れた位置()にする必要があります。

参考文献
[1] Sidney A. Self, "Focusing of spherical Gaussian beams," Appl.Opt. 22, 658-661 (1983).

「Insights-ヒント集」は下記リンクからご覧いただけます。  
一覧を見る

最終更新日:2021年5月20日


Posted Comments:
No Comments Posted