マルチモードフッ化物ファイバーパッチケーブル、ARコーティング付き

- Features Fluoroindate (InF3) Fiber with Transmission from 310 nm to 5.5 µm
- AR-Coated on Both Ends for 4.0 - 4.6 µm
- SMA905 Connectors with Stainless Steel Caps
SMA905 Connectors AR Coated for 4.0 - 4.6 µm
MF11L1AR1
Included Caps
AR-coated endface of an MF11L1AR1 cable under 50X magnification. The bright green color is due to the AR coating.

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用途例
- 分光
- 環境モニタリング
- 化学物質検出
- 低い戻り光が必要となるシステム
特長
- 当社のファイバ線引き施設で製造したフッ化インジウム(InF3)ファイバを使用
- コア径: Ø100 µm
- Ø3.0 mmの硬質プラスチック被覆とSMA905コネクタ付き
- 4.0~4.6 µm用ARコーティング付き
- 平均反射損失: < 0.50%
- 可視波長のアライメントビームも透過
反射防止(AR)コーティング付きのマルチモードフッ化物ファイバーパッチケーブルMF11L1AR1は、中赤外域で低損失透過を実現する設計となっております。 当社が自社工場で独自の技術を用いて製造したフッ化インジウム(InF3)製デュアルクラッドのマルチモードファイバを使用しており、純度、精度、強度に優れております。フッ化物ガラスの情報と製造工程に関する情報については、「ファイバの製造」タブかフッ化物ファイバの概要ページをご覧ください。
フッ化物ファイバは水酸化物イオン(OH)濃度が非常に低く、中赤外の波長域では平坦な損失特性が得られます。当社のフッ化インジウム(InF3)ファイバーパッチケーブルの透過波長範囲は310 nm~5.5 µmです。右のグラフでは、標準的な石英ガラスファイバや当社のZBLAN(ZrF4)マルチモードファイバとの損失特性の比較がご覧いただけます。パッチケーブルMF11L1AR1の端面には、光損失を低減するために4.1~4.6 µm用の反射防止(AR)コーティングが施されています。ARコーティングにより、透過範囲における平均のフレネル損失が0.50%以下(1面当たり)に抑制されるため、量子カスケードレーザ(QCL)など反射に敏感なシステムにおいて戻り光を低減することが可能です(詳細については「用途」タブをご覧ください)。

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MF11L1AR1には型番、主要仕様、バッチ番号が刻印されています。
ケーブルの両端には、SMA905コネクタが付いています。各ケーブルには、フェルールの端部分を埃や他の危険から守るステンレススチール製の保護キャップが2個付属しています。SMA905コネクタ付きケーブル用の交換用キャップCAPM(ゴム製)ならびにCAPSM(金属製)も別途ご用意しております。
フッ化物ガラスは標準的な石英ガラスよりも柔らかいため、クリーニングは十分に注意して行う必要があります。推奨する手順については「取扱い 」タブをご覧ください。このケーブルは、コネクタが付いていることにより、ファイバ素線と比べて耐えられる出力パワーが低くなります。最大でも数ワット程度のパワー(CW光)でご使用されることをお勧めいたします。
当社では250~370 nm、400~700 nm、650~1100 nm用のARコーティング付き石英ファイバーパッチケーブルをご用意しています。 また、コーティング無しのマルチモードフッ化物ファイバーパッチケーブル、フッ化物ファイバ素線、シングルモードパッチケーブル、その他フッ化物ファイバーコンポーネントもご用意しています。当社がラインナップしているフッ化物ファイバおよびファイバーコンポネントについては下のリンクからご覧いただけます。
フッ化物ファイバおよびパッチケーブルのカスタマイズ
現在のラインナップにはないファイバのカスタマイズやファイバ線引きについては、当社までご相談ください。当社では、下記のようなフッ化物ファイバおよびパッチケーブルのカスタマイズに対応しております。
- カスタムオプション: ファイバの種類、長さ、終端処理、チューブ
- 組み込み(OEM)用光ファイバーパッチケーブル 製品組み込み用(OEM用)パッチケーブル: 用途要件に対応した設計
- ARコーティング付きパッチケーブル
- 過酷な環境向けに耐久性を高めたケーブル
In-Stock Multimode Fiber Optic Patch Cable Selection Guide |
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Silica (180 nm to 2.4 µm) |
Fluoride (285 nm to 5.5 µm) |
Fluoride Fibers and Components | |||
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MF11L1AR1 Specifications | |
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Connectors | SMA905 |
Jacket | FT030DF-B |
Bare Fiber Identification # | FFH10026 |
Fiber Type | Fluoroindate (InF3) |
Transmission Rangea | 310 nm - 5.5 µm |
Typical Attenuationb | 0.08 dB/m @ 2.5 µm and 3.6 µm |
Maximum Attenuationb | ≤ 0.25 dB/m (from 2.0 to 4.6 µm) |
NAc | 0.26 ± 0.02 @ 2 µm |
Typical Core Indexd | 1.487 @ 3.6 µm |
Core Diameter | 100 ± 2.0 µm |
Cladding Diameter | 192 ± 2.5 µm |
Coating Diameter | 280 ± 15 µm |
Core/Cladding Concentricity | ≤ 2.0 µm |
Core Circularity | ≥ 95% |
Long-Term Bend Radiuse | ≥ 50 mm |
Short-Term Bend Radius | ≥ 25 mm |
Operating Temperature | -40 to 85 °C |
こちらでは、コア径Ø100 μmのInF3 ファイバの挿入損失(典型値)、NA、コアとクラッドの屈折率と波長の関係性のグラフがご覧いただけます。これらの特性はファイバの線引きによりバラツキが見られる場合があります。ご用途に適したファイバのご相談は当社までご連絡ください。

生データはこちらからダウンロードいただけます。
別ロットで線引きされたコア径Ø100 μmのInF3ファイバ4本から測定された減衰量特性のグラフです。2.0~4.6 µmの青色の網掛け領域は、点線で示された減衰性能が保証された波長範囲を示しています。

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生データはこちらからダウンロードいただけます。
ARコーティング付き、コア径Ø100 µmのInF3ファイバの反射率。青い網掛け領域は、このコーティングの平均反射率が0.5%以下となる範囲(4.0~4.6 µm)を表しています。

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グラフは、コア径Ø100 μmのInF3ファイバのコアとクラッドの屈折率(典型値)を示しています。グラフのデータは、セルマイヤー式を測定データにフィッティングさせて取得しています。セルマイヤー方程式とコアとクラッドの最も適したパラメータは下表でご覧いただけます。

生データはこちらからダウンロードいただけます。
こちらでは、コア径Ø100 μmのInF3 ファイバの挿入損失(典型値)、NA、コアとクラッドの屈折率と波長の関係性のグラフがご覧いただけます。
セルマイヤーの分散式

Sellmeier Coefficients | ||
---|---|---|
Coefficient | Core | Cladding |
u0 | 0.47627338 | 0.68462594 |
u1 | 0.76936893 | 0.4952746 |
u2 | 5.01835497 | 1.4841315 |
u3 | 0.0179549 | 0.0680833 |
u4 | 0.11865093 | 0.11054856 |
u5 | 43.64545759 | 24.4391868 |
A | 1 | 1 |

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図では安全にかけられる軸上のテンションと、安全に支障のある曲げによりファイバを損傷する可能性のある軸外のテンションを比較しています。

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ファイバ素線のスプールからテープを外すときの推奨手順を示しています。テープを外すときは、片手でファイバをそっと押さえて安定させながら、もう一方の手でテープをファイバに対して平行に引っ張ってください。

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上では推奨するコーティングの除去方法を示しています。A:ファイバの除去する部分をストリッピング溶液に浸します。B~C:浸した部分の根本をピンセットFSGT でそっと挟み、ファイバ先端の方に引っ張ります。
D:コーティングが外れます。
フッ化物ガラスの物理的特性は、石英ガラスとは異なります。こちらではフッ化物ファイバとパッチケーブルの取り扱いについて推奨する手順を説明いたします。
安全上の取り扱いおよび廃棄について
ZBLANおよびInF3ガラスは健康被害を及ぼす場合があります。フッ化物ファイバの組成については当社までお問い合わせください。コーティング除去されたフッ化物ファイバ素線を取り扱う際には、必ずニトリル製手袋などの化学耐性のある手袋をご使用ください。クリービング後のファイバの破片は、当社の光ファイバ廃棄ユニットFTDUなど耐貫通性の容器に廃棄してください。
フッ化物ファイバや廃棄ユニットなどを廃棄される場合には、自治体の規則に従って廃棄してください。
保管
フッ化物ガラスは石英ガラスより柔らかく、保管中に露出している端面は傷がつきやすくなるため、機械摩耗にさらされないようご注意ください。通常の環境温度と湿度であれば、ファイバの品質に影響を与えません。長期間にわたり水や水蒸気に直接触れさせないようご注意ください。
曲げと引張り
フッ化物ファイバはテンションに対して強度はありますが、軸外から力を加えた場合や、小さい半径で曲げられた場合には、割れやすくなります。ファイバは短期曲げ半径よりも小さな半径で曲げないようにしてください。ファイバには、スプールに巻くときのようにある程度の軸上の力を加えることは可能です。右では軸上と軸外のテンションについて図で示しています。
当社のフッ化物ファイバ素線はスプールで発送され、端部分はスプール本体にテープで止められています。テープを外すときには、ファイバに対して平行に引っ張ってください(右上の図参照)。
当社のフッ化物ファイバーパッチケーブルにはファイバの保護のために、通常のパッチケーブルの被覆よりも剛性のあるPVDF補強チューブあるいはステンレススチール製チューブを使用しています。被覆を無理に曲げようとしない限り、ファイバが損傷を受けることはありません。PVDF被覆付きのパッチケーブルでは、制限よりも曲げた場合、チューブの色が変色します。ステンレススチール製のパッチケーブルは、ファイバが最小半径よりも小さな半径で曲げられないよう、機械的に制限されています。
被覆除去
フッ化物ファイバは、従来の方法で被覆除去をするとガラスが柔らかいため、損傷を受けやすくなっています。被覆除去用ピンセットFSGTをストリッピング用の溶剤とともに使用することによって、ファイバへの傷やニッキングを防ぐことができます。
ファイバのコーティングを除去するには、ペンキ剥離剤などの溶液に3~5分晒します。溶液をシリンジなど先端が長い容器に入れると、容易なのでお勧めです。ジェルタイプの溶剤をご使用になる場合には、ファイバの外側に塗ってください。なお、浸す時間は使用する溶剤と、コーティングの化学成分によって異なりますのでご注意ください。例えば、ジクロロメタン(DCM)をベースとした溶液をご使用になった場合、浸す時間はより短くなるかもしれません。
溶液に浸したファイバのコーティング部分が目に見えて膨らみます(右写真のB参照)。ここでストリッパFSGTで溶液に浸した部分のファイバをそっと挟み、ファイバ端の方に引きます。その際の圧力は適度にとどめておかないとファイバは折れてしまいますのでご注意ください。浸したコーティングはファイバ先端で滑り落ち、クラッドが露出した状態となります。除去した部分に残留物がある場合には、下で説明するようにクリーニングしてください。
ご使用前にストリッピング用溶剤の安全上の注意事項等をご確認ください。

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こちらでは溶剤で端面をクリーニングする際の推奨手順を示しています。
A: 5枚以上のワイプTCW604を適切な溶剤(左参照)で浸し、
B: ファイバ端面をワイプの上でそっと動かしてください。
クリーニング
フッ化物ガラスは柔らかいため、フッ化物ファイバとパッチケーブルの端面や被覆除去した部分は、クリーニング中に傷がつきやすくなっています。 ガラス表面に粒子がある場合には、まず圧縮空気を吹きかけてください。圧縮空気で取り除けない場合には、リントフリーワイプTCW604にアルコールなどの溶剤をつけて先端部分をクリーニングしてください(左図参照)。溶剤にはメタノールやイソプロパノールなどが適していますが、アセトンは適していません。乾いた布でふき取ることも傷をつける場合がありますので推奨しません。
なお、キムワイプ®††はファイバ先端を傷つける可能性が非常に高いので、ご使用にならないでください。
クリーブ
当社のフッ化物ファイバは、当社の大径ファイバ用クリーバVytran® LDC401のようなテンション・スクライブ方式でクリーブも可能です。なおこの方法ではファイバの破片ができますのでご留意ください。クリーブ中には、安全保護メガネと化学耐性のある手袋を常に着用してください。
†TechniCloth®は、Illinois Tool Works社の登録商標です。
††Kimwipes®(キムワイプ)は、Kimberly-Clark社の登録商標です。

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生データはこちらから
CO2の4.3 µm吸収帯域では、ARコーティング付きInF3ファイバの方が、コーティング無し InF3ファイバよりも強い信号を出力します。青い網掛け領域は、ファイバのARコーティング範囲(4.0~4.6 µm)を表しています。
使用について(推奨)
フッ化物ガラスは標準的な石英ガラスよりも柔らかく、パッチケーブルのクリーニングは十分に注意して行う必要があります。フッ化物ファイバ特有の取扱いについては「 取扱い」タブをご覧ください。このケーブルは、コネクタが付いていることにより、ファイバ素線と比べて耐えられる出力パワーが低くなります。最大でも数ワット程度のパワー(CW光)でご使用されることをお勧めいたします。
実験の構成例:中赤外域での分光
このARコーティング付きInF3ファイバーパッチケーブルは、分光、環境モニタリング、化学物質検出の用途において感度向上に役立ちます。CO、CO2、N2Oの主な吸収帯はすべて4.0 µm~4.6 µm内にあります。ケーブルのARコーティングにより反射による減衰が低減されるため、分子により生成された信号の強度が増加します。
この信号量の増加は、右のグラフのCO2 4.3 µm吸収帯のデータ例でご覧いただけます。このデータを収集した実験セットアップとして、FTIR分光器とInSbディテクタを使用しました。FTIRからの白色光は、軸外放物面(OAP)ミラーを用いてファイバに結合しました。その後、ファイバからの出射光が2番目のOAPミラーによりInSbディテクタに入力されます。このFTIRには、ファイバの出力部からディテクタまで自由空間があり、ここに呼吸のCO2が注入されています。呼気が注入されていないときのスキャンでベースラインを定めてから、ARコーティング付きInF3パッチケーブルの性能と、コーティング無しInF3パッチケーブル(型番MF11L1)の性能が比較されました。基礎的な実験でしたが、InF3パッチケーブルのARコーティングが、分光のほか、4.0~4.6 µmの化学物質検出にも役立つことが示されています。
実験の構成例:量子カスケードレーザ
ケーブルの反射防止コーティングは、量子カスケードレーザ(QCL)のように戻り光に敏感な光源使用時において、反射光を大幅に低減することができます。こちらのケーブルは、特にMLQF4000(中心波長4.00 µm)またはMLQF4550(中心波長4.55 µm)などの中赤外域(MIR)用ファブリーペローレーザにご使用になることをお勧めいたします。コア径Ø100 µmのInF3ファイバに光を入力するためのスポットサイズは、約70 µmとする必要があります。 前述のターンキー式QCLレーザのビーム径はおよそ1.75 mmで、コア径Ø100 µmのパッチケーブルへの光入力に使用されるIRレンズに適した焦点距離はf = 21.4 mmとなります。MLQF4000またはMLQF4550 からファイバに光を入力するためには、移動ステージ(MBT616D/M) SMAアダプタ(HFB001B)付き、固定式取付ブラケット(AMA009/M)、対応するレンズマウント(HCS0xxシリーズ)、そして要件に適したIRレンズ(シリコン(Si)平凸レンズ、フッ化バリウム(BaF2)平凸レンズ、セレン化亜鉛(ZnSe)平凸レンズ)のご使用をお勧めいたします。後方反射を抑えるために、光学素子をわずかに角度を付けて取り付けることも可能です。
その他の用途
中心波長が4250 nm辺りでバンド幅が500 nmのバンドパスフィルタ(FB4250-500)を追加すると、このARコーティング付きInF3パッチケーブルは、可視域から中赤外域までの黒体放射スペクトルを供給する赤外域用安定化ファイバ出力光源SLS202Laなどの白色光源にも適合します。下ではいくつかの使用例がご覧いただけます。

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このセットアップでは、フッ化物パッチケーブルを使用して気相分光用の試料チャンバ内に中赤外光を入れています。(写真のセットアップに関する詳細はこちらからご覧いただけます)。

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光ファイバ内の全反射
光ファイバ内の光の伝搬
光ファイバは光学製品を大分類すると光導波路の一部で、内部全反射(TIR)を利用して個体または液体構造内に光を閉じ込め、伝搬させます。その中でも光ファイバは数多くの用途に使用され、一般的な例としては光通信、分光、照明などがあげられます。
広く使用されているガラス(石英)ファイバの構造の1つに右の図で示しているステップインデックスファイバがあります。ステップインデックスファイバのコアは周りのクラッド層よりも屈折率の高い材料でできています。 光が周りの媒質により屈折するのではなく、コアとクラッドの界面で反射する入射角が存在します。ファイバ内で全反射する条件を満たすために、ファイバの入射角をある角度より低くしなければなりません。この角度は受光角度、θaccと定義されます。 角度を求めるにはスネルの法則が使用されます。
ここでncoreはファイバのコアの屈折率、ncladはファイバのクラッドの屈折率、nは外側の媒質の屈折率、θcritは臨界角、そしてθaccはファイバの受光角度の半角となります。開口数はファイバの製造メーカが使用する無次元数で、光ファイバの受光角度により規定されます。下記の式で表します。
大径コアのステップインデックスファイバ(マルチモード)では、この式を用いてNAが直接求められます。NAはファーフィールドビームのプロファイルをたどり、ビームの中心からビーム強度が最大の5%になる点までの角度を測ることによって、実験によっても求められます。しかし、計算式でNAを直接求めることが最も正確な値を得る方法になります。
光ファイバ内のモード数
光ファイバ内で光が伝搬する経路はファイバの導波モードとして知られています。コア・クラッド領域の物理的寸法、屈折率、そして波長により、1本の光ファイバ内では1から何千のモードが存在することになります。最も一般的に製造されているのは2種類で、シングルモードファイバ(単一導波モードが存在)とマルチモードファイバ(多数の導波モードが存在)があります。マルチモードファイバにおいては、低次モードではファイバのコア内に光を空間的に閉じ込める傾向があり、一方、高次モードではコアとクラッドの界面近くで光を空間的に閉じ込める傾向があります。
光ファイバのモード数(シングルモードまたはマルチモード)はいくつかのシンプルな計算により予測することができます。規格化された光の周波数(V-number)は自由空間光周波数に比例する無次元数ですが、光ファイバの導波特性を示します。V-numberは下の式で定義されます。
Vは規格化周波数(V-number)、aはファイバのコア半径、λは自由空間波長です。マルチモードファイバのV-numberは大きく、例えば、コアØ50 µm、NA0.39のマルチモードファイバのV-numberは波長1.5 µmにおいて40.8です。
V-numberが大きいマルチモードファイバにおけるモード数は下の関係式で概算します。
上記のコアØ50 µm、NA0.39のマルチモードファイバの例では、ファイバ内を同時期に伝搬するモード数は約832となります。
シングルモードファイバはV-numberが2.405未満あると定義されています。これは光がファイバの基本モードのみに結合することを表しています。この条件を満たすためにシングルモードファイバは同じ波長でのマルチモードファイバに比べてコアサイズとNAが大幅に小さくなります。1つの例として、SMF-28 Ultraのシングルモードファイバの公称NAは0.14、コアはØ8.2 µmで、1550 nmにおけるVナンバは2.404です。

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マクロベンドロスによる減衰

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マイクロベンドロスによる減衰

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マルチモードファイバFT200EMT透過後のビームプロファイル測定結果。旧製品LED M565F1(代替品 M565F3) の光がコアではなく、ファイバのクラッドに導かれていることが示されています。
減衰の要因
光ファイバ内の損失は減衰とも呼ばれ、ファイバの全伝送損失を予測するために特性化し、数値化されます。これらの損失の原因は通常波長に依存し、またファイバそのものに使用されている材料からファイバの曲げによるものなど様々です。減衰が生じる一般的な要因を下記に説明しております。
吸収
標準的な光ファイバ内の光はファイバ材料を介して導かれているため、光がファイバを伝搬するにつれて吸収による損失があります。標準的なファイバは溶融石英を使用して製造され、1300 nm~1550 nmで透過するよう最適化されています。これよりも長い波長(>2000 nm)だと、溶融石英内の多光子相互作用により、大幅な吸収につながります。フッ化ジルコニウム(ZrF4 )やフッ化インジウム(InF3)が主に中赤外域用ファイバの製造に使用されているのは、これらの波長で低損失だからです。ZrF4 ならびにInF3 の(多光子相互作用が起こらない)限界波長はそれぞれ約3.6 µmと4.6 µmです。
ファイバ内の異物も吸収損失の原因となります。 不純物質の1例は、1300 nmと2.94 µm付近の光を吸収する、ファイバのガラス内に閉じ込めれた水分子です。アプリケーションによっては(光通信など)はこの波長領域を利用するため、ファイバ内の水分子が信号を大幅に減衰します。
製造メーカではよくファイバーガラス内のイオンの密度を制御することでファイバの透過・減衰特性の調整を行っています。例えば、水酸化物イオン(OH-)はもともと石英に含まれていて、近赤外~赤外スペクトル域で光を吸収します。そのため、低OHのファイバは通信波長での透過に適しています。一方で高OHのファイバは通常、UV波長で透過率が増加するため、蛍光用途やUV~可視域での分光用途向けに適しています。
散乱
光ファイバの用途の多くでは、光散乱が損失の主な原因です。散乱は媒質の屈折率の変化が起きた場所で生じます。このような屈折率の変化には不純物、粒子、泡など外因的なものと、ガラスの密度、組成、相状態の変動による内因的なものがあります。散乱は光の波長に反比例しますので、UVや青色のスペクトル領域などの短い波長では大きな散乱損失が起こります。適切なファイバのクリーニング、処理、ならびに保管手順により、大きな散乱損失を招くファイバ先端の不純物を最小限に留めることができます。
曲げ損失
光ファイバの外部ならびに内部形状の変化によって起こる損失は曲げ損失と呼ばれています。通常曲げ損失はマクロベンドロスとマイクロベンドロスの2つのカテゴリーに分けられます。
マクロベンドロスは一般的に光ファイバの物理的な曲げ、例えば細いコイルに巻くような場合に生じる損失です。右の画像のように、導波光はファイバのコアならびにクラッド領域内に空間的に分布されています。ファイバを曲げた場合、径の外側付近の光は速度を上げないことには同じ空間モードプロファイルを維持することはできません。維持できない場合、放射光として光エネルギが周囲に奪われます。曲げ半径が大きいと曲げに関わる損失は小さくなります。ただし、推奨するファイバの曲げ半径より小さい曲げ半径では大幅な曲げ損失となります。光ファイバは、短時間であれば小さい曲げ半径でも動作可能ですが、長期間保管する際の曲げ半径は推奨する値よりも大きくしてください。 適切な保管状態(温度と曲げ半径)でファイバの恒久的な損傷の可能性を下げることができます。ファイバ収納リールFSR1は高曲げ損失が最小に抑えられるよう設計されています。
マイクロベンドロスは、ファイバの内部形状、とりわけコアとクラッド層の変化により起こります。これらのファイバ構造内のランダムな変化(凹凸など)は、内部全反射に必要な条件を妨げ、伝搬する光がファイバの外に漏れる非伝搬モードに結合する原因となります(右の画像をご覧ください)。曲げ半径によるマクロベンドロスとは異なり、マイクロベンドロスはファイバの製造過程で起こるファイバの恒久的な欠陥によるものです。
クラッドモード
マルチモードファイバ内の光のほとんどはコア内の内部全反射により伝搬しますが、高次モードでは、クラッドとコーティング・バッファの界面での内部全反射によりコア層とクラッド層の両方で光を伝搬する場合があります。これはクラッドモードと呼ばれます。右のビームプロファイル測定はこの1例です。ファイバのコア内よりもクラッド内で高い強度のクラッドモードを示しています。これらは非伝搬モードの(つまり、内部全反射の条件を満たさない)場合と、ファイバをかなり長く伝搬する場合があります。クラッドモードは一般的に高次のため、ファイバの曲げや欠陥によるマイクロベンドは損失の原因となります。クラッドモードは、2本のファイバをコネクタで接続した場合、簡単に結合できないため消失します。
クラッドモードはそのビームの空間プロファイルへの影響により、用途(例:自由空間への入射)によっては望ましくない場合があります。ファイバ長が長くなると、このモードは自然に減衰します。ファイバ長が短い場合(<10 m)、希望する伝搬モードを維持しながらファイバからクラッドモードを除去する方法の1つとして、マンドレルラップを使用してクラッドモードが除去できる半径で曲げる方法があります。
入射状態
アンダーフィルの入射状態
幅広い開口で光を受容する大径マルチモードファイバの場合、ファイバに結合する光の状態(例:光源種類、ビーム径、NA)が透過性能に著しい影響を及ぼすことがあります。アンダーフィルの入射状態は、入射光の界面でのビーム径ならびにNAがファイバのコア径ならびにNAよりも小さいときに起こります。一般的な例としてレーザ光源を大径マルチモードファイバに入射する例があります。下の図ならびにビームプロファイル測定画面でご覧いただけるように、アンダーフィルの入射状態ではファイバの中心に光を空間的に集光する傾向があり、高次モードよりも低次モードが得やすくなります。その結果、マクロベンドの影響は少なく、クラッドモードもありません。アンダーフィルの入射状態における挿入損失の測定値は典型値よりも低い傾向にあり、またパワー密度はファイバのコアの方がより高くなります。
オーバーフィルの入射状態
オーバーフィルの入射状態は、入射光の界面でのビーム径ならびにNAがファイバのコア径ならびにNAよりも大きいときに起こる状態によって定義されます。この状態はLED光源の光を小径マルチモードファイバに入射する場合に得られます。オーバーフィルの入射状態ではファイバのコア全体とクラッドの一部に光があたり、低次モードと高次モードが均一に得られ(下の図参照)、そしてクラッドモードに結合する可能性が高くなります。高次モードの割合が高くなることにより、オーバーフィル状態のファイバは曲げにさらに敏感になります。オーバーフィルの入射状態における挿入損失の測定値は典型値よりも高い傾向にありますが、全体的な出力パワーはアンダーフィルの入射状態に比べて高くなります。
アンダーフィルとオーバーフィルの入射状態には、用途の要件によって長所や欠点があります。マルチモードファイバの基本性能を測定するには、ファイバのコア径に対して70~80%のビーム径の入射光を使用することをお勧めします。オーバーフィル状態のファイバは、短い距離では出力パワーが高くなります。しかし、長い距離(>10~ 20 m)では減衰の影響をより受けやすい高次モードが消失します。
当社の垂直統合されたファイバ線引き施設では、ZBLANフッ化ジルコニウム(ZrF4)やフッ化インジウム(InF3)ファイバが製造されています。この施設では、原材料およびガラスプリフォームの処理、ファイバ線引き、パッチケーブル製造を全て同じ場所で行っています。製造プロセスを最初から最後まで制御することで、低損失、高強度、正確な形状制御といったファイバの優れた仕様を一貫して満たせるようになります。
米国ニュージャージ州ニュートンにあるこの施設は、大量生産に適した設備を有し、数キロメートルのファイバを製造することができます。また、ファイバの製造開始から完成までを当社の施設内で行うため、製造工程を調整して、カスタムオーダや研究開発のニーズに対応できます。
フッ化物の特性
フッ化物ファイバは中赤外(MIR)域光を透過させるのに適しています。当社のファイバは、厳格な製造工程により水酸化物イオン(OH)濃度が非常に低く抑えられているため、この波長域での損失特性が小さくなっています。フッ化物ファイバは、カルコゲン化物ガラスファイバのような中赤外域で高い透過率を有する他のファイバと比べて、屈折率や色分散も小さくなっています。厳密に制御されたプロセスにより、ファイバの散乱と点欠陥が軽減され、ガラスマトリックスの微結晶化が抑えられます。

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当社のフッ化物ガラス製造施設で原材料を混合する様子

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ファイバ線引き工程内のガラスが下に落ちる様子
フッ化物ファイバの特性評価と試験
当社ではファイバの製造だけでなく、製造したファイバの試験および特性評価も行っています。線引きされたファイバは、当社の高い品質基準に合うことを確認するために、1本1本の特性を精密に測定しています。広範囲な試験結果は当社のファイバ線引きチームにもフィードバックされ、それにより1つ1つの製造工程の厳格な管理が可能になっています。当社製造のファイバについては、カスタム仕様による試験を実施した後に発送することも可能です。ご要望により他社製ファイバのサンプルに対する試験も実施することができます。以下の試験および特性評価が実施可能です。
- 透過減衰量の波長特性測定
- 紫外(UV)、可視(VIS)、近赤外(NIR)、中赤外(MIR)域の波長範囲
- シングルモードまたはマルチモードファイバ、およびバルクガラス
- シングルモードファイバのカットオフ波長測定
- ファイバのNA測定
- ファイバーガラスやコーティング形状のサブマイクロメータ精度での測定
- マルチモードファイバの中赤外域でのハイパワースクリーニング
- ファイバの引張強度試験
- 欠陥/故障解析
- ファイバーコーティングの硬化度試験
当社ならびにサードパーティ製ファイバの試験をご要望の場合は、当社までご連絡ください。

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グラフは全てのファイバ線引きの平均損失が年々着実に改善されていることを示しています。
研究開発チーム
当社の中赤外域用ファイバの研究開発チームは、長年に渡ってフッ化物ガラスの研究・開発、製造ならびにファイバの線引きを行ってきました。チームの専門知識と技術により、フッ化物ファイバの品質は常に向上しています。 左のグラフでは当社のフッ化物ファイバの性能の推移を示しています。
フッ化物ファイバおよびパッチケーブルのカスタマイズ
現在のラインナップにはないファイバについてのご要望がございましたら、カスタマイズや対応可能なファイバ線引きについて当社までご相談ください。当社では、下記のようなフッ化物ファイバおよびパッチケーブルのカスタマイズに対応しております。
ファイバ素線
| パッチケーブル
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当社のファイバ線引きタワー
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Item #a | Fiber ID # | Operating Rangeb,c | Typical Attenuationb | Maximum Attenuationb | Core Diameterb | Cladding Diameterb | NAb,d | Bend Radiusb (Short Term/ Long Term) | Connectors | Jacket | Operating Temp. |
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MF11L1AR1 | FFH10026e | 310 nm - 5.5 µm | 0.08 dB/m @ 2.5 µm and 3.6 µm | ≤0.25 dB/m (for 2.0 - 4.6 µm) | 100 ± 2.0 µm | 192 ± 2.5 µm | 0.26 ± 0.02 @ 2.0 µm | ≥25 mm/ ≥50 mm | SMA905 | Blue PVDF (Ø3 mm) | -40 to 85 °C |