顕微鏡スライド型ピークパワーセンサー、2光子レーザ用
- Measure Relative Peak Power of Two-Photon Lasers
- Compatible with Microscope Stages for Measurements at the Sample
- Designed to Optimize Pulses for Multiphoton Imaging
- Compatible with Dry, Water Immersion, and Oil Immersion Objectives
NS170C
Microscope Slide Peak Power Sensor for Two-Photon Lasers, 780 - 1300 nm
NS170C Microscope Slide Peak Power Sensor Used with a Prelude® Imaging Microscope and TL10X-2P Objective
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Key Specifications | |
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Detector Type | Second-Order Nonlinear Crystal with Silicon Photodiode |
Laser Wavelength Range | 780 - 1300 nm |
SHG Wavelength Range | 390 - 650 nm |
Max Peak Power Densitya | 10 TW/cm2 |
Laser Average Power Rangeb | 0.5 - 350 mW |
SHG Optical Power Working Range | 10 nW - 5 mW |
Resolutionc | 1 nW |
(詳細は「用途」タブ参照)
特長
- 2光子レーザのピークパワーの相対測定用に設計
- 非線形結晶を用いてレーザの第2高調波を直接測定
- レーザ波長範囲:780~1300 nm
- 第2高調波の波長範囲:390~650 nm
- 試料面でのピークパワーの最適化が可能なサイズ
- ドライ、水浸、油浸用の対物レンズに対応
- 当社のパワーメーターコンソール(下記参照)に対応
用途例
- 2光子顕微鏡の焦点におけるフェムト秒レーザの群遅延分散の最適化
- 様々な実験におけるレーザ条件の一貫性を確保
- フェムト秒パルスレーザの迅速な品質評価
当社の顕微鏡スライド型ピークパワーセンサは、2光子レーザのピークパワーの相対測定用として設計されています。顕微鏡スライドと寸法が同じであるため、顕微鏡の焦点におけるピークパワーの相対値を測定することができ、多光子顕微鏡用のパルスレーザを最適化するのに有用な製品になっています(詳細は「用途」タブ参照)。
センサNS170Cでは、2次の非線形結晶であるβ-BBO(beta-BaB2O4)を使用して、入射する近赤外(NIR)の超短パルス光を可視(VIS)の第2高調波に変換します。 第2高調波発生(SHG)の効率は、近赤外フェムト秒パルスのピークパワー密度またはピーク強度に比例するため、検出される第2高調波光の大きさはレーザのピークパワーの相対測定値を与えることになります。 詳細は「光学設計」および「動作」タブをご参照ください。
センサNS170Cは標準的な正立および倒立顕微鏡のスライドホルダに対応しています。右の動画に示すように、このセンサを使用して顕微鏡の焦点におけるピークパワーの相対値を測定できます。そのため、高いイメージコントラストが得られるように、レーザーパルスの持続時間を試料面で直接最適化することができます(詳細は「用途」タブ参照) 。また、このセンサはM4 x 0.7タップ穴を用いてポストに取り付けられるため、標準的な光学コンポーネントのセットアップ内でのピークパワーの相対測定にも使用できます。
センサNS170Cの筐体には、光の偏光方向とβ-BBO結晶の光学軸の間の角度を調整するために、ローレット加工された調整用ホイールが付いています。センサの光入射面には厚さ170 µmのカバーガラスが付いており、これでセンサ筐体を密閉しています。そのため、このセンサはドライ、水浸および油浸用の各対物レンズと組み合わせてご使用いただくことができます。カバーガラス上部からβ-BBO結晶までの作動距離は0.22 mmです。センサの筐体底面にはアライメント用の十字線がレーザ刻印されています。これは受光面の位置を表しており、ビームのアライメントや集光の際にご利用いただけます。使用するときは、筐体をその刻印面が顕微鏡の対物レンズに対面する向きにして光路に挿入します。ビームが刻印されたターゲットの中心にくるように調整したのち、パワーが測定できるようにセンサを反転させてディテクタの受光面をビームに向けます。
第2高調波発生(SHG)
SHGの効率は、入射するレーザーパルスのピークパワー密度に依存します。センサが顕微鏡対物レンズの焦点面に配置されると、有効な焦点の面積が固定され、SHG 信号はピークパワーにのみ依存します。 平均レーザーパワーと繰返し周波数が与えられたとき、ピークパワーはパルス幅(時間)にのみ依存します。したがって、パルス幅を変更してそれに伴うSHGパワーの測定値を明確に読み取ることができるため、試料面で直接レーザーパルスを最適化することができます。これらのパラメータがSHGの変換効率に与える影響についての詳細は「動作」タブをご覧ください。
センサNS170Cにはローレット加工された位相調整用ホイールが付いており、これでβ-BBO結晶の回転方向を調整できます。
対応するパワーメーターコンソールとインターフェイス
センサNS170Cは、パワーメーターコンソールのPM100D、PM100A、PM400、PM5020、およびセンサとPCなどの外部制御ユニットを接続するためのCシリーズ パワー&エネルギーメーターインターフェイスに対応しています。センサーヘッドに取り付けられている1.5 mのケーブルには、9ピンのオス型Dサブコネクタが付いています。センサのコネクタ内の不揮発性メモリには、センサの情報とNISTおよびPTBにトレーサブルな校正データが格納されています。NISTおよびPTBの校正データはディテクタに可視光が入射する場合のデータであることにご注意ください。しかし、この可視光の強さは近赤外のフェムト秒パルスの照射条件に固有なものになります。詳細は「用途」タブをご覧ください。
センサNS170Cを当社のパワーメーターコンソールおよびインターフェイスと組み合わせてご使用いただく場合は、入射するレーザ光源の波長として近赤外の波長を選択してください。
再校正サービス
当社ではパワーセンサとパワーメーターコンソールの再校正サービスを提供しています。センサとコンソールはセットで再校正されることをお勧めしますが、それぞれを単体で再校正することも可能です。精度と性能を維持するために定期的な再校正をお勧めします。校正頻度は用途にもよりますが、通常1年程度です。センサの再校正については当社までお問い合わせください。
NS170C Specifications | |
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Detector Type | Second-Order Nonlinear Crystal with Silicon Photodiode |
Laser Wavelength Range | 780 - 1300 nm |
SHG Wavelength Range | 390 - 650 nm |
Max Peak Power Densitya | 10 TW/cm2 |
Laser Average Power Rangeb | 0.5 - 350 mW |
SHG Optical Power Working Range | 10 nW - 5 mW |
Responsivity (Click for Plot) | Click Here for Raw Data |
Input Aperture | Ø4.5 mm |
Working Distance | 0.22 mm |
Linearityc | ±0.5% |
Resolutionc,d | 1 nW |
Measurement Uncertaintyc,e | ±3% (440 - 650 nm) ±5% (390 - 439 nm) |
Response Time | < 1 µs |
Typical Application | GDD Optimization of a Femtosecond Laser at the Focus of a Two-Photon Microscopef |
Sensor Dimensions | Base: 76.0 mm x 25.2 mm x 5.0 mm (2.99" x 0.99" x 0.20") Overall: 76.0 mm x 30.0 mm x 11.0 mm (2.99" x 1.18" x 0.43") |
Cable Length | 1.5 m |
Connector | Sub-D 9 Pin Male |
Weight | 80 g |
Post Mounting | Combi Thread 8-32 and M4 |
Compatible Consolesg | PM100D, PM100A, PM400, and PM5020 |
Compatible Interfacesg | PM101, PM101A, PM101R, PM101U, PM103, PM103A, PM103E, PM103U, and PM100USB |
センサーコネクタ
Dサブ オス型
Pin | Pin Connections |
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1 | Not Used |
2 | EEPROM Data |
3 | Photodiode Anode Ground |
4 | Photodiode Cathode |
5 | Not Used |
6 | EEPROM Ground |
7 | Not Used |
8 | Not Used |
9 | Not Used |
クリーニング
センサーヘッドNS170Cの筐体をクリーニングする際は、湿らせた柔らかいクロスを使用してください。センサNS170Cのガラス製センサーカバーは、イソプロパノールなどの適切な溶剤でクリーニングすることができます。
校正
センサは過度の光パワーに曝されない限り1年以上は安定しているため、その間は校正データも使用可能です。精度と性能を維持するために定期的な再校正をお勧めします。校正頻度は用途にもよりますが、通常1年程度です。詳細は当社までお問い合わせください。
下のグラフの詳細については「動作」タブをご参照ください。
生データはこちらからダウンロードいただけます。
β-BBO結晶の下にある光学フィルタで近赤外(NIR)光が除去され、可視(VIS)の第2高調波光のみがフィルタを透過してシリコン(Si)フォトダイオードに到達します。青い網掛け部分は、入射レーザ光に対する動作波長範囲(780~1300 nm)と、変換されたSHG光に対する動作波長範囲(390~650 nm)を示しています。
生データはこちらからダウンロードいただけます。
パワーセンサNS170CからのSHG信号を正規化し、顕微鏡対物レンズの焦点位置の関数として表示したグラフ。データはNA=0.5の対物レンズを使用して取得しました。青い網掛け部分は、十分なSHG変換を得るうえで集光しなければならない位置、すなわちβ-BBO結晶の厚さ30 μmの部分を示しています。
生データはこちらからダウンロードいただけます。
パワーセンサNS170CからのSHG信号を正規化し、群遅延分散(GDD)の関数として表示したグラフ。データは中心波長800 nm、パルス幅100 fsに設定した可変Ti:サファイアレーザを用いて取得し、分散はパルスコンプレッサFSPCを使用して調整しました。
生データはこちらからダウンロードいただけます。
変換されたSHG信号のパワーを顕微鏡対物レンズのNAの関数として表示したグラフ。対物レンズを透過する平均レーザ光パワーは100 mWで、これは各測定を通じて一定に維持されています。 バルクのβ-BBO結晶の空間周波数許容帯域幅は、NA0.25とほぼ等しくなります。NAが0.25よりも非常に大きい対物レンズでは、生成されるSHG信号が小さくなります。
生データは<こちらからダウンロードいただけます。
変換されたSHG信号を入射レーザ光の平均パワーの関数として表示したグラフ。データは中心波長950 nm、パルス幅56 fsのレーザ光を入射して取得しました。
顕微鏡スライド型ピークパワーセンサNS170Cの光学系。極薄のβ-BBO結晶を使用してフェムト秒近赤外(NIR)パルスレーザの光を可視(VIS)の第2高調波に変換しています。ショートパスフィルタで残留近赤外光が反射され、可視の第2高調波のみがフィルタを透過してシリコン(Si)フォトダイオードセンサに到達します。
非線形結晶が取り付けられたシリコン(Si)フォトダイオードセンサ
当社の顕微鏡スライド型ピークパワーセンサは、2光子レーザのピークパワーの相対測定用として設計されています。右図のように、センサには30 µmの極薄のβ-BBO結晶が取り付けられており、そこで入射する近赤外のフェムト秒パルス(780~1300 nm)を第2高調波(390~650 nm)に変換します。β-BBO結晶の下にあるショートパスフィルタで残留近赤外光が反射され、可視の第2高調波のみがフィルタを透過して大きな面積のシリコン(Si)フォトダイオードセンサに到達します(「グラフ」タブ参照)。
顕微鏡対物レンズは、Ø4.5 mmの入射開口部を通して近赤外のフェムト秒パルスをβ-BBO結晶に集光させています。SHGのプロセスでは高いピーク強度を必要とするため、このセンサでは極薄のβ-BBO結晶が対物レンズの焦点にある場合にのみ、検出可能な第2高調波光が生成されます。これは、センサNS170Cが平均パワーではなく、集光されたフェムト秒パルスのピークパワー密度に敏感であることを意味します。したがって、検出されたSHG信号はレーザのピーク強度の相対測定値として使用できます。β-BBO結晶を使用した第2高調波光の発生についての詳細は、「SHGチュートリアル」タブをご覧ください。
センサNS170Cの筐体上部は標準的な厚さ170 µmのカバーガラスで密閉されているため、ドライ、水浸および油浸用の各対物レンズと組み合わせてご使用いただくことができます。液浸媒体をカバーガラスの表面に直接置くことができ、それによってセンサに損傷を与えることはありません。カバーガラス上部からβ-BBO結晶までの作動距離は0.22 mmです。カバーガラスとβ-BBO結晶との間には80 μmのエアギャップがあります。これは、エポキシまたは屈折率マッチングジェルが高強度のフェムト秒パルスの焦点で燃えることがあるため必要とされるものです。高NA対物レンズを使用したとき、このエアギャップは高い空間周波数で全反射(TIR)が発生する原因にもなります。一方、β-BBO結晶の第2高調波プロセスにおいて許容される空間周波数帯域幅は有限で、高NA対物レンズではこれを超えてしまいます。 したがって、TIRによって除去される高い空間周波数成分は、SHGプロセスに大きく寄与することはありません。
センサNS170Cの筐体寸法は顕微鏡スライドと同じであり、標準的な顕微鏡用ステージに適合します。そのため、顕微鏡の焦点におけるピークパワーの相対測定をすることができます(詳細は「用途」タブ参照)。
動作
センサNS170Cを使用してSHGの効率を高めるためには、いくつかの実験パラメータを考慮する必要があります。それらについて以下で簡単にご説明します。非線形光学と第2高調波光発生の詳細については、「SHGチュートリアル」タブをご覧ください。
- ピークパワー:下の数式に示すように、入射する基本波レーザ光のピークパワーは、平均パワー、繰返し周波数、およびパルス幅に依存し、SHG変換効率に影響を与えます(下の図1参照)。
- 焦点位置:第2高調波光を発生するには、効率的に変換するために高いピーク強度が必要であるため、一般に入射レーザ光をSHG結晶内で集光させる必要があります。結晶の厚さが決まると、それに対して推奨される集光スポットサイズも決まります。センサNS170Cに使用されている30 μmの極薄のβ-BBO結晶に対しては、結晶内で入射レーザ光を強く集光するために顕微鏡対物レンズが必要になります。SHGプロセスの効率は、基本波の入射ビームが焦点から広がるのに伴って大きく低下しますが、これはパルスエネルギーが大きなビーム断面積内に分散されるためです(図2参照)。さらに、β-BBO結晶の厚さは30 μmであるため、最適な縦方向の集光位置は深さ30 μm以下になります。そのため、焦点位置を調整しながら第2高調波光をパワーメータの読みで観察しようとすると、短時間の「フラッシュ」として観察されます。したがって、焦点調整はゆっくりと行う必要があります。
- 開口数:センサNS170Cに使用されているβ-BBO結晶のバルクの空間周波数許容帯域幅は、NA0.2とほぼ等しくなります。開口数が0.2よりも非常に大きい対物レンズを使用すると、生成されるSHG信号が減少し、SHGパワーの読み出し値も小さくなります(下の図3参照)。NAの大きな対物レンズを用いることで信号が低減しても、イメージング性能を最大化するためにシステムを最適化するうえで、それらのデバイスの有用性を低下させているわけではありません。これは注意しておくべき重要な点です。この非直観的な性質は、巨視的なバルク結晶におけるSHG発生を考えることの限界を示すものであり、高NA対物レンズを使用することで微細なターゲットでの2光子吸収や第2および第3高調波の発生が少なくなることを示すものではありません。
- 群遅延分散: β-BBO結晶は、フェムト秒のパルス幅を有する短パルスレーザ光から第2高調波光を生成します。入射したパルス光が光学素子を伝搬するとき、群遅延分散(GDD)によってパルス幅が広がり、それに伴ってパルスのピークパワーが低下します。 このシステムのGDDを補償するためにフェムト秒パルスコンプレッサを使用し、パルス幅を可能な限り狭くします(下の図4参照)。パルスがすべての光学素子を伝搬した後にGDDを最適化し、試料に到達したときに最高のピークパワーとピーク強度が得られるようにするのが理想です。センサNS170Cにはカバーガラスが取り付けられており、その作動距離は0.22 mmです。従ってこのセンサは、SHGの出力信号をモニタしながらGDDを調整するだけで、試料面でのGDDの最適化を行うことができます。
- 位相整合: SHGプロセスは、入射する近赤外(NIR)パルスレーザ光の直線偏光の向きに敏感です。この光の偏光方向とβ-BBO結晶の光学軸の間の角度は、センサNS170Cの筐体上のローレット付き位相調整用ホイールを使用して調整できます。この調整でSHG信号を10倍ほど増大することができ、信号対雑音比(S/N)も増大します。ホイールは、角度インジケータの向きがレーザの偏光方向と平行になるように調整してください。偏光状態が不明な場合は、SHG信号をモニタしながらホイールを調整し、信号が最大になるようにすることでも調整できます。
- センサの向き:入射光に対するセンサのピッチ、ロール、およびヨーの角度が「度(°)」で表される程度の大きさでずれている場合、センサの応答形状も変化する可能性があります 一般的な実験条件では、センサの向きを手で調整してSHG信号レベルを最適化することができますが、システムの長期的な性能データを確立したり、包括的な最大SHGの読み取り値を取得したりするためには、最適化の手順が必要ですのでご留意ください。そのため、センサNS170Cを取り付ける際は、センサの向きの一貫性を確保するために水準器を使用することをお勧めします。特異なパルスを最適化する場合は、ピッチおよびロールの最適化にそれほど注意する必要はありません。パワーメータでのSHG信号を介したピークパワーの読み取りは、最適な方向でなくても適切に応答するためです。
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図1:変換されたSHG信号を入射レーザ光の平均パワーの関数として表示したグラフ。データは中心波長950 nm、パルス幅56 fsのレーザ光を入射して取得しました。
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図2:パワーセンサNS170CからのSHG信号を正規化し、顕微鏡対物レンズの焦点位置の関数として表示したグラフ。データはNA=0.5の対物レンズを使用して取得しました。青い網掛け部分は、十分なSHG変換を得るうえで集光しなければならない位置、すなわちβ-BBO結晶の厚さ30 μmの部分を示しています。
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図3:変換されたSHG信号のパワーを顕微鏡対物レンズのNAの関数として表示したグラフ。対物レンズを透過する平均レーザ光パワーは100 mWで、これは各測定を通じて一定に維持されています。バルクのβ-BBO結晶の空間周波数許容帯域幅は、NA0.25とほぼ等しくなります。NAが0.25よりも非常に大きい対物レンズでは、生成されるSHG信号が小さくなります。
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図4:パワーセンサNS170CからのSHG信号を正規化し、群遅延分散(GDD)の関数として表示したグラフ。データは中心波長800 nm、パルス幅100 fsに設定した波長可変Ti:サファイアレーザTIBERIUSを用いて取得し、分散はパルスコンプレッサFSPCを使用して調整しました。
パラメータと定数 | |
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Aeff | 有効焦点面積 |
c | 真空中の光速度 |
deff | SHGプロセスを媒介するχ2テンソル項 |
Δk | 位相整合パラメータ |
ε0 | 真空誘電率 |
E | パルスのエネルギー |
frep | 繰返し周波数 |
L | 非線形結晶の長さ |
n1 | 基本波レーザ光の屈折率 |
n2 | SHG光の屈折率 |
ηSHG | SHG効率 |
Pavg | 基本波レーザ光の平均パワー |
Ppeak | パルス光のピークパワー |
PSHG | SHG信号のパワー |
τ | パルス幅 |
ω1 | 基本波レーザ光の角周波数 |
動作原理
以下では、パワーセンサNS170Cから出力されるSHG信号から、基本波レーザ光のピークパワーの相対値を導出する方法を示しています。非線形光学と第2高調波光発生の詳細については、「SHGチュートリアル」タブをご覧ください。変換されたSHG信号のパワーは、次の式で表されます。
ここで、ηSHGはSHG効率、Pavgは基本波レーザ光の平均パワーです。平面波モデルを使用し、単純なガウシアンパルスの強度プロファイル*を仮定すると、入射光強度に対するSHG効率は次のように表されます。
各パラメータについては右の一覧表をご覧ください。式(2)から次のような関係が得られます。
ここで、Ppeakは基本波レーザ光のピークパワー、Aeffは非線形結晶内に集光されたレーザースポットの有効焦点面積です。式(3)を式(1)に代入すると、変換されたSHG信号のパワーを次式で表すことができます。
したがって、変換されたSHG信号のパワーは、基本波レーザ光のピークパワーに依存します。一方、ピークパワーは次の式で与えられます。
ここで、Eはパルスのエネルギー(defined by E = Pavg /frepで定義)、frepは繰返し周波数、τは基本波レーザ光のパルス幅です。式(5)を式(4)に代入すると、変換されたSHG信号のパワーは次のように表せます。
したがって、出力されるSHG信号のパワーは、基本波レーザ光の平均パワー、繰返し周波数、パルス幅、およびSHGに使用される非線形結晶内での焦点のスポットサイズに依存します。
*A. Yariv and P. Yeh, Optical Waves in Crystals, New York: John Wiley & Sons, 2002, pp. 516-530.
主な用途例
顕微鏡スライド型ピークパワーセンサNS170Cは、β-BBO結晶を用いてパルスレーザ光をその第2高調波に変換することで、顕微鏡の焦点において2光子レーザのピークパワーを相対測定することができます。SHGの効率は近赤外(NIR)フェムト秒パルスのピークパワーに比例するため、検出された第2高調波光の大きさからパルスに対する定量的なフィードバックを行い、さらに実験システムの最適化を行うことができます。以下ではセンサNS170Cの一般的な用途例を3つご紹介します。
例1: 顕微鏡の焦点でのパルス幅の最適化
多光子顕微鏡では、超短パルスのレーザ光が顕微鏡内の光学素子を伝播するときに、パルス幅が群遅延分散(GDD)によって広がり、それに伴って画像のコントラストが低下します。フェムト秒パルスコンプレッサは、顕微鏡内で生じたレーザーパルスの群遅延分散を補償し、試料に到達するパルスの幅をできるだけ短くします。センサNS170Cは顕微鏡スライドと寸法が同じであるため、ほとんどの正立および倒立顕微鏡のステージに対応します。そのため、SHG信号の出力をモニタするだけで、レーザーパルスの群遅延分散を試料面の位置で直接最適化することができます。
右の動画では、センサNS170Cを使用して顕微鏡の焦点でフェムト秒レーザのパルス幅を最適化する方法を説明しています。センサは多光子イメージング顕微鏡Bergamo® に取り付けられ、光パワーメーターコンソールPM400に接続されています。これで波長可変Ti:サファイアレーザからのフェムト秒パルスで生成された第2高調波信号を測定します。フェムト秒パルスコンプレッサFSPCは群遅延分散の調整に使用します。顕微鏡の焦点でのパルス幅は、以下の方法で最適化できます。
- パワーメータでSHG信号をモニタしながら、対物レンズの位置を調整して顕微鏡の焦点を見つけます。SHG信号が最大になったとき、対物レンズの位置は最適化されています。コンポーネントが損傷する可能性を最小化するために、まずセンサを焦点よりも下側に設置し、ビームがβ-BBO結晶に集光されるまで対物レンズをゆっくりと下げて(あるいはセンサを上げて)いくことをお勧めします。β-BBO結晶の厚さは30 µmであるため、焦点位置の最適化中に生じるパワーの変化はSHG信号の短い「フラッシュ」として観察されます。対物レンズの位置を調整するときは、信号に現れるこの「フラッシュ」を見落とさないように、ゆっくりと行ってください。
- パワーメータでSHG信号をモニタしながら、センサNS170Cのホイールを調整して、β-BBO結晶の向きを合わせます。SHG信号が最大になったとき、結晶の向きは最適化されています。
- パワーメータでSHG信号をモニタしながらユニット側面のノブを回転させ、パルスコンプレッサFSPCによる群遅延分散の調整を行います。SHG信号が最大になったとき、パルス幅は最適化されています。
例2: 様々な測定におけるレーザ条件の一貫性確保
センサNS170Cを使用することで、常に一貫した実験条件を確保することができます。ただし、入射光に対するセンサのピッチ、ロール、ヨーが"度(°)"のレベルで変化すると、センサの応答形状も変化する可能性があります(詳細は「仕様」タブ参照)。一般的な実験条件では、センサの向きを手で調整してSHG信号レベルを最適化することができます。しかし、システムの長期的な性能データを確立したり、包括的な最大SHGの読み取り値を取得したりするためには、最適化の手順が必要ですのでご留意ください。そのため、センサNS170Cを取り付ける際は、センサの向きの一貫性を確保するために水準器を使用することをお勧めします。特異なパルスを最適化する場合は、ピッチおよびロールの最適化にそれほど注意する必要はありません。パワーメータでのSHG信号を介したピークパワーの読み取りは、最適な方向でなくても適切に応答するためです。
例3:フェムト秒レーザのパルス品質の迅速な評価
様々な実験条件下におけるセンサNS170Cの典型的な性能を知ることは、出力されるSHG信号を評価する際の有用な情報を得ることになります。センサNS170Cを用いて測定されたSHG信号とその実験で期待された性能とを比較することで、周波数分解光ゲート法(FROG)によって得られるフェムト秒レーザのパルス品質に関するフィードバック情報を、迅速かつ明確に提供することができます。例えば、フェムト秒レーザが誤ってピコ秒パルスを発生した場合、SHGパワーが予想よりも桁違いに低くなります。システム性能を測定するためにセンサNS170Cを使用する場合のセンサの向きの重要性については、上の例2をご覧ください。
第2高調波発生と位相整合
β-BBO結晶によって発生する第2高調波の強度とビーム品質を最適化するには、入射するパルスレーザのパルス持続時間(パルス幅)に適した結晶の厚さを選択し、集光スポットサイズを焦点領域における得失のバランスを考慮して決定し、位相整合を最適化する必要があります。これらについては、「仕様」タブ内のグラフに簡潔な説明が記載されています。グラフ化されたデータを解釈したり、第2高調波光を生成するうえで結晶をより効果的に使用したりするのに役立つ情報や背景については、以下の各セクションを展開してご覧ください。
質問をクリックするとそのセクションが展開して説明が表示されます。元に戻すにはもう一度クリックしてください。各質問に対する回答では、前のセクションでの説明を参照しています。
非線形光学とは?
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図1:ビーム光が線形媒体内を伝搬するときは、位相を積算しながら強度が減衰しますが、ビーム内の光子間に相互作用はありません。そのため、入射光の電界(Ein)と出射光の電界(Eout)は同じ周波数(ω)を有し、その強度は正比例します。
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図2:この非線形光学媒体への入射光は図1と同じですが、媒体内部で第2高調波が発生します。この非線形媒体の出射光には、図1に示す基本周波数の光のほかに、周波数が2倍の第2高調波の光も含まれており、その電界強度Eout(2ω)は入射光の電界強度の2乗に比例します。
非線形光学効果とは、光が物質内を伝搬するときに、その物質の性質を変化させることで発生するさまざまな非線形現象を指します。非線形 と呼ばれるのは、物質の応答の大きさが光の電界強度の2乗、3乗、あるいはさらに高次のべき乗に比例するためです。測定可能な非線形応答を得るには、一般に強い光強度が必要とされるため、多くの場合は十分な非線形効果を得るためにレーザ光が使用されます。
物質内では、光の電界強度に比例する線形応答に加えて、非線形応答も発生します。光学系と物質が非線形現象を生成するのに適した条件にない場合は、光と物質は通常の線形相互作用をします。その場合、物質内の光波は、同じビームまたは同じパルスの一部であるかどうかにかかわらず、互いに影響を与えることなく共に伝搬します。
光に対する物質の線形応答の例を図1に示します。ここで、入射ビームの特性は電界強度(Ein)、周波数(ω)、偏光方向(垂直)で表されています。ビームは出射するまでに位相を積算するとともに、反射や物質による吸収などによって損失を受けますが、それ以外の点では影響を受けません。物質から出射する光の電界強度(Eout)は、入射ビームの強度に正比例します。さらに、入射光と出射光の周波数と偏光方向は同じです。
非線形過程は、独立した光波が物質を介して相互作用できる条件を満たしたときに発生します。物質を介した光の相互作用として、同じビームまたはパルスの光波が相互作用することもあれば、著しく異なる周波数や偏光を有する光波が相互作用することもあります。非線形現象には、新しい光周波数の発生、均一な物質内を伝搬するレーザ光のレンズ効果、変調効果などがあります。新たに周波数が生成される場合は、非線形物質からの出射光に、入射ビームに含まれる如何なる周波数とも異なる周波数が含まれることになります。
図2は、光が非線形光学材料に入射し、非線形効果によって別の周波数が発生する例を示しています。入射光は図1と同じですが、この材料は第2高調波を発生することができます。結晶から出射する光には、入射ビームの2倍の周波数を有する、新しい色の光が含まれています。この2倍の周波数の光の強度は、入射光の電界強度の2乗に比例します。入射光の基本周波数を有する2つのビームから失われたエネルギー(反射や吸収などの一般的な原因による損失は除く)は、2倍の周波数に変換された光に含まれることになります。
第2高調波発生(SHG)とは?
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図3:このエネルギー図では、左側に入射した光子、右側に発生した光子を示しています。第2高調波発生では、出射する周波数(2ω)は入射光子の周波数(ω)のちょうど2倍になります。
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図4:この非線形光学媒体では、入射光は図1と同じですが第2高調波を発生します。出射光には図1と同様に基本周波数の光が含まれますが、それに加えて周波数が2倍の光(倍波)も含まれており、その電界強度Eout(2ω)は入射光の電界強度の2乗に比例します。SHGの発生効率は、入射光強度の2乗に物質のパラメータχ(2)を乗じた値に比例します。
第2高調波発生(SHG)は、同じ周波数の2つの光子のエネルギーが、物質を介して1つの光子に変換される非線形光学現象です。この非線形過程は、光とその周囲の物質との相互作用によって生じます。入射光が単一周波数の場合、その周波数(ω)は基本周波数と呼ばれます。発生した光子の周波数(2ω)は基本周波数の正確な2倍になります。この出射光は入射光の第2高調波(second harmonic)と呼ばれます。これがSHGの名前の由来です。
SHGが発生するには、入射光子の周波数が全て正確に同じであることを必要としているかのようですが、そうではありません。一般に、ビームまたはパルスの入射光の周波数には幅があり、基本周波数近傍のスペクトル域内の周波数を有する光子も存在します。このスペクトル域内の光子であれば、周波数が2倍の光を発生することが可能です。このような場合でも、その非線形現象はやはりSHGと呼ばれ、出射する光子の周波数は2倍であるとして記述されます。このことは、広帯域幅のフェムト秒パルスの入射光にも当てはまります。ただし、この後でのSHGについての説明を簡潔にするために、すべての入射光子が同じ基本周波数を有するものと仮定しておきます。
すべての光子は、その周波数に比例するエネルギーを持っています。図4に示すエネルギー図では、この性質を利用して非線形光学過程における入射光子と出射光子の関係を示しています。それぞれの矢印は単一光子のエネルギーを表し、その光子の周波数が横に記載されています。上向きの矢印は入射光子、下向きの矢印は生成された光子を表しています。水平の点線は通常、一般に仮想エネルギーレベルと呼ばれ、物質のエネルギーレベルとは関係がありません。
このエネルギー図は、第2高調波発生のような非線形過程ではエネルギーの損失は生じず、従って物質がエネルギーを獲得したり損失したりはしないという注目すべき事実を示しています。物質は非線形過程が発生するために必要な環境を提供し、また光子との間に相互作用はありますが、この過程で物質によるエネルギーの吸収や放出はありません。これが、2つの入射光子の合計エネルギーと、SHGで生成された出射光子のエネルギーとが正確に等しくなる理由です。
光が物質内を伝搬するときに、すべての入射光子が第2高調波発生に寄与するわけではありません。図3に示すように、第2高調波発生の効率は、入射光強度の2乗に物質固有のパラメータ(χ(2)、「カイ ツー」と読みます)を乗じた値に比例します。通常、χ(2)の値は非常に小さいため(10-13 m/V程度)、第2高調波発生を効率的に行うには大きな入射光強度(Io)が必要です。入射光強度が増大したとき、2倍の周波数の光(I2ω)の強度の増大率は、基本周波数の出射光(Iω)の増大率よりも大きくなります。
SHGは和周波発生の特殊なケース
和周波発生(SFG)は、入射した2つのビームまたはパルスの光子が物質を介して変換され、2つの入射光の周波数の和に等しい周波数の出射光が生成される非線形光学現象です。2つの入射光子の間の最大周波数差には制限がありません。SFGという用語は、一般に複数の異なる光源からの光を入射した場合や、入射するビームやパルスのスペクトル域が重ならない場合に使用されます。
第2高調波発生はSFGの特殊なケースと言えます。非線形光学現象のなかで、2つの入射光子が同じビームまたはパルスに属し、かつ入射光の周波数を2倍にする場合にSHGと呼ばれます。SHGは同じエネルギーを有する入射光子によって生じるため、第2高調波発生はSFGの縮退したケースになります。
すべての結晶はSHGに使用できるか?
非ゼロのχ(2)パラメータを持つ光学材料だけしかSHGに使用できませんが、すべての結晶がこの要件を満たしているわけではありません。SHGに使用できる結晶の例としてはβ-BBOが挙げられます。原子、イオン、または分子の繰り返しパターンで構成されている物質は結晶と呼ばれます。結晶のパターンが対称になる中心点がない場合(すなわち、結晶が中心対称性を有しない場合)、結晶は非ゼロのχ(2)パラメータを有し、SHGに使用できます。
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図6:光の振動電場が物質と相互作用すると、物質内の電子にはポテンシャルエネルギーが誘起されます。物質が中心対称性を有する場合、そのポテンシャルエネルギーは電子の平衡位置からの変位(x)の関数として表され、xの偶数乗の項からなる多項式で表されます。
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図5:この立方晶構造は、AとBの2種類の異なるイオンの繰り返しパターンで構成されています。この結晶構造は、点(x、y、z)と点(-x、-y、-z)における構造が一致しているため、中心対称性を有します。
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図8:光の振動電場が非中心対称の物質と相互作用するときは、電子に誘起されるポテンシャルエネルギーを電子の平衡位置からの変位(x)の関数として表すと、大きな変位では非対称になります。この曲線は、xの偶数乗の項と奇数乗の項で構成される多項式によって表されます。
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図7:このウルツ鉱型の結晶構造は、AとBの異なる2種類のイオンの繰り返しパターンで構成されています。この結晶構造は中心対称性を有しないため、点(u、v、w)と点(-u、-v、-w)とで構造が一致しない点が少なくとも1組あります。
中心対称結晶
中心対称結晶の繰返し結晶パターンの一例を図5に示します。すべての中心対称結晶に当てはまることですが、点(x、y、z)と点(-x、-y、-z)の構造が一致しています。この結晶構造の対称性により、入射光の電場ベクトルの向きを反転させても、物質の応答は同じです。
光に対する物質の応答は、光の振動電場と物質内の電子との相互作用によって生じます。物質内の原子に束縛された電子は、その原子と光の電場、および物質内の周囲の原子から力を受けます。図6の青い曲線は、それらの力を考慮し、原子の古典力学的アプローチであるローレンツモデルを使用して計算したものです。このモデルはχ(2)パラメータの推定にも使用できます。
図6におけるX軸は電子の位置を表し、平衡状態にある電子の位置はx = 0です。入射光の振動電場は、電子を正の変位と負の変位の間で往復させます。電場の強度が大きいほど、電子の変位は大きくなります。中心の原子と周囲の原子は、変位した電子に復元力を与え、平衡状態に戻そうとします。この復元力は電子にポテンシャルエネルギーを与えます。このエネルギーはY座標の値で示され、電子が平衡状態から離れるほど増加します。
中程度の変位までは、大部分の復元力は中心原子により与えられ、それに伴う電子のポテンシャルエネルギーは対称な放物線に近い形になります(灰色の点線は放物線でフィットしたものです)。光の強度が大きくなると電子の変位も大きくなり、電子の復元力やポテンシャルエネルギーに対する周囲の原子からの寄与が大きくなります。そのような大きな変位でも、電子のポテンシャルエネルギーは放物線から逸脱しますが、対称性は維持されます。
物質の応答が対称であるのは、結晶が中心対称の構造を有するためです。SHGを発生させるには、この曲線を非対称にする必要があります。数学的には、非ゼロのχ(2)パラメータを得るには、曲線を記述する多項式に xの奇数乗の項が含まれることが必要です。しかし、図6の曲線を記述する多項式にはxの偶数乗の項しか含まれません。
非中心対称結晶
図7に非中心対称結晶の一例を示します。このような物質の場合、位置(u、v、w)と位置(-u、-v、-w)とで結晶構造が異なる点が、常に少なくとも1組は存在します。
この場合の電子のポテンシャルエネルギーを、非中心対称物質に対して原子のローレンツモデルを適用して計算し、平衡位置からの変位の関数として示しています(図8)。入射光の強度が小さい場合、電子の平衡位置からの変位は小さく、大部分の復元力は中心原子によって与えられます。この限られた範囲内では、電子のポテンシャルエネルギーは放物線に近い対称な関数で表され、これは線形光学材料の応答に対応します。照射する光の強度を徐々に強くしていくと、電子の変位は大きくなり、復元力に対する周囲の原子からの寄与が大きくなります。このとき周囲の原子の分布は対称ではないため、そのような大きな変位に対しては、復元力もポテンシャルエネルギーの井戸も非対称になります。
この非対称曲線をモデル化した多項式には、xの偶数乗の項だけでなく奇数乗の項も含まれます。非ゼロのχ(2)パラメータは、この多項式の非ゼロの3次(x3)項から得られます。x3項は線形光学モデルに対する最低次の補正であるため、χ(2)パラメータによって定量化される2次の非線形性を生成するには、多項式項に3次の項が必要です。非対称の応答は電子の変位が大きい場合にのみ顕著になるため、SHGを誘起するには高強度の光が必要です。
一軸性結晶
第2高調波光を効率的に生成するための2つ目の要件は、いわゆる位相整合条件です(下のセクションで詳しく説明します)。大まかにいえば、位相整合とは入射した基本周波数の光と第2高調波の光の間の位相速度を整合させることです。これは、しばしば光学異方性材料の複屈折を利用することで実現されます。
一軸性結晶は特殊なタイプの異方性材料で、3つの主屈折率のうち2つが同じになります。「一軸性」という名前は、これらの結晶内に光学軸またはc軸と呼ばれる単一の伝搬軸が存在することに由来しており、その軸上での屈折率はすべての偏光方向の光に対して同じになります。方解石、石英、サファイア、β-BBOなど、多くの一般的な光学材料が一軸性の結晶クラスに属します。
参考文献:
Robert W. Boyd,Nonlinear Optics(Academic Press, New York, 1992) pp. 17 - 52.
結晶の屈折率は結晶内での光の偏光方向に依存するか?
屈折率が光の偏光方向に依存する物質が存在します。例としては、β-BBOのような一軸性結晶を含む複屈折材料があります。一軸性結晶の特徴として、常光屈折率(no)と異常光屈折率(ne)と呼ばれる2つの主屈折率があります。主屈折率は、その材料が示す屈折率の最大値と最小値になります。光の電場(E)は伝搬方向(k)に対して常に垂直方向を向いているため、光の各偏光成分にとっての屈折率を決定するには、伝搬方向と偏光状態の両方を知る必要があります。
結晶の光学軸(c)方向をZ軸としたデカルト座標系を使用すると、光の偏光成分(Ex、Ey、およびEz)を複屈折結晶の幾何学と関連付けることができます。
一軸性結晶では、結晶の光学軸(c)に対する伝搬方向と偏光方向の角度を知ることで屈折率を求められます。
結晶は一軸性であるため、結晶の光学軸に対して電場が垂直方向を向いた光の屈折率はnoになります。結晶の光学軸に対して電場が平行な光の場合は、屈折率はneになります。一軸性結晶では、結晶の光学軸に対して垂直な2つの偏光成分(Ex、Ey)の屈折率は共にnoになります。結晶の光学軸に平行な偏光成分(Ez)の屈折率はneになります。
複屈折材料の屈折率がnoとneの間の値になることもありますが、それについては次のセクションで説明します。
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図9:左側の図は、入射光の伝搬方向(k)が結晶の光学軸(c)の方向を向いていることを示しています。入射光は、互いに垂直な偏光成分であるExとEyに分解できます。右側の図は屈折率楕円体であり、XY平面に断面(赤い円)が示してあります。この半径が一定の円は、屈折率が常にnoであり、結晶は光の偏光に影響を与えないことを示しています。
光学軸に対して平行に伝搬する光
(例:光学ウィンドウ)
複屈折材料の光学軸(Z軸)に沿って伝搬する光の屈折率は、常にnoになります。これは光学軸を決定づける特性です。
図9の左側の図は、結晶の光学軸に沿って伝搬する光の電場成分を示しています。この偏光状態では、成分としてExとEyの両方が含まれる可能性がありますが、Ezは含まれません。これは、電場ベクトルはZ軸に直交しており、従ってその角度θは90°であると表現することもできます。ExとEyの比は角度αに依存します。
図9の右側の図では、楕円体(いわゆる屈折率楕円体)を用いて、光の伝搬方向と偏光方向のすべての組み合わせに対して、この材料で得られる屈折率をマッピングしています。この材料の場合、最大屈折率はneで、最小屈折率はnoです。他の材料では逆の場合があります。楕円体上に描かれた赤い円は、光学軸に沿って伝搬する光にとっての屈折率を表す断面です。Ex成分とEy成分の屈折率は、共にnoになります。このため、XY平面内のEベクトルの方向に関係なく、Eの屈折率はnoになります。したがって、Ex成分とEy成分は同じ位相速度で移動するため、光が伝搬するときにその偏光状態は変化しません。
サファイアなどの一軸性結晶で作られた光学ウィンドウ(例えば、製品番号WG31050)は、一般に垂直入射された光が光学軸に平行に伝搬するように切断または研磨されます。これは、上記のように、ウィンドウが透過光の偏光状態に影響を与えないようにするためです。このように端面が光学軸に対して直交している場合、その結晶はしばしばZカットやCカットと呼ばれます。
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図10:左側の図は入射光の伝搬方向(k)と偏光方向 (E)を示しており、これらは直交成分ExおよびEzに分解できます。伝搬方向はY軸に合わせてあり、結晶の光学軸(c)に対して垂直(θ = 90°)になっています。右側の図は屈折率楕円体で、XZおよびXY平面に断面(赤い楕円)が描かれています。異常光成分(Ee = Ez)の屈折率(ne)はZ軸と楕円の交点で示され、常光成分(Eo = Ex)の屈折率(no)はX軸と楕円の交点で示されています。角度φから2つの成分の大きさの比が求められます。
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図11:左側の図に示す入射光の伝搬方向(k)は、結晶の光学軸(c)に直交(θ = 90°) するY軸に一致しています。φは0°であるため、偏光成分はEzだけになり、これは異常光成分でもあります。右側の図は、この成分の屈折率がneであることを示しています。
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図12:左側の図に示す入射光の伝搬方向(k)は、結晶の光学軸(c)に直交(θ = 90°) するY軸に一致しています。φは0°であるため、偏光成分はExだけになり、これは常光成分でもあります。右側の図は、この成分の屈折率がnoであることを示しています。
光学軸に対して垂直に伝搬する光
(例:波長板)
複屈折材料に入射する直線偏光が光学軸に対して直交する方向(θ = 90°)に伝搬する場合、光には光学軸(Z軸)に対して平行な偏光と垂直な偏光の両方の成分が含まれる場合があります。これを図10に示していますが、光の伝搬方向は便宜上Y軸に合わせています。光学軸に対して平行な電場成分(Ez)の屈折率はneになり、光学軸に対して垂直な成分(Ex)の屈折率はnoになります。この材料内では、これが2つの偏光成分間に生じる最大の屈折率差です。
図10の右側の図に示す垂直の赤い円は屈折率楕円体の断面で、kベクトルに対して平行な平面です。水平の赤い楕円の断面は、直交する主偏光軸との屈折率の差を示しています。
2つの偏光成分は屈折率が異なるため、材料中を伝搬する速度が異なります。そのため、2つの偏光成分EzとExの間に位相シフトが生じます。
多くの波長板は一軸性の複屈折材料から作られており、研磨された光学素子は垂直に入射した光が光学軸に対して直交する方向に伝搬するように取り付けられています。製品番号WPQ05M-266のような波長板の筐体上のマークや、光学素子の外周のフラットな面によって常光軸と異常光軸の方向を識別できます。石英結晶製の一般的な波長板の場合は、これらの軸はそれぞれファスト軸、スロー軸と呼ばれます。
偏光方向がファスト軸に平行な光は、スロー軸に平行な光よりも屈折率が小さいため、材料内での速度が相対的に早くなります。一般的な波長板の材料である石英は、常光屈折率が異常光屈折率に比べて小さい正の一軸性結晶です。そのため、石英のファスト軸は常光軸になります。
波長板を調整するときは、光学軸に対して光の伝搬方向を垂直に保持しながら、光学素子をXZ平面内でY軸を中心に回転させる必要があります。この回転ではθ = 90°を維持した状態で角度φが変化します。
角度φが 0°と90°の間にある場合、直線偏光には直交するExおよびEzの両成分が含まれ、波長板によって一方の成分は他方の成分に対して遅延します。ただしθは変化しないため、方向と方向に沿った2つの直交する主偏光方向の屈折率は変化しないことにご注意ください。
φ = 0°の場合は、図11に示すように光の偏光方向は光学軸に沿っています。このときは常光成分を含まれず、異常光成分(Ez = Ee)だけになります。この成分の屈折率はneです。偏光成分が1つだけであるため、波長板は偏光状態に影響を与えません。
直線偏光の方向をX軸(φ = 90°)に合わせた場合も、図12に示すように偏光状態は影響を受けません。この場合は、異常光成分を含まない常光成分(Ex = Eo)のみの状態になり、屈折率はnoになります。
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図13:左側の図では、入射光の伝搬方向(k)と一軸性複屈折結晶の光学軸(c)は同一平面(XZ面)内にあります。kとcの間の角度(θ)は任意に設定できます。入射光(基本波)の電場は赤いベクトルで表されており、Y軸に対して平行です。SHG光は垂直方向に偏光しており、XZ平面内に緑のベクトルで示されています。SHG光の偏光はEx成分とEz成分には分解せず、通常は屈折率n'eの異常光(E'e)として記述されます。右側の図で、n'eはθに依存し、赤い楕円で示される断面とXZ平面との交点で表されます。
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図15:実験セットアップ内でのθとγの定義。
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図14:上の図では、入射光の伝搬方向(k)と一軸性複屈折結晶の光学軸(c)は同一平面(XZ面)内にあります。kとcの間の角度(θ)は任意に設定できます。ここでは、入射光(基本波)の電場(E)(赤いベクトル)が実験室の参照フレームから角度Yだけ回転しています。そのため、基本波の電場の一部(Eoγ)だけがSHGによって偏光E'eに変換されます(緑色のベクトル)。
任意の角度で伝搬する光
(例: 非線形結晶)
一軸性結晶を用いたType Iの第2高調波発生(SHG)では、偏光方向を図13のように設定します。kベクトルは光学軸から角度θに設定し、かつXZ平面内に置きます。入射光(基本波)の電場(Eo)は常光軸(この場合はY軸)に平行であり、屈折率はnoになります。常光軸方向(軸に対して平行)に偏光した光の屈折率は、θの変化の影響は受けません。
SHG光はXZ平面に偏光しており、Eoおよびkベクトルの両方に対して直交します。SHG光の偏光はEx成分とEz成分には分解せず、通常は異常光(E'e)として記述されます。この異常光の屈折率n'eはθの関数であり、 n'e(θ)は図13の式を用いて計算できます。異常光の屈折率をθの関数として決定する楕円は、屈折率楕円体の断面で与えられます。2つの極端なケースとしては、1)電場が常光軸の方向を向いて屈折率がnoとなるθ = 0°の場合と、2)電場が異常光軸の方向を向いて屈折率がneとなるθ = 90°の場合があります。(')の表記は、θがこの2つの極端なケースの間にあるときの屈折率であることを示します。
図14はType I SHGの理想的な偏光条件からずれている場合を示しています。ここでは、入射光(基本波)は直線偏光ですが、常光軸から角度γだけ回転しています。このとき、Type I SHGのプロセスに寄与している基本波の電場は、入射光の電場のEoγ成分です。γ = 90°ではSHGに寄与する電場はEoγ = 0となるため、SHG出力はゼロになります。
実際問題として、実験室の参照フレームで設定された光の偏光状態が結晶系固有の主軸と整合しない場合、γはゼロにはなりません。従って、例えば光学テーブル上のレーザの偏光を結晶のに平行にするなど、2つのフレームを整合させる必要があります。そのために、非線形結晶を回転ステージに取り付け、まず筐体のマークを用いて目視でγをゼロに調整します。次に、必要に応じて、SHG出力光のパワーをフィードバック用に使用します。図15は実験フレーム内で結晶を回転する場合のγの方向を示しています。この例では、非線形結晶は回転ステージRP01(/M)の上に取り付けられた回転マウントRSP1(/M)に保持されています。γとθを変更することで、光学軸の方向を調整します。この場合、γの調整は、光学軸を水平面に合わせ、かつ常光軸の1つに対して垂直にアライメントするのに使用されます。垂直に偏光した入射ビームの場合、この向きで回転ステージを用いてθを調整できます。
なぜSHGには位相整合(角度調整)が必要なのか?
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図17:Type I位相整合はβ-BBOのような負の1軸性結晶でご使用いただけます。この場合、周波数ωの基本波の偏光方向は、光の伝搬ベクトル(k)と結晶の光学軸(c)を含む平面に対して垂直である必要があります。第2高調波の偏光方向は、その平面に対して平行です。角度θを調整するときは、結晶をY軸中心に回転します。
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図16:位相整合しない場合、発生する第2高調波の強度I(2ω)は低い閾値以下のままです。位相整合すると、この強度は指数関数的に増大します。
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図19:異常光の屈折率(ne')は、結晶の光学軸と入射した常光の伝搬方向の間の角度(θ)を調整することで、neとnoの間で変化させることができます。角度23.37°で、1030 nmの基本波は515 nmのSHG光と位相整合します。
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図18:β-BBOの常光屈折率と異常光屈折率は、分散と呼ばれる材料特性により周波数(波長)によって変化します。分散は真空を除くすべての媒質に存在します。
Wave Type | Angle | Refractive Index |
---|---|---|
Ordinary | k ⊥ | no |
Extraordinary | θ = 0° | no |
0° < θ < 90° | ne'(θ ) | |
θ = 90° | ne |
位相整合することで、SHGの変換効率は大幅に向上します。位相整合をしなくても第2高調波を生成することはできますが、アプリケーション用として十分な強度の第2高調波(倍波)を得るには位相整合が必要です。SHG光(I2ω)の出力強度に対する位相整合の効果を図16に示します。位相整合していない場合、SHG光の強度は増加と減少を繰り返しますが、一般に強度は低いレベルに留まります。これに対して位相整合した場合は、SHG光の強度は物質内での伝搬距離に応じて指数関数的に増大します。位相整合は、基本周波数(ω)の光をSHG結晶に対して適切な方向から入射することで実現します(図17)。
理想的に位相整合しているときは、基本波(ω)と第2高調波(2ω)が同じ位相速度で伝搬するため、光路に沿って生成されるすべての第2高調波の光は強め合います。位相速度は、搬送波電場、すなわち正弦波が物質内を移動する速度です。光パルスの包絡線が物質中を移動する速度は群速度と呼ばれ、物質中を伝わる光パルスを包含するエネルギー波束の速度と定義されています。
2つの周波数の屈折率が同じ場合、位相速度は等しくなります。しかし、真空を除くすべての媒質には分散特性があるため、一般にはこれら2つの周波数の光の屈折率は等しくありません。これは、物質の屈折率が光の周波数に依存することを意味します。例として、可視(VIS)~赤外(IR)域の周波数範囲におけるβ-BBOの常光屈折率と異常光屈折率を図18に示します。この範囲では、周波数が高いほど屈折率は大きくなります。
位相整合を実現して、基本波と第2高調波の屈折率を等しくする方法は幾つかあります。その1つはType Iの臨界位相整合(critical phase matching)と呼ばれる方法で、直線偏光と、常光および異常光の屈折率の差を利用します。これはno > neの性質を有する負の1軸性結晶に対する一般的なアプローチです。
Type I位相整合
Type I位相整合における基本波の入射ビームと生成された第2高調波の出射ビームの方向を図17に示します。これはいわゆるoo-eと呼ばれる構成で、基本波の2つの光子の偏光方向は常光軸方向であり、第2高調波の光子の偏光方向は異常光の平面内にあります。
直線偏光の基本波は、結晶に対して常光として入射するようにアライメントされています。この光の偏光方向は常光屈折率の軸(Y軸)方向を向いており、光の伝搬ベクトル(k)と結晶の光学軸(c)を含む平面に対しては直交しています。第2高調波は異常光として生成され、その偏光方向は基本波の常光に対して直交しています。
Y軸を中心に結晶を回転させると、伝搬ベクトルと結晶の光学軸の間の角度 (θ)を調整できます。そうすることで、図19に示すように異常光の屈折率(n'e(θ))をneとnoの間で変化させることができます。ここで赤い曲線はn'e(90°) = neを表し、青い曲線はnoを表します。緑の曲線の位置はθに依存します。この図の場合は、515 nmの光の屈折率が1030 nmの光の屈折率と一致するように角度θを調整しています。この角度で、1030 nmの入射光を基本波としてSHG光を発生させるためのType I位相整合条件が最適化されています。
当社を含む一部のメーカーのSHG結晶は、特定の基本周波数の光を垂直入射したときに、ほぼ位相整合条件を満たします。これらのSHG結晶は、垂直入射光と光学軸との間の角度が、特定の周波数に対して位相整合角となるように結晶の面が研磨されています。この位相整合角は、Y軸を中心に結晶を回転させることで調整できます。通常、数度以下の調整で、セットアップ内の結晶の性能を最適化したり、結晶の動作範囲内の別の基本周波数に整合させたりすることができます。
上記以外の位相整合条件もございます。Type IIの臨界位相整合では、正および負の1軸性結晶に対してoe-oまたは eo-eの構成を使用します。非臨界位相整合(non-critical phase matching)では、角度ではなく結晶温度を調整して位相整合させます。擬似位相整合(quasi-phase matching)では、物質の位相不整合を打ち消すために、結晶材料の分極が周期的に上下反転するドメイン構造を形成します。その周期は結晶と相互作用する波長によって異なります。
なぜSHGではパルス幅の狭さが問題になるのか?
SHG結晶を選ぶ際は、レーザ光源のパルス幅を考慮する必要があります。パルス幅と結晶の厚さが整合していないと、理想的な条件下で得られるSHGパルスよりも持続時間が長くなり、スペクトルは狭くなります。
第2高調波発生(SHG)に超短パルスを使用する場合、パルスが短いほど帯域幅が広くなりますが、理想的な位相整合状態は1つの基本周波数(波長)に対してのみしか得られないという問題が生じます。このため、広帯域パルスのスペクトルの端部では、位相整合の品質が大幅に低下する可能性があります。もう一つの問題は、第2高調波と基本周波数のパルスの群速度が異なるため、2つのパルスが伝搬するときに一方のパルスがもう一方のパルスより遅れることです。これは時間的ウォークオフと呼ばれ、最適な位相整合条件下でも発生します。
広帯域パルスと時間的ウォークオフは、どちらも変換効率だけでなく第2高調波パルスの光学的な品質も低下させます。それらを最小限に抑えるには、結晶の厚さを適切に選ぶ必要があります。
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図20:左のグラフでは、基本波の入射光パルス(赤い実線)のスペクトル幅は、基準パルスのスペクトル幅(黒い破線)よりも狭くなっています。したがって、右のグラフに示す第2高調波パルスのスペクトルは、理想的な場合とほぼ同じスペクトル幅を有しています。基本波パルスのすべての周波数(スペクトル)成分が、同時に位相整合されることが理想です。
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図21:左のグラフでは、基本波の入射光パルス(赤い実線)のスペクトル幅は、基準パルスのスペクトル幅(黒い破線)よりも広くなっています。したがって、右のグラフに示す第2高調波パルスのスペクトル(青い曲線)は、理想的な場合よりもスペクトル幅が狭くなっています。基本波パルスのすべての周波数(スペクトル)成分が、同時に位相整合されることが理想です。
位相整合帯域幅の制限
「なぜSHGには位相整合(角度調整)が必要なのか?」のセクションで説明したように、光の伝搬方向と結晶の光学軸の間の角度を調整することで、入射光パルスの特定の基本周波数(ω)の屈折率がその2倍の周波数(2ω)の屈折率と正確に等しくなるようにできます。その際、パルスの帯域幅のほぼ中央の周波数に対して、位相整合条件を最適化するのが一般的です。β-BBOのような分散特性を有する結晶の屈折率は、周波数に対して線形的には変化しないため、入射光パルスのスペクトル範囲内のすべての周波数成分と、それぞれに対応して生成される第2高調波パルスの周波数成分との位相整合を、すべて最適化することは不可能です。
結晶の厚さを仮定すると、適切に位相整合可能な最大のスペクトル範囲を有する基準パルスを定義できます。このスペクトル帯域幅の制限は、通過帯域が結晶の特性とパルスの中心周波数の両方に依存する「SHGフィルタ」の考え方を用いて扱うこともできます。このフィルタの通過帯域外の周波数はSHGプロセスから除外されます。
入射光パルスのスペクトル範囲が基準パルスと同じかそれより狭い場合、生成される第2高調波パルスの持続時間は 1/√2倍になり、スペクトル幅は√2倍になります。基本波のスペクトルが基準パルスのスペクトル内に十分に収まる場合は、物理的にSHGパルスの強度プロファイルは基本波の強度プロファイルの2乗となり、持続時間は効果的に短縮されます。このことは図20に示されています。
入射光パルスのスペクトル範囲が基準パルスのスペクトル幅を超える場合(図21)、第2高調波パルスのスペクトル(青い曲線)は、入射光パルスのすべての周波数が位相整合している場合(灰色の曲線)よりも狭くなります。このスペクトル的に狭くなったSHGパルスのスペクトルは、アポダイズ(apodize)されていると言われます。その理由は、入射した基本波のパルス光が最大許容帯域幅を超えている場合、SHGパルスのスペクトルから高域側と低域側の周波数成分が除去されるためです。
SHG結晶の長さは、基準パルスのスペクトル幅、あるいは SHGフィルタの帯域幅に大きな影響を与えます。下の表に示すように、結晶が短くなると基準パルスのスペクトルは広くなります。この表では、基本波の中心波長を近赤外域(NIR)に想定しています。
β-BBO Crystal Length | Pulse Durationa |
---|---|
Less than One Millimeter | Less than 100 Femtoseconds |
Several Millimeters | Hundreds of Femtoseconds |
Tens of Millimeters | Picoseconds |
時間的ウォークオフ
光学媒体内の光の伝搬速度には、位相速度と群速度の2つが定義されています。位相速度は、電場の振動である搬送波の速度を表しています。位相整合させるためには、基本波周波数と第2高調波周波数の位相速度を整合させます。真空中の光の速度に対する物質中の位相速度の比は、その屈折率によって決定されます。
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図22:上の図は、中心周波数が異なる2つのパルスが物質に入射する様子を示しています。物質に入射するときのパルス間の群速度遅延はゼロです。下の4つのグラフは、パルスが物質中を伝搬するにつれて、群速度遅延(時間的ウォークオフ)が増加することを示しています。各グラフは距離Z0からZ3における時間的ウォークオフを表しています。
群速度はパルスの速度ですが、より正式には電場の包絡線の速度です。群指数も同様に真空中の光の速度に対する包絡線の速度の比を決定しますが、これは材料分散に依存します。群速度と位相速度は等しくありませんが、これは搬送波の正弦波とパルスの包路線が光媒体中を異なる速度で移動することを意味します。
基本波パルスと第2高調波パルスの群速度も、たとえ位相整合していても異なっています。これらの群速度の不一致の大きさは、結晶の特性とパルスの光周波数に依存します。場合によっては、不一致が小さい場合もあります。たとえば、β-BBO結晶を使用して1550 nmの光の周波数を2倍にして775 nmの光を得る場合、群速度の不一致は1ミリメートルあたりわずか数フェムト秒です。
しかし、多くの場合は、基本波と第2高調波のパルス速度の違いにより、一方のパルスが他方のパルスより大幅に遅れます。速いパルスに対する遅いパルスの時間的ウォークオフは、パルス持続時間に対して大きな割合になる場合があります。その様子を図22に示しています。
時間的ウォークオフは、時間的な遅れが基本波パルスの持続時間を超える場合に、しばしば深刻な問題になることが懸念されます。深刻なウォークオフによる時間的な遅れに伴い、出射される第2高調波パルスの持続時間が修復不可能なほどに増大してしまう可能性があります。このプロセスのダイナミクスは実験パラメータに大きく左右されるため、第2高調波パルスへの正確な影響を適切に予測することは困難です。これらの効果には、第2高調波が基本波に戻る逆変換や、SHGパルスのスペクトル狭窄化といった効果も含まれます。
結晶の厚さの選択
結晶の長さは、特定の入射光パルスのパラメータに対してSHGプロセスを最適化する際に考慮すべき重要なパラメータです。位相整合や時間的ウォークオフなどの問題が無ければ、SHGによる出射光は結晶の長さに応じて指数関数的に増大します。SHG結晶を選ぶ際は、結晶の長さと基本波パルスによって決定される制限とのバランスを取る必要があります。結晶の厚さを薄くすると、それに直接関係する位相整合帯域幅の制限と時間的ウォークオフの両方の影響が軽減されます。例えば、ある厚さの結晶内を伝搬する基本波パルスを考えてみます。時間的ウォークオフが基本波パルスの持続時間よりも大きい場合、このパルスのスペクトル帯域幅も基準パルスのスペクトル幅を大幅に超えることになります。両方の物理的効果に関連する有害な影響を制限するための一般的な方法は、基本波と第2高調波の時間的ウォークオフを基本波パルスの持続時間以下に制限するように結晶の厚さを選択することです。
なぜ集光スポットサイズが重要なのか?
一般にSHGを発生させるときには、結晶内で入射光を集光する必要があります。これは第2高調波光を効率的に発生させるには、109 W/cm2のような高いピーク強度の光が必要であるためです。ナノジュール領域の中程度のエネルギーのフェムト秒パルスを使用する場合、必要とされるピーク強度を得るには小さなスポットに集光する必要があります。非線形結晶にフェムト秒パルスレーザを集光するときのガイドラインとしては、レイリー長をSHG結晶の長さの少なくとも数倍に設定することが推奨されています。そうすることで、結晶が損傷を受ける可能性が最小限に抑えられ、空間的な位相不整合や空間的な(ポインティングベクトルの)ウォークオフなどのマイナスの効果も低減できます。
Tiberius Pulse Parameters | ||
---|---|---|
Wavelength | 800 nm | |
FWHM Duration | T | 140 fs |
Energy | E | 30 nJ |
β-BBO Crystal | ||
Thickness | d | 0.6 mm |
Focused Pulse Parameters | ||
Mode Field Diametera | MFD | 13.5 µm |
Effective Areab | 7.16 x 10-7 cm2 | |
Peak Power | 201 kW | |
Peak Irradiancec | 281 GW/cm2 |
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図23:上の図は、1軸性複屈折材料内でのビームの集光領域を示しています。光線を表す直線は、ビームウェストの中心を通って描かれています。ビームウェストから離れるにつれてビームが広がり、ビームのエネルギーはより大きな断面積に分散されます。結晶軸はcで示されています。主光線は、位相整合を最適化する角度(θ)の方向と平行です。変換効率は、主光線に平行な光線に対しては最適化されますが、主光線に対して大きな角度(ψ)の光線では低下します。
レイリー長と結晶の厚さの関係
レーザ光を集光したとき、ビーム径はそのビームウェストで集光スポットサイズとなり、その後のビームの広がり方はレイリー長(zR)に関係します。レイリー長は、ビームウェスト近傍でビーム径がほぼ一定になる範囲を、ビームウェストからの距離で表して定量化したものです。レイリー長が短いほど、ビームの発散角は大きくなります。
レイリー長が結晶の厚さより小さい場合、最適なビーム強度を保持できる距離も結晶の厚さより短くなります。SHGプロセスの効率は、基本波のビームが焦点から広がるにつれて大幅に低下しますが、これはパルスエネルギーが大きなビーム断面積内に分散されるためです。
フェムト秒パルスの場合、位相整合/時間的ウォークオフの制限により、結晶の長さは比較的短く設定(サブミリ~数ミリ)されます。以下に示すように、SHG位相整合プロセスには集光開口数(NA)の制限があります。これは、前のセクション(なぜSHGではパルス幅の狭さが問題になるのか?位相整合帯域幅の制限)で説明した、スペクトルによる位相整合の制限と類似した現象です。SHGプロセスにおけるこの空間的な集光に対する制限により、一般に結晶の長さは入射する集光パルスのレイリー長よりも常に短くなります。
結晶の損傷
超短パルスを小さなスポットサイズに集光すると、レーザ損傷閾値(LIDT)を超える危険性があります。例として、当社のTiberiusレーザからのフェムト秒パルスを考えてみましょう(右の表参照)。結晶の最大長さと位相整合/時間的ウォークオフによる制限とのバランスをとるために、結晶の厚さをパルス持続時間に基づいて選択すると、800 nm、140 fsのレーザーパルスに対しては0.6 mmの結晶が推奨されます。「2zR = 結晶の長さ」となるように集光状態を調整すると、焦点のスポットサイズは13.5 μmになります。表に示した式を用いると、30nJのガウシアンパルスを入射したとき、結晶の入射面に281 GW/cm2の非常に高いピーク強度(放射照度)を与えると推定できます。
空間位相整合
タイプIの位相整合プロセスは、基本周波数と第2高調波周波数の常光と異常光の整合の程度に依存し、ベストな整合は結晶の光学軸と入射光の伝搬ベクトルの方向とを精密に調整することで実現されます。集光されたパルスレーザやレーザービームには、小さな集光スポットを生成するための角度成分(正式には空間周波数と呼ばれる)が含まれています。この角度成分の大きさを表すのに開口数(NA)が使用されます。基本波のレーザ光は結晶全体を通過するようにコリメートされるのが理想です。これはコリメートされた光は、同じ方向に整列した、NAがゼロの光線のグループに似ているためです。
光線モデルの視点で、伝搬方向を図23の中心光線(主光線)の方向に決定します。SHGプロセスは入射光が伝搬する角度の範囲によって影響を受けます。これは、主光線に平行でない光は主光線に比べて位相整合の効率が低下するためです。基準パルスのパワースペクトルがアポダイゼーションフィルタを構成するのに代わり、空間領域ではNAがフィルタの役割を果たします。ただし、角度領域のアポダイゼーションフィルタは、kとによる平面で定義される1次元のみに限定されます。
集光ビームの角度成分は、レンズから焦点までの光線を追跡することによって視覚化できます。レンズから焦点まで強く絞り込まれた各光線(図23)は、主光線とは異なる角度(ψ)を有し、角度の大きさはNAとともに増加します。角度範囲が基準NAフィルタ(または角度領域アポダイゼーション フィルタ)の幅を超えて大きくなると、フィルタの幅の外側の光線の位相整合のレベルが低下し、それらの光線のSHG変換効率は低下します。このような角度フィルタを経て得られたSHGパルスやSHGビームの角度成分は、理想的な場合よりも減少します。これに直交する方向には角度フィルタが無いため、SHGビームは入射ビームの角度成分を保持します。非対称なNA(水平方向と垂直方向で非対称)を有する発散ビームは、楕円形のビームになります。
空間的な(ポインティングベクトルの)ウォークオフ
第2高調波が伝搬するとき、そのエネルギーの伝搬方向は基本波の伝搬方向とは異なります。空間的ウォークオフの角度は、ビームのサイズと結晶の長さに依存します。この角度は非常に大きくなる場合もありますが、一般的には小さく、通常は10 mrad程度で無視できます。
タイプIの位相整合でβ-BBO結晶を使用する場合、基本波は結晶内を異常光として伝搬しますが、第2高調波は常光として伝搬します。両方の光のエネルギーは、ポインティングベクトルによって決定される方向に伝搬します。スネルの法則はエネルギーの流れる方向は表していませんが、結晶内のkベクトルの方向を計算するためには使用できます。
パルスレーザ:パワーとエネルギーの計算
パルスレーザからの放射光が、使用するデバイスや用途に適合するかどうかを判断する上で、レーザの製造元から提供されていないパラメータを参照しなければならない場合があります。このような場合、一般には入手可能な情報から必要なパラメータを算出することが可能です。次のような場合を含めて、必要な結果を得るには、ピークパルスパワー、平均パワー、パルスエネルギ、その他の関連するパラメータを必要とすることがあります。
- 生物試料を損傷させないように保護する
- フォトディテクタなどのセンサにダメージを与えることなくパルスレーザ光を測定する
- 物質内で蛍光や非線形効果を得るために励起を行う
パルスレーザ光のパラメータは下の図1および表に示します。参照用として、計算式の一覧を以下に示します。資料を ダウンロードしていただくと、これらの計算式のほかに、パルスレーザ光の概要、異なるパラメータ間の関係性、および計算式の適用例がご覧いただけます。
計算式 | ||||
、 | ||||
平均パワーから算出するピークパワー、ピークパワーから算出する平均パワー : | ||||
、 | ||||
平均パワーおよびデューティーサイクルから算出するピークパワー*: | ||||
*デューティーサイクル() はレーザのパルス光が放射されている時間の割合です。 |
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図1: パルスレーザ光の特性を記述するためのパラメータを、上のグラフと下の表に示します。パルスエネルギ (E)は、パルス曲線の下側の黄色の領域の面積に対応します。このパルスエネルギは斜線で表された領域の面積とも一致します。
パラメータ | シンボル | 単位 | 説明 | ||
---|---|---|---|---|---|
パルスエネルギ | E | ジュール[J] | レーザの1周期中に放射される1パルスの全放射エネルギ。 パルスエネルギはグラフの黄色の領域の面積に等しく、 これは斜線部分の面積とも一致します。 | ||
周期 | Δt | 秒 [s] | 1つのパルスの開始から次のパルスの開始までの時間 | ||
平均パワー | Pavg | ワット[W] | パルスとして放射されたエネルギが、1周期にわたって 均一に広がっていたと仮定したときの、 光パワーの大きさ(光パワー軸上の高さ) | ||
瞬時パワー | P | ワット[W] | 特定の時点における光パワー | ||
ピークパワー | Ppeak | ワット [W] | レーザから出力される最大の瞬時パワー | ||
パルス幅 | 秒 [s] | パルスの開始から終了までの時間。一般的にはパルス形状の 半値全幅(FWHM)を基準にしています。 パルス持続時間とも呼ばれます。 | |||
繰り返し周波数 | frep | ヘルツ [Hz] | パルス光が放射される頻度を周波数で表示した量。 周期とは逆数の関係です。 |
計算例
下記のパルスレーザ光を測定するのに、最大入力ピークパワーが75 mW
のディテクタを使用するのは安全かどうかを計算してみます。
- 平均パワー: 1 mW
- 繰り返し周波数: 85 MHz
- パルス幅: 10 fs
1パルスあたりのエネルギは、
と低いようですが、ピークパワーは、
となります。このピークパワーはディテクタの
最大入力ピークパワーよりも5桁ほど大きく、
従って、上記のパルスレーザ光を測定するのに
このディテクタを使用するのは安全ではありません。
フェムト秒パルスレーザ用ならびにピコ秒レーザ用光学素子を幅広くご用意しています。詳細は下表をご参照ください。
Dielectric Mirror | High-Power Mirrors for Picosecond Lasers | Metallic Mirrors | Low-GDD Pump-Through Mirrors | ||
---|---|---|---|---|---|
Dual-Band Dielectric Mirror, 400 nm and 800 nm | Ytterbium Laser Line Mirrors, 250 nm - 1080 nm | Ultrafast-Enhanced Silver Mirrors, 750 - 1000 nm | Protected Silver Mirrors, 450 nm - 20 µm | Unprotected Gold Mirrors, 800 nm - 20 µm | Pump-Through Mirrors, 1030 - 1080 nm and 940 - 980 nm |
Deterministic GDD Beamsplitters | Low-GDD Harmonic Beamsplitters | Low-GDD Polarizing Beamsplitters | β-BBO Crystals | Dispersion-Compensating Optics | |
---|---|---|---|---|---|
Beamsplitters & Windows, 600 - 1500 nm or 1000 - 2000 nm | Harmonic Beamsplitters, 400 nm and 800 nm or 500 nm and 1000 nm | High-Power, Broadband, High Extinction Ratio Polarizers, 700 - 1300 nm | β-BBO Crystals for Second Harmonic Generation | Dispersion-Compensating Mirrors, 650 - 1050 nm | Dispersion-Compensating Prisms, 700 - 900 nm |
Posted Comments: | |
Peter Gruber
 (posted 2024-11-06 16:02:26.17) Would the sensor also work for 515nm? cdolbashian
 (posted 2024-11-13 11:47:09.0) Thank you for contacting us with this request. Currently this device is not designed to be compatible with 515nm laser for a few reasons. Firstly, the BBO crystal internal to this device will not generate a second harmonic signal given an input of 515nm, due to the optic axis orientation. Secondly, this device has filters built into the optical path which would block the light you would need for such a measurement. Finally, if the frequency were to be doubled to 257.5nm, the Silicon sensor internally would have little-to-no responsivity at this UV wavelength. Without a complete redesign, we would not be able to satisfy your requirements, though this is good suggestion for a future product. I have contacted you directly to discuss your application Chen-Hsun Chou
 (posted 2024-08-23 13:52:22.697) Hi, I'm looking for an alternative to an autocorrelator. I understand that the NS170C measures peak power, and since peak power is highest when the pulse width is shortest, I was wondering if a peak power sensor could replace an autocorrelator. What are the key differences between an autocorrelator and a peak power sensor? jpolaris
 (posted 2024-08-28 06:47:01.0) Thank you for contacting Thorlabs. NS170C provides a relative peak power measurement. You would need to first make a calibration measurement with a known pulse in order to use the reading to derive a pulse width value. Referencing equations (4) and (6) found at the following link, if input wavelength and spot sized are fixed, SHG power scales as (peak power)*(average power) ∝ (average power)²/τ. In comparison with our autocorrelator, FSAC primarily consists of a modified Michelson interferometer with a nonlinear detector at the output. FSAC is designed for pulse width characterization from 40 fs to 1 ps, over 650 nm - 1100 nm. It is a useful diagnostic tool for femtosecond Ti:sapphire lasers. I have reached out to you directly to discuss in more detail. https://www.thorlabs.com/newgrouppage9.cfm?objectgroup_id=16526&tabname=Operation |
NS170Cの筐体の背面には、センサの仕様とビームをセンサの中央に入射させるためのターゲットが刻印されています。
- β-BBO結晶を利用して2光子レーザのピークパワーを相対測定
- レーザ波長範囲:780~1300 nm
- 第2高調波の波長範囲:390~650 nm
- 顕微鏡の試料面でのレーザ光の状態を最適化するのに有用
- ドライ、水浸、油浸用の各対物レンズに対応
- 当社では再校正サービスを提供しています。詳細は当社までお問い合わせください。
顕微鏡スライド型ピークパワーセンサNS170Cは、多光子顕微鏡用レーザのピークパワーの相対測定用として設計されています。中心波長780 nm~1300 nmのフェムト秒レーザにご利用いただけます。光学コンポーネントの損傷を防止するために、最大平均パワーは350 mWを超えないようにしてください。 繰返し周波数80 MHzにおけるピークパワー密度の損傷閾値は、NAが0.5を超える顕微鏡対物レンズの場合は10 TW/cm2です。NAが0.5未満の場合の損傷閾値は、これよりも低くなります。このフォトダイオードセンサは、波長390 nm~650 nm、パワー10 nW~5 mWのSHG光を検出できます。詳細は「仕様」タブをご覧ください。
ピークパワーセンサNS170Cで変換されるSHG信号は実験条件に大きく依存します(詳細は「動作」タブ参照)。対物レンズの開口数や浸漬のほか、近赤外(NIR)入射レーザ光の波長、パルス幅、パルスの時間プロファイルの品質、繰返し周波数、パワーなどのすべてが、変換される可視(VIS)のSHG信号の大きさに影響します。下の表は様々な実験条件下でのピークパワーセンサNS170Cの典型的な性能を示しており、特定の実験に対して予想されるSHG信号を推定する際に参考としてお使いいただけます。
当社ではセンサNS170Cの定期的な再校正をお勧めしています。校正頻度は用途にもよりますが、通常1年程度です。再校正についての詳細は当社までお問い合わせください。
NS170Cは、筐体側面のM4 x 0.7タップ穴を用いてポストに取り付けることができます。
NS170C Typical Performancea | |||||
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Immersion | Laser Power at Sampleb | Wavelength | Pulse Duration | Objective | SHG Signal |
Air | 100 mW | 780 nmc | 80 fs | 20X, 0.5 NAf | 980 µW |
800 nmc | 100 fs | 1100 µW | |||
900 nmc | 960 µW | ||||
920 nmd | 150 fs | 10X, 0.3 NAg | 216 µW | ||
920 nme | 10X, 0.5 NAh | 580 µW | |||
1000 nmc | 180 fs | 20X, 0.5 NAf | 400 µW | ||
350 mW | 800 nmc | 100 fs | 5500 µW | ||
Water | 100 mW | 800 nmc | 100 fs | 40X, 0.8 NAi | 255 µW |
こちらでは当社で人気の高いパワーメーターコンソールをご紹介しています。デジタルパワーメーターコンソールPM100DはLEDバックライト付きLCDを採用しており、また1 GBの外付けSDメモリカードが付属しています。タッチパネル式パワーメーターコンソールPM400はPM100Dと同じ機能を有し、さらにパワー測定値を保存するための4 GBの内蔵メモリ、温度・湿度センサ用の外部入力端子、プログラム可能なGPIOポート、マルチタッチジェスチャーでユニットを操作できる静電容量方式タッチパネルディルプレイなども備えています。またPM400では、光パワー測定データ、温度記録、スペクトル補正曲線、減衰補正データなどを保存し、それらをコンソールと外部機器間で転送してさらに解析を進めることができます。これらの機能は、試料面における光パワーを継続的に観察し、その一貫性をモニタするのに大変便利です。詳細は表内の型番をクリックして各パワーメーターコンソールの製品紹介ページをご覧ください。
センサNS170Cは、PM5020や旧製品のPM200およびPM320Eに対応しています。また、PM100シリーズ、PM100USBおよびPM103シリーズのインターフェイスもご使用いただけます。
Item # | PM100A | PM100D | PM400 |
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Console Image (Click the Image to Enlarge) | |||
Display | Mechanical Needle and LCD Display with Digital Readout | 320 x 240 Pixel Backlit Graphical LCD Display | Projected Capacitive Touchscreen with Color Display |
Output | Analog Needle or Digital Numeric Readout | Numerical, Bar Graph, Statistics, Simulated Analog Needle | Numerical with Bar Graph, Trend Graph (Power or Energy and Temperature), Statistics, Simulated Analog Needle |
Calibration Functions | Wavelength Correctiona | Wavelength Correctiona | Wavelength Correctiona; Also Accepts User-Input Source Spectra and Attenuation Correction Data |
Data Storage and Transfer | USB 2.0 Interface | 1 GB External SD Memory Card, USB 2.0 Interface | 4 GB Internal Memory Mini B USB 2.0 Interface |
Dimensions | 7.24" x 4.29" x 1.61" (184 mm x 109 mm x 41 mm) | 7.09" x 4.13" x 1.50" (180 mm x 105 mm x 38 mm) | 5.35" x 3.78" x 1.16" (136.0 mm x 96.0 mm x 29.5 mm) |
Display Dimensions | 1.9" x 0.5" (48.2 mm x 13.2 mm) Digital Display and 3.54" x 1.65" (90.0 mm x 42.0 mm) Analog Display | 3.17" x 2.36" (81.4 mm x 61.0 mm) | 3.7" x 2.1" (95 mm x 54 mm) |
※パワーセンサ校正について - 当社のパワーセンサ校正は自動で行われており、測定と同時にセンサ内のメモリにある補正データを書き換えます(出力されるデータは校正前の感度と校正後の感度になります)。また、センサ面(NDフィルタ)が汚れ等で正常に感度測定ができないと判断された場合には、フィルタ交換(無償)してから校正される場合がございますので、ご了承ください。この場合は校正前の感度は測定できません。
Calibration Service Item # | Compatible Microscope Slide Power Sensor |
---|---|
CAL-NS | NS170C |
Thorlabs offers a recalibration service for our microsope slide peak Power sensor. To ensure accurate measurements, we recommend recalibrating the sensor annually. Recalibration of a single-channel power and/or energy meter console or interface is included with the recalibration of a sensor at no additional cost. If you wish to calibrate one or more sensors with a dual-channel console, each sensor and console calibration service will need to be purchased individually.
Refer to the table to the right for the appropriate calibration service Item # that corresponds to your microscope slide power sensor.
Requesting a Calibration
Thorlabs provides two options for requesting a calibration:
- Complete the Returns Material Authorization (RMA) form. When completing the RMA form, please enter your name, contact information, the Part #, and the Serial # of the item being returned for calibration; in the Reason for Return field, select "I would like an item to be calibrated." All other fields are optional. Once the form has been submitted, a member of our RMA team will reach out to provide an RMA Number, return instructions, and to verify billing and payment information.
- Select the appropriate sensor calibration Item # below, enter the Part # and Serial # of the sensor that requires recalibration, and then Add to Cart. If you would like a console calibrated with your sensor, repeat this process for Item # CAL-PM1 or CAL-PM2 below, entering the console Item # and Serial #. A member of our RMA team will reach out to coordinate the return of the item(s) for calibration. Note that each console calibration Item # represents the cost of calibrating a console alone; if requesting a single-channel console calibration with a sensor calibration, the appropriate discount will be applied when your request is processed. Should you have other items in your cart, note that the calibration request will be split off from your order for RMA processing.
Please Note: To ensure your item being returned for calibration is routed appropriately once it arrives at our facility, please do not ship it prior to being provided an RMA Number and return instructions by a member of our team.
※パワーセンサ校正について - 当社のパワーセンサ校正は自動で行われており、測定と同時にセンサ内のメモリにある補正データを書き換えます(出力されるデータは校正前の感度と校正後の感度になります)。また、センサ面(NDフィルタ)が汚れ等で正常に感度測定ができないと判断された場合には、フィルタ交換(無償)してから校正される場合がございますので、ご了承ください。この場合は校正前の感度は測定できません。
Calibration Service Item # | Compatible Consoles & Interfaces |
---|---|
Single-Channel | |
CAL-PM1 | PM100D, PM100A, PM400, PM100USB, PM101 Series, PM102 Series, PM103 Series |
Dual-Channel | |
CAL-PM2 | PM5020, Previous-Generation PM320E |
These recalibration services are for the power and/or energy meter electronics of our consoles and interfaces. To ensure accurate measurements, we recommend recalibrating annually. Recalibration of a single-channel console or interface is included with these sensor recalibration services at no additional cost. If you wish to calibrate one or more sensors with a dual-channel console, each sensor and console calibration service will need to be purchased individually. For more details on these recalibration services, please click the Documents () icons below.
The table to the upper right lists the power and/or energy meter consoles and interfaces that can be calibrated using the CAL-PM1 and CAL-PM2 recalibration services.
Requesting a Calibration
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Please Note: To ensure your item being returned for calibration is routed appropriately once it arrives at our facility, please do not ship it prior to being provided an RMA Number and return instructions by a member of our team.