ファラデー回転の方向と回転角の大きさを求める


ファラデー回転の方向と回転角の大きさを求める


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ファラデー回転の方向と回転角の大きさを求めるには何が必要か

 

ファラデー回転角の向きと大きさを決定するために、ここでは直線偏光の入射光と強度の調整が可能な磁場の両方を使用します。ファラデー回転はファラデー効果によって生じます。この効果によって、磁場中に置かれた物質内を直線偏光が伝搬していく過程で、その偏光方向が回転します。ファラデー回転角の特性は、物質から出射する光の偏光方向の磁場依存性を測定し、解析することで得られます。物質に入射する偏光の向きと物質から出射する偏光の向きの間の角度差を、それぞれの磁場強度で測定します。固定長のCdMgTe結晶を用いた例で示しているように、この一連の角度差の値を用いて特定の磁場強度におけるファラデー回転角を求めることができます。

Measuring the angle between linearly polarized light input to and output from a material experiencing the Faraday effect does not provide the Faraday rotation angle, since all measured angles are mapped to an angular region between 0 and pi.
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図1:ファラデー効果により、直線偏光の偏光面は光軸周りで回転します。回転方向や回転数は、印加する磁場、光の伝搬方向、および物質の特性に依存します。ファラデー回転の方向と大きさ(Δθ )は、物質への入射光の偏光方向と出射光の偏光方向の間の角度()を測定するだけでは決定できません。なぜならそれらの角度は0~の間の値に割り当てられてしまうためです。

The magnetic field within the bore of an annulus magnet, along the N-S axis.
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図3:この作業で使用している環状磁石の穴を通る磁場の計算値です。グラフに示されている各点は図2の各点にそれぞれ対応しています。A点は穴の中心に位置し、C点での磁場はゼロです。磁場が磁石のS極に向いているとき、磁場の強度は正の値になります。

Illustration showing why the magnetic field goes to zero and reverses just beyond the edge of an annulus super magnet.
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図2:この作業に使用された環状磁石です。NS軸に沿った磁場(計算値)のモデルを図3に示します。上の図のA~Dにおける磁場の強度は、図3のグラフ上の対応する各点で見ることができます。C点において、磁力線は互いに相殺します。また、この点を境に磁場の方向も逆向きになります。

Comparing the measured difference angles with the calculated trial values of the Faraday rotation angle can confirm whether the two angles are the same.
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図4:角度の計算値 (Δθtrial )と測定値 ()を同じグラフ上に表示してみるのは、両者の関係性を可視化する1つの方法です。表に示すように、5800 Gaussの磁場を印加して測定されたの値を用いて定数(Vtrial )を計算し、その結果を用いてΔθtrialを求めました。Δθtrialと測定値は良く一致しているため、測定された角度はファラデー回転角に等しいと言えます。

Trial Verdet Constant Calculation (Vtrial )
Trial Faraday Rotation Calculation (Δθtrial )

ファラデー回転角
光軸周りのファラデー回転の方向は、磁場 (B )の向きと、物質固有のベルデ定数(V )の符号に依存します。ファラデー回転角(Δθ )

で与えられ、印加された磁場の影響下にある物質内の伝搬距離(L )にも依存します。慣例に従って光源に向かってビームに対向する方向から見たとき、ビームが磁場に平行に伝搬し、かつベルデ定数が正の場合は、偏光ベクトルは光軸を中心に反時計回り(CCW)に回転します。入射光が磁場とは反対方向に伝搬する場合は、時計周りに回転します。ファラデー回転角の測定値は、しばしば物質のベルデ定数を計算するのに用いられます。

測定された角度
物質に入射する直線偏光の向きと、物質から出射する直線偏光の向きを比較する方法 では、角度()が得られます。しかし、この方法では各角度が0~間の数値に自動的に割り当てられてしまい、光軸周りの直線偏光の回転方向と回転数を知ることはできません(図1)。

磁場の強度を変える
磁場を変えての値を測定すると、特定の磁場におけるファラデー回転角を求めることができます。時間的には一定で空間的には変化する磁場内で物質(試料)の位置を変えると、印加される磁場の強度は変化します。

例えば、環状磁石の穴の中心軸(NS軸)上での軸に平行な磁場の強度は、その位置によって変化します(図2と3参照)。図3の磁場のグラフは、環状磁石のモデルをベースに計算されています。

磁場の強度は、磁場の向きを変えずに、試料をNS軸に沿って移動させることで変えることができます。この作業では、試料を軸に沿って特定の位置に移動させますが、その位置は磁石の穴の中心から測定しています。

ファラデー回転の特性
ファラデー回転角の特性を取得する便利な方法は、まず最初に、様々な磁場強度で測定されるの値が、対応するファラデー回転角の大きさに一致すると仮定してみることです。そして、次のステップとして、その仮定をテストします。

ここでは、長さ0.22 cmのCdMgTe結晶に磁場が印加されたときのファラデー回転角の方向と大きさを求めています。環状磁石によって磁場を発生させ、結晶をNS軸に沿って様々な位置に置いての値を測定しました。結晶は、まず図2に示すA点からC点まで移動しました。この範囲内では、光は磁場方向に沿って伝搬します。C点の通過後、磁場の方向は逆向きになります。

ベルデ定数の試行値(Vtrial、表参照)は、(2160 arcmin)の値と対応する磁場強度 (5800 Gauss)を用いて算出しました。ファラデー回転角の試行値(Δθtrial 、表参照)は、Vtrialを用いて算出しました。測定値とこのモデルによるデータが良く一致していることから(図4)、の測定値はファラデー回転角に等しいと言えます。角度の計算値と測定値の相違は、主にモデル化された磁場と実際の磁場との違いによるものですが、測定誤差が影響している可能性もあります。図4のグラフ化されたデータからは、計算されたベルデ定数の符号が正であること、また式にを適用することでベルデ定数を正確に計算できることが分かります。

この角度データの2つのセットが一致しない場合は、実際のファラデー回転角は測定された角度の倍数の和ということになります。特殊なケースとして、測定された角度 と、計算されたファラデー回転角の試行値の大きさは等しいけれど符号が反対である場合があります。このときの2つの角度の差は であり、実際のベルデ定数とベルデ定数の試行値の符号は反対になります。

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本コンテンツはZoya Shafique氏からご提供いただきました。
最終更新日:2021年5月12日


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