レーザ光を使用して偏光消光比を測定する方法


レーザ光を使用して偏光消光比を測定する方法


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直線偏光の光源を使用して偏光子の消光比を測定する方法

試験対象の光学コンポーネント(DUT)の消光比は、レーザ光または直線偏光光源を使用して測定できますが、多くの場合、光源とDUTの間に直線偏光子を挿入する必要があります。よくあるケースですが、光源からの出力光の消光比がDUTの消光比よりも大幅に高くない場合には、直線偏光子が必要になります。DUTの消光比を正確に測定するには、入射光の消光比がDUTの消光比よりも非常に大きいことが必要です。1つまたは複数の直線偏光子を光源とDUTの間に挿入すると、DUTに入射する光の消光比を大きくすることができます。

Setup with unpolarized light source (LED) used to measure the polarization extinction ratio (PER) of linear polarizer or other optical component.
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図1: 試験対象の光学素子(DUT)の消光比は、2つの光パワーの測定値から推定できます。1つ目のPmax を測定するときは、DUTの透過軸が入射光の偏光方向に対して平行(上図では鉛直方向)になっている必要があります。2つ目のPmin を測定するときは、DUTの透過軸が入射光の偏光方向に対して垂直(上図では水平方向)になっている必要があります。DUTへの入射光の消光比がDUTの消光比よりも非常に高い場合、より正確な推定値を得られます。光の消光比を向上させるために、光源とDUTの間に1つまたは複数の直線偏光子を挿入することが必要な場合があります。直線偏光と記載されているレーザからの光でも、消光比が低すぎて必要な精度が得られないことが多いためです。

The estimated extinction ratio (ER) for optic or DUT depends on the ER of the light incident on optic or DUT.
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図2:DUTの消光比の測定値(ERest = Pmax / Pmin )と実際の値(ERDUT )との差は、DUTに入射する光の消光比に大きく依存します。入射光の消光比は、光源の消光比(ERsource )と、光源とDUTの間に挿入された直線偏光子の消光比(ERref )の積で与えられます。モデルによる値(青い曲線)と実験データ(三角と丸)も示されています。この測定では ERsourceERDUT です。光源とDUTの間に偏光子を設置せずに得られた測定値は ERref  = 1に対応し、三角形で示されています。光源とDUTの間に直線偏光子を設置して得られた測定値は丸で示されています。これらのデータから、直線偏光子を設置しなかったときには、DUTの消光比の推定値は実際の値よりも非常に小さくなっていることがわかります。

DUTの消光比の推定
この方法で推定するのは、光の消光比ではなくDUTの消光比の絶対値であることにご注意ください。

DUTの消光比を正確に推定するには、DUTよりも消光比が非常に高い直線偏光の入射光と光パワーセンサが必要です。直線偏光の光源からの出射光が適切な消光比を有する場合もありますが(次のセクションを参照)、一般には光源とDUTの間に1つまたは複数の直線偏光子を挿入する必要があります(図1)。

DUTの消光比を推定するためには、2つの光パワーを測定する必要があります。光パワーセンサに到達する最大パワー(Pmax )を測定するには、DUTの透過軸を入射光の偏光方向に対して平行にする必要があります。DUTを透過する最小パワー(Pmin )を測定する場合は、DUTの透過軸を入射光の偏光方向に対して垂直にする必要があります。これら2つのDUTの透過軸方向は、図1では光源の偏光方向を鉛直方向であると仮定して金色の点線で示しています。

Pmax Pmin の比はERest を与え、

この値を用いてDUTの消光比 (ERDUT )を推定できます。この推定値と実際の値が大きく異なる場合がありますが、その差はDUTに入射する光の消光比に強く依存します。ERDUT の最も正確な推定値は、入射光の消光比がERDUT よりも桁違いに大きい場合に得られます。このことは次の2つのセクションで議論します。

Pminを正確に測定するのが困難な場合があり、その場合の測定誤差はERest の値に多大な悪影響を与える可能性があります。いくつかのガイドラインに従うことで、低パワー光の測定精度を向上させることができます。なお、DUTの消光比を測定するのに非偏光の光源を使用することも可能です。

光源の消光比の向上
DUTに入射する光の消光比により、ERest の値がERDUT よりも非常に小さい値に制限される場合があります。ERest の値は、入射光の消光比がDUTに入射する光の消光比よりも非常に大きい場合にのみERDUT の値に近づきます。例えば、入射光の消光比がERDUT と等しい場合は、ERest の値はERDUT のわずか50%程度になります。入射光の消光比がERDUT よりも2桁大きい場合には、ERest ERDUT の約99%になります。

一般に、ほとんどのレーザからの出射光の消光比は非常に低いため、直線偏光子のような偏光特性の高いDUTの消光比を測定するのには適していません。そのような場合には、DUTの前に直線偏光子を挿入することにより(図1参照)、入射光の消光比を向上させることができます。同じ原理で、その位置に直線偏光子を追加すると、消光比がさらに向上します。高い消光比を得るには、この2つの偏光子の透過軸が正確に平行になるようにアライメントする必要があります。

入射光の消光比を向上させることの効果
ERest の値は、使用する光源の消光比や、光源とDUTの間に挿入する直線偏光子の有無などに応じてモデル化することができます。モデル化された値 (ERmodel )は、

で与えられ、その値は図2に青い曲線で示しています。この式では、光源とDUTの間に直線偏光子を1つ挿入したと仮定しており、また光源の消光比はERsource で表しています。光源が非偏光の場合は、ERsource の値は1になります。この偏光子の消光比はERref です。複数の偏光子を挿入した場合は、ERref の値をそれらの偏光子の有効消光比に置き換える必要があります。光源とDUTの間に偏光子を挿入しない場合は、ERref の値を1に置き換えます。

直線偏光子とDUTの位置を入れ替え、DUTを光源に最も近い位置に置いた場合、その効果はこの式のERDUT ERref  を入れ替えることでモデル化できます。そのように変更すると、モデル(および測定)によるERDUT の推定値は悪化します。最良の結果を得るには、直線偏光子のセットを光源に最も近い位置に置く必要があります。

参考文献
[1] Michael Kraemer and Tom Baur, "Extinction ratio measurements on high purity linear polarizers," Proc. SPIE Polarization: Measurement, Analysis, and Remote Sensing XIII, 10655, 1065505 (2018).

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最終更新日:2022年5月16日


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