積分球使用時に試料交換誤差を最小化する方法


積分球使用時に試料交換誤差を最小化する方法


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試料交換誤差について

 

Reflectance measurement procedure that can result in sample substitution error.
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図 1:拡散試料の透過率と反射率を上記のように測定することによって、試料交換誤差に起因する試料スペクトル歪みがもたらされる可能性があります。問題は基準試料と測定したい試料測定時の、試料領域の反射率が異なることです。

Reflectance measurement procedure that is immune to sample substitution error.
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図 2:上の実験構成では、積分球内の条件が基準試料測定時と測定したい試料測定時で同じのため、試料交換誤差の影響は受けません。基準試料測定時、光は(R)に沿って通り、(S)に沿っては通りません。反対に測定したい試料測定時、光は(S)に沿って通り、(R)に沿っては通りません。

積分球を使用することにより光学試料の透過ならびに拡散反射スペクトルの絶対値が測定できます。これらのスペクトルは、測定したい試料と基準とする試料の両方のスペクトルを測定することによって求められます。

基準試料の測定は、照射光源のスペクトルを知る上で必要です。基準試料のスキャンで得られた値により、測定したい試料の測定値から光源のスペクトル測定値を差し引くことができます。

光源の基準測定は、透過率データの場合、試料を配置せずに測定し、反射率測定の場合には高反射の基準試料を置き、測定します。

この試料測定や基準試料測定時において試料交換誤差が生じた場合、この誤差の影響がない実験手法でない限り、補正された試料スペクトルの確度に悪影響を及ぼす場合があります。

試料交換誤差をもたらす条件
積分球の光学性能は、内面の各位置での反射率に依存します。透過スペクトルや拡散反射スペクトル測定時、積分球の内面の一部分に試料を置きます(図1)。しかしそのような内面の一部が変化することにより、積分球の性能が変動します。

試料交換誤差は、測定手順の中で、積分球内の試料をほかの試料に交換することがあるときに懸念されます。例えば、拡散反射を測定しているとき(図1下)、最初の測定は基準試料を積分球内に取り付けて実施するとします。次にこの試料を取り外して測定したい試料に交換し、2回目の測定を行います。そして両方のデータセットを利用して、試料の補正拡散反射率(絶対値)を求めます。

この手順では、試料スペクトルに歪みが生じます。測定したい試料と基準試料の吸収ならびに散乱特性が異なるため、これらを交換することで積分球内の試料面部分の反射率が変わってきます。2つの測定において積分球の平均反射率が変わってくるため、基準試料と測定したい試料には完全な互換性がありません。

解決策1:測定したい試料と基準試料を同時に取付ける
試料交換時の誤差を回避する1つの実験手法は、測定したい試料と基準試料を同時に積分球内に取付け、測定データを取得することです(図2参照)。この手法では、2つの試料を追加ポートとして取り付けられる大きさの積分球が必要です。

光源は積分球の外側に配置し、測定したい試料と基準試料の両方を順次測定します。試料からの正反射、あるいは透過ビームは、積分球の外に誘導されているため、拡散光のみが検知されます。積分球の内面(の条件)は、どちらの測定でも同じのため、試料交換時の誤差の懸念はありません。

解決策2:試料用ポートならびに基準ポートから測定する
測定したい試料と基準試料が積分球内に同時に取付けられない場合、試料の交換が発生します。交換が必要な場合には、下記[1]で説明する手順で試料交換時の誤差を取り除くことができます。

この手順では合計で4回の測定が必要です。基準試料を設置時、2つの異なるポートから測定を行います。1回目の測定では基準試料が視野内にある方向から測定し、2回目の測定では試料が視野内に無い方向から測定します。その後測定したい試料に交換し、同様の測定を繰り返します。これらの測定値を利用して下記[1]に説明する計算をすることにより、試料交換時の誤差は取り除かれます。

参考文献
[1] Luka Vidovic and Boris Majaron, "Elimination of single-beam substitution error in diffuse reflectance measurements using an integrating sphere," J. Biomed.Opt. 19, 027006 (2014).

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最終更新日:2019年12月4日


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