低パワー光検出方法を改善する最初のステップ
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低パワー光検出方法を改善する最初のステップ
低パワーの光信号の測定は、周囲光の低減、パワーセンサ(フォトセンサ)に入射する反射光や散乱光の遮断、ビームスポットサイズの適正化(センサの受光面サイズ以内にする)、パワーメータのダイナミックレンジの適切な設定、および周囲光下でのパワーメータのゼロ設定などで改善することができます。ここで目標とするのは、パワー測定での不要な光の影響を最小限に抑えることと、センサがビーム全体のパワーを連続して測定すること、そして実験条件に応じてパワーメータを適切に設定することです。
周囲光
周囲光とは、光学系における光ビーム以外のすべての光を指します。多くの場合、室内光が最大の周囲光になりますが、かなりの光がPC画面や他のモニタ画面、機器のLEDインジケータなどで生じている場合もあります。周囲光で困る点は、測定中に使用者が移動したり、インジケータの点滅や画面表示を切り替えたりしても光の量が変動することです。
周囲光の影響により、パワーの読み取り値が不自然に上昇したり、低パワー光の検出の妨げになったり、あるいはセンサを飽和させたりすることがあります。センサが飽和すると、センサは最大レベル、またはそれに近い信号を出力します。周囲光によって飽和したセンサでは、周囲光に付加されるた入射光パワーに応答できないか、あるいはほとんど応答できない状態になります。周囲光が飽和しない程度の低いレベルであっても、検出しようとする信号光が周囲光に比べて無視できるほど小さい場合には、やはり検出できません。
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図1:上のセットアップでは、ネジ変換アダプタSM1A29を用いてSM1レンズチューブをパワーセンサS130Cに取り付けています。パワーセンサは、レンズチューブの開口部が直近の光学部品の透過側にほぼ接触するように配置されています。レンズチューブはパワーセンサを不要な光から遮蔽するのに寄与します。このセットアップは、こちらの動画で直線偏光子を入射面に対して45°にアライメントする方法の実演に使用されました。
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図3: ビームスポットは、アライメントの状態や通常の動作状態においてもパワーセンサ内を移動する場合があります。光パワーを正確に測定するには、ビーム全体がパワーセンサの受光面内になければなりません。上の図では、測定中にビームスポットが円状に移動する様子を白い点線の円で描いています。ビームスポットがセンサの受光面内に留まるのが理想です(右)。ビームがパワーセンサの受光面から外に出てしまう場合(左)は、パワーの読み取り値が不自然に小さくなる理由を説明するのが困難になります。
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図 2:上の光学素子の前面と背面は平行ではありません。光学素子を光軸周りに回転させると、透過ビームの方向が変化します。このような状況では、光パワーの測定が不正確になる場合があります(図3参照)。
周囲光を最小に抑えるには、室内光を消す、遮光機能付きのエンクロージャ内にセットアップを設置する、モニタにカバーをかける、スクリーン画面をセンサとは反対側に向ける、LEDを消灯するか黒色テープで覆うといった対策がとれます。図1のようにセンサの筐体にレンズチューブを取り付けるのは、パワーセンサに入る周囲光を低減するのに効果があります。
迷光
光学系内のビーム光は、セットアップ内の光学素子や筐体による散乱、反射、回折などを通じて、迷光を発生させる場合があります。迷光は様々な光学素子から複数回の影響を受けていたり、主光路とオーバーラップしたりするため、その光路を予測したり遮断するのは難しい場合があります。信号測定に対する迷光の影響は、周囲光の影響と似ています。
迷光を遮断する最良の方法はビームの光路とセットアップに依存し、複数の技術が組み合わされて使用されます 光路を辿らずに迷光を除去できれば、それが最も簡単です。光学面を入射ビームが垂直に入射しないように回転させれば、反射光を光路以外の方向に向けることは可能です。しかしこの方法は、光学素子への入射角が実験に影響を与えない場合にしか使用できません。
信号光と迷光の光路間の角度が比較的大きい場合には、センサにレンズチューブを取り付けることで(図1)迷光を遮断することができます。信号光と迷光の光路間の角度が小さい場合には、1つの方法として、センサの前にアイリスを配置して迷光を遮断し、信号光のみを通過させる方法があります。もう1つの方法としては、センサを遠ざける方法があります。十分な距離があれば、信号光と迷光の間の距離が大きくなり、迷光がパワーセンサに入射しなくなるか、またはパワー測定にほとんど影響を与えなくなります。
パワーセンサのサイズとビーム変位(ビームウォーク)の許容範囲
信号光の直径がパワーセンサの受光面の直径より大きい場合、信号光の測定値は不自然に小さくなります。なお、ガウスビームの一般的な測定値として規定されている1/e2ビーム径には、光パワーのおよそ86%が含まれています。光パワーの99%を含む直径は、1/e2ビーム径より1.5倍大きくなります。
ビームはセンサ受光面の中心にアライメントされているのが理想です。ビームがセンサの中心にない場合は、測定誤差のリスクが増大します。ビームスポットがセンサの受光面の外にまで広がっている場合は、パワーの測定値は小さくなります。ビームの一部分が受光面とオーバーラップしているときには、パワーがある程度測定されているため、すぐに問題があることに気づかないかもしれません。そのため、測定する前にビームスポットと受光面のオーバーラップの具合を確認することをお勧めします。
このビームスポットと受光面の不完全なオーバーラップの問題は、測定中にビームスポットが移動するときには、一時的な問題である場合があります。例えば、測定中に光学素子を光軸周りに回転させる必要がある場合は、ビームスポットも移動するかもしれません(図2と図3)。これは、光学素子の前面と背面が光路に対して垂直ではない場合に特に懸念されることです。ビームスポットが移動する場合には、受光面の大きなパワーセンサを選択することで対応できる場合があります。
パワーセンサのダイナミックレンジ
センサのダイナミックレンジは、センサが対応可能な入射光パワーの最小値から最大値までの範囲を指します。正確な測定をするためには、信号光パワーがセンサのダイナミックレンジ内であることが必要です。
ノイズフロアにより、一般に検出可能な光パワーの最小値が決定されます。ノイズフロアは、パワーセンサに光が全く入射されていないときにパワーメータで読み取られるパワー信号のことです。このパワー信号は、パワーセンサ、パワーメータ、ケーブル、増幅器、フィルタ、およびその他の全てのコンポーネントを含む検出器システム全体のノイズから生じるものです。ノイズフロア以上の応答を発生させるのに十分な入射光パワーがないと、信号としては検出されません。応答信号がノイズフロアに近いと、測定精度は低下します。ノイズフロアに近いレベルの信号では、小さな信号対雑音比(SNR)しか得られません。
パワーセンサのメーカでは、最大パワーの仕様値を、飽和強度と呼ばれる閾値以下にしばしば設定します。飽和強度の閾値よりも十分に低いレベルで使用することが推奨されるのは、パワーが閾値近くになるとセンサの応答が非線形になり、実際に入射されたパワーよりも小さな値を表示する場合があるからです。これにより、意図せずにアプリケーションで許容される最大パワーを超えてしまう事態も考えられ、これは極めて懸念すべきことです。入射光パワーが飽和強度を超えると、測定値はしばしば最大値に固定されることがあります。飽和状態かどうかを確認する方法の1つは、パワーを若干上げてパワーの読み取り値をモニタする方法です。読み取り値が一定であるか、予想ほど変化しない場合には、センサが飽和している可能性があります。
パワーメータのゼロ設定を周囲光レベルに合わせる
信号光がセンサに到達しないように遮断した状態で、センサを覆わずにゼロ設定を行います。信号光の遮断は、光源側に内蔵シャッタがあればそれを使用し、あるいは光源の前にビームブロックを直接置いて行います。ビームブロックをセンサに近づきすぎないよう置くことが重要です。なぜならゼロ設定時には、パワーセンサは測定中に存在するすべての周囲光に晒されている必要があるからです。この設定をすることで、周囲光の影響は測定値から差し引かれます。ゼロ設定時にセンサに覆いを付けてしまうと、周囲光のパワーが信号光の測定値に加算されます。
「Insights-ヒント集」は下記リンクからご覧いただけます。 | 最終更新日:2022年5月11日 |
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