非偏光の光を使用して偏光消光比を測定する方法
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非偏光の光源を使用して偏光成分の消光比を測定する方法
試験対象の光学素子(DUT) の偏光消光比は、非偏光光源と光パワーセンサの間に高い消光比を有する参照用偏光子とDUTを配置することで推定することができます。この方法では参照用偏光子とDUTのペアを透過する最大パワーと最小パワーを測定します。参照用偏光子の消光比がDUTの消光比よりも非常に大きい場合には、この2つのパワーの測定値の比がDUTの消光比の正確な推定値を与えます。参照用偏光子とDUTが同じタイプの直線偏光子の場合(すなわち消光比が同様の場合)は、この方法では実際の消光比の約50%の値になります。参照用偏光子の消光比がDUTの消光比より2桁大きい場合は、この推定値はDUTの消光比の約99%になると予想されます。
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図1: 試験対象の光学素子(DUT)の消光比は、上図のようなセットアップを使用して測定できます。非偏光の光をLEDで発生させ、DUTと参照用直線偏光子を光源とパワーセンサの間に設置します。パワーセンサに取り付けられたレンズチューブは、パワーセンサからの迷光をブロックします。説明の都合上、参照用偏光子は固定されており、その透過軸は鉛直方向に向けられています。Pmax は、DUTと参照用偏光子の透過軸が平行(どちらも鉛直方向)のときに得られます。Pmin は、DUTと参照用偏光子の透過軸が垂直(すなわちDUTの透過軸が水平方向)のときに得られます。金色の点線は、この2つの測定に対応するDUTの2つの透過軸方向を示しています。
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図2: DUTの消光比の測定値
DUTの消光比の推定
図1の実験セットアップを使用してDUTの消光比(ERDUT )を推定できます。非偏光の光は、消光比(ERref )がすでに分かっている参照用偏光子を透過します。DUTを透過した光はディテクタで検出されます。
ERDUT の推定値は、2つの光パワーの測定値から計算できます。1つ目の測定値は参照用偏光子とDUTの透過軸が垂直のときに取得されます。透過軸が直交することで透過光パワーは最小値
2つ目の測定値は、2つの偏光子の透過軸が平行になったときに取得されます。このときセンサに到達する透過光パワーは最大値
Pmax とPmin の比はERest を与え、
これはERDUT の推定値を与えることになります。ERref がERDUT よりも非常に大きい場合は、この推定値はより正確になります。詳細は下記セクション「高ERの参照用偏光子の使用」でご覧ください。なお、測定にノイズや実験誤差がないと仮定すると、ERest はERDUT より大きくなることはありません。
Pminを正確に測定するのが困難な場合があり、その場合の測定誤差はERest の値に多大な悪影響を与える可能性があります。いくつかのガイドラインに従うことで、低パワー光の測定精度を向上させることができます。
この方法で推定するのは、光の消光比ではなくDUTの消光比の絶対値であることにご注意ください。
参照用直線偏光子の位置
光源の光が非偏光であるとみなされる場合は、DUTを光路内の参照用偏光子の前においても後においても、Pmax とPmin を測定できます。また、DUTと参照用偏光子のお互いの軸を平行または垂直にするために、どちらの偏光子を回転させても、あるいは両方を回転させても問題ありません。これは以下の式で見ることができます。
これは2つの部分偏光子のミュラー行列を乗じることで導くことができます。この導出では、両方の偏光成分が不完全であると仮定しているため、透過軸に対して垂直に偏光した光もある程度透過します。無限大の消光比を有する理想的な偏光子だけしか、透過軸に垂直な偏光を完全に透過しないようにはできないので、これは現実的な仮定です。光源が完全に非偏光の場合、この式で計算された値(ERmodel ) は、測定値(ERest )をモデル化したものになります。ERref とERDUTの値は1未満になることは無く、値が1の場合はNDフィルタを表します。[1]
多くの光源は、非偏光であると記載されていても、ある程度は偏光していることにご注意ください。その場合、偏光度(DOP)はゼロではなく、測定の要件と式はここで説明されているものとは異なります。光源のDOPを調べる1つの方法は、図1のセットアップからDUTを取り外し、直線偏光子を光軸を中心に回転させながら検出される光パワーをモニタすることです。直線偏光子を回転しても検出される光パワーが変化しなければ、光源は非偏光であるとみなすことができます。パワーメータのノイズフロアよりも大きな光パワーの変化が検出されたら、光源は部分的に偏光していることになります。
高ERの参照用偏光子の使用
参照用偏光子としては、DUTよりも非常に大きな消光比を有するものを選ぶことが重要です。ERmodel の式からわかるように(計算値は図2の青い曲線で示されています)、ERest の値は理論的に2つ偏光子の消光比のうちの小さい方の値を超えないように制限されます。また、ERmodel がERref よりも非常に大きい場合にのみ、ERDUT の値はDUTの消光比の実際の値に近づきます。参照用偏光子とDUTが同じタイプの偏光子である場合によくあることですが、これらの2つの偏光子の消光比がほぼ同じである場合、ERmodelはERDUT の約50%になります。
図2のグラフ内の赤い四角は実験データ(ERest )を示しています。この測定は消光比が既知の直線偏光子を使用して行われ、片方の偏光子を参照用直線偏光子、もう片方をDUTとして使用しました。
大きな消光比を有する適切な参照用偏光子が利用できない場合は、他の偏光子と組み合わせてセットとして使用することもできます。透過軸同士が互いに完全に平行になるように偏光子を揃えます。このセットの有効消光比(ERset )はそれぞれの偏光子の消光比の積であり、計算ではERref の代わりにERset を使用します。
参考文献
[1] Michael Kraemer and Tom Baur, "Extinction ratio measurements on high purity linear polarizers," Proc. SPIE Polarization: Measurement, Analysis, and Remote Sensing XIII, 10655, 1065505 (2018).
「Insights-ヒント集」は下記リンクからご覧いただけます。 | 最終更新日:2022年5月16日 |
Posted Comments: | |
ANURAG SHARMA
 (posted 2023-03-20 14:58:57.5) We wanted to procure a set up to measure the polarization extinction ratio of our in-house manufactured optical components. Could you suggest the power detectors for the same and other requirements. dpossin
 (posted 2023-03-22 10:13:29.0) Dear Anurag,
Thank you for your feedback. I am reaching out to you in order to discuss the details. |