参照用光共振器(リファレンスキャビティ)、結晶ミラー付き
- High-Finesse Fabry-Perot Cavities for Active Frequency Stabilization
- Available with 1064 nm, 1156 nm, 1397 nm, or 1550 nm Center Wavelength
- Thermal Noise Limit at 1.6 x 10-16 (ADEV)
- 1.24 GHz Free Spectral Range
XM-ORC14
High-Finesse Optical Reference Cavity, 1550 nm, >300 000 Finesse
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結晶コーティングミラーをオプティカルコンタクトで接合した円筒形の共振器
光共振器のノイズ比較ツール
当社はWolfram®社と提携して、様々な設計パラメータを有する光共振器において、当社の結晶スーパーミラーコーティングを用いた場合と、従来のイオンビームスパッタリング(IBS)コーティングを用いた場合とで、ノイズ性能がどのように異なるかを直接比較できるウェブアプリケーションを作成しました。下のリンクをクリックするとご覧いただけます。
特長
- 低熱雑音を実現するための溶融石英基板の共振器用結晶コーティングミラー
- ARコーティングが施された、角度付きのインカップリング用およびアウトカップリング用のウェッジウィンドウ
- 超低膨張ガラス(ULE®†)のキャビティスペーサ
- 曲率半径1 mの平凹ミラーで構成
- 内蔵のNTCサーミスタとペルチェ素子によるアクティブな温度制御
- 温度コントローラ、イオンゲッター真空ポンプ、ポンプコントローラが付属
用途
- レーザ周波数の安定化
- 光計測
- レーザ冷却およびトラッピング
- 高分解能分光
- 量子計算
結晶ミラー付き参照用光共振器(リファレンスキャビティ) XM-ORCシリーズは、シングルモードの連続発振(CW)レーザの周波数をアクティブに安定化するのに適した高フィネスのファブリペロー共振器です。当社の高性能スーパーミラーを内蔵し、1064 nmで200 000以上、1156 nm、1397 nmまたは1550 nmで300 000以上のフィネスが得られます。熱雑音によるアラン偏差(ADEV)限界が1.6 x 10-16、周波数ドリフトがおよそ150 mHz/sといずれも低い値を示し、高分解能分光法、量子計算、光時計などのキャビティに安定化したレーザを必要とする用途に適しています。参照用共振器の形状や中心波長をカスタマイズされたい場合は、当社までお問い合わせください。
各システムは組み立て行程中にベークアウトされており、また温度制御や高真空維持のためのハードウェアが付属します(詳細は「発送品リスト」タブをご覧ください)。システムのベースであるブレッドボードには皿ネジ(1/4インチまたはM6)用の取付け穴があり、それらを用いて参照用共振器を光学テーブルに固定できます。最良の性能を得るには、システムを除振機能の付いたプラットフォームに取り付けることをお勧めします。
オプティカルコンタクトされた共振器
この光共振器では超低膨張ガラス(ULE)で作られた12.1 cmの円筒形スペーサが用いられています。そのスペーサは、密閉されたステンレススチール製の真空容器内に、4つの支持点で水平方向に取り付けられています。共振器のインカップリング用の平凹ミラーとアウトカップリング用の平面ミラーは、いずれも溶融石英基板上に基板転写された結晶コーティング (xtal stable™)を用いたミラーであり、スペーサにはオプティカルコンタクトで接合されています。ULE補正リングも付いており、組み立てられた共振器の熱膨張係数が室温でほぼゼロクロスする状態になります。
参照用光共振器XM-ORC15シリーズにはスーパーミラーXM15P8およびXM15R8が使用されています。これらの多層膜は熱光学雑音(Thermo-Optic Noise)を最適化するように設計されており、そのため結晶コーティングからの熱雑音が低く抑えられています。熱光学雑音を最適化した結晶コーティング、1/4波長結晶コーティング、および従来のイオンビームスパッタリング(IBS)コーティングについて、それらを光共振器に用いたときの雑音性能を、右枠内の「光共振器のノイズ比較ツール」で比較することができます。
結晶コーティングミラーのペアは、キャビティリングダウンのセットアップを用いて個別に試験し、中心波長で非常に高い反射率と低い透過率が得られることを確認しています。各共振器には個別のデータシートが付属します。そのサンプルはこちらからご覧いただけます。
共振器は真空チャンバ内に取り付けられていますが、エタロン効果を回避するために、ARコーティング付きウェッジウィンドウが取付けられたインカップリング用およびアウトカップリング用のビューポートに対して、小さな角度を有するように配置されています。システムの光軸高さはブレッドボードの底面から203.30 mmです。
環境との絶縁
XM-ORCシリーズの参照用共振器は、共振器長の変動を低減してロックされたレーザの周波数安定性を向上させるために、アクティブに温度安定化された高真空下で使用します。高真空を達成するために、排気速度が10 L/s(公称値)のイオンゲッターポンプで真空チャンバ内を連続的に排気し、10-7 mbar以下の圧力を維持します。真空チャンバにはCFフランジが使われており、接続されたコンポーネント間はナイフエッジで封止されています。
アクティブな温度制御を行うために、XM-ORCシリーズの参照共振器にはNTCサーミスタとペルチェ素子が取付けられています。温度コントローラも付属していますが、これはシステムの大きな熱負荷に合わせて当社の温度コントローラTED200Cを改造したものです。各共振器にはNTCサーミスタとペルチェ素子を温度コントローラに接続するためのケーブルも付属しています。
注: XM-ORCシリーズの共振器に付属するイオンゲッターポンプは、10-4 mbar以下の圧力でしか動作しませんのでご注意ください。密閉されたチャンバ内を真空にするには、最終到達圧力10-4 mbar、排気速10 L/hrの他社製ドライポンプが必要です。真空チャンバの背面にはDN40フランジが付いており、補助ポンプを取り付けられるようになっています。
用途
XM-ORCシリーズの参照用共振器は、超高安定なレーザを実現するシステムに必要なコンポーネントの1つです。1つの例として、ターンキー式超低ノイズレーザULN15TKの周波数を、この共振器を使用してPDH(Pound-Drever-Hall)方式でロックする方法を「用途」タブでご覧いただけます。お客様が必要とされるインカップリング用およびアウトカップリング用の光学素子に関するご相談については、当社までご連絡ください。
†ULEはCorning社の登録商標です。
Item # | XM-ORC15 | XM-ORC16 | XM-ORC23 | XM-ORC14 | |
---|---|---|---|---|---|
Wavelengtha | 1064 nm | 1156 nm | 1397 nm | 1550 nm | |
Finesse | > 200,000 | > 300,000 | > 300 000 | > 300 000 | |
Cavity Length (ULE® Spacer)b | 12.1 cm | ||||
Cavity Mirrors | Type | xtal stable™ Crystalline Coating on Fused Silica Substrate | |||
Incoupling Mirror Item # | XM15R8 | XM16R8 | XM23R8 | XM14R8 | |
Outcoupling Mirror Item # | XM15P8 | XM16P8 | XM23P8 | XM14P8 | |
Reflectance (Click Icon to View Graph) | |||||
Free Spectral Range | 1.24 GHz | ||||
Windows | AR Coated, Angled and Wedged | ||||
Thermal Shielding | Active | ||||
Thermal Noise Allan Deviation (ADEV) Limitc | 1.6 x 10-16 | ||||
Linear Drift Rate | ~150 mHz/s | ||||
Ambient Temperature Sensitivity | ~4 mK/°C | ||||
Weight | ~55 kg |
Damage Threshold Specifications | ||
---|---|---|
Coating Name | Laser Type | Damage Thresholda |
xtal stable™ | CWb | 46.2 kW/cm (1064 nm, Ø5.5 mm) |
Pulsed | 5 J/cm2 (1030 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø0.240 mm) |
結晶スーパーミラーの損傷閾値データ
右の仕様は、XM-ORCシリーズ参照用光共振器内に使用されている当社の結晶ミラーに適用されます。各ミラーは受注生産であるため、これらの値は典型値を示しており、製品毎に異なる場合があります。
共振器内の強度は(フィネス/π)倍に増幅されることにご注意ください。XM-ORCシリーズ共振器ではフィネスが300 000を超える製品があるため、外部から入射されるパワーは共振器内で100 000倍に増幅される場合があります。
レーザによる損傷閾値について
このチュートリアルでは、レーザ損傷閾値がどのように測定され、使用する用途に適切な光学素子の決定にその値をどのようにご利用いただけるかを総括しています。お客様のアプリケーションにおいて、光学素子を選択する際、光学素子のレーザによる損傷閾値(Laser Induced Damage Threshold :LIDT)を知ることが重要です。光学素子のLIDTはお客様が使用するレーザの種類に大きく依存します。連続(CW)レーザは、通常、吸収(コーティングまたは基板における)によって発生する熱によって損傷を引き起こします。一方、パルスレーザは熱的損傷が起こる前に、光学素子の格子構造から電子が引き剥がされることによって損傷を受けます。ここで示すガイドラインは、室温で新品の光学素子を前提としています(つまり、スクラッチ&ディグ仕様内、表面の汚染がないなど)。光学素子の表面に塵などの粒子が付くと、低い閾値で損傷を受ける可能性があります。そのため、光学素子の表面をきれいで埃のない状態に保つことをお勧めします。光学素子のクリーニングについては「光学素子クリーニングチュートリアル」をご参照ください。
テスト方法
当社のLIDTテストは、ISO/DIS 11254およびISO 21254に準拠しています。
初めに、低パワー/エネルギのビームを光学素子に入射します。その光学素子の10ヶ所に1回ずつ、設定した時間(CW)またはパルス数(決められたprf)、レーザを照射します。レーザを照射した後、倍率約100倍の顕微鏡を用いた検査で確認し、すべての確認できる損傷を調べます。特定のパワー/エネルギで損傷のあった場所の数を記録します。次に、そのパワー/エネルギを増やすか減らすかして、光学素子にさらに10ヶ所レーザを照射します。このプロセスを損傷が観測されるまで繰返します。損傷閾値は、光学素子が損傷に耐える、損傷が起こらない最大のパワー/エネルギになります。1つのミラーBB1-E02の試験結果は以下のようなヒストグラムになります。
上の写真はアルミニウムをコーティングしたミラーでLIDTテストを終えたものです。このテストは、損傷を受ける前のレーザのエネルギは0.43 J/cm2 (1064 nm、10 ns pulse、 10 Hz、Ø1.000 mm)でした。
Example Test Data | |||
---|---|---|---|
Fluence | # of Tested Locations | Locations with Damage | Locations Without Damage |
1.50 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
1.75 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
2.00 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
2.25 J/cm2 | 10 | 1 | 9 |
3.00 J/cm2 | 10 | 1 | 9 |
5.00 J/cm2 | 10 | 9 | 1 |
試験結果によれば、ミラーの損傷閾値は 2.00 J/cm2 (532 nm、10 ns pulse、10 Hz、 Ø0.803 mm)でした。尚、汚れや汚染によって光学素子の損傷閾値は大幅に低減されるため、こちらの試験はクリーンな光学素子で行っています。また、特定のロットのコーティングに対してのみ試験を行った結果ではありますが、当社の損傷閾値の仕様は様々な因子を考慮して、実測した値よりも低めに設定されており、全てのコーティングロットに対して適用されています。
CWレーザと長パルスレーザ
光学素子がCWレーザによって損傷を受けるのは、通常バルク材料がレーザのエネルギを吸収することによって引き起こされる溶解、あるいはAR(反射防止)コーティングのダメージによるものです[1]。1 µsを超える長いパルスレーザについてLIDTを論じる時は、CWレーザと同様に扱うことができます。
パルス長が1 nsと1 µs の間のときは、損傷は吸収、もしくは絶縁破壊のどちらかで発生していると考えることができます(CWとパルスのLIDT両方を調べなければなりません)。吸収は光学素子の固有特性によるものか、表面の不均一性によるものかのどちらかによって起こります。従って、LIDTは製造元の仕様以上の表面の質を有する光学素子にのみ有効です。多くの光学素子は、ハイパワーCWレーザで扱うことができる一方、アクロマティック複レンズのような接合レンズやNDフィルタのような高吸収光学素子は低いCWレーザ損傷閾値になる傾向にあります。このような低い損傷閾値は接着剤や金属コーティングにおける吸収や散乱によるものです。
繰返し周波数(prf)の高いパルスレーザは、光学素子に熱的損傷も引き起こします。この場合は吸収や熱拡散率のような因子が深く関係しており、残念ながらprfの高いレーザが熱的影響によって光学素子に損傷を引き起こす場合の信頼性のあるLIDTを求める方法は確立されておりません。prfの大きいビームでは、平均出力およびピークパワーの両方を等しいCW出力と比較する必要があります。また、非常に透過率の高い材料では、prfが上昇してもLIDTの減少は皆無かそれに近くなります。
ある光学素子の固有のCWレーザの損傷閾値を使う場合には、以下のことを知る必要があります。
- レーザの波長
- ビーム径(1/e2)
- ビームのおおよその強度プロファイル(ガウシアン型など)
- レーザのパワー密度(トータルパワーをビームの強度が1/e2の範囲の面積で割ったもの)
ビームのパワー密度はW/cmの単位で計算します。この条件下では、出力密度はスポットサイズとは無関係になります。つまり、スポットサイズの変化に合わせてLIDTを計算し直す必要がありません(右グラフ参照)。平均線形パワー密度は、下の計算式で算出できます。
ここでは、ビーム強度プロファイルは一定であると仮定しています。次に、ビームがホットスポット、または他の不均一な強度プロファイルの場合を考慮して、おおよその最大パワー密度を計算する必要があります。ご参考までに、ガウシアンビームのときはビームの強度が1/e2の2倍のパワー密度を有します(右下図参照)。
次に、光学素子のLIDTの仕様の最大パワー密度を比較しましょう。損傷閾値の測定波長が光学素子に使用する波長と異なっている場合には、その損傷閾値は適宜補正が必要です。おおよその目安として参考にできるのは、損傷閾値は波長に対して比例関係であるということです。短い波長で使う場合、損傷閾値は低下します(つまり、1310 nmで10 W/cmのLIDTならば、655 nmでは5 W/cmと見積もります)。
この目安は一般的な傾向ですが、LIDTと波長の関係を定量的に示すものではありません。例えば、CW用途では、損傷はコーティングや基板の吸収によってより大きく変化し、必ずしも一般的な傾向通りとはなりません。上記の傾向はLIDT値の目安として参考にしていただけますが、LIDTの仕様波長と異なる場合には当社までお問い合わせください。パワー密度が光学素子の補正済みLIDTよりも小さい場合、この光学素子は目的の用途にご使用いただけます。
当社のウェブ上の損傷閾値の仕様と我々が行った実際の実験の値の間にはある程度の差があります。これはロット間の違いによって発生する誤差を許容するためです。ご要求に応じて、当社は個別の情報やテスト結果の証明書を発行することもできます。損傷解析は、類似した光学素子を用いて行います(お客様の光学素子には損傷は与えません)。試験の費用や所要時間などの詳細は、当社までお問い合わせください。
パルスレーザ
先に述べたように、通常、パルスレーザはCWレーザとは異なるタイプの損傷を光学素子に引き起こします。パルスレーザは損傷を与えるほど光学素子を加熱しませんが、光学素子から電子をひきはがします。残念ながら、お客様のレーザに対して光学素子のLIDTの仕様を照らし合わせることは非常に困難です。パルスレーザのパルス幅に起因する光学素子の損傷には、複数の形態があります。以下の表中のハイライトされた列は当社の仕様のLIDT値が当てはまるパルス幅に対する概要です。
パルス幅が10-9 sより短いパルスについては、当社の仕様のLIDT値と比較することは困難です。この超短パルスでは、多光子アバランシェ電離などのさまざまなメカニクスが損傷機構の主流になります[2]。対照的に、パルス幅が10-7 sと10-4 sの間のパルスは絶縁破壊、または熱的影響により光学素子の損傷を引き起こすと考えられます。これは、光学素子がお客様の用途に適しているかどうかを決定するために、レーザービームに対してCWとパルス両方による損傷閾値を参照しなくてはならないということです。
Pulse Duration | t < 10-9 s | 10-9 < t < 10-7 s | 10-7 < t < 10-4 s | t > 10-4 s |
---|---|---|---|---|
Damage Mechanism | Avalanche Ionization | Dielectric Breakdown | Dielectric Breakdown or Thermal | Thermal |
Relevant Damage Specification | No Comparison (See Above) | Pulsed | Pulsed and CW | CW |
お客様のパルスレーザに対してLIDTを比較する際は、以下のことを確認いただくことが重要です。
- レーザの波長
- ビームのエネルギ密度(トータルエネルギをビームの強度が1/e2の範囲の面積で割ったもの)
- レーザのパルス幅
- パルスの繰返周波数(prf)
- 実際に使用するビーム径(1/e2 )
- ビームのおおよその強度プロファイル(ガウシアン型など)
ビームのエネルギ密度はJ/cm2の単位で計算します。右のグラフは、短パルス光源には、エネルギ密度が適した測定量であることを示しています。この条件下では、エネルギ密度はスポットサイズとは無関係になります。つまり、スポットサイズの変化に合わせてLIDTを計算し直す必要がありません。ここでは、ビーム強度プロファイルは一定であると仮定しています。ここで、ビームがホットスポット、または他の不均一な強度プロファイルの場合を考慮して、おおよその最大パワー密度を計算する必要があります。ご参考までに、ガウシアンビームのときは一般にビームの強度が1/e2のときの2倍のパワー密度を有します。
次に、光学素子のLIDTの仕様と最大エネルギ密度を比較しましょう。損傷閾値の測定波長が光学素子に使用する波長と異なっている場合には、その損傷閾値は適宜補正が必要です[3]。経験則から、損傷閾値は波長に対して以下のような平方根の関係であるということです。短い波長で使う場合、損傷閾値は低下します(例えば、1064 nmで 1 J/cm2のLIDTならば、532 nmでは0.7 J/cm2と計算されます)。
波長を補正したエネルギ密度を得ました。これを以下のステップで使用します。
ビーム径は損傷閾値を比較する時にも重要です。LIDTがJ/cm2の単位で表される場合、スポットサイズとは無関係になりますが、ビームサイズが大きい場合、LIDTの不一致を引き起こす原因でもある不具合が、より明らかになる傾向があります[4]。ここで示されているデータでは、LIDTの測定には<1 mmのビーム径が用いられています。ビーム径が5 mmよりも大きい場合、前述のようにビームのサイズが大きいほど不具合の影響が大きくなるため、LIDT (J/cm2)はビーム径とは無関係にはなりません。
次に、パルス幅について補正します。パルス幅が長くなるほど、より大きなエネルギに光学素子は耐えることができます。パルス幅が1~100 nsの場合の近似式は以下のようになります。
お客様のレーザのパルス幅をもとに、光学素子の補正されたLIDTを計算するのにこの計算式を使います。お客様の最大エネルギ密度が、この補正したエネルギ密度よりも小さい場合、その光学素子はお客様の用途でご使用いただけます。ご注意いただきたい点は、10-9 s と10-7 sの間のパルスにのみこの計算が使えることです。パルス幅が10-7 sと10-4 sの間の場合には、CWのLIDTも調べなければなりません。
当社のウェブ上の損傷閾値の仕様と我々が行った実際の実験の値の間にはある程度の差があります。これはロット間の違いによって発生する誤差を許容するためです。ご要求に応じて、当社では個別のテスト情報やテスト結果の証明書を発行することも可能です。詳細は、当社までお問い合わせください。
[1] R. M. Wood, Optics and Laser Tech. 29, 517 (1998).
[2] Roger M. Wood, Laser-Induced Damage of Optical Materials (Institute of Physics Publishing, Philadelphia, PA, 2003).
[3] C. W. Carr et al., Phys. Rev. Lett. 91, 127402 (2003).
[4] N. Bloembergen, Appl. Opt. 12, 661 (1973).
レーザーシステムが光学素子に損傷を引き起こすかどうか判断するプロセスを説明するために、レーザによって引き起こされる損傷閾値(LIDT)の計算例をいくつかご紹介します。同様の計算を実行したい場合には、右のボタンをクリックしてください。計算ができるスプレッドシートをダウンロードいただけます。ご使用の際には光学素子のLIDTの値と、レーザーシステムの関連パラメータを緑の枠内に入力してください。スプレッドシートでCWならびにパルスの線形パワー密度、ならびにパルスのエネルギ密度を計算できます。これらの値はスケーリング則に基づいて、光学素子のLIDTの調整スケール値を計算するのに用いられます。計算式はガウシアンビームのプロファイルを想定しているため、ほかのビーム形状(均一ビームなど)には補正係数を導入する必要があります。 LIDTのスケーリング則は経験則に基づいていますので、確度は保証されません。なお、光学素子やコーティングに吸収があると、スペクトル領域によってLIDTが著しく低くなる場合があります。LIDTはパルス幅が1ナノ秒(ns)未満の超短パルスには有効ではありません。
ガウシアンビームの最大強度は均一ビームの約2倍です。
CWレーザの例
波長1319 nm、ビーム径(1/e2)10 mm、パワー0.5 Wのガウシアンビームを生成するCWレーザーシステム想定します。このビームの平均線形パワー密度は、全パワーをビーム径で単純に割ると0.5 W/cmとなります。
しかし、ガウシアンビームの最大パワー密度は均一ビームの約2倍です(右のグラフ参照)。従って、システムのより正確な最大線形パワー密度は1 W/cmとなります。
アクロマティック複レンズAC127-030-CのCW LIDTは、1550 nmでテストされて350 W/cmとされています。CWの損傷閾値は通常レーザ光源の波長に直接スケーリングするため、LIDTの調整値は以下のように求められます。
LIDTの調整値は350 W/cm x (1319 nm / 1550 nm) = 298 W/cmと得られ、計算したレーザーシステムのパワー密度よりも大幅に高いため、この複レンズをこの用途に使用しても安全です。
ナノ秒パルスレーザの例:パルス幅が異なる場合のスケーリング
出力が繰返し周波数10 Hz、波長355 nm、エネルギ1 J、パルス幅2 ns、ビーム径(1/e2)1.9 cmのガウシアンビームであるNd:YAGパルスレーザーシステムを想定します。各パルスの平均エネルギ密度は、パルスエネルギをビームの断面積で割って求めます。
上で説明したように、ガウシアンビームの最大エネルギ密度は平均エネルギ密度の約2倍です。よって、このビームの最大エネルギ密度は約0.7 J/cm2です。
このビームのエネルギ密度を、広帯域誘電体ミラーBB1-E01のLIDT 1 J/cm2、そしてNd:YAGレーザーラインミラーNB1-K08のLIDT 3.5 J/cm2と比較します。LIDTの値は両方とも、波長355 nm、パルス幅10 ns、繰返し周波数10 Hzのレーザで計測しました。従って、より短いパルス幅に対する調整を行う必要があります。 1つ前のタブで説明したようにナノ秒パルスシステムのLIDTは、パルス幅の平方根にスケーリングします:
この調整係数により広帯域誘電体ミラーBB1-E01のLIDTは0.45 J/cm2に、Nd:YAGレーザーラインミラーのLIDTは1.6 J/cm2になり、これらをビームの最大エネルギ密度0.7 J/cm2と比較します。広帯域ミラーはレーザによって損傷を受ける可能性があり、より特化されたレーザーラインミラーがこのシステムには適していることが分かります。
ナノ秒パルスレーザの例:波長が異なる場合のスケーリング
波長1064 nm、繰返し周波数2.5 Hz、パルスエネルギ100 mJ、パルス幅10 ns、ビーム径(1/e2)16 mmのレーザ光を、NDフィルタで減衰させるようなパルスレーザーシステムを想定します。これらの数値からガウシアン出力における最大エネルギ密度は0.1 J/cm2になります。Ø25 mm、OD 1.0の反射型NDフィルタ NDUV10Aの損傷閾値は355 nm、10 nsのパルスにおいて0.05 J/cm2で、同様の吸収型フィルタ NE10Aの損傷閾値は532 nm、10 nsのパルスにおいて10 J/cm2です。1つ前のタブで説明したように光学素子のLIDTは、ナノ秒パルス領域では波長の平方根にスケーリングします。
スケーリングによりLIDTの調整値は反射型フィルタでは0.08 J/cm2、吸収型フィルタでは14 J/cm2となります。このケースでは吸収型フィルタが光学損傷を防ぐには適した選択肢となります。
マイクロ秒パルスレーザの例
パルス幅1 µs、パルスエネルギ150 µJ、繰返し周波数50 kHzで、結果的にデューティーサイクルが5%になるレーザーシステムについて考えてみます。このシステムはCWとパルスレーザの間の領域にあり、どちらのメカニズムでも光学素子に損傷を招く可能性があります。レーザーシステムの安全な動作のためにはCWとパルス両方のLIDTをレーザーシステムの特性と比較する必要があります。
この比較的長いパルス幅のレーザが、波長980 nm、ビーム径(1/e2)12.7 mmのガウシアンビームであった場合、線形パワー密度は5.9 W/cm、1パルスのエネルギ密度は1.2 x 10-4 J/cm2となります。これをポリマーゼロオーダ1/4波長板WPQ10E-980のLIDTと比較してみます。CW放射に対するLIDTは810 nmで5 W/cm、10 nsパルスのLIDTは810 nmで5 J/cm2です。前述同様、光学素子のCW LIDTはレーザ波長と線形にスケーリングするので、CWの調整値は980 nmで6 W/cmとなります。一方でパルスのLIDTはレーザ波長の平方根とパルス幅の平方根にスケーリングしますので、1 µsパルスの980 nmでの調整値は55 J/cm2です。光学素子のパルスのLIDTはパルスレーザのエネルギ密度よりはるかに大きいので、個々のパルスが波長板を損傷することはありません。しかしレーザの平均線形パワー密度が大きいため、高出力CWビームのように光学素子に熱的損傷を引き起こす可能性があります。
XM-ORCシリーズの参照用光共振器には以下のコンポーネントが含まれます。
- XM-ORC用ステンレススチール製真空チャンバ、高フィネスキャビティおよびイオンゲッターポンプ付き
- イオンゲッターポンプコントローラ、電源および日本国内用の電源コードが付属
- イオンゲッターポンプ用接続ケーブル
- ベンチトップ型温度コントローラ、日本国内用の電源コードが付属
- 温度安定化用ケーブル
- XM-ORCのマニュアルが納められたUSBスティック
- イオンゲッターポンプとそのコントローラのマニュアルが納められたUSBスティック
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レーザ安定化の実験セットアップ例
レーザ安定化
XM-ORCシリーズの高フィネス共振器は、当社の低損失結晶コーティングミラーを用いた、標準化された参照用共振器です。この共振器は、周波数ドリフトを低く抑えるために、真空封止された筐体内に取り付けられています。右の図は、ターンキー式超低ノイズレーザULN15TKのような外部共振器型レーザの周波数を、PDH(Pound-Drever-Hall)ロック方式でXM-ORC参照用共振器にロックし、線幅がサブHzの極めて安定なレーザーシステムを実現する方法の一例を示しています。このようなシステムは光時計や高分解能分光のような高い性能が求められる用途にご利用いただけます。
ロック用回路からの信号でレーザを直接RF変調する(またはレーザ光を電気光学素子で外部変調する)ことで、PDH側帯波を生成します。XM-ORCキャビティからの反射光信号を復調することでエラー信号を取得し、それをサーボフィルタで処理してレーザの周波数を光共振器の共振周波数にロックするのに使用します。速い変動と遅い変動(温度によるドリフトなど)は分離して制御しています。
Posted Comments: | |
Long wenhan
 (posted 2023-10-11 13:46:02.347) 为什么这个产品停产了呢 ksosnowski
 (posted 2023-10-12 11:46:54.0) Hello, thanks for reaching out to Thorlabs. The XM-ORC15 superseded the XM-ORC11 cavity as we have upgraded to mirrors with higher finesse at 1064nm. |