光ピンセットとは


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Trapping Schematic

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集光されたレーザ光の中の粒子(光の波長よりも大きな粒子)に及ぼされる勾配力を図示しています。

光ピンセットの基本原理
光ピンセットは光トラップとも呼ばれています。高い開口数の対物レンズを用いてレーザ光を極限まで集光すると、光子の散乱による運動量の伝達により、マイクロメートル程度の大きさの粒子をトラップする力が生じます。

1970年代の初めにArthur Ashkin氏が光トラップ力でマイクロメートル程度の大きさの誘電体粒子を水中で操作できることを証明しました(A. Ashkin. Phys. Rev. Lett. 24, 156 - 159 [1970]およびA. Ashkin et al. Opt. Lett. 1, No. 5, [1986])。 この技術により粒子を保持・操作することが可能になり、またフェムトニュートンまたはピコニュートンレベルのトラップ力が測定できるようになったため、光トラップはバイオエンジニアリングや、材料科学、物理学などの幅広い分野で重要なツールとなってきました。

粒子の大きさとトラップ波長の関係により、光トラップの理論を展開する際には2つの領域に分けて考える必要があります。 ミー散乱の領域では、トラップされる粒子の直径は光の波長よりもかなり大きく、トラップは光線光学の域内で説明できます。 光線は粒子を透過する際に屈折し、それがもたらす運動量の変化によって力が生じます。 粒子がレーザの光軸上にいない場合、ビーム中心により近い場所の光線が強いので、ビームの端に近い光線にくらべて、粒子により大きな運動量を伝達します。 このことで、粒子に対して、横方向の「勾配」力がビーム中心に向けて働きます。 粒子がレーザ光線の中心の位置に来れば、粒子内を屈折しながら進む光は対称形となり、その粒子は横方向ではトラップされます。

軸方向の力の動きはさらに複雑です。 粒子がレーザ光線の焦点に近い位置にあるとき、下図と右図にあるように、勾配力「Fgradient 」は焦点に向かって働きます。 さらに、光線が溶剤と粒子の界面で後方散乱するので、その散乱光が粒子に運動量を伝えることになり、光線の進行方向へ散乱力が働きます。 以上の2つの力を合わせると、全ポテンシャルはビーム集光部よりもわずかに下流にオフセットした場所で最小となります。 顕微鏡の像面で粒子をトラップするには、散乱力を補償するために、レーザ光の焦点は若干オフセットしている必要があります。

レイリ散乱の領域では、粒子の直径は波長よりもかなり小さくなり、光線光学は適用できなくなります。 この領域でのトラップ力を説明する時は、トラップされた粒子を点双極子であると考えます。 散乱力は光の吸収と再放射から生じ、勾配力はレーザ光の不均一場と粒子の誘起双極子との相互作用の結果として生じます(C. N. Keir and M. B. Steven. Review of Scientific Instruments 75, No. 9, 2004)。

波長に近い粒子サイズに対しては、ミー理論もレイリ理論も適用できないので、電磁気学的解釈はさらに複雑になります。 この理論を説明している論文は複数ありますが、下記が1例です:E. Almaas and I. Brevik. J. Opt. Soc. Am. B 12, 2429, 1995; J. P. Barton, J. Appl. Phys. 64, 1632 (1988); P. Zemanek et al. J. Opt. Soc. Am. A 19, 1025 (2002); K. F. Ren et al. Opt. Commun. 108, 343 (1994)。

光ピンセットによるトラップ力の測定
光ピンセットには、粒子に加わる力を測定する機能があり、生体タンパク質などの細胞組織や分子モータを研究する上で有益なツールになっています。 光ピンセットがトラップ用レーザ光の焦点に向けて粒子に加える力の大きさは、トラップ中心の近傍では粒子から焦点までの距離に比例します。この屈折量は4分割フォトダイオード(QPD)によって電気信号に変換されます。これにより、後焦点面での干渉法を通じて粒子の位置に比例する電圧を生成します(F. Gittes and C. F. Schmidt. Opt. Lett. 23, No. 1, 1998)。

正確なトラップ力の測定には、トラップのバネ定数および粒子位置ディテクタの応答特性(感度)の精密な校正が求められます。なお、ディテクタの応答特性(感度)は、レーザーパワーと粒子の性質によって変化します。 トラップのバネ定数の値を求める一般的な方法には、パワースペクトル密度(PSD)ロールオフ法、等分配法およびストークスの抗力を用いる方法があります。

PSDロールオフ法では、トラップされた粒子のブラウン運動による位置の時間変化のパワースペクトル密度を計算します。 これは、溶剤の粘度を既知とすると、それによるダンピングを含む調和振動子の応答と同じになり、以下の式で表されます。

PSD Roll-off Equation

ここで、Svvは未校正のパワースペクトル、ρは線形電圧変位校正因子、kBはボルツマン定数、Tは媒質の温度、βは抵抗係数で、f0はコーナ)周波数です。

等分配法では、トラップされた粒子の平均的なポテンシャルエネルギと、を溶剤中の分子の熱エネルギとが一致するとします(エネルギなど分配の法則)。ストークスの方法では、様々な速度で試料を移動させます。そこで粒子の粘性抵抗とトラップ力のバランスを計算します。それぞれの方法は、異なる物理法則に基づいているので、校正を検証する際に組み合わせて利用すると便利です。PSDロールオフ法は、位置ディテクタの校正が正確かどうかを検出する方法として特に有効です。理由は、この方法は他の2つの方法のようにディテクタの応答特性(感度)に依存しないからです。


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