テラヘルツ(THz)光伝導アンテナ、800 nmフェムト秒レーザー入力用
- THz Emission or Detection: 0.1 THz - 3 THz
- Femtosecond Laser Excitation with 800 nm Center Wavelength
- HRFZ-Si Collector Lens on THz Output/Input
- Low Bias Voltage: ±15 V
PCA800
THz Photoconductive Antenna for 800 nm
THz Output/Input Side Showing HRFZ-Si Collector Lens
Operation of the PCA800 Antenna as an Emitter
Focused Laser Pulse Input
THz Output
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光伝導アンテナPCA800をTHzレシーバとして使用
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THz光伝導アンテナPCA800の光入力側
特長
- 時間ドメイン分光法用のTHzエミッタまたはレシーバ
- THz波放射: 0.1 THz~3 THz
- 中心波長800 nm付近のフェムト秒レーザ入力が必要
- 低いバイアス電圧:±15 V
- 長さ990 mmの同軸ケーブル(オス型BNCコネクタ付き)が内蔵
テラヘルツ(THz)光伝導アンテナPCA800は、周波数領域0.1~3 THzにおけるTHz放射のエミッタまたはレシーバとしてお使いいただけます。このアンテナは、どちらの用途でも中心波長800 nm付近の集光された直線偏光のフェムト秒パルスレーザ入力が必要です。入力光(直線偏光)の偏光方向は、アンテナの光入力側に刻印されている偏光軸に対して平行にアライメントしてください。入力ビームは、マイクロレンズアレイによってGaAsアンテナのインターリーブフィンガー構造に集光されます。アンテナ構造の詳細については「アンテナの設計」タブをご覧ください。
光伝導アンテナPCA800をTHzエミッタとして使用する場合、マイクロレンズアレイによって±15Vの低バイアス電圧でTHz放射を効率的に生成できます。光伝導アンテナのTHz出力側にあるSi製ハイパー半球レンズ(THzレンズ)により、THz波は光軸に対して15°の発散角を持つ発散ビームとして放射されます。このビームは、THzレンズ TPXシリーズまたは軸外放物面ミラーを使用してコリメートまたは再集光することができます。必要な光入力と予想されるTHz出力の詳しい仕様については「仕様」タブをご覧ください。
アンテナPCA800をレシーバとして使用する場合、フェムト秒レーザ入力が必要です。 右上の図では、レシーバとして使用したアンテナの動作について示されています。Si製ハイパー半球レンズで効果的に集光するためには、THz入力のNAは0.26(光軸に対して15°の半角に相当)以下でなくてはなりません。2つのパルスがレシーバ内で一致すると、接続されたケーブルを介して小さな信号が検出されます。この電子信号は小さいため、ロックインアンプを使用して信号を平均化することをお勧めいたします。
こちらのアンテナは、時間領域分光法用のゲート式パルスレーザ広帯域THz測定システムのTHzエミッタまたはレシーバとして、あるいはチューナブルCW放射THz波の測定システムにおける光混合エミッタまたはレシーバとしてお使いいただけます。「グラフ」タブでは、光伝導アンテナPCA800のペア(片方はエミッタ、もう一方はレシーバとして使用)による性能データをご覧いただけます。「THzの用途」タブでは、これらのペアのアンテナを時間ドメイン分光法用のシステムで使用する方法についての詳しく説明しています。
取付オプション
30 mmケージシステムに簡単に組み込み、アンテナを回転させて、入射する直線偏光の光パルスにアライメントする機能と組み合わせることで、アンテナPCA800をケージ回転マウントCRM1LT/Mに取り付けることができます。また、光伝導アンテナPCA800の光入力側にはSM05内ネジが付いており、付属のエンドキャップSM05CP2を保持してアンテナを保護したり、当社の12.7 mm(1/2インチ)レンズチューブに使用してアンテナの光入力部に光学部品を直接取り付けたりすることができます。
Hyperhemisperical Lens Specificationsa | |
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Material | Undoped High Resistivity Float Zone Silicon (HRFZ-Si) |
Specific Resistance | > 10 kΩcm |
Refractive Index | 3.41 |
Diameter | 12 mm |
Height | 7.1 mm |
PCA800 General Specifications | |
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THz Beam Divergence | 15° |
THz Beam Virtual Focal Lengtha | 27.9 mm |
THz Output Powerb | < 7 μW |
Max Bias Voltage | ±15 V |
Bias Modulation Frequency | 0 - 10 MHz |
Excitation Laser Center Wavelengthc | 800 nm |
Excitation Laser Polarization | Linear |
Average Laser Power (P)d | < 500 mW |
Average Laser Intensityd,e | < 620 W/cm2 |
Laser Fluenced | < 6 µJ/cm2 |
Laser Beam Diameter (2*w0)f | 100 - 300 µm |
Laser Pulse Durationg | < 100 fs |
Dark Resistance, Rdh | > 40 kΩ |
Bias/Output Connector | BNC |
Cable Length | 1 m |
Storage Temperature | -10 °C - 65 °C |
Package Dimensions | Ø1" x 0.6" (Ø25.4 mm x 15.8 mm) |
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虚焦点の定義を示したPCA800の断面図
Photoconductive Antenna Specifications | |
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Substrate Material | Semi-Insulating GaAs |
Chip Area | 4 mm x 4 mm |
Thickness | 650 μm |
Active Area | 300 μm x 300 μm |
Dipole Length | 21 μm |
Gap Distance | 5 μm |
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光伝導アンテナPCA800には、効率的なFill Factor(開口率)を備えたマイクロレンズアレイがあり、入射ビームの大部分をアンテナのインターリーブ電極の間にそれぞれ集光します。左上の写真は、マイクロレンズアレイを通して見たアンテナの検出部です。右上の図はアンテナの微細構造を示しています。この図内に示されている測定値は原寸比ではありませんのでご注意ください。
光伝導アンテナPCA800のペアによる性能グラフを下記に掲載しています。このアンテナのペアは、Ti:サファイアレーザOCTAVIUS-85M-HPおよび2逓倍周波数のフェムト秒ファイバーレーザFSL1550を使用してテストされました。THz電界およびスペクトルデータの取得方法については下記で簡単に説明しています。このような一般的なシステムの詳細については、「THz派の用途」タブをご覧ください。
どちらのレーザでも、アンテナPCA800への入力としてフェムト秒の赤外域(IR)パルスを出力して、THz出力パルスの生成に使用されました。このTHzパルスはTHzレンズで集光され、検出のために2つ目のアンテナPCA800に向かいます。実験で使用された入力パルスの詳細にについては下記に示されています。
THz放射の生成に使用されるフェムト秒パルスの一部(約10%)はレシーバーアンテナに向けられました。このフェムト秒パルスは、可変遅延経路を使用してレシーバーアンテナPCA800全体で時間軸で走査されました。フェムト秒パルスとTHz放射を同時にレシーバーアンテナに入射させると、発生した信号はBNCケーブルを介してレシーバーアンテナPCA800に収集されます。フェムト秒光パルスはTHzパルスよりも大幅に短いため、フェムト秒パルスを時間軸で走査することにより、THz電界をフェムト秒パルス幅の分解能で時間の関数として直接サンプリングできます。これらの走査結果は、下記のTHz電界グラフに示されています。この電界をフーリエ変換することにより、エミッターアンテナ内で発生するTHzパルスのスペクトルを取得しています。
下記グラフのTHz電界およびスペクトルに関するExcel形式の生データはこちらからダウンロードいただけます。
上記のデータにおいて、光伝導アンテナPCA800への入力は、ビーム径250 µm 1/e2、平均パワー300 mWでTi:サファイアレーザOCTAVIUS-85M-HPから行われています。スペクトルの中心波長は780 nmで、部分的に分散が補正されているため、パルス幅は20 fsになりました。アンテナにはBNCコネクタを介して15 VのDCバイアスを印加し、信号の変調周波数は4 kHzでした。 THzスペクトルグラフの青い網掛け部分は、アンテナPCA800の推奨周波数領域を示しています。
上記データではアンテナPCA800に対して、フェムト秒ファイバーレーザFSL1550の第2高調波発生による入力を行いました。2逓倍周波数での出力は、中心周波数775 nmで、24 fsのパルス幅に分散補正されており、平均パワー50 mW、ビーム径250 µm 1/e2でした。アンテナにはBNCコネクタを介して15 VのDCバイアスを印加し、信号の変調周波数は4 kHzでした。THzスペクトルグラフの青い網掛け部分は、アンテナPCA800の推奨周波数領域を示しています。
THz時間ドメイン分光システムの概要
上の図は、光伝導アンテナPCA800のペアを使用して構築可能な時間ドメイン分光システムの一例です。
THz放射を利用した時間ドメイン分光法(TDS)では、フィールドの強度だけしか直接測定できない光学場の分光法とは異なり、検出したい放射の振幅と位相の両方を測定できます。この手法を利用して、金属やガスなどさまざまな材料を測定できます。これらのシステムで使用されるTHz放射は、光伝導アンテナPCA800のペアによって生成および検出できるため、0.1~3THzの範囲での分光測定が可能です。上記のシステムでは、使用する部品と、THzアンテナPCA800のペアを使用して構築できるTHz TDSシステムの基本的な光学配置図の1例を示しています。THz TDSについての詳細は、「Tutorial: An introduction to terahertz time domain spectroscopy (THz-TDS)」1をご参照ください。
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光伝導アンテナPCA800のパルス光としては、Ti:サファイアレーザOCTAVIUS-85M-HPの出力光、またはフェムト秒ファイバーレーザFLS1550の出力をBBO結晶で2倍の周波数に変換したパルス光を使用できます。
THz放射の生成
THz TDSシステムへは、主に中心波長800 nm付近のフェムト秒パルスレーザ光を入力します(上図内左下参照)。このパルスは、Ti:サファイアレーザOCTAVIUS-85M-HPを用いて入力するか、またはβ-BBO結晶NLC07を使用してフェムト秒ファイバーレーザFSL1550の出力光を2倍の周波数に変換して入力することができます。これらのレーザは、ペアの光伝導アンテナPCA800の性能データを得るために、このようなシステムに使用されています。
上記システムでは、光入力パルスは2つのビームに分岐され、光の大部分(90%)はTHz放射を生成します(上図では励起システムと表示されています)。レシーバーアンテナの信号は小さく、ロックインアンプが推奨されるため、THzの放射信号を変調する必要があります。この変調は、励起ビームに光チョッパを使用するか、光伝導アンテナのバイアス電圧を変調して行います。上記のシステムでは光チョッパを使用して光入力パルスを変調していますが、これにより、光伝導アンテナからのTHz放射が変調されます。
効率的なTHzを発生させるために、励起ビームは光伝導アンテナの光入力面に対して垂直で、アクティブエリアに集光して入射します。レーザの偏光方向は、光伝導アンテナPCA800の入力側に刻印されているPol.軸に対して平行にアライメントする必要があります。光伝導アンテナの推奨フルエンスレベル(J/cm2)を超えないようご注意ください。
光伝導アンテナの飽和レベルまでは、入力する光パワーが大きいほど、より多くのTHzパワーが出力されます。THz出力スペクトルは光入力特性にも依存します。例えば、入力パルスの分散補償はTHzの発生効率とTHz出力のスペクトルプロファイルの両方に影響を与えます2。簡単に言えば、フーリエ変換限界パルスが入力される場合、それよりも長いチャープ入力パルスの入力時よりも広いスペクトル成分を有するTHzが放射されます。これはチャープパルスの遅延した周波数成分がTHz放射と干渉して弱め合い、そのスペクトルプロファイルに影響を与えるためです。
光入力パルスに加えて、内蔵された同軸ケーブルを介して光伝導アンテナPCA800全体に電圧も印加します 上記のシステムでは光伝導アンテナにDC電圧を印加しています。推奨制限内で印加される電圧が大きいほど、より多くのTHzパワーが光伝導アンテナから放出されます。光チョッパを使用しない場合は、変調電圧を光伝導アンテナに印加してTHz出力を変調することができます。
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THz電界のフーリエ変換のグラフ。THzスペクトルグラフの青い網掛け部分は、光伝導アンテナPCA800の推奨周波数領域を示しています。
エミッターアンテナからのTHz出力は、光軸に対して15°の発散角を有し、THzレンズまたは軸外放物面ミラーのいずれかを使用しコリメートまたは集光することができます。試料を通過したTHz放射光は、同じタイプのレンズまたはミラーを使用して、光をTHzレシーバーアンテナに送ることができます。エミッターアンテナ出力からレシーバーアンテナ入力へは、1:1のイメージングをお勧めいたします。THz入力ビームは、レシーバーアンテナのTHz入力側にあるSi製ハイパー半球レンズ(THzレンズ)で集光されます。
オプティカル・ディレイラインおよびTHz信号の検出
レシーバーアンテナでの検出には、THz波の入力とフェムト秒レーザ入力パルスの両方が必要です。上図のように、エミッターアンテナでTHz放射を発生させるのに使用されるパルスの10%は分岐され、レシーバーアンテナで使用されます。これは図内では「Delay beam(遅延ビーム)」と表示されています。
分割されたパルスのうち10%(Delay)の部分が、励起部分で発生したTHzパルスと同じタイミングでレシーバーアンテナに到達するように光路が設定されます。この遅延光路を設定する場合は、90/10ビームスプリッタからレシーバーアンテナPCA800までの光路全体を考慮するようにしてください。これには、光伝導アンテナPCA800に内蔵された厚さ7.1 mm、屈折率約3.41のHRFZ-Siレンズと、集光用の外付けレンズも含まれます。レシーバーアンテナ部分では、エミッターアームと同じ光学設計で入力レーザービームをディテクターアンテナの検出部にアライメントします。ただし、強度はエミッターアンテナで使用される値の約10%と、はるかに低くなっています。
フェムト秒光パルスの幅はTHzパルスよりもかなり短くなっています。したがって、それらは、アンテナで短時間(光パルスの幅分)だけオーバーラップします。THzパルス全体をサンプリングするために、電動ステージ(ステッパ、DCサーボ、またはボイスコイル駆動のようなステージ)に取り付けられたレトロリフレクタなどを使用して光パルス遅延がスキャンされます。また、当社ではオプティカル・ディレイラインシステムを介して最大4000 psの可変遅延に対応可能な一体型システムもご用意しています。
レシーバーアンテナ用出力BNCケーブルの信号レベルは低くなるため、ロックインアンプを使用して平均化することをお勧めいたします。光チョッパへの信号またはエミッターアンテナへの変調信号を使用してロックインアンプをトリガします。
右図(上)でTHz電場データの一例を示しています。この実験において、Ti:サファイアレーザOCTAVIUS-85M-HPにより、光伝導アンテナPCA800へ、ビーム径250 µm 1/e2、平均パワー300 mWのパルス光が入力されます。光入力スペクトルの中心波長は780 nmで、部分的に分散が補正されているため、パルス幅は20 fsになりました。光伝導アンテナにはBNCコネクタを介して15 VのDCバイアスを印加し、4 kHzの信号変調周波数で光チョッパを駆動しました。軸外放物面ミラーMPD229-M03のペアを使用してエミッターアンテナPCA800からのTHz放射をコリメートし、レシーバーアンテナPCA800に再び集光させました。電界のフーリエ変換を行うことによりTHz放射のスペクトルを計算できます(右下のグラフ参照)。
このシステムは時間ドメイン分光法の実験にお使いいただけます。試料の光路長は電界信号への効果を測定して得ることができます。THz放射光路に光路長が追加されると、電界信号は時間軸でシフトします。THz領域内のスペクトル特性は、光路に試料を挿入した場合と挿入しない場合のTHzスペクトルを比較して測定することもできます。
参考文献
- J. Neu and C. A. Schmuttenmaer, "Tutorial: An introduction to terahertz time domain spectroscopy (THz-TDS)," Journal of Applied Physics 124.23 (2018) p. 231101.
- J. Hamazaki, K. Furusawa, N. Sekine, A. Kasamatsu, and I. Hosako, "Effects of chirp of pump pulses on broadband terahertz pulse spectra generated by optical rectification," Japanese Journal of Applied Physics 55.11 (2016) p. 110305.
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