マウント無しフォトダイオードの実験データ


マウント無しフォトダイオードの実験データ


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マウント無しフォトダイオードのラインナップは
こちらからご覧いただけます。

概要

こちらのページでは当社が提供するフォトダイオードの性能に関して当社が実施した実験をまとめています。それぞれの実験については各タブでご覧いただけます。「ノイズフロア」タブでは、フォトダイオードの飽和限界とノイズフロア、および温度、抵抗率、逆バイアス電圧、応答特性、システムの帯域幅などがフォトダイオードの出力ノイズに与える影響を調べています。感度均一性」のタブでは、フォトダイオードの材料または入射光の波長を変えたとき、感度の均一性がどのように変化するかを調べています。また、このセクションでは、同一型番製品の複数のサンプルにおける感度均一性のバラつきについてもご覧いただけます。「暗電流」タブおよび「NEP」タブでは、それぞれ暗電流またはNEPが温度によってどのように変化するか、そしてそれが測定結果にどのような影響を与えるかを記述しています。「ビームサイズ」タブでは、フォトダイオードの飽和点が入射光のビームサイズによってどのように変化するかを示し、それらの結果を説明するために複数の理論モデルについて調べています。「バイアス電圧」タブでは、入射光パワーに対するフォトダイオードの電子回路の有効逆バイアス電圧の変化を調べ、変化を予想するために信頼できるモデルを検証しました。

About Our Lab Facts

Our application engineers live the experience of our customers by conducting experiments in Alex’s personal lab. Here, they gain a greater understanding of our products’ performance across a range of application spaces. Their results can be found throughout our website on associated product pages in Lab Facts tabs. Experiments are used to compare performance with theory and look at the benefits and drawbacks of using similar products in unique setups, in an attempt to understand the intricacies and practical limitations of our products. In all cases, the theory, procedure, and results are provided to assist with your buying decisions.

Beamsplitter Split Ratios
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図1. フォトダイオードの応答曲線。
飽和限界とノイズフロアの概要を表示。

フォトダイオードの飽和限界とノイズフロア

ここでは当社のシリコンフォトダイオードの飽和限界とノイズフロアの測定結果をご紹介しています。フォトダイオードはすべて同じように機能しますが、フォトダイオードのノイズフロアと飽和限界はセンサ温度、抵抗率、逆バイアス電圧、応答特性、そしてシステムの帯域幅など多くのパラメータの影響を受けます。この実験ではシリコンフォトダイオード光検出システムにおける逆バイアス電圧と負荷抵抗の影響について調べました。逆バイアスの増加により飽和限界値は上がりましたが、ノイズフロアへの影響はわずかでした。負荷抵抗を小さくするとノイズフロアは測定システムのノイズレベルまで下がりましたが、飽和限界値も下がりました。これらの結果は逆バイアス電圧および負荷抵抗を選択する上で考慮すべき点を示しており、また、検出システムを構成する際にはすべての部品から生じるノイズを考慮すべきであることを示しています。

実験にはシリコンフォトダイオードFDS100を使用しました。光源には光パワーが0~50 mWのファイバーピグテール付き半導体レーザからのコリメート光を使用しています。コリメート光はまずビームスプリッタに入射しますが、大部分の光は透過して試験対象のフォトダイオードに入射するようにし、反射された残りの光は参照用のパワーセンサに入射しました。この状態で負荷抵抗と逆バイアス電圧を様々に変化させ、フォトダイオードの応答特性を評価しました。

右ならびに下のプロット図では、様々なテストに対する測定結果をまとめています。これらのグラフにより、様々な逆バイアス電圧ならびに負荷抵抗下でのフォトダイオードの線形応答性、ノイズフロア、そして飽和限界の変化がご覧いただけます。図1は5 Vの逆バイアス電圧ならびに10 kΩの負荷抵抗におけるフォトダイオードの応答特性です。出力電圧が逆バイアス電圧に近づくと、フォトダイオードの応答は上限値で飽和します。応答の下限値であるノイズフロアは、暗電流ならびに負荷抵抗の熱雑音(ジョンソンノイズ)によるものです。図2は、1 kΩの負荷抵抗のもとで逆バイアス電圧を様々に変えた時のフォトダイオード出力の測定結果をまとめています。逆バイアス電圧を(仕様値内で)増加させると飽和限界値が上がることを示しています。図3では5 Vの逆バイアス電圧のもとで様々に負荷抵抗値を変えたときのフォトダイオード出力電圧の測定結果です。負荷抵抗を増やすと、電圧応答の傾斜が急峻になることを示しています。図4では0 Vの逆バイアス電圧のもとで、負荷抵抗値を様々に変えたときのノイズフロアの測定結果をまとめています。負荷抵抗が大きくなるとノイズフロアも上昇します。なお、1 kΩのデータでは、測定システム内の電圧ノイズによりジョンソンノイズの理論値以上の値が測定されました。5 Vの逆バイアス電圧でのノイズフロアの変化は全体的に僅かでした。この実験に使用された装置や実験結果のまとめはこちらをクリックしてご覧ください。

Photodiode Response vs Bias
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図2. 出力電圧の逆バイアス電圧依存性
Photodiode Noise Floor
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図4. 様々な負荷抵抗における応答特性
Photodiode Response vs Load
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図3. 様々な負荷抵抗におけるノイズフロア
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図1感度はフォトディテクタから出力される光電流の大きさと入射光パワーとの関係を示し、入射光の波長に依存します。

フォトダイオードの感度は受光面全体で均一か? 

フォトディテクタからの出力信号の大きさは、入射光のパワーと波長に依存します。感度は出力信号と入射光パワーの関係を表し、その大きさは出力される光電流を入射光パワーで割った値になります。感度の単位はamps/wattですが、その値は波長によっても変化します。しかし、フォトダイオードの受光面内のどの部分に光が入射するかで感度が変化することは、しばしば見過ごされがちです。

この実験では、フォトダイオードの受光面よりも小さいビーム径の光で受光面全体を走査し、フォトディテクタの感度の変化を調べました。試験したフォトディテクタは、ガリウムリン(GaP)、シリコン(Si)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)、ゲルマニウム(Ge)のマウント済みフォトダイオードです。

感度の波長依存性1,2
感度が波長によって変化する一つの理由は、光パワー、波長、および光生成電子の関係性にあります。受光面に光ビームが入射したとき、ビーム内のエネルギを光の入射時間で割った値に等しい光パワーがディテクタに供給されます。単一波長のビームのエネルギは、入射する光子数に単一光子のエネルギを掛けた値と等しくなります。光の波長が短くなると光子のエネルギは大きくなります。もし波長が短くなっても光パワーが同じならば、入射する光子数が減少したことを意味します。

フォトディテクタ内では、単一光子からは単一の電子しか生成できません。そのため、光パワーを一定に保ったまま入射光の波長を短くすると光電流は減少します。感度は単位時間あたりの入射光子数ではなく、入射光パワーに対して出力される光電流の大きさを表すため、波長が短いと感度は低くなります。図1の感度曲線は、波長が長くなると感度が大きくなる様子を表している例です。

長波長側におけるフォトディテクタの感度は、半導体材料固有の特性によって制限されます。入射光子が光電流に寄与するには、光子は電子をホスト原子との結合から解放するのに十分なエネルギを持っている必要があります。長波長側の限界を超えた波長域では、光子のエネルギは電子を解放するのに十分ではなくなります。この限界の波長はフォトダイオードを構成する半導体材料によって決まります。

フォトダイオード受光面内の感度分布1,2
光子のエネルギを吸収してホスト原子との結合から解放された電子は、光生成電子となります。光生成電子は、電子が生成された場所から半導体材料を通過して電極との接続部まで移動した場合にのみ光電流に寄与します。光生成電子がその接続部に到達する前に半導体材料に再吸収されてしまうと、光電流には寄与しません。その可能性は半導体材料内に欠陥がある場合に大きくなります。

欠陥とは半導体の結晶格子が不完全な部分のことで、結晶格子内の転位、不純物、ボイドなどが含まれます。また、実際の結晶は大きさが有限であり、その表面も欠陥になります。完全結晶であるためには長さ、高さ、幅ともに無限である必要があります。半導体結晶内の欠陥では光生成電子は高い確率で吸収され、電子は光電流に寄与することなく、そのエネルギは熱に変えられてしまいます。

欠陥付近に発生した光生成電子は再吸収されやすく、従って光電流には寄与しにくくなります。半導体内の欠陥密度を小さくすることはできますが、フォトダイオードに使用されている半導体結晶は完全ではありません。欠陥密度が半導体結晶の体積内で一様でないことや、ある種の半導体材料の結晶成長では他の材料よりも多くの欠陥が生じやすいといったことは珍しいことではありません。

もし半導体材料の体積内での欠陥密度が一様でなければ、各領域で発生する光電流の大きさは異なると考えられます。フォトディテクタの感度は光電流の大きさに依存するため、フォトディテクタに入射する光の位置を変えたときに、欠陥密度の変化に伴って感度も変わることになります。この影響を以下の方法で調べました。


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図2: フォトダイオード受光面における感度の変化を測定するためのセットアップ。写真に見えるコンポーネントは以下の通りです:(A)反射型コリメータ、(B)アクロマティック複レンズ、(C)垂直方向に取り付けられた直線移動ステージ、(D)試験対象のフォトディテクタ、 (E)2台の水平移動ステージ

実験セットアップと実験結果

測定の目的
複数のフォトディテクタに対して、受光面における感度の均一性を調べるための試験を行いました。GaP(1台)、Si(4台)、InGaAs(2台)、Ge(2台)をベースにしたフォトディテクタの感度均一性を、波長を選択して測定しました。試験内容は以下の通りです。

  • 9台のフォトディテクタを全てピーク感度に近い波長で試験 (結果はページ下の表1を展開するとご覧いただけます)
  • Si、InGaAs、Geをベースにしたフォトディテクタを3種類の波長で試験 (結果はページ下の表2を展開するとご覧いただけます)
  • 8台のSiをベースにしたフォトディテクタをピーク感度に近い波長で試験 (結果はページ下の表3を展開するとご覧いただけます)

実験セットアップ(文中の記号は図2に示すコンポーネントの記号に対応)
この実験セットアップでは、まず光源(写真には表示されていません)と、キネマティックマウントKM100Tに取り付けられたコリメータRC12APC-P01(A)とをファイバで結合しています。次に、マウントST1XY-D(/M)内に取り付けられた焦点距離150 mmのアクロマティック複レンズAC254-150-A(B)を用いて、光をフォトディテクタ(D)の受光面上に集光します。フォトディテクタは磁気接合式の脱着式キャリッジセットKB1P(/M)を用いて取り付けられています。 垂直アーム内の他のコンポーネントとして、電動式直線移動ステージLTS150(/M)(旧製品)(C)、垂直取付けプレートXT66P1、66 mmコンストラクションレールXT66-500、および4つのクランププラットフォームXT66C4が用いられています。水平アーム内のコンポーネントとしては、2つの電動式直線移動ステージLNR50S(/M)(旧製品)(E)、XYアダプタープレートLNR50P3(/M)、ベースプレート1つ、およびフォトディテクタ(D)の受光面上でビームを走査するための2つの閉ループステッピングモーターコントローラBSC201(写真には表示されていません)が用いられています。 ほとんどの光源は当社のスーパールミネッセントダイオードシリーズを使用しています。405 nm光源のみ例外で、ベンチトップ型レーザ光源S3FC405を使用しています。

手順
ビーム径はフォトディテクタの受光面積に合わせて調整し、各フォトダイオードの受光面を60 x 60のグリッドに分割して約3600箇所で測定しました。各フォトダイオードに入射したビーム径は50 µm~500 µmで、個々の測定で使用したビーム径についてはページ下の表を展開し、プロット図の説明をご覧ください。説明は対象のプロット図をクリックするとご覧いいただけます。

受光面を走査するとき、ビームは静止しています。これに対してフォトディテクタは、2台の電動ステージLNR50S(/M)により光軸に対して垂直な2方向に移動します。フォトディテクタの全ての受光面を試験するため、走査面の面積は受光面よりも大きくしました。

この試験では、フォトダイオードに対して逆バイアス電圧は印加していません。

結果(下記のMore [+]をクリックすると表が展開され、Less [-]をクリックすると閉じます。)
測定データは規格化され、測定位置ごとにプロットされています。各データは受光面中心での測定値で規格化し、各フォトディテクタの受光面の感度分布を示すプロット図にしています。これにより9種類のフォトディテクタの測定結果を比較できます。ノイズと区別がつかないデータポイントは削除するように処理しています。この処理は各フォトディテクタの受光面外の測定データを削除するのにも適用しています。ただし、この方法では受光面のエッジ、あるいはその近傍の測定値も削除してしまうことがあります。このような領域からの光電流が小さい原因としては、ビームスポットの一部が受光面の外側の領域にあたっていること、エッジ付近における欠陥の密度が高いために光電流が抑制されていることなどが考えられます。

プロット図は下の表を展開してご覧いただけます。各プロット図の点線は、フォトダイオード受光面の中心部の面積90%を占める部分を表しています。一般的な用途では、エッジの影響を避けるためにビームは中心部の90%の領域内に入射するようにしてください。各プロット図をクリックするとフォトダイオードの受光面積や走査に使用したビームサイズについての情報が表示されます。

この試験ではフォトダイオードのサンプルサイズ数が少ないため、これらの測定値は同型のフォトディテクタの代表値ではありますが、同じ型番でも製品ごとに測定結果は異なります。これらのフォトダイオードについて得られた測定結果は繰り返し得ることができます、半導体結晶は個体ごとに異なるため測定結果は製品ごとに異なります。以下に3つの表を掲載しています。

  • 表1:受光面内の感度の変化量は、GeおよびGaPをベースにしたフォトディテクタの方が、SiおよびInGaAsをベースにしたフォトディテクタに比べて大きくなっています。このことは、SiおよびInGaAsをベースにした半導体材料の方が、GeおよびInGaAsをベースにした半導体材料よりも、欠陥密度が均一であることを示しています。
  • 表2:Si、InGaAsおよびGeをベースにしたフォトディテクタの受光面内の感度の変化量は波長によって異なります。各フォトディテクタのこの感度の変化量は、ピーク感度の波長値付近で最小になります。
  • 表3:Siベースの8台の同型フォトディテクタは、受光面内の感度均一性が同様であることを示しています。
1) 9台のフォトディテクタ:ピーク感度付近の波長に対する感度の均一性
測定したフォトディテクタ記載された波長における受光面の感度分布分光感度特性のグラフ(典型値)
GaP-Based Photodetector

SM05PD7A:
Mounted Photodiode FGAP71


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Si-Based Photodetectors

SM05PD2A:
Mounted Photodiode FDS010

and

SM1PD2A 

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Si-Based Photodetectors

SM05PD1A:
Mounted Photodiode FDS100

and

SM1PD1A:
Mounted Photodiode FDS1010

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InGaAs-Based Photodetectors

SM05PD5A:
Mounted Photodiode FGA21

and

SM05PD4A:
Mounted Photodiode FGA10 

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Ge-Based Photodetectors

SM05PD6A: Mounted Photodiode FDG1010

and

SM1PD5A: Mounted Photodiode FDG03 


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2) Si、InGaAs、Geをベースにしたフォトディテクタ:3種類の波長における感度均一性
フォトディテクタ記載された波長における受光面の感度分布分光感度特性のグラフ(典型値)
Si-Based
Photodetector

SM1PD1A:
Mounted Photodiode FDS1010
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InGaAs-Based Photodetector

SM05PD5A:
Mounted Photodiode
FGA21
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Ge-Based
Photodetector 

SM1PD5A:
Mounted Photodiode FDG1010
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3) Siベースの8台のフォトディテクタSM1PD2A:ピーク感度付近の波長に対する感度均一性の比較
受光面の感度均一性に関する製品ごとの差異を比較するために、8台のSiベースのフォトディテクタSM1PD2Aについて測定しました。ピーク感度付近の波長である830 nmの光を用いて測定しました(右のグラフ参照)。


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参考文献

[1] G. P. Agrawal, Fiber-Optic Communication Systems, 2nd ed., John Wiley & Sons, Inc., New York, 1997. (Particularly Chapter 4)
[2] A. Rogalski, K. Adamiec, and J. Rutkowski, Narrow-Gap Semiconductor Photodiodes, SPIE Press, Bellingham, WA, 2000.

暗電流の温度特性

いくつかのマウント無しディテクタについて、暗電流の温度特性を測定しました。暗電流とは、下記に説明するように光が入射されていないときのpn接合型フォトディテクタに流れる比較的小さい電流です。ここでは、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウムリン(GaP)、そしてインジウムガリウムヒ素(InGaAs)の逆バイアス型フォトダイオードについて、25 °C~約55 °Cの温度範囲で測定しました。

Vpi
図1:pn接合型フォトダイオードの電流-電圧特性

pn接合型フォトダイオードの電流-電圧特性

pn接合型フォトダイオードの電流-電圧特性は、図1に示すように順方向バイアスと逆方向バイアスの電圧でそれぞれ特徴があります。pn接合フォトダイオードに逆バイアス電圧をかけた場合、ダイオードにかかる電位差は電流の流れる方向に対して逆方向になります。 逆バイアス型フォトダイオードに対して光が入射していないときには、電流が流れないのが理想です。

しかし実際にはフォトダイオードの半導体材料内部でのランダムプロセスにより、常に電流キャリア(電子と正孔)が生成され、それにより電流が発生します。このような電流の発生プロセスは、電子と正孔の光生成によるものではありません。それらの多くは半導体材料内部の熱エネルギによって発生します[1]。この暗電流は一般的には小さいですが、フォトダイオードに逆バイアスをかけたときには光が照射されていなくても存在します。暗電流の大きさはフォトダイオードの素材構成によって異なり、熱的な発生プロセスの効率はディテクタのセンサーヘッドに使用される半導体の種類と結晶品質に依存します。暗電流は、フォトダイオードの温度が上昇にするにつれて大きくなることが予測されます。

フォトダイオードに光が照射されると、入射光により発生した電流(光電流)が暗電流に重畳されます。光電流のキャリアは入射光子のエネルギによって生成されます。照射される光の強度がある閾値を超えると、光電流は暗電流よりも大きくなります。光電流が暗電流よりも大きい場合には、光電流の大きさは全電流を測定した後、暗電流を差し引くことによって求められます。一方、光電流が暗電流より小さい場合には、その検出は不可能です。そのため、フォトダイオードの暗電流は最小化するのが望ましいことになります。

フォトダイオードに逆電圧をかけたとき、便宜上、ここまで暗電流と光電流は電圧に依存しないものとして述べてきましたが、実際には完全に電圧に依存しないわけではありません。ダイオードに光が照射されているかどうかにかかわらず、逆バイアス電圧が上昇するにつれて電流は増加します。また、逆バイアス電圧がある閾値を超えるとフォトダイオードは降伏し、急激に大きい電流が流れてダイオードが恒久的に損傷する可能性があります。

実験:筐体付きフォトダイオードの暗電流の測定

4つの代表的なマウント無しディテクタ(SiディテクタFDS1010、GeディテクタFDG50、GaPディテクタFGAP71(旧製品)、InGaAsディテクタFGA10)について、その暗電流を25 °C~約55 °Cの温度範囲で測定しました。

DET in Nested-Box Test Fixture, Both Covers Open, Key Parts Labeled
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図2:カバーを外し、FGA10を設置した入れ子式金属ボックスの試験冶具。
どちらの箱も内側は黒色の断熱材で覆われています。
A:サーミスタ、B: FGA10、C: BNC-BNCフィードスルー、D: 外側のボックス、E: 内側のボックス、F:BNC-Triaxフィードスルー、G:BNC-BNCフィードスルー
Current Diagram Temperature Controller and Resistive Foil Heater
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図4: ホイルヒータ、温度コントローラTED8040、そしヒータを流れる電流を制御する2つの整流ダイオードを含む電子回路(本文参照)。  
Custom Temperature Test Chamber
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図3: 測定用セットアップ
上段はカスタム仕様の温度チャンバ。下段はPRO8000およびTED8040を含む温度制御機器。

実験のセットアップ
この実験セットアップでは、フォトダイオードに一定の逆バイアス電圧を供給することや、ディテクタの温度制御、ディテクタに対する遮光などに留意し、また測定電流が電波障害(EMI)の影響を受けないように外部と絶縁してディテクタとピコアンメータKeithley 6487を接続しました。ディテクタの暗電流はnAオーダの場合もあり、正確な測定のためにはこれらの条件を制御することが重要です。

ディテクタは2つの入れ子式アルミニウム製ボックスで囲っています(図2はカバーを外した状態です)。1つのボックスのみでフォトダイオードを遮光することはできますが、実験ではEMIを遮断するために外側にもボックスを配置しています。ディテクタは内側のボックス内にあり、アンメータKeithley 6487と電気接続されています。ピコアンメータは5 Vの逆バイアスを供給し、出力電流信号を受信します。ピコアンメータとフォトダイオード間の電気信号は、複数のケーブルとフィードスルーを介して2つのボックスを通過します。5 Vのバイアス電圧は、2つの金属製ボックスの壁の中にある同軸ケーブルとBNC-BNCフィードスルーを介してフォトダイオードに接続されています。フォトダイオードからの電流信号ラインは、内側のボックスの壁の中に組み込まれているBNC-TriaxフィードスルーのBNC端子に接続されています。信号は外側のボックス内のTriaxおよびTriax-Triaxフィードスルーを通過し、ピコアンメータKeithly 6487に向かいます。同軸ケーブルは遮蔽性能が低く、それを使用してピコアンメータへ信号を送るときにはディテクタからの信号にEMI源からのノイズが混入する場合があるため、Triaxケーブルが使用されています。外側のボックスは内側のボックスをEMIから遮蔽するので、信号がディテクタからBNC-Triaxフィードスルーに移動する際に発生するノイズは低減されます。

実験中のフォトダイオードの温度は、サーミスタを用いて連続的にモニタしました。 サーミスタは熱伝導テープでFDG50、FGAP71、FGA10のTO Canに隙間なく固定されています。FDS1010のフォトセンサはセラミック製の基板に取り付けられています。実験の際、サーミスタは基板の裏側にテープで固定しました。サーミスタと温度ロガーTSP01間の電気的接続にはBNCケーブルを使用し、BNC-BNCバルクヘッドフィードスルーを通じて入れ子式ボックスの外へ信号を取り出し、カスタム仕様のBNC-フォノジャックケーブルを使用して温度ロガーに接続しました。

この試験には標準品の筐体XE25C9をベースにしたカスタム仕様の温度チャンバが使用されました。温度チャンバは図3の上段に表示されています。筐体は底面と4つの壁を有し、内側と外側の全面に絶縁体が付いています。筐体の蓋はハードボードで作られており、XE25シリーズレールで縁取られています。ハードボードの内側には絶縁体が付いています。XE25C9の筐体の壁には6個のホイルヒータが装着され、6個の熱電冷却(TEC)コントローラTED8040を取り付けたPRO8000(図3の下段に設置)によって作動します。TED8040はそれぞれヒータおよびチャンバ内に取り付けられたサーミスタに接続されています。サーミスタから読み取った値をもとにヒータ電流が決定されます。チャンバはアクティブには冷却されません。その代りにヒータを駆動する電流を止め、さらにオプションとしてチャンバの蓋を開けて冷却します。

TED8040ユニットはTECに接続可能です。電流をある方向に流すと熱が発生し、それと逆方向に流すと冷却されます。このため、筐体の温度が設定値を超えた場合、実験セットアップ内のTED8040ユニットは駆動電流を切断することはしません。その代りに電流を逆方向に流し、冷却を行います。これに対し、ホイルヒータは電流の流れる方向に関わらず熱を発生します。駆動電流をヒータから迂回させるために、2つの整流ダイオードを有する電子回路(図4参照)が設計・内蔵されています。整流ダイオードは電流を1方向にのみ流します。サーミスタに表示される温度が設定よりも低い場合、電流は赤い矢印の方向に流れてヒータを通過し、熱が発生します。筐体の温度が設定よりも高くなった場合、コントローラTED8040は電流の方向を逆向きにし、青い矢印の方向に流れるようにします。この状態では、回路内の電流はヒータの方向へは流れず、チャンバは冷却されます。

実験結果
図5は、SiディテクタFDS1010、GeディテクタFDG50、GaPディテクタFGAP71、InGaAsディテクタFGA10で測定された暗電流のグラフです。データは、25 °C~55 °Cの温度下(図6の青い領域)において連続して取得されました。図6は実験中に測定されたフォトダイオードの温度変化の代表的な例です。フォトダイオードの温度プロファイルは、温度の上昇、その後徐々に最高温度への到達、そして温度の下降というように変化します。 図5で示されているデータは、25 °C~55 °Cの間で測定された全ての暗電流です。測定のタイミングは異なりますが、電流は同じ温度において測定されています。

図5のデータ曲線は、測定された暗電流がフォトダイオードの構成材料によって異なることを示しています。暗電流値が低い順に:

  • GaPディテクタFGAP71(暗電流値は最小)
  • InGaAsディテクタFGA10
  • SiディテクタFDS1010
  • GeディテクタFDG50(暗電流値は最大)

最大値は最小値よりも6桁ほど大きくなっています。どのフォトダイオードも、温度が上昇すると暗電流も増加しています。グラフのひし形の点は25 °Cでの各ディテクタの暗電流の仕様値です。これらの点は25 °Cでの暗電流の最大値を示しています。各ダイオードは25 °Cではこの値よりも小さい値でなければなりませんが、25 °Cよりも高い温度ではこの仕様値よりも大きくなる場合があります。

Dark Current Measurement Data
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図5: 4つのマウント無しフォトダイオードで測定された暗電流。
ひし形のデータ点は25 °Cでの各ディテクタの暗電流の仕様値です。
Temperature Profile for the Dark Current Measurement Data
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図6: チャンバ内の環境で制御された代表的なフォトダイオードの温度変化。
暗電流は25 °C~55 °C(青い領域)で測定し、その値は図5にプロットしています。

実験結果についての制限事項
測定はディテクタの種類毎に1台を用いて実施しており、一般的な傾向を示すことを目的としております。よって特定のダイオードの仕様として捉えるものではありません。測定された暗電流はバイアス電圧や負荷抵抗の温度依存性、その他の様々な要因に影響されます。測定に対するそれらの影響を抑制するために、必要な5 Vの逆バイアスを供給するアンメータKeithly6487を使用するなどの工夫をしています。 アンメータを使用することにより、温度依存性があるかもしれない負荷抵抗器が不要になりました。サーミスタはできる限り半導体センサの近くに配置しましたが、直接センサには接触していません。そのため、測定温度と実際の半導体材料の温度に差があるかもしれません。暗電流は環境チャンバの温度を連続的に変化させて測定しました。この実験では湿度は制御されていません。

 [1] J. Liu, Photonic Devices. Cambridge University Press, Cambridge, UK, 2005

ノイズ等価パワー(NEP)の温度特性

いくつかのマウント無しフォトディテクタについて、ノイズ等価パワー(NEP)温度特性を測定しました。下のセクションで説明しているように、NEPはフォトディテクタの最小感度を示す一般的な測定基準です。 ここでは、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウムリン(GaP)、そしてインジウムガリウムヒ素(InGaAs)の逆バイアスされたフォトダイオードについて、25 °C~55 °Cの温度範囲で測定しました。

ノイズ等価パワー(NEP)

NEPの最も一般的な定義は、「1 Hzの出力帯域幅において信号対雑音比(SNR)が1となる入力信号のパワー」です。[1] 従って、NEPを求めるにはまず、フォトダイオードの最小ノイズを知る必要があります。光学信号をブロックしても、ディテクタ自体から発生したノイズはまだ存在します。フォトダイオードのノイズの主な原因としては、暗電流によるショットノイズとシャント抵抗による熱ノイズの2つがあります。

暗電流は、デバイスを流れる比較的小さな電流で、入射光がない状態でも存在します。暗電流についての詳細は「暗電流の温度特性」セクション内でご覧いただけます。ショットノイズは、電荷キャリアの量子化特性によって発生します。ディテクタに光が入射されていない場合は、公式を用いてディテクタの暗電流を算出することで決定できます。[2]

i_S equation

ここでisはショットノイズ、Idは暗電流、qは電荷、fBWは帯域幅です。帯域幅は別のフォトダイオードと比較できるように1 Hzに設定します。

熱ノイズつまりジョンソンノイズは、電荷キャリアのランダムな熱運動によるものです。熱ノイズは装置の抵抗素子によってのみ発生します。フォトダイオードディテクタの場合、シャント抵抗を考慮に入れる必要があります。シャント抵抗はゼロバイアスのフォトダイオードのpn接合における抵抗です。言い換えると、ゼロ電圧地点におけるIV特性カーブの傾きの逆数です。ゼロ点での勾配を正確に算出することは難しいため、V = ±10 mVにおける電流を測定して勾配を算出するという手法が業界で一般的に認められています。これにより、シャント抵抗による熱ノイズRSHは下記の式で表されます:

i_T equation

ここでitは熱ノイズ(電流として表されます)、kBはボルツマン定数、Tは温度、 RSHはシャント抵抗、fBWは帯域幅です。

ノイズの総量itotalはすべてのノイズ源の和となります:

i_total equation

注:この結果は、フォトダイオードの出力電流で表されるノイズの総量です。それに対して、NEPは入射した光パワーとして表されます。したがって、NEPの仕様値を比較するには、仕様の波長範囲における感度(典型値)を使用します:

NEP equation

また、別のダイオードと比較する際に容易に計算できるよう、帯域幅を1 Hzに設定しました。

実験:暗電流およびシャント抵抗の測定

パッケージされていない状態の代表的な4つのフォトダイオードのNEPを、25~55 °Cにおいて測定しました。測定には以下のディテクタを使用しました:SiディテクタFDS1010、GeディテクタFDG50、GaPディテクタFGAP71(旧製品)、InGaAsディテクタFGA10

DET in Nested-Box Test Fixture, Both Covers Open, Key Parts Labeled
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図1: カバーを外し、FGA10を設置した入れ子式金属ボックスの試験冶具。
どちらの箱も内側は黒色の断熱材で覆われています。.  
A: サーミスタ、B:FGA10、C:BNC-BNCフィードスルー、D:外側ボックス、E:内側ボックス、F:BNC-Triaxフィードスルー、G:BNC-BNCフィードスルー
Current Diagram Temperature Controller and Resistive Foil Heater
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図3: 電子回路内のホイルヒータ、温度コントローラTED8040、抵抗ヒータを通過する2つの整流ダイオードの制御電流(本文参照)。  
Custom Temperature Test Chamber
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図2: 測定用セットアップ
上段はカスタム仕様の温度チャンバ。下段はPRO8000およびコントローラTED8040を含む温度制御機器。

実験のセットアップ
この実験セットアップでは、フォトダイオードに一定の逆バイアス電圧を供給することや、ディテクタの温度制御、ディテクタに対する遮光などに留意し、また測定電流が電波障害(EMI)の影響を受けないように外部と絶縁してディテクタとピコアンメータKeithley 6487を接続しました。ディテクタの暗電流はnAオーダの場合もあり、正確に測定するためにはこれらの条件を制御することが重要です。

ディテクタは2つの入れ子式アルミニウム製ボックスで囲っています(図1はカバーを外した状態です)。1つのボックスのみでフォトダイオードを遮光することはできますが、実験ではEMIを遮断するために外側にもボックスを配置しています。ディテクタは内側のボックス内にあり、ピコアンメータKeithley 6487と電気接続されています。ピコアンメータは逆バイアスを供給し、出力電流信号を受信します。ピコアンメータとフォトダイオード間の電気信号は、複数のケーブルとフィードスルーを介して2つのボックスを通過します。バイアス電圧は、2つの金属製ボックスの壁の中にある同軸ケーブルとBNC-BNCフィードスルーを介してフォトダイオードに接続されています。フォトダイオードからの電流信号ラインは、内側のボックスの壁の中に組み込まれているBNC-TriaxフィードスルーのBNC端子に接続されています。信号は外側のボックス内のTriaxおよびTriax-Triaxフィードスルーを通過し、ピコアンメータKeithly 6487に向かいます。同軸ケーブルは遮蔽性能が低く、それを使用してピコアンメータへ信号を送るときにはディテクタからの信号にEMI源からのノイズが混入する場合があるため、Triaxケーブルが使用されています。外側のボックスは内側のボックスをEMIから遮蔽するので、信号がディテクタからBNC-Triaxフィードスルーに移動する際に発生するノイズは低減されます。

暗電流を測定する場合、バイアス電圧は5 Vに設定します。シャント抵抗を算出するには、バイアス電圧を+10 mVおよび-10 mVに設定して電流を測定します。

実験中のフォトダイオードの温度は、サーミスタを用いて連続モニタしました。サーミスタは熱伝導テープでFDG50、FGAP71、FGA10のTO Canに隙間なく固定されています。FDS1010のフォトセンサはセラミック製の基板に取り付けられています。実験の際、サーミスタは基板の裏側にテープで固定しました。サーミスタと温度ロガーTSP01間の電気的接続にはBNCケーブルを使用し、BNC-BNCバルクヘッドフィードスルーで入れ子式ボックスの外へ信号を取り出し、カスタム仕様のBNC-フォノジャックケーブルを使用して温度ロガーに接続しました。

この試験には標準品の筐体XE25C9をベースにしたカスタム仕様の温度チャンバが使用されました。温度チャンバは図3中の上段に表示されています。筐体は底面と4つの壁を有し、内側と外側の全ての面に絶縁体が付いています。筐体の蓋はハードボードで作られており、XE25シリーズレールで縁取られています。ハードボードの内側には絶縁体が付いています。XE25C9の筐体の壁には6個のホイルヒータが装着され、6個の熱電冷却(TEC)コントローラTED8040を取り付けたPRO8000(図2中の下段に設置)によって作動します。TED8040はそれぞれヒータおよびチャンバ内に取り付けられたサーミスタに接続されています。サーミスタから読み取った値をもとにヒータ電流が決定されます。チャンバはアクティブには冷却されません。その代りにヒータを駆動する電流を止め、さらにオプションとしてチャンバの蓋を開けて冷却します。

TED8040ユニットはTECに接続可能です。電流を一定の方向に流すと熱が発生し、逆方向に流すと冷却されます。このため、筐体の温度が設定値を超えた場合、実験セットアップ内のTED8040ユニットは駆動電流を切断することはしません。その代りに電流を逆方向に流し、冷却を行います。これに対し、ホイルヒータは電流の流れる方向に関わらず熱を発生させることができます。駆動電流をヒータから迂回させるために、2つの整流ダイオードを有する電子回路(図3参照)が設計・内蔵されています。整流ダイオードは電流を1方向にのみ流します。サーミスタに表示される温度が設定よりも低い場合、電流は赤い矢印の方向に流れてヒータを通過し、熱が発生します。筐体の温度が設定よりも高くなった場合、コントローラTED8040は電流の方向を逆向きにし、青い矢印の方向に流れるようにします。この状態では、回路内の電流はヒータの方向へは流れず、チャンバは冷却されます。

実験結果
図4は、SiディテクタFDS1010、GeディテクタFDG50、GaPディテクタFGAP71、InGaAsディテクタFGA10で測定された暗電流のグラフです。図5は、図4と同じダイオードのシャント抵抗の計算値です。データは、25 °C~55 °Cの温度下(図7の青い領域)において連続して取得されました。図7は実験中に測定されたフォトダイオードの温度変化の代表的な例です。フォトダイオードの温度プロファイルは、温度の上昇、その後徐々に最高温度への到達、そして温度の下降というように変化します。図4ならびに図5で示されているデータは、25 °C~55 °Cで測定されています。測定のタイミングは異なりますが、すべてのデバイスにおいて電流は同じ温度において測定されています。

図5で示されているように、ディテクタGaP、InGaAs、Siのシャント抵抗の測定値は比較的大きくなっているので、多くの場合、これを考慮する必要はありません。GeディテクタFDG50のシャント抵抗値は、高温においては比較的小さくなっています。このダイオードを高抵抗と共に使用する場合は、シャント抵抗を考慮に入れる必要があります。

図6では、各ダイオードのNEP計算値と温度の関係を示しています。NEPは、波長にによって変化する感度によって決まるため、ここでのNEPは右の表内に記載されているピーク感度を用いて算出されています。

Responsivity Used for NEP Calculation
FGA101.05 A/W @ 1550 nm
FDG500.85 A/W @ 1550 nm
FGAP710.12 A/W @ 440 nm
FDS10100.725 A/W @ 970 nm

図6のデータ曲線は、測定された暗電流がフォトダイオードの構成材料によって異なることを示しています。暗電流値が低い順に:

  • GaPディテクタFGAP71(NEP値は最小)
  • InGaAsディテクタFGA10
  • SiディテクタFDS1010
  • GeディテクタFDG50(NEP値は最大)

最大値は最小値よりも6桁ほど大きくなっています。どのフォトダイオードも、温度が上昇すると暗電流も増加しています。グラフのひし形の点は25 °Cでの各ディテクタの暗電流の仕様値です。これらの点は25 °Cでの暗電流の最大値を示しています。各ダイオードの暗電流およびNEPは25 °Cではこの値よりも小さい値でなければなりませんが、25 °Cよりも高い温度ではこの仕様値よりも大きくなる場合があります。

Dark Current vs. Temperature
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図4: 4つのマウント無しフォトダイオードで測定された暗電流。
ひし形のデータ点は25 °Cでの各ディテクタの暗電流の仕様値です。
Dark Current vs. Temperature
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図5: 4つのマウント無しフォトダイオードのシャント抵抗を本文中の数式を用いて算出
Dark Current vs. Temperature
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図6: 4つのマウント無しフォトダイオードのNEPをショットノイズと熱ノイズの和で算出。
ひし形のデータ点は25 °Cでの各ディテクタのNEPの仕様値です。FGA10では、ピーク感度波長におけるNEPが規定されていないため、この仕様値のデータ点が表示されていません。
Temperature Profile for the Dark Current Measurement Data
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図7: チャンバ内の環境で制御された代表的なフォトダイオードの温度変化。
暗電流は25 °C~55 °C(青い領域)で測定し、その値を図5にプロットしています。

実験結果についての制限事項
測定はディテクタの種類毎に1台を用いて実施しており、全体的な傾向を示すことを目的としております。よって特定のダイオードの仕様として捉えるものではありません。測定された電流はバイアス電圧や負荷抵抗の温度依存性、その他の様々な要因に影響されます。測定に対するそれらの影響を抑制するために、必要な5 Vの逆バイアスを得るためにピコアンメータKeithley 6487を使用するなどの工夫をしています。ピコアンメータを使用することにより、温度依存性がある負荷抵抗器が不要になりました。サーミスタはできる限り半導体センサの近くに配置しましたが、直接センサには接触していません。そのため、測定温度と実際の半導体材料の温度に差があるかもしれません。電流は環境チャンバの温度を連続的に変化させて測定しました。この実験では湿度は制御されていません。

[1] 当社のホワイトペーパ「NEP – Noise Equivalent Power」より

[2] Quimby, Richard S. Photonics and Lasers: An Introduction. Wiley-Interscience, Hoboken, NJ, 2006, pp 241-244.

FDS1010 Signal for Different Beam Sizes
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図1: 入射パワーが一定のときの、出力電流の変化を規格化して表示。試験対象のフォトダイオード(DUT)であるFDS1010に入射するビーム径はレンズの焦点を調整して設定。

当社のシリコンフォトダイオードの飽和点とビームサイズの関係についての測定結果をご紹介します。ここでは、線形応答領域から1%の偏差が生じる状態で飽和と定義しています。図1に示されているように、ビームサイズが小さくなるとフォトダイオードが飽和する入射パワーレベルも小さくなります。飽和の変化がパワー密度によるものではないことを実証するために、計算と実験を数回追加して行っています。これらの結果は、当社のフォトダイオードパワーセンサS130Cのようなパワーセンサを用いてパワーの絶対値を測定するときは、ビームサイズを考慮に入れるべきだということを示しています。

実験ではマウント付きフォトダイオードSM1PD1Aを使用しました。この検出器はSM1シリーズネジ付き筐体にフォトダイオードFDS1010を取り付けたものです。光源には830 nmのスーパールミネッセントダイオードを使用しました。ビームスプリッタを用いて光の20%をモニタ用フォトダイオードに入射し、残りの光は集光レンズを通過させています。光パワーは積分球によって校正し、集光ビームのビームサイズは移動ステージに取り付けたビームプロファイラによって校正しました。校正後、ビームプロファイラを試験対象のデバイス(DUT)であるSM1PD1A(0 Vバイアス)と交換しました。負荷抵抗器を使わなくても済むように、出力電流はアンメータで測定しました。パワーを一定に保ちながらビーム径を0.06 mm~5 mmで連続的に変化させてデータを記録し、また1 mm~5 mm(5%のクリップレベルで測定)のビーム径に対して入射パワーを0.12 mW~5 mWで連続的に変化させて測定しました。

これらの測定結果をグラフで示しています。図1(右)は入射パワーを1 mWに固定して、ビーム径を連続的に変化させたときの線形応答からの偏差を示しています。図2(下)は異なるビーム径において入射パワーを連続的に変化させたときの線形応答からの偏差を示しています。 図1では、1 mWの入力においては、ビームサイズが300 µm未満になるとフォトダイオードは飽和することを示しています。図2では、ビーム径が2 mm以上になると実験を行ったパワーレベルでは飽和しないことを示しています。

これらの結果から、パワー密度が大きいことによる局所的な飽和は、利用可能なキャリア数が局所的に枯渇または減少することに起因するという1つの仮説を立てることができます。図3は、図2のパワーの測定値とビーム径からパワー密度を算出し、出力電流とパワー密度の関係をグラフ化したものです。もし、結果が局所的な飽和によるものだとすると、何れのビーム径においても飽和するパワー密度は同じであることが期待されます。しかし、結果はそうなっていません。

図3の結果ではビームサイズの変化と光パワー密度が連動しているので、別の実験として、ビームエリアの同一エンベロープ内においてセンサに入射するパワー密度を増加させ、それによって飽和点が変化するかどうかを調べました。具体的には、マイクロレンズアレイを用いてガウシアンビームをビームレットの配列に分割し、全ての光パワーを同じガウシアンエンベロープ内で複数の小さなスポットに集光しました。これによりパワー密度はより大きくなりますが、センサのリード線への電気的接続は同様のままです。図4は、図2の結果にマイクロレンズアレイによる結果を点線で重ねて示したものです。全てのビーム径において、元のガウシアンビームとほぼ同じ結果となっていることから、飽和は全体のビーム径に関係しており、パワー密度には依存しないことがわかります。実験データの詳細において、この実験結果はビームサイズによる飽和の変化がフォトダイオードの直列抵抗の変化によるものであるというScholze氏らの理論[1]を支持するものであることを論じています。

Saturation vs. Beam Diameter
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図2: 1 mm~5 mmのビーム径において入射パワーを増大させた場合の直線応答からのパーセント偏差。1%の偏差レベルを水平の点線で示しています。
Signal vs. Power Density
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図3: 1 mm~5 mmのビーム径における、規格化された出力電流とパワー密度との関係。このグラフは、飽和効果が同一のパワー密度で現れるわけではないことを示しています。
Deviation from Linear Response for MLA
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図4: 2 mm~5 mmのビーム径における、規格化された出力電流と光パワーとの関係。フォトダイオードの前にマイクロレンズアレイ(MLA)を設置した場合(点線)と設置しなかった場合(実線)について示しています。

[1] F. Scholze, R. Klein, R. Muller, Linearity of silicon photodiodes for EUV radiation. 2004 Proc. SPIE 5374 926–34.

フォトダイオードの有効逆バイアス電圧に対する入射光パワーの影響

はじめに
フォトダイオードの帯域幅(と立ち上がり時間)は、有効バイアス電圧の関数であることが知られています。つまり、要求される帯域幅を維持するためには、フォトダイオードに入射される光パワーで生成される光電流に応じて有効バイアス電圧を調整しなければなりません。この実験では、バイアス電圧を印加したフォトダイオードに関する信頼できるモデルを作るために、フォトダイオードの有効逆バイアス電圧とCWの入射光パワーとの関係を調べました。

回路の分析
まず、モデルを作るために、右の図2に示すフォトダイオードの回路に対してオームの法則を適用します。DC電圧源を一定と仮定すると、次の式が得られます。

Veff = V0 - iPD * (RP + RL)

(1)

フォトダイオードの有効バイアス電圧(Veff)は、電源電圧(V0)から、バイアスモジュールの抵抗(RP)と負荷抵抗(RL)の和に光電流 (iPD)を掛けた値を差し引いた値に等しくなります。

Veffが入射光パワー(P)によってどのように変化するかを見るために、上の式のiPDを定義に従って波長に依存するフォトダイオードの感度[ℜ(λ)] とPの積に置き換えます。

iPD = ℜ(λ) * P

(2)

負荷抵抗にオームの法則を適用してiPD = V/ RLとすることで、上の式からℜ(λ)は次のように書くことができます。

ℜ(λ) = V/ (P * RL )

(3)

負荷抵抗(VL)による電圧低下はPの増加量に比例すると仮定すると、VLとP の変化量の比は次のように表されます。

m = Δ VL / Δ P

(4)

これらの式を組み合わせると、次の式が得られます。

Veff = V0 - (m / RL) * P * (RP + RL)

(5)

mの値は各フォトダイオードのVLおよびPの測定値から計算できるため、この式はPに応じたVeffの変化を示すモデルとして使用できます。

実験
この実験ではPの変化に対するVLの変化を測定しました。ファイバに結合された半導体レーザからの出力光を、コリメートしたのちにNDフィルタを通し、さらに軸外放物面ミラーで被試験デバイス(DUT)に集光しました。実験セットアップの写真は右上の図1でご覧いただけます。様々な光学濃度のNDフィルタを使用することで、フォトダイオードへの入射光パワーを変化させました。使用したフォトダイオードごとに受光面と集光ミラー間の距離を調整し、スポットサイズがフォトダイオードの受光面積の約半分となるようにしました。V0、VL、およびVeff+VLの測定にはオシロスコープを使用しました。有効バイアスの測定にはマルチメータを直接使用しました。

結果
各DUTについてPに対するVLをグラフ化しました。Siフォトダイオードの結果例が右の図3でご覧いただけます。データセット毎に直線のトレンドラインを作成しましたが、その勾配が式(4)のmになります。この値を式(5)に用いて有効バイアス電圧を求めることができます。また、Veffの入射光パワーに対する特性をグラフ化し、オシロスコープによる測定値と比較することができます。それらの結果は、下の図4の3つのグラフに示されています。ここに示したモデルは実験による測定結果と整合性があることが分かり、それらの結果は(V0、RPおよび RLが一定の場合には)Pが増加するとともにVeffが減少することを示しています。これは重要な結果です。なぜなら電圧源に設定した電圧が必ずしもフォトダイオードに印加されるバイアス電圧にはならないからです。フォトダイオードに印加される有効バイアス電圧を求めるには、回路内の部品の抵抗を考慮しなければなりません。

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図1: こちらの実験セットアップはフォトダイオードの有効電圧のモデルを検証するために使用されました。

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図2: バイアス電圧が印加されたフォトダイオードの電子回路図

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図3: 左の式(5)のmを求めるために使用された入射光パワーと電圧の関係
図4: 様々なフォトダイオードにおける有効バイアスの測定値とモデルによる計算値

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