バイアス型フォトディテクターの実験データ


バイアス型フォトディテクターの実験データ


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暗電流の温度特性と逆バイアス電圧特性

いくつかの筐体付きディテクタについて、暗電流の温度特性と、逆バイアス電圧特性を測定しました。暗電流とは、以下に説明するように光が入射していないときのpn接合型フォトディテクタに流れる比較的小さい電流です。しかし用途によっては、温度の変動や逆バイアス電圧の変化による暗電流の変化を考慮しなければならない場合があります。バッテリをフォトダイオードの逆バイアス電圧用に使用した場合、バッテリが消耗するにつれて供給電圧が下がっていくため、逆バイアス電圧と暗電流の関係はとりわけ重要な場合があります。

最初の実験では、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、そしてインジウムガリウムヒ素(InGaAs)のバイアス型フォトダイオードについて、温度を10 °C~50 °Cで変化させて測定しました。次の実験では、同じディテクタを24 °Cに保ちながら、逆バイアス電圧を0~10 Vで変化させて測定しました。実験や測定の詳細については下記のMore [+]をクリックしてご覧ください。

pn接合型フォトダイオードの電流-電圧特性

pn接合型フォトダイオードの電流-電圧特性は、順方向バイアスと逆方向バイアスの電圧でそれぞれ特徴があります。pn接合型フォトダイオードを動作させるときは逆バイアス電圧の領域で使用します。その場合、電圧はダイオードの順方向とは逆にかかります。筐体付きフォトダイオードの利便性の1つに、パッケージに内蔵されたバッテリにより逆バイアス電圧を供給できることがあります。逆バイアス型フォトダイオードに対して光が入射していないときには、電流が流れないのが理想です。

しかし実際にはフォトダイオードの半導体材料内部でのランダムプロセスにより、常に電流キャリア(電子と正孔)が生成され、それにより電流が発生します。このような電流の発生プロセスは、電子と正孔の光生成によるものではありません。それらの多くは半導体材料内部の熱エネルギによって発生します[[1]。この暗電流は一般には小さいですが、フォトダイオードに逆バイアスをかけ、かつ光が照射されていない状態でも存在します。暗電流の大きさはフォトダイオードの素材構成によって異なり、熱的なプロセスによる発生効率はディテクタのセンサーヘッドに使用される半導体の種類と結晶品質に依存します。暗電流は、フォトダイオードの温度上昇と、フォトダイオードに印加される逆バイアス電圧の増加に伴い、大きくなることが予測されます。

注意しなくてはならないのは、逆バイアス電圧がある閾値を超えるとフォトダイオードは降伏し、急激に大きい電流が流れてダイオードが恒久的に損傷する可能性があることです。この理由により当社のDETパッケージの多くには、バイアス電圧が閾値を超えるのを防ぐ電圧レギュレータが付属しています。

フォトダイオードに光が照射されると、入射光により発生した電流(光電流)が暗電流に重畳されます。光電流のキャリアは入射光子のエネルギによって生成されます。照射される光の強度がある閾値を超えると、光電流は暗電流よりも大きくなります。光電流が暗電流よりも大きい場合には、光電流の大きさは全電流を測定した後、暗電流を差し引くことによって求められます。一方、光電流が暗電流より小さい場合には、その検出は不可能です。そのため、フォトダイオードの暗電流は最小化するのが望ましいことになります。

 [1] J. Liu, Photonic Devices. Cambridge University Press, Cambridge, UK, 2005

暗電流の温度特性

3つの代表的な筐体付きディテクタ:SiディテクタDET100A(旧製品)、GeディテクタDET50B(旧製品)、InGaAsディテクタDET10C(旧製品)について、その暗電流を10 °C~50 °Cの温度範囲で測定しました。

DET in Nested-Box Test Fixture, Both Covers Open, Key Parts Labeled
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図1: カバーを外し、DET10Cを設置した入れ子式金属ボックスの試験冶具。
どちらの箱も内側は黒色の断熱材で覆われています。 
A: 外側のアルミニウム製ボックス、B:内側のアルミニウム製ボックス、C:サーミスタ、D: DET10C、E:BNC-Triaxフィードスルー、F:BNC-BNCフィードスルー。

実験のセットアップ
この実験セットアップでは、フォトダイオードに一定の逆バイアス電圧を供給することや、ディテクタの温度制御、ディテクタに対する遮光などに留意し、また測定電流が外部からの電波障害(EMI)を受けないようにディテクタとアンメータKeithley 6487の接続経路も遮蔽しました。ディテクタの暗電流はnAオーダの場合もあり、正確に測定するためにはこれらの条件を制御することが重要です。

暗電流は逆バイアス電圧の大きさに依存するため、各測定期間中は逆バイアス電圧を一定に維持するようにしました。ディテクタの逆バイアス電圧源にはバッテリを使用しました。各データセットを取得する前には、ディテクタのバッテリA23を新しいものに交換しました。各テストの前後でバッテリの電圧を測定し、測定中のバイアス電圧が一定であることを確認しています。

実験中のフォトダイオードの温度は、サーミスタを用いて連続的にモニタしました。サーミスタはTO can型パッケージの外面に接触させ、熱伝導テープで固定しました。サーミスタを付けたため、ダイオードへの光を遮断するのにディテクタのキャップを使用することはできませんでした。  

ディテクタは2つの入れ子式アルミニウム製ボックスで囲っています(図1はカバーを外した状態です)。1つのボックスのみでフォトダイオードを遮光することはできますが、実験ではEMIノイズを遮断するためにその外側にもボックスを使用しています。 ディテクタは内側のボックス内に設置し、そのボックスにはBNC-Triaxフィードスルーアダプタが取り付けられています。BNC端子は箱の内側に、Triax端子は箱の外側に配置されています。ディテクタのBNCコネクタは直接アダプタのBNC端子に取り付けられるため、BNCケーブルは不要でした。BNCケーブルの遮蔽性能は低く、それを使用したときにはディテクタからの信号にEMI源からのノイズが混入する場合があります。内側の金属ボックスは外側の金属ボックス内に配置されていますが、この外側のボックスにはTriax-Triaxフィードスルーが付いています。ディテクタの信号が通る内側と外側のボックスのフィードスルー間にはTriaxケーブルで接続しました。 外側のボックスのTriax-Triaxフィードスルー端子とアンメータKeithly6487の接続にも、Triaxケーブルを用いました。外側の金属ボックスは内側のボックスへのEMIを遮断し、Triaxケーブルはディテクタ信号へのEMIを遮断しています。2つのボックスにそれぞれ蓋をした後、ボックスセット一式をESPEC温度チャンバESX-3CW内に設置しました。アンメータはチャンバの外に設置しました。

サーミスタと温度ロガーTSP01間の電気的接続にはBNCケーブルを使用し、BNC-BNCバルクヘッドフィードスルーで入れ子式ボックスの外へ信号を取り出し、カスタム仕様のBNC-フォノジャックケーブルを使用して温度ロガーに接続しました。

実験結果
図2のグラフは、SiディテクタDET100A、GeディテクタDET50B、そしてInGaAsディテクタDET10Cで測定された暗電流です。データはフォトダイオードの仕様上の動作温度範囲10 °C~50 °C(図3の青い領域)で連続的に取得しました。図3は、実験中にサーミスタで測定された、フォトダイオードのTO Canの温度の代表的な例です。フォトダイオードの全動作温度範囲での測定が確実に行えるよう、チャンバの温度は範囲を意図的に上下に拡大して測定しています。図2のグラフは温度を上昇させた時と下降させた時の暗電流の測定値ですが、それぞれのダイオードの2つのデータセットは互いに重なっています。

図2のデータからは、暗電流はInGaAsディテクタが最小でGeディテクタが最大であり、かつGeディテクタは5桁ほど大きいことがわかります。どのフォトダイオードも、予測した通り温度が上昇すると暗電流も増加しています。グラフのひし形の点は25 °Cでの各ディテクタの暗電流の仕様値です。これらの点は25 °Cでの暗電流の最大値を示しています。各ダイオードは25 °Cではこの値、もしくはそれよりも小さい値でなければなりませんが、25 °Cよりも高い温度ではディテクタDET50Bのようにこの仕様値よりも大きくなる場合があります。

Dark Current Measurement Data
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図2: 3つの筐体付きフォトダイオードで測定された暗電流。
ひし形のデータ点は25 °Cでの各ディテクタの暗電流の仕様値です。
Temperature Profile for the Dark Current Measurement Data
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図3: 環境チャンバ内で周囲の状態を制御されたフォトダイオードの温度変化(代表例)。
暗電流は10 °C~50 °(青い領域)で測定し、図2にプロットしています。

実験結果についての制限事項
測定はディテクタの各種類の中の1台を使用して実施しており、一般的な傾向を示すことを目的としております。よって特定のダイオードの仕様として捉えるものではありません。測定された暗電流はバイアス電圧や負荷抵抗の温度依存性、その他の様々な要因に影響されます。測定に対するそれらの影響を抑制するために、測定毎にディテクタのバッテリを新しいものに交換し、暗電流の測定にアンメータを使用するなどの工夫をしています。アンメータを使用することにより、温度依存性があるかもしれない負荷抵抗器が不要になりました。サーミスタはできる限り半導体センサの近くに配置しましたが、直接センサには接触していません。そのため、測定温度と実際の半導体材料の温度に差があるかもしれません。暗電流は環境チャンバの温度を連続的に変化させて測定しました。測定は定常状態の温度で実施されたものではなく、温度が徐々に変化する状態で実施されています。10 °C未満、ならびに50 °Cを超える温度では測定は実施せず、また温度変化が速い場合の影響についての調査は行っておりません。この実験では湿度は制御されていません。

暗電流の逆バイアス電圧特性

3つの代表的な筐体付きディテクタ:SiディテクタDET100A(旧製品)、GeディテクタDET50B(旧製品)、InGaAsディテクタDET10C(旧製品)の温度を24 °Cに保ち、逆バイアス電圧を0~10 Vで変化させて暗電流を測定しました。逆バイアス電圧の供給にはバッテリ、もしくはパワーアダプタDET2Bのような外部電源を使用することができます。下の測定はバッテリの消耗に伴う供給電圧の低下とともに、暗電流がどのように変化するかを示す目的で行われました。

DET in Nested-Box Test Fixture, Both Covers Open, Key Parts Labeled
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図1: カバーを外し、DET10Cを設置した入れ子式金属ボックスの試験冶具。
どちらの箱も内側は黒色の断熱材で覆われています。
A: 外側のアルミニウム製ボックス、B:内側のアルミニウム製ボックス、C:サーミスタ、D: DET10C、E:電源DET1Bのパワーアダプタ、F:DET1B用BNC-BNCフィードスルー、 G:ディテクタの信号用BNC-Triaxフィードスルー、H:サーミスタ用BNC-BNCフィードスルー。

実験のセットアップ
この実験セットアップは、ノイズ源の影響を抑えながら、フォトダイオードの暗電流の逆バイアス電圧依存性を測定するように設計しています。ディテクタの温度制御やディテクタに対する遮光などを行い、また測定電流が外部からの電波障害(EMI)を受けないようにディテクタとアンメータKeithley 6487の接続経路も遮蔽しました。ディテクタの暗電流はnAオーダの場合もあり、正確に測定するためにはこれらの条件を制御することが重要です。

ディテクタは2つの入れ子式アルミニウム製ボックスで囲っています(図1はカバーを外した状態です)。1つのボックスのみでフォトダイオードを遮光することはできますが、実験ではEMIノイズを遮断するためにその外側にもボックスを使用しています。ディテクタは内側のボックスに入れ、BNCとBNC-Traixアダプターフィードスルーを使用して電気的に接続しました。

ディテクタからの測定信号はBNC-Traixアダプターフィードスルーを通ります。ディテクタのBNCコネクタは直接アダプタのBNC端子に取り付けられるため、BNCケーブルは不要でした。BNCケーブルの遮蔽性能は低く、それを使用したときにはディテクタからの信号にEMI源からのノイズが混入する場合があります。内側の金属ボックスは外側の金属ボックス内に配置されていますが、この外側のボックスにはTriax-Triaxフィードスルーが付いています。ディテクタの信号が通る内側と外側のボックスのフィードスルー間にはTriaxケーブルを使用しました。外側のボックスのTriax-Triaxフィードスルー端子とアンメータKeithly6487の接続にも、Triaxケーブルを用いました。外側の金属ボックスは内側のボックスへのEMIを遮断し、Triaxケーブルはディテクタ信号へのEMIを遮断しています。2つのボックスにそれぞれ蓋をした後、ボックスセット一式をESPEC温度チャンバESX-3CW内に設置しました。アンメータはチャンバの外に設置しました。

逆バイアス電圧は、DET1B(旧製品、現行品はDET2B)を使用してBNCフィードスルーを通じて供給しました。DET1Bは電源とDETシリーズディテクタのバッテリーポートに挿入するよう設計されたパワーアダプタから構成されています。パワーアダプタをディテクタに挿入し、もう一方のアダプタ端を内側ボックスの壁にはめられたBNCフィードスルーに接続しました。外側ボックスの外部までの電気的接続にはBNCケーブルともう1つのフィードスルーを使用し、Keithley 6487の電圧出力端子に接続しました。Keithley 6487をPCに接続することで、逆バイアス電圧を制御しながら同時に暗電流を測定することが可能でした。

暗電流は温度に大きく依存するため、実験中はサーミスタを使用して各フォトダイオードの温度を継続的にモニタしました。サーミスタはTO can型パッケージの外面に接触させ、熱伝導テープで固定しました。サーミスタを付けたため、ダイオードへの光を遮断するのにディテクタのキャップを使用することはできませんでした。サーミスタと温度ロガーTSP01間の電気的接続にはBNCケーブルを使用し、BNC-BNCバルクヘッドフィードスルーで入れ子式ボックスの外へ信号を取り出し、カスタム仕様のBNC-フォノジャックケーブルを使用して温度ロガーに接続しました。

実験結果
図2~4のグラフは、それぞれSiディテクタDET100A、GeディテクタDET50B、そしてInGaAsディテクタDET10Cで測定された暗電流です。

SiディテクタDET100Aには電圧レギュレータは内蔵されていませんが、GeディテクタDET50BとInGaAsディテクタDET10Cには内蔵されています。ディテクタ内蔵の電圧レギュレータは、フォトダイオードに印加される逆バイアス電圧を一定に保つ役割を果たします。

一般に、電圧レギュレータは安定な電圧レベルを自動的に維持するために、様々な用途で使用されています。その入力電圧が所定の範囲内であれば、出力電圧レベルはほぼ一定になるように制御されます。しかし入力電圧が、電圧レギュレータが正常に機能する電圧範囲の下限を下回ると、レギュレータは出力電圧を制御できなくなります。入力電圧がさらに下がり続けると出力電圧も下がり、ある閾値まで下がるとレギュレータは全く機能しなくなります。このオフ状態では、出力電圧は無視できるレベルになります。GeディテクタDET50BとInGaAsディテクタDET10Cの場合、電圧レギュレータの出力電圧がフォトダイオードの逆バイアスに使用されます。

SiディテクタDET100Aには電圧レギュレータが内蔵されていないため、測定された暗電流は図2のグラフの通り、Keithley 6487が供給する電圧の増加とともに増加し続けます。DET100Aで測定された暗電流は、0.5 Vの逆バイアス電圧までは指数関数的に増え、逆バイアス電圧が約0.5 V~10 Vの間は直線的に増加します。 新しいバッテリでは10 V以上の電圧が供給されます。

この閾値までの電圧は電圧レギュレータのオフ状態に相当します。電圧が閾値を超えると、Keithley 6487の供給する電圧が5.5 Vに達するまで、ディテクタの暗電流は増加します。供給電圧が5.5 V~10 Vの間では、電圧レギュレータがフォトダイオードに供給する逆バイアス電圧を一定に維持するため、この範囲における暗電流はおおよそ一定しています。 新しいバッテリでは10 V以上の電圧が供給されるため、電圧レギュレータはほぼバッテリの寿命が続く間、暗電流をほぼ一定に保つとともに、一般的にフォトダイオードに過剰な逆バイアス電圧がかからないよう保護する効果もあります。

Dark Current Measurement Data for the Si-Based DET100A
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図2: Siベースのパッケージ付きフォトダイオードDET100A(電圧レギュレータ無し)で測定された暗電流データをKeithley 6487から供給された電圧の関数としてグラフ化しています。
Dark Current Measurement Data for the Ge-Based DET50B
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図3: Geベースのパッケージ付きフォトダイオードDET50B(電圧レギュレータ内蔵)で測定された暗電流データをKeithley 6487から供給された電圧の関数としてグラフ化しています。
Dark Current Measurement Data for the InGaAs-Based DET50B
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図4: InGaAsベースのパッケージ付きフォトダイオードDET10C(電圧レギュレータ内蔵)で測定された暗電流データをKeithley 6487から供給された電圧の関数としてグラフ化しています。

実験結果についての制限事項
測定はディテクタの各種類の中の1台を使用して実施しており、一般的な傾向を示すことを目的としております。よって特定のダイオードの仕様として捉えるものではありません。測定された暗電流はバイアス電圧や負荷抵抗の温度依存性、その他の様々な要因に影響されます。測定に対するそれらの影響を抑制するために、温度制御されたチャンバ内で測定し、暗電流の測定にアンメータを使用するなどの工夫をしています。アンメータを使用することにより、温度依存性がある負荷抵抗器が不要になりました。この実験では湿度は制御されていません。



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