自由空間型電気光学(EO)変調器の実験データ


自由空間型電気光学(EO)変調器の実験データ


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当社製品をご使用いただく際の追加情報や有益な情報などをご提供しています。ここでは、自由空間型EO変調器と併用した高電圧増幅器HVA200が適用できる波長範囲について説明しています。自由空間型EO変調器についての詳細についてはこちらをクリックしてご覧ください。

Free-Space Electro-Optic Modulator Lab Fact Setup
CalloutaDeviceCalloutaDevice
1HRS015 Stabilized NeHeb or
LP980-SF15 Pigtailed Laser Diode
5EO-AM-NR-C1 Electro-Optic Modulator
6HVA200 High Voltage Amplifier
2IO-3D-633-VLP Optical Isolator7LPVISB100-MP2 Linear Polarizerd
3LPVISB100 Linear Polarizerc or
LPNIR100 LInear Polarizer
8DET100A Si High-Speed Photodetectore
4WPMQ05M-633 Quarter-Wave Plate or
WPMQ05M-980 Quarter-Wave Plate
9VT1 Variable BNC Terminatorf
  • 「Callout」欄の番号は上の写真に対応しています。
  • こちらは旧製品で、代替品はHRS015Bです。
  • こちらは旧製品で、代替品はLPVISC100です。
  • こちらは旧製品で、代替品はLPVISC100-MP2です。
  • こちらは旧製品で、代替品はDET100A2です。
  • こちらは旧製品で、代替品はVT2です。
Lab Facts Complete Summary
Vpi
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図1: 半波長電圧(Vpi)と波長の関係を表したグラフ
Vpi
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2: EO位相変調器(電界方向の偏光が入力)
Vpi
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3: EO強度変調器(電界方向と45度の偏光が入力)

当社の自由空間型電気光学(EO)ニオブ酸リチウム強度/位相変調器は、ハイパワー入力を可能するために、酸化マグネシウムが添加されたニオブ酸リチウムが使用されています。広帯域DC結合および高Q共振型のモデル、ならびに当社のすべてのモデルに対応する高電圧増幅器をご用意しています。電気光学変調器(EOM)は、入射光の位相または強度を制御することができ、Qスイッチ、レーザのモードロック、光パルスの発生、側波帯(サイドバンド)の発生など数多くの用途に使用されます。このようなアプリケーションには、結晶に印加した電界強度に比例して屈折率が変化する電気光学現象(一次の電気光学現象、ポッケルス効果)が利用されています。したがって、変調信号V(t)を付加することで、レーザービーム(または他の伝搬光)の位相または振幅に影響を与えることができます。

自由空間型EO変調器は高電圧デバイスなので、正常動作時には通常数百ボルトを必要とします。HVA200は当社のEOMと使用するように設計されています。200Vの出力、100 mAの連続電流出力、および1MHzの帯域幅を有し、低雑音です。また、バイアス電圧は調節可能で、DCオフセットを精密にコントロールできます。適切な変調に必要な半波長電圧(Vpi)は波長に比例します(図1参照)。

この実験データでは、変調入力前に1/4波長板を使用して、HVA200が振幅変調可能な有効波長範囲を実証しています。 ページ上の写真は、この観察に使用されている実験用セットアップです。主な部品には番号が振られ、写真の下にある表内にリスト化されています。このシステムにおいて、変調電圧はビームの伝搬方向に対し垂直に印加され、横向きとなります。これらの実験では、変調電圧はZ軸に平行に印加され(図2および3参照)、この結晶方位をZカット結晶軸と呼びます。この方位にすれば、電極が光路を塞ぐのを防ぎます。また、この配置では、ビームに印加されるすべてのリターダンスは印加電界と結晶の長さの積に比例します(したがって結晶が長くなるとリターダンスも大きくなります)。

Vpi
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図4:印加電圧(Vpiの単位で定義しています)に対する位相変調器の出力。
Vpi
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図5:Vpiを関数としたDCオフセット出力機能付きの強度変調器。

位相変調
位相変調器は出射偏光方向を変えずに透過型レーザービームを位相シフトさせます。この構成において、印加電圧は結晶内の光路に変化を与えます。この変化が出力の位相をシフトさせるのです。位相変調では、ビームの入射偏光方向は結晶のZ軸に平行になっています(印加電圧に対して平行)。図4は印加電圧に対する位相シフトを表し、これは線形の応答になっています。印加電圧はVpiの単位で表しています。Vpiは半波長電圧と呼ばれ、位相を180度シフトさせる際に必要な電圧として定義されます。

位相変調器は、レーザ光源の周波数側波帯(サイドバンド)を発生させる際に非常に便利です。位相変調器にAC電圧(通常は正弦波)を印加すると時間依存型の位相シフトが発生します。 これにより、レーザの中心波長付近に周波数側波帯が発生します。周波数側波帯f = fL ± n × fMとなりますが、ここで、レーザの周波数はfL、変調周波数はfM、n = 1, 2, 3…です。音響光学変調器(AOM)とは異なり、EOMは周波数変調器に空間的なたわみを発生させないため、ラマン側帯冷却や量子工学などレーザースペクトル中に複数の周波数成分が必要な用途に非常に適しています。また、PDH(Pound-Drever-Hall)ロックのようなレーザ安定化手法にも使用することができます。 

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強度変調
強度変調器では入射ビームの偏光を変化させて出力します。出射側に設置した偏光子を通すと出射ビームの強度が変化します。強度変調を行う際は、入射偏光をZ軸に対して45°に設定します。 図5は偏光子透過後の出射偏光および出力振幅を表し、光の正弦変調を行っています。印加電圧はVpiの単位で表しています。ピーク間の変調範囲2Vpiにわたって示されていますが、適切な変調を行うには、全幅変調を確実に行うための、ピーク間電圧Vpiとバイアス電圧Vpi/2が必要です。 

強度変調器は、レーザ光源を直接変調せずに光出力強度を素早く制御することが可能です。このように、強度変調器は、光源の強度安定化、さらには光チョッパ用途にもご使用いただけます。振幅変調器にAC電圧(通常、正弦波または三角波)を印加すると、時間依存型の強度出力が得られます。この変調形式は、レーザのQスイッチまたは誘導ラマン散乱などの強度依存がある用途に特に適しています。

Vpi
図7:5軸プラットフォームPY005(/M)に取り付けたEO強度変調器
Vpi
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図6:入射側に1/4波長板を取り付けたEO強度変調器

当社の実験は、高電圧増幅器HVA200を用いてEO変調器の最大駆動電圧範囲(つまり最大駆動波長範囲)を調べることに重点を置きました。光源として633 nmのHeNeレーザHRS015(旧製品、代替品はHRS015B)または980 nmのピグテール付きレーザLP980-SF15を使用しました。また、直線偏光子(LPNIR100または旧製品のLPVISB100)を用いて偏光軸をテーブル面に垂直に設置しました。初めの偏光子と平行になるように、2つ目の直線偏光子を変調器の出力側にアライメントしました。100 kHzの三角波を生成するためにファンクションジェネレータを使用して、その信号をHVA200で増幅しました。ここで得られた増幅信号を変調器に入力する変調信号として使用しました。変調信号の効果を調べるためにEO強度変調器(EO-AM-NR-C1)を選択しました。HVA200の電圧範囲全体をテストするため、実験は1/4波長板(WPMQ05M-633またはWPMQ05M-980)付き、無しで実施しました(それぞれ図6および 3参照)。

EO強度変調器は正弦波または三角波形のどちらかで駆動し、出力強度の正弦状変調を発生させました(共振型のEO変調器には正弦波変調が必要ですのでご注意ください)。出力強度は以下の式で求めることができます。

(1)
Equation 1

ここで、Ioは出力強度、Iiは入力強度、Vは印加電圧、Vpiは半波長電圧です。この式から、変調電圧を印加することにより出力強度がほぼ正弦波状に変調されることがわかります。

図3のような強度変調器で全幅変調を行うには 0 V~Vpi (または-Vpi~0 V)の変調電圧振幅が必要です。全幅変調を確実に行うためには、一般的に変調信号にVpi/2 のバイアス電圧が必要です。図5によりその理由がわかります。最大値と最大値の両方を得るためには、変調器は0 Vならびに+Vpiまたは -Vpiを通過しなくてはなりません。したがって、適切な変調を行うためには、Vpiを正確に測定することが重要になります。Vpiを測定するための最も一般的な方法は装置を過変調(Vpiより大きなピーク間電圧を印加)して、オシロスコープにより、光出力強度と印加電圧を測定します。これにより、Vpiは、光出力強度の最大値と最小値間の電圧として定義されます。変調器EO-AM-NR-C1を使用してVpiが633 nmで220 Vおよび980 nmで368.8 Vになることを調べました(Vpiは波長に対してリニアに増加します)。

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633 nmにおける結果
HVA200の絶対最大出力は200 Vであるため、この波長では一般的に推奨されているアライメントを使用して出力信号を完全に変調することはできません (この波長ではVpi = 220 V)。このようなシステムでレーザービームを全幅変調しようとすると、駆動電圧の飽和により変調された光信号に歪みが生じたり(HVA200の出力限界を超えて駆動しようとしたため)、印加電圧不足により変調が不十分(減衰や透過が十分に行われていない)になったりします。図8はこの結果を表しており、HVA200の飽和による出力信号の歪みが実証されています。

この限界に対する唯一の解決法は、1/4波長板を変調器の前段に設置して円偏光をEOMに入射させることです(図6参照) これにより光バイアスが発生し、装置の出射偏光がシフトすることで、最大および最小透過位置が増幅器の駆動範囲内にきます。図9は、円偏光入力時に強度変調器を透過した出射偏光を表しています。この結果により、最大および最小値透過を得るためには、駆動電圧範囲-1/2 Vpi~1/2 Vpiが必要があることがわかります。これは-110 V~110 Vに相当し、HVA200の駆動範囲内に収まっています。

1/4波長板(QWP)の手法を使用して同じ実験を再度行いました。この実験では、図10のようにレーザ強度が適切に歪なく変調できたことがわかりました。

Vpi
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図8:633 nmでDCオフセットを使用した変調応答
Vpi
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図9:1/4波長板付き強度変調器の出力
Vpi
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図10:633 nmで1/4波長板を使用した変調応答

980 nmにおける結果
QWP手法を使用したHVA200で使用可能な波長域の上限をテストするために、上記のテストを980 nm光源を使用して再度行いました。図11では、980 nmにおけるVpiを測定するための過変調テストの結果を示しています。これにより、Vpiが368.8 Vであることがわかりました。この結果は、QWP手法を使用すれば、HVA200の範囲内に含まれていることを示しています。図12では、HVA200を使用して980 nmレーザを滑らかに正弦変調できることを実証しています。

Vpi
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図11:出力信号を過変調した時の、光出力強度。Vpiを測定するため、最大および最小の光信号におけるHVA200の電圧を記録します。
Vpi
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図12:980 nmで1/4波長板を使用した変調応答
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EO-AM-NR-C1ならびにHVA200を使用して、633 nmおよび980 nmにおける完全変調深度を実証しました。1/4波長板を用いた手法は、増幅器が適用できる波長範囲を倍増させました。633 nmでは標準的なアライメントを用いて適切に変調できなかったHVA200によっても、この手法を用いることで、すべての動作範囲でEO-AM-NR-C1を駆動でき、1000 nm以下でEO-AM-NR-C2を駆動できました。最大出力電圧が大きくなると増幅器は劇的に高価になるため、このことは特に経済面で有益です。この実験に使用された装置や実験結果の詳細はこちらをクリックしてご覧ください。

633 nmおよび980 nmにおけるVpiの測定を通して、1064 nmまでの完全変調深度を取得できることがわかりました(半波長電圧は波長と線形に比例します)。しかし、HVA200の電圧範囲の限界に近づくにつれ、過変調を改善して適切なVpiの測定を行うことが難しくなります。 

変調器のVpiを低下させるために使用できる手法がいくつかあります。ビームの変調器へのアライメントを変えることで、半波長電圧を下げられる可能性があります。例えば、EO変調器に対するアライメント方法としては、ビームを結晶に対して垂直にアライメントするのが一般的です。これにより、適切なサイズのビームが蹴られずに入出射の開口部を通過することができます。しかし、斜め入射にすることで結晶を透過する光路が長くなり、効果的にVpiを低下させることができます。

最後に、この実験データではHVA200を主に自由空間型変調器と一緒に使用しています。これにより最大980 nmでの駆動が可能なことを実験で実証しています。また、当社のファイバ入出力型変調器はきわめて低い半波長電圧(数ボルト以下)に対応し、1525 nm~1605 nmで動作します。

Vpi
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図14:1/4波長板を使用して発生させた正弦振幅変調
Vpi
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図13:DCバイアスを使用して発生させた正弦振幅変調

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