パラメトリック組織イメージング


パラメトリック組織イメージング


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悪性組織のパラメトリックイメージングへのOCT技術の適用

 

主な研究者:

R. A. McLaughlin, L. Scolaro, P. Robbins, C. Saunders, S. L. Jacques, D. D. Sampson

医療の現場における、健康な組織と悪性の組織を明確に判別する現在の臨床イメージング技術の限界は、癌治療技術の発展を大きく制限しています。悪性リンパ節の外科的切除は、癌組織の増殖を抑える上で最も一般的に行われている治療ではありますが、この治療では患者の健康なリンパ節も不必要に切除されることが多いこともよく知られています。このようなリンパ節の切除によって患者は、リンパ浮腫や体液の貯留や組織の腫れなどの慢性的な症状に悩むことになります。

悪性細胞が存在するヒトのリンパ節の画像をパラメトリックOCT技術で生成するという近年の共同研究において、研究者たちのグループは、当社の波長掃引OCT (SS-OCT)システム(中心波長: 1325 nm、スペクトル帯域幅: 100 nm)をベースとした装置を使用しました。ここで得られたOCT画像については、鉛直面OCT技術よりも組織の対比が改善されたため、癌治療の分野での進歩の可能性が期待されています。

この研究では、2人の乳癌患者から切除された腋窩(えきわ)のリンパ腫の試料が使われました。試料は切除直後に2 mm の厚さに切られて、ガラス製のスライドに載せられた後に、ガラス製スライドと組織試料の屈折率の差を小さくするためにグリセリンに浸漬されました。また、OCTのプローブは、組織片とガラス製スライドの下からビーム光が上向きに照射されるように配置されました。

A-スキャンごとに、組織片の端の位置が自動画像処理アルゴリズムで特定されて、始点における組織深度0.5 mmでのOCT信号の減衰率を定量化する分析が行われました。その結果、癌性組織の方が健康な組織と比較して、OCT信号を早く減衰させることがわかりました。各位置(x、y指標)でのピクセル明度が、A-スキャン信号の減衰率に対応し、計算後の減衰係数がパラメトリック画像として画像化されています。減衰率が低い箇所での画像は暗いピクセルで、減衰率が高い箇所での画像は明るいピクセルで表現されました。

図1では、リンパ節の鉛直面パラメトリックOCT画像(b)を、H&E染色での画像 (a)および鉛直面OCT 画像(c) と比較して、健康な組織と癌組織が明確に区別できるかどうかを比較しています。いずれのリンパ節の画像でも悪性部分と健康部分を見ることができて、画像1aと1bでは健康な組織の部分が丸で示されています。パラメトリックOCT画像では、鉛直面OCT画像と比較して、健康な組織と悪性組織の対比が明らかです。

これらの画像で示されているように、パラメトリックOCT技術の方が鉛直面OCT技術よりも癌患者の病状をより正確に表します。この技術が癌をはじめとした病気の研究や治療に大きく貢献することが期待されます。

 

図1.

(a) H & E染色(b)パラメトリックOCT技術および (c) 鉛直面OCT技術でヒトの腋窩の悪性リンパ腫を撮影した画像。丸が付けられているのが健康な組織で、悪性組織と比較して吸収係数が低いことがわかります。スケールバー = 1 mm。

Figure 1a (a)Figure 1b (b)Figure 1c (c)
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参考文献:

R. A. McLaughlin, L. Scolaro, P. Robbins, C. Saunders, S. L. Jacques, D. D. Sampson, J. Biomed Opt. 15, 046029 (2010).


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