光コヒーレンストモグラフィ:

タマネギの品質管理向上に有用なイメージング手法

 

研究者:

I. V. Meglinski, C. Buranachai, and L. A. Terry

タマネギは世界中で最も多く購入されている野菜の1つではありますが、その保存状態によって引き起こされる品質不良は、今でも重大な課題です。人による簡単な検査では見つけることのできない収穫後の病気は、タマネギ農業の利益率を低下させる大きな原因となっています。典型的なタマネギの品質不良には、水分過多な外皮、Botrytis allii菌による首部分の腐敗、そして変色(図1参照)などがあります。年間を通して高品質の野菜を購入したいという消費者のニーズは続けて拡大しており、果物や野菜を非破壊検査で選別できる低コストで信頼性の高い技術が求められています。

Figure 1

図1.

典型的なタマネギの品質不良。上の写真: 1つ以上の同心状の組織層において水分過多であるため、2次的な細菌感染が予想され、やがては内部組織が損傷する可能性のある例。この不良では、タマネギの外側の層に水分が集まりすぎて、茶色や黄色に変色します。中央の写真: Botrytis allii菌によって首部分が腐食している例。下の写真: 黒色に変色している例

 

 

過去においてX線トモグラフィ、 ポジトロン断層法 (PET)、超音波や磁気共鳴イメージングなどの非侵襲技術が、生鮮食品を迅速に選別する方法として用いられてきましたが、多くの場合、これらの技術は一般的な検査方法として普及するには高コストでした。不透明な光散乱媒質の構造や内部不良の検査に適した有望な技術として登場したのが光コヒーレンストモグラフィ(OCT)技術です。

近年、Cranfield University (UK)の植物科学研究所における共同研究で、タマネギの内部組織の断面イメージングによる品質不良の有無や度合いの検知の実現可能性が調査され、中心波長が1325 nmの当社の波長掃引OCTシステムが使用されました。この実験においてMeglinski氏他は、μレベルの空間分解能でタマネギの表皮と外皮(同心のタマネギの層状の組織) を画像化しました。その結果得られたのが、図2の画像です。これらのOCT画像では、乾皮、外側の組織層や根部分、そして組織の異常なども最大0.5 mmの深度まで可視化されています。

この研究の実験結果によって、果物や野菜内部の不良を示す可能性のある組織学的異常を識別するのに、OCT技術が有効であることが示されました。この非侵襲のイメージング手法を、収穫後の保存の前後や最中でのタマネギの選別や検査を行う迅速な方法として採用すれば、未来のタマネギ農家は、確実に高品質な農産物を消費者に届けられるだけではなく、保存状態が悪いが故に(人の目では見つけられない)病気になって販売不能になってしまう比率を下げることができるのではないかと考えられています。

図 2.

非接触でサンプルを観察したSS-OCTの断面画像。各画像の寸法は 3 mm x 1.6 mm。 (a) 正常な組織 (b) サンプルで黒色変している部分が白の矢印で示されています。

Figure 2a (a)Figure 2b (b)
Latest Multiphoton Systems

参考文献:

I. V. Meglinski, C. Buranachai, and L. A. Terry, Laser Physics Lett. 7, 169-176 (2010).

研究チーム:

 

I. V. Meglinski, C. Buranachai, and L. A. Terry


Posted Comments:
No Comments Posted