OCTを用いたバイオフィルムの研究


OCTを用いたバイオフィルムの研究


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Biofilm Structure at the Mesoscale Investigated Using Spectral Domain OCT

(スペクトルドメインOCTを用いたメゾスケールでのバイオフィルム構造の研究)

 

主な研究者:

M. Wagner, D. Taherzadeh, C. Haisch, and H. Horn

微生物の生命の優性型であるバイオフィルムとは、水生環境において物体の表面に付着する微生物の集合体です。顕微鏡観察レベルにおいてバイオフィルムの成分やその分布を研究する様々な方法が確立されており、微小局所領域の顕微鏡観察については、多く発表されています(顕微鏡の例としては、共焦点レーザ走査型顕微鏡(CLSM)、走査型透過X線顕微鏡(STXM)、透過電子顕微鏡(TEM) などがあります)。 メゾスケールでバイオフィルム構造に関する情報を得る手段としては、磁気共鳴顕微鏡(MRM)や磁気共鳴画像法(MRI)など、の技法が使われてきました。しかし、MRMやMRIシステムは非常に複雑であり、また設置面積が大きく、事務管理および機器設置の面においてコストが高くなります。

Figure 1

図 1.

上: 3つの異なる流れを持つスライドガラス上で培養された134日齢の従属栄養バイオフィルム(白)の三次元再構成画像:層流  (re = 1000)、過度流(Re = 2500)、乱流(Re = 4000)。バイオフィルム構造の多孔性を強調するために、赤色の直交片が4 mm x 4 mm x 1.6 mm画像に追加されました。

下: 上記のフレームに示された条件と同じ3つの流体力学的条件におけるバイオフィルム構造の断面図を示す等距離OCT A-スキャン(4 mm x 1.6 mm)。

最近、バイオフィルムの構造をミリメートルの領域で研究するための代替的な画像診断法が登場しました。それが光コヒーレントトモグラフィ(OCT)です。Wagnerらは、当社のOCP930SRスペクトルドメインOCTを使用して、その場培養された従属栄養バイオフィルムのメゾスコピック構造を研究しました。当社のOCTシステムは小型かつ移動式で使いやすく、またメゾスケールにおけるバイオフィルム構造を非破壊で分解能<20μmの画像を取得することができます。    4 mm x 4 mm x 3 mm の大きさの三次元OCT画像は、8 μm x 16 μm x 4 μm (xyz、 250 A-scans)の解像度で、2分以内に取得されました。バイオフィルムは、カスタムメイドの漏斗状のシステム内のスライドガラス上で培養されました。流量は、層流(Re = 1000)、過度流(Re = 2500)、乱流(Re = 4000)の環境を実現するために調整されました。

図1の1列目に示された等値面の投影図は、それぞれの流動様式におけるバイオフィルムのメゾスコピック構造を表します。バイオフィルム基質内にバイオマスや粒状物質が見えます。多孔質構造を強調するために、赤い薄片がバイオフィルムに対して直角に挿入されています。図から、層流と過度流の環境で培養されたバイオフィルムが、乱流環境で培養されたものよりもより多孔質であることが見られます。さらに、体積気孔率の計算では、この非カオス流の環境内の空体積が乱流環境のほぼ2倍であり、その結果、後者には異なる構造特性があることが明らかになっています。

図1 下の5 x 3フレームは、4 mm x 1.6 mm A-スキャンの一連の等距離画像を示します。Re = 1000およびRe = 2500で培養されたバイオフィルムの構造は、さまざまな大きさの集合体と連結度から構成されており、それらはマイクロからミリメートルまでさまざまな大きさの空隙で区切られています。さらに、層流と過度流に関しては、OCT画像は開いた構造のバイオフィルムの上に層状構造で成長します。対照的に、乱流内で培養されたバイオフィルムのメゾスコピック構造は高密度で、また視覚的に同質で多くの孔がないように見えます。しかし、表面の構造はばらついています。

異なる流体力学的条件において培養されたバイオフィルム間の多孔性の差を定量化することによって、研究者は、バイオマス内部の物質移動効果についての理解を深めることができます。ここに示されたデータに基づき、Wagnerらは、バイオフィルムのメゾスコピック構造は、気孔や開いた構造のバイオフィルム-バルク流体界面を通じての栄養素の移流輸送を可能にすると考えています。ここでの結果は、マイクロとマクロのスケールにおけるバイオフィルム研究のギャップを縮める上で、OCTが有望な画像診断法であることを示しています。

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References:

1) M.Wagner, D. Taherzadeh, C. Haisch, and H. Horn, Biotechnol and Bioeng. DOI: 10.1002/bit.22864


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