多光子顕微鏡における第二高調波発生

 

主な研究者:

Thorlabs Virginia R&D Team

非線形光学顕微鏡技術(NLOM)は、生きた生体組織の観察で用いられる技術として定着してきています。非線形光学顕微鏡に関係する様々なイメージング技術(2光子または3光子が励起する蛍光発光、そして第二および第三高調波発生)では、数百ミクロンのイメージング深度で、サンプル内の構造、機能そして化学的情報を集めることができます。ハードウェア、光学素子や半導体レーザ光源の技術は、過去の科学者達が蓄積してきた経験によって発展し、その結果、深い位置でのイメージングを高速で長期間にわたって行う実験を容易に実行できるようになりました。

Figure 2

図2.

ニワトリの脛骨の断面画像。緑色に疑似カラー化された部分が、骨内部のコラーゲン原繊維からの第二高調波高発生を示しています。青色に疑似カラー化された部分は、骨小柱内部の骨芽細胞からの自己蛍光現象です。スケールバーは100 µmです。

NLOMのイメージ深度は、主にサンプルへのレーザ入射光の散乱と、サンプルから放出される信号によって制限されます。生体サンプルにおけるこのような減衰は、λ4に反比例するミー散乱に大きく依存します。励起波長と信号(蛍光信号または高調波発生信号のいずれであっても)を長波長側にシフトすることで、増幅レーザ光源を使用することなく、イメージ深度を大きくできます(増幅レーザ光源では高速イメージングに対応できません)。

NLOM を生体組織イメージングに適用した場合の特筆すべき利点は、紫外線励起を使用せずに、内在性のコントラストメカニズムに敏感に反応する点です。第二高調波発生を観察する場合、生体組織に特定の構造的パラメータが必要です。この条件を満たす最も一般的な生物学的組織成分はコラーゲンです。図1は、ニワトリの脚の腱の中のコラーゲンにおける第二高調波発生を示しています。それぞれの画像は同じ焦点面で撮影されていますが、アクロマティック1/2波長板を使用して、入射光の偏光は両矢印(⇔)で示されているように回転しています。入射したレーザ偏光が回転するとき(図1A と図1B参照)、入射光の偏光方向に沿ったコラーゲン繊維からより強い信号が発生します。図1Cでは、図1Aや1Bと比較して信号が弱くなっており、入射光の偏光方向がコラーゲン繊維の方向に合っていないことが分かります。また、繊維方向の偏光方向に対する相対的ズレの度合いが信号強度と関係があるという特徴によって、コラーゲン組織の細胞学的相互作用、物理的相互作用、環境との相互作用に関する新たな情報も得ることもできます。

第二高調波発生は、骨格筋や微小管でも観察されます。2光子と3光子励起蛍光により、その機能に依存した明確に異なるスペクトル放射の特徴から、特定の細胞構造が識別できます。例えばNAD(P)H、レチノール、フラビンに対して2光子励起による蛍光イメージングを使用すると、機能的な生化学的情報が得られますが、これらの物質は、構造マーカとしての利用も可能です。図2では、ニワトリの骨からの第二高調波発生の画像と、ニワトリの脛骨の小骨内部の骨芽細胞からの自己蛍光現象の画像が重ねられています。また2光子励起蛍光では、エラスチンなどの細胞外からの組織の信号を得ることもできます。 

Figure 1b
(c)
Figure 1b
(b)
Figure 1a
(a)

図1.

ニワトリの腱のコラーゲン繊維束周囲の結合組織接合部で第二高調波が生成している様子です。結合組織では、長手方向に沿ったコラーゲン繊維と比較して、半径方向のコラーゲン繊維が多いことがわかります。赤い矢印は垂直方向に沿った繊維を指し、黄色の矢印は長手方向に沿った繊維を指していますが、信号強度の変化が見られます。スケールバーは100 μmです。

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ここに掲載されている画像は、当社の動画速度の多光子顕微鏡を使用し、20X で NA 1.0の水浸対物レンズを用いて取得されました。励起光源は波長が 860 nm に調整されたフェムト秒チタンサファイアレーザです。画像は1024 x 1024ピクセルで、取得レートは14 fpsです。


Posted Comments:
eladeizner  (posted 2013-06-13 05:55:44.877)
Hi, Can you please tell me what are the 6 images in the second harmonic generetion presentation? Thanks, Elad Eizner PhD student, Tel Aviv university.
sharrell  (posted 2013-06-13 16:10:00.0)

Response from Sean at Thorlabs: The six images at the top of the page are an overview of images taken using multiphoton microscopy.

Top Rrow:
Left: Two-photon fluorescence of DAPI (blue), AlexaFluor488 (green) and AlexaFluor568 (red) in the mouse kidney. Image obtained using the Thorlabs Multiphoton Microscope with an Olympus 20X 1.0 NA objective.
Middle: Multiphoton imaging of GFP fluorescence in dopamine receptors in C. Elegens. Olympus 20X 1.0 NA W. Sample provided by William Ryu, University of Toronto.
Right: Two-color mouse liver image.

Bottom Row:
Left: Mouse embryo section, sample courtesy of Dr. Rieko Ajima, National Cancer Institute, Center for Cancer Research.
Middle: One-color fluorescence microscopy image of a mouse kidney.
Right: Mouse Embryo Section, Sample Courtesy of Dr. Rieko Ajima, National Cancer Institute, Center for Cancer Research.

Many of these images can be seen here in larger sizes: http://www.thorlabs.com/newgrouppage9.cfm?objectgroup_id=5309