ヘリオットセル用凹面ミラー、2~20 µm


  • Mid-Infrared Enhanced Gold Mirrors for Herriott Cells
  • Concave Mirrors with or without Through Hole
  • 1" or 2" Outer Diameter

CM508-200EH4-M02

Ø2" Concave Mirror with
Ø4 mm Off-Axis Hole

CM254-100-M02

Ø1" Concave Mirror

CM254-100CH3-M02

Ø1" Concave Mirror with
Ø3 mm Center Hole

A Herriott Cell Increases the Path Length
of a Beam Through the Cell

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Herriott Cell Reflections
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上の図はミラー表面に投影された角度θを示しています。黒い丸は一方のミラーでの反射を示し、白い丸はもう一方のミラーでの反射を示しています。
Herriott Cell
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当社では軸外穴付きのØ50.8 mm(Ø2インチ)凹面ミラーを組み込みこんだヘリオットセルもご用意しております。

特長

  • ヘリオットセル用中赤外域(MIR)強化型金コーティングミラー: 2~20 µm、Ravg>98%、Rabs>95%
  • f = 100.0 mmのØ25.4 mm(Ø1インチ)ミラー、およびf = 200.0 mmのØ50.8 mm(Ø2インチ)ミラー
  • 貫通穴の有無は選択可能
    • 貫通穴の位置は中央または軸外を選択可能
  • 熱安定性に優れたUV溶融石英(UVFS)基板

ヘリオットセル用凹面ミラーは、卓上型のヘリオットセルを構築できるように設計されています。Ø25.4 mm(Ø1インチ)(f = 100 mm)およびØ50.8 mm(Ø2インチ)(f = 200 mm)のミラーをご用意しており、貫通穴の有無は選択可能です。ミラーにはコーティングが施されているため、当社の標準的な金コーティング凹面ミラーよりも湿度、吸湿およびその他の環境要因に対する耐久性に優れています。また、このコーティングにより中赤外域(MIR)での性能が向上し、2 μm~20 μmにおいて平均反射率>98%が得られます。ヘリオットセルでは多重反射をさせるため温度変化に敏感であり、それにより出射光のアライメントに影響が現れる可能性があります。こちらのミラーは溶融石英基板を用いているため熱的安定性に優れ、このことは出射光のアライメント維持にも寄与します。

ヘリオットセルは、2枚の球面ミラー(焦点距離が同じもの)を用いて多重反射系を構成します。その際、少なくともどちらか一方のミラーに穴(中央または軸外)が開いている必要があります。光はミラーの穴を通って入出射しますが、入射点に戻る前にセル内で何度も反射を繰り返します(上の図参照)。ヘリオットセル内に光を入射しやすくするために、当社では貫通穴付きミラーの裏面の穴の径を大きくしており(Ø25.4 mmミラーではØ6.5~Ø6.6 mm、Ø50.8 mmミラーではØ8.0 mm)、それらの面取り角は60°です。当社では軸外穴付きのØ50.8 mm(Ø2インチ)凹面ミラー(CM508-200EH4-M02)を用いた組立済みのヘリオットセルもご用意しております。

ヘリオットセルは一種の長光路吸収セルであり、主に環境モニタリング、燃焼過程、医療診断、基礎的な原子・分子物理学などの分野で利用される微量ガス吸収分光法に用いられます。ホワイトセルなどの他の長光路吸収セルに比べて、ヘリオットセルは小さな擾乱に対して安定しています。ヘリオットセルの主な利点としては、コンパクトな構造でありながら比較的長い吸収路を実現できること、高フィネスの光共振器(一般的に空間モードマッチング、光学素子の精密アライメント、共鳴励起などが必要)よりも非常にシンプルであることなどが上げられますa,b,c。例えば、当社のØ50.8 mm(Ø2インチ)の中央穴付きミラーを用いてミラー間距離363 mmのセルを構築し、ビーム径Ø2 mmの光を用いた場合には、12.5 mの光路長が得られます。同様に、当社のØ50.8 mm(Ø2インチ)の軸外穴付きミラーを用いてミラー間距離374 mmのセルを構築し、ビーム径Ø1 mmの光を用いた場合には、35.9 mの光路長が得られます。おおよその光路長は2枚のミラー間距離に両ミラー面上の反射点の数(すなわち反射回数)を乗じることで求められますa。 光路長は各ミラーでの反射回数を増やすことで長くすることができます。

ビームがヘリオットセル内に入射すると、2枚のミラーの間を複数回反射します。その際、ビームは常に回転双極面上に留まっています。ミラーの表面を見ると、ビームの反射点は一般に楕円または円になります(右図参照)。中央穴付きミラーの特殊なケースでは、反射点は直線上に並びます(ただし、特定の配置においては楕円形にすることも可能です)。これは、一般に軸外穴付きミラーの方がより大きく開口を使えるため、中央穴付きミラーよりも光路長を長くできることを意味します。角度θ(単位はラジアン)は、2つの連続した反射点の間の角度を示します(1枚のミラー上での反射点については2θ回転します)。したがって、ヘリオットセルのビームが回帰する条件(ビームが戻る条件)は以下で与えられます。

Herriott Cell Reflections

ここで、N(偶数の整数)はビームがセル内に形成する光路の数で、Mは整数です。中央に穴の開いているミラーの場合、θはπと等しくなります。上の式は、ヘリオットセルからビームが出射するためには、連続する反射点の間の角度に全反射回数を乗じた値が、2πの整数倍にならなければならないことを簡潔に示しています。セル内でビームが反射する回数は、2枚のミラー間の距離を調整して変えることができます。このヘリオットセルはシンプルで安定した装置であるため、小型で扱いやすい特徴を維持したまま光路長を伸ばしたい場合に便利です。

  • D. R. Herriott, H. Kogelnik, R. Kompfner, Appl. Opt. 3, 523-526 (1964).
  • D. R. Herriott, H. J. Schulte, Appl. Opt. 4, 883-889 (1965).
  • J. B. McManus, P. L. Kebabian, M. S. Zahniser, Appl. Opt. 34, 3336-3348 (1995).
Optical Coatings Guide
Optic Cleaning Tutorial

グラフの青い領域は、仕様の反射率が保証される波長範囲を示しています。この帯域の外側(特に反射率のグラフに変動や傾斜がみられる範囲)は典型値で、ロット毎にバラつきがある可能性があります。

Unprotected Gold -M03
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生データはこちらからダウンロードいただけます。
Unprotected Gold -M03
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生データはこちらからダウンロードいただけます。
Damage Threshold Specifications
Coating Designation
(Item # Suffix)
Damage Threshold
-M02Pulsed0.1 J/cm2 at 1.064 µm, 10 ns, 10 Hz, Ø1.06 mm
3 J/cm2 at 10.6 µm, 100 ns, 1 Hz, Ø1.29 mm
CWa25 W/cm at 1.07 µm, Ø1.04 mm
450 W/cm at 10.6 µm, Ø1.18 mm
  • ビームの出力密度はW/cmの単位で計算します。このパワー密度の単位(単位長さあたりのパワー)で表した量が長パルスおよびCW光源に対して最も適している理由については、下記の「CWレーザと長パルスレーザ」をご覧ください。

当社の中赤外域強化ミラーの損傷閾値データ

右の仕様は当社の中赤外域強化ミラーの測定値です。損傷閾値の仕様はコーティングの種類が同じであればミラーのサイズや形状に関わらず同じです。

 

レーザによる損傷閾値について

このチュートリアルでは、レーザ損傷閾値がどのように測定され、使用する用途に適切な光学素子の決定にその値をどのようにご利用いただけるかを総括しています。お客様のアプリケーションにおいて、光学素子を選択する際、光学素子のレーザによる損傷閾値(Laser Induced Damage Threshold :LIDT)を知ることが重要です。光学素子のLIDTはお客様が使用するレーザの種類に大きく依存します。連続(CW)レーザは、通常、吸収(コーティングまたは基板における)によって発生する熱によって損傷を引き起こします。一方、パルスレーザは熱的損傷が起こる前に、光学素子の格子構造から電子が引き剥がされることによって損傷を受けます。ここで示すガイドラインは、室温で新品の光学素子を前提としています(つまり、スクラッチ&ディグ仕様内、表面の汚染がないなど)。光学素子の表面に塵などの粒子が付くと、低い閾値で損傷を受ける可能性があります。そのため、光学素子の表面をきれいで埃のない状態に保つことをお勧めします。光学素子のクリーニングについては「光学素子クリーニングチュートリアル」をご参照ください。

テスト方法

当社のLIDTテストは、ISO/DIS 11254およびISO 21254に準拠しています。

初めに、低パワー/エネルギのビームを光学素子に入射します。その光学素子の10ヶ所に1回ずつ、設定した時間(CW)またはパルス数(決められたprf)、レーザを照射します。レーザを照射した後、倍率約100倍の顕微鏡を用いた検査で確認し、すべての確認できる損傷を調べます。特定のパワー/エネルギで損傷のあった場所の数を記録します。次に、そのパワー/エネルギを増やすか減らすかして、光学素子にさらに10ヶ所レーザを照射します。このプロセスを損傷が観測されるまで繰返します。損傷閾値は、光学素子が損傷に耐える、損傷が起こらない最大のパワー/エネルギになります。1つのミラーBB1-E02の試験結果は以下のようなヒストグラムになります。

LIDT metallic mirror
上の写真はアルミニウムをコーティングしたミラーでLIDTテストを終えたものです。このテストは、損傷を受ける前のレーザのエネルギは0.43 J/cm2 (1064 nm、10 ns pulse、 10 Hz、Ø1.000 mm)でした。
LIDT BB1-E02
Example Test Data
Fluence# of Tested LocationsLocations with DamageLocations Without Damage
1.50 J/cm210010
1.75 J/cm210010
2.00 J/cm210010
2.25 J/cm21019
3.00 J/cm21019
5.00 J/cm21091

試験結果によれば、ミラーの損傷閾値は 2.00 J/cm2 (532 nm、10 ns pulse、10 Hz、 Ø0.803 mm)でした。尚、汚れや汚染によって光学素子の損傷閾値は大幅に低減されるため、こちらの試験はクリーンな光学素子で行っています。また、特定のロットのコーティングに対してのみ試験を行った結果ではありますが、当社の損傷閾値の仕様は様々な因子を考慮して、実測した値よりも低めに設定されており、全てのコーティングロットに対して適用されています。

CWレーザと長パルスレーザ

光学素子がCWレーザによって損傷を受けるのは、通常バルク材料がレーザのエネルギを吸収することによって引き起こされる溶解、あるいはAR(反射防止)コーティングのダメージによるものです[1]。1 µsを超える長いパルスレーザについてLIDTを論じる時は、CWレーザと同様に扱うことができます。

パルス長が1 nsと1 µs の間のときは、損傷は吸収、もしくは絶縁破壊のどちらかで発生していると考えることができます(CWとパルスのLIDT両方を調べなければなりません)。吸収は光学素子の固有特性によるものか、表面の不均一性によるものかのどちらかによって起こります。従って、LIDTは製造元の仕様以上の表面の質を有する光学素子にのみ有効です。多くの光学素子は、ハイパワーCWレーザで扱うことができる一方、アクロマティック複レンズのような接合レンズやNDフィルタのような高吸収光学素子は低いCWレーザ損傷閾値になる傾向にあります。このような低い損傷閾値は接着剤や金属コーティングにおける吸収や散乱によるものです。

Linear Power Density Scaling

線形パワー密度におけるLIDTに対するパルス長とスポットサイズ。長パルス~CWでは線形パワー密度はスポットサイズにかかわらず一定です。 このグラフの出典は[1]です。

Intensity Distribution

繰返し周波数(prf)の高いパルスレーザは、光学素子に熱的損傷も引き起こします。この場合は吸収や熱拡散率のような因子が深く関係しており、残念ながらprfの高いレーザが熱的影響によって光学素子に損傷を引き起こす場合の信頼性のあるLIDTを求める方法は確立されておりません。prfの大きいビームでは、平均出力およびピークパワーの両方を等しいCW出力と比較する必要があります。また、非常に透過率の高い材料では、prfが上昇してもLIDTの減少は皆無かそれに近くなります。

ある光学素子の固有のCWレーザの損傷閾値を使う場合には、以下のことを知る必要があります。

  1. レーザの波長
  2. ビーム径(1/e2)
  3. ビームのおおよその強度プロファイル(ガウシアン型など)
  4. レーザのパワー密度(トータルパワーをビームの強度が1/e2の範囲の面積で割ったもの)

ビームのパワー密度はW/cmの単位で計算します。この条件下では、出力密度はスポットサイズとは無関係になります。つまり、スポットサイズの変化に合わせてLIDTを計算し直す必要がありません(右グラフ参照)。平均線形パワー密度は、下の計算式で算出できます。

ここでは、ビーム強度プロファイルは一定であると仮定しています。次に、ビームがホットスポット、または他の不均一な強度プロファイルの場合を考慮して、おおよその最大パワー密度を計算する必要があります。ご参考までに、ガウシアンビームのときはビームの強度が1/e2の2倍のパワー密度を有します(右下図参照)。

次に、光学素子のLIDTの仕様の最大パワー密度を比較しましょう。損傷閾値の測定波長が光学素子に使用する波長と異なっている場合には、その損傷閾値は適宜補正が必要です。おおよその目安として参考にできるのは、損傷閾値は波長に対して比例関係であるということです。短い波長で使う場合、損傷閾値は低下します(つまり、1310 nmで10 W/cmのLIDTならば、655 nmでは5 W/cmと見積もります)。

CW Wavelength Scaling

この目安は一般的な傾向ですが、LIDTと波長の関係を定量的に示すものではありません。例えば、CW用途では、損傷はコーティングや基板の吸収によってより大きく変化し、必ずしも一般的な傾向通りとはなりません。上記の傾向はLIDT値の目安として参考にしていただけますが、LIDTの仕様波長と異なる場合には当社までお問い合わせください。パワー密度が光学素子の補正済みLIDTよりも小さい場合、この光学素子は目的の用途にご使用いただけます。

当社のウェブ上の損傷閾値の仕様と我々が行った実際の実験の値の間にはある程度の差があります。これはロット間の違いによって発生する誤差を許容するためです。ご要求に応じて、当社は個別の情報やテスト結果の証明書を発行することもできます。損傷解析は、類似した光学素子を用いて行います(お客様の光学素子には損傷は与えません)。試験の費用や所要時間などの詳細は、当社までお問い合わせください。

パルスレーザ

先に述べたように、通常、パルスレーザはCWレーザとは異なるタイプの損傷を光学素子に引き起こします。パルスレーザは損傷を与えるほど光学素子を加熱しませんが、光学素子から電子をひきはがします。残念ながら、お客様のレーザに対して光学素子のLIDTの仕様を照らし合わせることは非常に困難です。パルスレーザのパルス幅に起因する光学素子の損傷には、複数の形態があります。以下の表中のハイライトされた列は当社の仕様のLIDT値が当てはまるパルス幅に対する概要です。

パルス幅が10-9 sより短いパルスについては、当社の仕様のLIDT値と比較することは困難です。この超短パルスでは、多光子アバランシェ電離などのさまざまなメカニクスが損傷機構の主流になります[2]。対照的に、パルス幅が10-7 sと10-4 sの間のパルスは絶縁破壊、または熱的影響により光学素子の損傷を引き起こすと考えられます。これは、光学素子がお客様の用途に適しているかどうかを決定するために、レーザービームに対してCWとパルス両方による損傷閾値を参照しなくてはならないということです。

Pulse Durationt < 10-9 s10-9 < t < 10-7 s10-7 < t < 10-4 st > 10-4 s
Damage MechanismAvalanche IonizationDielectric BreakdownDielectric Breakdown or ThermalThermal
Relevant Damage SpecificationNo Comparison (See Above)PulsedPulsed and CWCW

お客様のパルスレーザに対してLIDTを比較する際は、以下のことを確認いただくことが重要です。

Energy Density Scaling

エネルギ密度におけるLIDTに対するパルス長&スポットサイズ。短パルスでは、エネルギ密度はスポットサイズにかかわらず一定です。このグラフの出典は[1]です。

  1. レーザの波長
  2. ビームのエネルギ密度(トータルエネルギをビームの強度が1/e2の範囲の面積で割ったもの)
  3. レーザのパルス幅
  4. パルスの繰返周波数(prf)
  5. 実際に使用するビーム径(1/e2 )
  6. ビームのおおよその強度プロファイル(ガウシアン型など)

ビームのエネルギ密度はJ/cm2の単位で計算します。右のグラフは、短パルス光源には、エネルギ密度が適した測定量であることを示しています。この条件下では、エネルギ密度はスポットサイズとは無関係になります。つまり、スポットサイズの変化に合わせてLIDTを計算し直す必要がありません。ここでは、ビーム強度プロファイルは一定であると仮定しています。ここで、ビームがホットスポット、または他の不均一な強度プロファイルの場合を考慮して、おおよその最大パワー密度を計算する必要があります。ご参考までに、ガウシアンビームのときは一般にビームの強度が1/e2のときの2倍のパワー密度を有します。

次に、光学素子のLIDTの仕様と最大エネルギ密度を比較しましょう。損傷閾値の測定波長が光学素子に使用する波長と異なっている場合には、その損傷閾値は適宜補正が必要です[3]。経験則から、損傷閾値は波長に対して以下のような平方根の関係であるということです。短い波長で使う場合、損傷閾値は低下します(例えば、1064 nmで 1 J/cm2のLIDTならば、532 nmでは0.7 J/cm2と計算されます)。

Pulse Wavelength Scaling

 

波長を補正したエネルギ密度を得ました。これを以下のステップで使用します。

ビーム径は損傷閾値を比較する時にも重要です。LIDTがJ/cm2の単位で表される場合、スポットサイズとは無関係になりますが、ビームサイズが大きい場合、LIDTの不一致を引き起こす原因でもある不具合が、より明らかになる傾向があります[4]。ここで示されているデータでは、LIDTの測定には<1 mmのビーム径が用いられています。ビーム径が5 mmよりも大きい場合、前述のようにビームのサイズが大きいほど不具合の影響が大きくなるため、LIDT (J/cm2)はビーム径とは無関係にはなりません。

次に、パルス幅について補正します。パルス幅が長くなるほど、より大きなエネルギに光学素子は耐えることができます。パルス幅が1~100 nsの場合の近似式は以下のようになります。

Pulse Length Scaling

お客様のレーザのパルス幅をもとに、光学素子の補正されたLIDTを計算するのにこの計算式を使います。お客様の最大エネルギ密度が、この補正したエネルギ密度よりも小さい場合、その光学素子はお客様の用途でご使用いただけます。ご注意いただきたい点は、10-9 s と10-7 sの間のパルスにのみこの計算が使えることです。パルス幅が10-7 sと10-4 sの間の場合には、CWのLIDTも調べなければなりません。

当社のウェブ上の損傷閾値の仕様と我々が行った実際の実験の値の間にはある程度の差があります。これはロット間の違いによって発生する誤差を許容するためです。ご要求に応じて、当社では個別のテスト情報やテスト結果の証明書を発行することも可能です。詳細は、当社までお問い合わせください。


[1] R. M. Wood, Optics and Laser Tech. 29, 517 (1997).
[2] Roger M. Wood, Laser-Induced Damage of Optical Materials (Institute of Physics Publishing, Philadelphia, PA, 2003).
[3] C. W. Carr et al., Phys. Rev. Lett. 91, 127402 (2003).
[4] N. Bloembergen, Appl. Opt. 12, 661 (1973).

レーザーシステムが光学素子に損傷を引き起こすかどうか判断するプロセスを説明するために、レーザによって引き起こされる損傷閾値(LIDT)の計算例をいくつかご紹介します。同様の計算を実行したい場合には、右のボタンをクリックしてください。計算ができるスプレッドシートをダウンロードいただけます。ご使用の際には光学素子のLIDTの値と、レーザーシステムの関連パラメータを緑の枠内に入力してください。スプレッドシートでCWならびにパルスの線形パワー密度、ならびにパルスのエネルギ密度を計算できます。これらの値はスケーリング則に基づいて、光学素子のLIDTの調整スケール値を計算するのに用いられます。計算式はガウシアンビームのプロファイルを想定しているため、ほかのビーム形状(均一ビームなど)には補正係数を導入する必要があります。 LIDTのスケーリング則は経験則に基づいていますので、確度は保証されません。なお、光学素子やコーティングに吸収があると、スペクトル領域によってLIDTが著しく低くなる場合があります。LIDTはパルス幅が1ナノ秒(ns)未満の超短パルスには有効ではありません。

Intensity Distribution
ガウシアンビームの最大強度は均一ビームの約2倍です。

CWレーザの例
波長1319 nm、ビーム径(1/e2)10 mm、パワー0.5 Wのガウシアンビームを生成するCWレーザーシステム想定します。このビームの平均線形パワー密度は、全パワーをビーム径で単純に割ると0.5 W/cmとなります。

CW Wavelength Scaling

しかし、ガウシアンビームの最大パワー密度は均一ビームの約2倍です(右のグラフ参照)。従って、システムのより正確な最大線形パワー密度は1 W/cmとなります。

アクロマティック複レンズAC127-030-CのCW LIDTは、1550 nmでテストされて350 W/cmとされています。CWの損傷閾値は通常レーザ光源の波長に直接スケーリングするため、LIDTの調整値は以下のように求められます。

CW Wavelength Scaling

LIDTの調整値は350 W/cm x (1319 nm / 1550 nm) = 298 W/cmと得られ、計算したレーザーシステムのパワー密度よりも大幅に高いため、この複レンズをこの用途に使用しても安全です。

ナノ秒パルスレーザの例:パルス幅が異なる場合のスケーリング
出力が繰返し周波数10 Hz、波長355 nm、エネルギ1 J、パルス幅2 ns、ビーム径(1/e2)1.9 cmのガウシアンビームであるNd:YAGパルスレーザーシステムを想定します。各パルスの平均エネルギ密度は、パルスエネルギをビームの断面積で割って求めます。

Pulse Energy Density

上で説明したように、ガウシアンビームの最大エネルギ密度は平均エネルギ密度の約2倍です。よって、このビームの最大エネルギ密度は約0.7 J/cm2です。

このビームのエネルギ密度を、広帯域誘電体ミラーBB1-E01のLIDT 1 J/cm2、そしてNd:YAGレーザーラインミラーNB1-K08のLIDT 3.5 J/cm2と比較します。LIDTの値は両方とも、波長355 nm、パルス幅10 ns、繰返し周波数10 Hzのレーザで計測しました。従って、より短いパルス幅に対する調整を行う必要があります。 1つ前のタブで説明したようにナノ秒パルスシステムのLIDTは、パルス幅の平方根にスケーリングします:

Pulse Length Scaling

この調整係数により広帯域誘電体ミラーBB1-E01のLIDTは0.45 J/cm2に、Nd:YAGレーザーラインミラーのLIDTは1.6 J/cm2になり、これらをビームの最大エネルギ密度0.7 J/cm2と比較します。広帯域ミラーはレーザによって損傷を受ける可能性があり、より特化されたレーザーラインミラーがこのシステムには適していることが分かります。

ナノ秒パルスレーザの例:波長が異なる場合のスケーリング
波長1064 nm、繰返し周波数2.5 Hz、パルスエネルギ100 mJ、パルス幅10 ns、ビーム径(1/e2)16 mmのレーザ光を、NDフィルタで減衰させるようなパルスレーザーシステムを想定します。これらの数値からガウシアン出力における最大エネルギ密度は0.1 J/cm2になります。Ø25 mm、OD 1.0の反射型NDフィルタ NDUV10Aの損傷閾値は355 nm、10 nsのパルスにおいて0.05 J/cm2で、同様の吸収型フィルタ NE10Aの損傷閾値は532 nm、10 nsのパルスにおいて10 J/cm2です。1つ前のタブで説明したように光学素子のLIDTは、ナノ秒パルス領域では波長の平方根にスケーリングします。

Pulse Wavelength Scaling

スケーリングによりLIDTの調整値は反射型フィルタでは0.08 J/cm2、吸収型フィルタでは14 J/cm2となります。このケースでは吸収型フィルタが光学損傷を防ぐには適した選択肢となります。

マイクロ秒パルスレーザの例
パルス幅1 µs、パルスエネルギ150 µJ、繰返し周波数50 kHzで、結果的にデューティーサイクルが5%になるレーザーシステムについて考えてみます。このシステムはCWとパルスレーザの間の領域にあり、どちらのメカニズムでも光学素子に損傷を招く可能性があります。レーザーシステムの安全な動作のためにはCWとパルス両方のLIDTをレーザーシステムの特性と比較する必要があります。

この比較的長いパルス幅のレーザが、波長980 nm、ビーム径(1/e2)12.7 mmのガウシアンビームであった場合、線形パワー密度は5.9 W/cm、1パルスのエネルギ密度は1.2 x 10-4 J/cm2となります。これをポリマーゼロオーダ1/4波長板WPQ10E-980のLIDTと比較してみます。CW放射に対するLIDTは810 nmで5 W/cm、10 nsパルスのLIDTは810 nmで5 J/cm2です。前述同様、光学素子のCW LIDTはレーザ波長と線形にスケーリングするので、CWの調整値は980 nmで6 W/cmとなります。一方でパルスのLIDTはレーザ波長の平方根とパルス幅の平方根にスケーリングしますので、1 µsパルスの980 nmでの調整値は55 J/cm2です。光学素子のパルスのLIDTはパルスレーザのエネルギ密度よりはるかに大きいので、個々のパルスが波長板を損傷することはありません。しかしレーザの平均線形パワー密度が大きいため、高出力CWビームのように光学素子に熱的損傷を引き起こす可能性があります。

Insights: ヘリオットセル用ミラー

スクロールすると解説をご覧いただけます。

  • ヘリオットセルのセットアップとアライメント

実験および機器についての「Insights-ヒント集」はこちらからご覧いただけます。

 

ヘリオットセルのセットアップと構成(Viewer Inspired)

 

こちらのVideo Insight(How-to動画)では、2枚のヘリオットセル用金コーティングミラーを用いたヘリオットセルの仕組みと構造についてご覧いただけます。ミラーの初期アライメントの手順と、セル内の光路の設定方法をご紹介しています。

ヘリオットセル内では、光が2つの凹面ミラー間で何度も反射を繰り返します。反射されたビームは2つのミラー間をさまざまな角度で伝播し、さまざまな経路をたどってミラー上に直線形、楕円形、あるいは円形の光のスポットのパターンを形成します。セルにビームを入射/出射させるために、一般にどちらか一方または両方のミラーに穴(中央またはエッジ近傍)が開いています。ヘリオットセルは、長い光路長をコンパクトなスペース内に折りたたむことができるという利点があるため、様々な用途で用いられています。ガス吸収分光法は良く知られている用途ですが、これはビームがサンプル体積内を通過するたびに、測定データの信号対雑音(S/N)比が増大するためです。

この動画のセットアップは、開始時点では粗くアライメントされた状態です。セットアップの一方のミラーはエッジ近傍に1つの穴があり、もう一方のミラーには穴がありません。2つのミラーの焦点距離は同じです。偏光無依存型ビームスプリッタと2つのアイリスを使用して、ミラーの面が互いに平行で、かつテーブルのネジ穴の配列に対して垂直になるように調整します。この作業が完了したらミラーの角度調整は完了です。次に、入射ビームの向きとセルの長さを変えて、ミラー上でさまざまな反射パターンを得る方法をご紹介します。

入射ビームの角度とミラー間の距離は、どちらもビームがセルから出射するまでに反射する回数に影響します。特殊なケースとして、2つのミラーの焦点距離が等しく、かつミラー間の距離が焦点距離と同じ場合があります。このような構成にした場合は、入射ビームの向きに関わらず、ビームはセル内を6回通過します。このミラー間隔の状態は、入射ビームのピッチ角とヨー角、およびX軸とY軸の位置を変えたときの影響を見るのに使用します。また初期設定として、入射ビームがセルの光軸に対して平行になるようにアライメントします。次に、ビームのセル通過回数が増えるようにセルの長さを調整します。この動画では、入射ビームの向きをさらに調整して、直線形、楕円形、および円形の反射パターンを生成しています。

そのほかにも実験室でお使いいただけるヒント、工夫や方法などの動画がこちらからご覧いただけます。また、ウェビナーでは、当社の様々な製品に関する理論や実用的な事柄などをご紹介しています。

References:
D. Herriott et al., Appl. Opt. 3, 523-526 (1964).
C.G.Tarsitano et al., Appl. Opt. 46, 6923-6935 (2007).

最終更新日:2023年7月14日


Posted Comments:
Jaskaran Singh  (posted 2020-02-20 06:54:44.38)
I have a query related number of spots calculation with your products CM254-100EH3-M02 (off-axis hole) and CM254-100-M02 (no hole). Please help me with this query. Thank You.
nbayconich  (posted 2020-02-24 08:31:41.0)
Thank you for contacting Thorlabs. I will reach out to you directly to discuss your application, for reference the number spots or passes in your system can be controlled by adjusting the distance between two mirrors, the number of passes in the cell can be related by the equation NΘ = 2*M*π.
user  (posted 2019-08-06 08:47:47.083)
Dear Sir Is there any possibility to pourchase these mirrors with radius of curvature of 1 m ? regards, T. Stacewicz prof. dr hab. Tadeusz Stacewicz University of Warsaw Faculty of Physics Institute of Experimental Physics Optics Division Pasteura 5, 02-093 Warsaw, Poland tel. +48 22 55 32 734
user  (posted 2019-08-06 08:46:28.883)
Dear Sir Is there any possibility to pourchase these mirrors with radius of curvature of 1 m ? regards, T. Stacewicz prof. dr hab. Tadeusz Stacewicz University of Warsaw Faculty of Physics Institute of Experimental Physics Optics Division Pasteura 5, 02-093 Warsaw, Poland tel. +48 22 55 32 734
YLohia  (posted 2019-08-06 04:02:18.0)
Hello Tadeusz, thank you for contacting Thorlabs. For custom item requests, please email your local Thorlabs Tech Support team (techsupport.se@thorlabs.com in your case). We will reach out to you directly.
miroslav.kloz  (posted 2018-09-03 15:27:56.403)
Dear Mr/Ms, Is it possible to obtain 1" spherical mirrors with a 3 mm hole in the center also in different coatings, possibly a different focal lengths? More specifically: 1", UV enhanced aluminum, 200 or 500 mm focal length? We would definitely buy more than one if these are available. M.Kloz
nbayconich  (posted 2018-09-05 10:04:41.0)
Thank you for contacting Thorlabs. Yes we can provide custom made mirrors such as these upon request. I will reach out to you directly with more information about our custom capabilities. For any custom requests please contact us directly at techsupport@thorlabs.com.
user  (posted 2018-01-22 16:19:57.09)
What is the tolerance on the focal length or radius of curvature of the f = 200 mm mirrors? (f = 200 mm +- ? mm) Thanks!
nbayconich  (posted 2018-03-30 04:44:53.0)
Thank you for contacting Thorlabs. We do not specify a focal length tolerance but the typical focal length tolerance will be ±1% of the focal length.
abekal  (posted 2017-05-30 16:49:55.397)
Can you provide holes in the multipass mirrors at custom location?
nbayconich  (posted 2017-06-13 02:48:00.0)
Thank you for contacting Thorlabs. Yes we can offer custom hole locations. I will reach out to you directly about our custom capabilities.
hossein.aghai-khozani  (posted 2014-12-03 12:07:18.377)
Hi, is it possible to get these Herriot cell mirrors with protected silver coatings and 500m focal length? cheers
cdaly  (posted 2014-12-04 02:37:55.0)
Response from Chris at Thorlabs: Yes, we can put our other coatings on the mirrors and provide custom focal lengths for sufficient quantities. We will contact you directly about this, but we can be reached at techsupport@thorlabs.com for future custom inquiries.
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ヘリオットセル用ミラー、穴無し

Item #CM254-100-M02CM508-200-M02
Outer Diameter1"2"
Focal Length100.0 mm200.0 mm
Clear Aperture> Ø22.86 mm> Ø45.72 mm
ReflectanceRavg > 98%, Rabs > 95% from 2.0 - 20.0 µm @ 0° - 45° AOI
Reflectance Curve
(Click for Plot)

10° AOI

45° AOI
Click Here for Raw Data
Surface Quality40-20 Scratch-Dig Over Clear Aperture
Power Tolerance< λ/2 @ 633 nm Over Clear Aperture
Surface Irregularity< λ/4 @ 633 nm Over Clear Aperture 
Back Surface FinishUniform Fine Grind #12-20 Grit
CoatingGold with Protective Overcoat Per MIL-C-48497A
SubstrateUV Fused Silicaa
  • リンクをクリックいただくと基板の詳細がご覧いただけます。
+1 数量 資料 型番 - ユニバーサル規格 定価(税抜) 出荷予定日
CM254-100-M02 Support Documentation
CM254-100-M02Customer Inspired! Ø1" Gold-Coated Herriott Cell Mirror, No Hole, f=100.0 mm
¥28,317
7-10 Days
CM508-200-M02 Support Documentation
CM508-200-M02Customer Inspired! Ø2" Gold-Coated Herriott Cell Mirror, No Hole, f=200.0 mm
¥61,517
7-10 Days
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ヘリオットセル用ミラー、中心穴

Item #CM254-100CH3-M02CM508-200CH4-M02
Outer Diameter1"2"
Focal Length100.0 mm200.0 mm
Clear Aperture> Ø22.86 mm> Ø45.72 mm
Center HoleØ3.0 mmØ4.0 mm
ReflectanceRavg > 98%, Rabs > 95% from 2.0 - 20.0 µm @ 0° - 45° AOI
Reflectance Curve
(Click for Plot)

10° AOI

45° AOI
Click Here for Raw Data
Surface Quality40-20 Scratch-Dig Over Clear Aperture
Power Tolerance< λ/2 @ 633 nm Over Clear Aperture
Surface Irregularity< λ/4 @ 633 nm Over Clear Aperture
Back Surface FinishUniform Fine Grind #12-20 Grit
CoatingGold with Protective Overcoat Per MIL-C-48497A
SubstrateUV Fused Silicaa
  • リンクをクリックいただくと基板の詳細がご覧いただけます。
+1 数量 資料 型番 - ユニバーサル規格 定価(税抜) 出荷予定日
CM254-100CH3-M02 Support Documentation
CM254-100CH3-M02Customer Inspired! Ø1" Gold-Coated Herriott Cell Mirror, Ø3.0 mm Center Hole, f=100.0 mm
¥29,945
7-10 Days
CM508-200CH4-M02 Support Documentation
CM508-200CH4-M02Customer Inspired! Ø2" Gold-Coated Herriott Cell Mirror, Ø4.0 mm Center Hole, f=200.0 mm
¥63,146
7-10 Days
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ヘリオットセル用ミラー、軸外穴

Item #CM254-100EH3-M02CM508-200EH4-M02
Outer Diameter1"2"
Focal Length100.0 mm200.0 mm
Clear Aperture> Ø22.86 mm> Ø45.72 mm
Off-Axis HoleØ3.0 mm
(7.0 mm from Center)
Ø4.0 mm
(20.0 mm from Center)
ReflectanceRavg > 98%, Rabs > 95% from 2.0 - 20.0 µm @ 0° - 45° AOI
Reflectance Curve
(Click for Plot)

10° AOI

45° AOI
Click Here for Raw Data
Surface Quality40-20 Scratch-Dig Over Clear Aperture
Power Tolerance< λ/2 @ 633 nm Over Clear Aperture
Surface Irregularity< λ/4 @ 633 nm Over Clear Aperture
Back Surface FinishUniform Fine Grind #12-20 Grit
CoatingGold with Protective Overcoat Per MIL-C-48497A
SubstrateUV Fused Silicaa
  • リンクをクリックいただくと基板の詳細がご覧いただけます。
+1 数量 資料 型番 - ユニバーサル規格 定価(税抜) 出荷予定日
CM254-100EH3-M02 Support Documentation
CM254-100EH3-M02Customer Inspired! Ø1" Gold-Coated Herriott Cell Mirror, Ø3.0 mm Off-Axis Hole, f=100.0 mm
¥29,945
Lead Time
CM508-200EH4-M02 Support Documentation
CM508-200EH4-M02Customer Inspired! Ø2" Gold-Coated Herriott Cell Mirror, Ø4.0 mm Off-Axis Hole, f=200.0 mm
¥63,146
Today