半導体レーザーのチュートリアル


半導体レーザーのチュートリアル


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半導体レーザーチュートリアル

この半導体レーザーチュートリアルでは、長期に渡り安定した半導体レーザーシステムを構築するための情報を掲載しております。 また、半導体レーザの一般的な性能、注意事項、使用情報について記載されていますが、 用途によってシステム構成が大きく異なるため、具体的な事柄についてはここでは触れていません。 しかしこのチュートリアルのガイドラインや使用情報には、長期間、安定して動作するシステムの構築に必要な情報がまとめてあります。

半導体レーザーシステムの構築に関する一般的な考え方は、どのシステムも変わりません。 用途によって半導体レーザの主要パラメータである波長、光出力、そしてパッケージスタイルが決まります。 それが決まったら、次に選択するのは半導体レーザ用マウントとマウントに接続するドライバやコントローラなどで、次いで、実験環境における設置方法となります。 このチュートリアルを読んでいただくと、半導体レーザーシステムの構築には多くの事柄を念頭におく必要があることがわかると思います。 その記載量は多く、すべて理解するには時間を要すと思いますが、 適切に、半導体レーザを用いたシステムを構築し、取り扱い、設備を選択し、使用することにより、100,000時間以上動作させても安定した性能がもたらされます。

半導体レーザの種類
このタブでは、様々な半導体レーザの種類についてご紹介します。 半導体の構造、レーザの種類、内蔵のフィードバック機能等についての基本情報が記載されています。 多くの用途においてレーザの種類は用途によって決まります。このタブでは、半導体レーザについて興味がある方向けに一般的な知識が記載されています。

半導体レーザーガイド
半導体レーザーガイド」のタブに記載されているのは、半導体レーザの取扱いならびに動作時に考慮すべき点や注意点などについてです。 損傷のメカニズムとレーザを損傷から守る一般的な方法や使用情報をご紹介しています。 仕様表や半導体レーザーパッケージに記載されている重要なパラメータについて役立つ情報なども説明しています。 さらに半導体レーザ用コントローラを形成するために必要なマウントやドライバの基礎についてもご紹介します。

半導体レーザの取付方法
ここでは、半導体レーザのマウント方法について深く掘り下げて説明いたします。 どのような種類のマウントが必要なのか、どのマウントが望ましいのか、そしてマウントのどの点が選択基準になるのか、などです。 半導体レーザをマウントに取り付けるだけでは安定したレーザ動作は得られません。このタブでは半導体レーザーシステムが適切に配置されるよう、実験環境の設定についても説明しています。 実験環境は半導体レーザにとって重要であり、テーブルに置いた位置によっては故障(破壊)を招く場合があります。

このチュートリアルには、優れた半導体レーザーシステムを構築するための必要な基本情報がすべて記載されています。 半導体レーザや、マウント、ドライバについて具体的な質問がありましたら、当社までお問い合わせください。

半導体レーザ

半導体レーザには様々な種類があり、周期表のIII族からVI族の元素のうち、2成分、3成分、4成分から構成されます。 レーザは、波長400 nm程度の青色から赤外域の範囲で発振します。 このような広い範囲での発振と、小型、小さい駆動電流、低い運用コスト、高効率という特長により、半導体レーザは今日では広く用いられている最重要レーザの1つとなっています。 当社がご提供している半導体レーザの一覧は、レーザなどのページでご覧いただけます。 このページに掲載されていない半導体レーザにつきましては、当社までお問い合わせください。

ファブリペロー半導体レーザ

ファブリペロー(FP)レーザは、最も単純な構成の半導体レーザです。 ファブリペロー半導体レーザを構成する半導体は、結晶軸に沿ってクリーブされた2つの平行な端面を持っていて、利得媒質としての半導体結晶がファブリペロー共振器の反射ミラーで挟まれた構成となっています。 光学コーティングは、一般的にはミラーの端面に施され、出力を最適化します。レーザ出力は前側の低反射端面から得られ、後側の高反射端面がミラー全体の損失を低減します。 半導体材料の利得スペクトルは非常に広いので、FP共振器内には沢山の縦モードが立ちます。 よって、FP半導体レーザは多重縦モード発振をします。

FP半導体レーザの光ビームは、光導波路内に閉じ込められるので、単一横モードとなります(単一横モードは、「シングル空間モード」とも呼ばれますが、通常は「シングルモード」と呼ばれます)。縦モードの間隔は、Δv = c/2nLで決定されます。ここで、cは光速、Lは半導体レーザのチップ長、nは半導体導波路の群屈折率です。モード間隔は、波長で表す方が便利で(Δλ = λ2 /2nL)、直接光スペクトラムアナライザで簡単に測定も可能です。 

例えば、典型的な群屈折率 n = 3.5、共振器長 L = 1 mmを考えた場合、縦モード間隔は635 nmでΔλ = 0.05 nm 、1550 nmでΔλ = 0.3 nmとなります。 レーザの縦モードの数と、各モードの出力の割合は、サイドモード抑圧比(SMSR)で表されます。SMSRは、バイアス電流や温度だけではなく、半導体を構成する利得媒質の種類に大きく左右されます(AlGaAs、InGaAsP、AlGaInPなど)。  GaAsベースのFPレーザでは、動作範囲内でバイアス電流/温度を調整することで、5~10 dB以上のSMSRのシングル縦モード動作を達成できます。 狭線幅(<10 MHz)かつ、高いSMSR(>30 dB)を持ち、より安定なシングル縦モード動作をする半導体レーザが必要なときは、分布帰還型(DFB)、分布反射型(DBR)、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)をご使用ください。 半導体レーザの種類については、下記に説明がございます。

一般的に、半導体レーザが示す出力と波長は、温度と電流の両方、またはどちらか一方を変えることで、調整することができます。 特に、わずかな温度の変化が半導体の小さなバンドギャップに大きな影響を及ぼす赤外域半導体レーザでは、比較的大きくチューニングができます。 したがって、可変速度は小さい(1 nmの変化に10 s程度)ですが、ほとんど全ての半導体レーザの温度によりチューニングが可能です。 半導体レーザはまた、電流を制御することで出力を調整できます。 規定された電流値までであれば、入力電流が大きくなるほど誘導放出は大きくなります。しかし、この規定値を超えると、自然放出の割合が大きくなってきます。 よって、入力電流は各半導体レーザに定められた規定範囲に保つことをお勧めします。

FP Laser Diode

図1. チップオンサブマウント型FP半導体レーザ

誘導放出の偏光は一般的に接合面に平行ですが、自然放出光の偏光は無偏光です。 高い消光比(50:1かそれ以上)が必要な場合、入力電流を規定範囲内に収めてください。

初期のFP半導体レーザは、単一の半導体材料(多くはGaAs)を用いて、単一のp n接合半導体を構成していました。 このような半導体レーザは、その後、ホモ接合半導体レーザと呼ばれるようになりました。1-4初期のFPレーザが半導体レーザの原理を実証した一方で、これらの半導体レーザに特有のJth≈ 105 A/cm2という高い閾値電流密度による破壊を防ぐために、CW動作では極低温が必要とされていました。数年後のヘテロ構造の半導体レーザの出現により、高かった閾値電流密度が低減されました。その後、室温で動作するFP半導体レーザが幅広く開発されるようになりました。

図1はチップオンサブマウント型のFP半導体レーザです。 このチップのn型およびp型ドープ半導体層へは、それぞれ金のボンディングによりコンタクトされています。 FPレーザの共振器であるチップFPL2000Cは、波長2000 nmで出力30 mWの連続光を放射します。 FPレーザの共振器のスペクトル帯域幅は、通常15 nm程度です。 このチップの特長である量子井戸構造に関しては下で詳しく説明しています。

当社では、異なる様々なタイプのFP半導体レーザをご提供しています。 出力波長は、可視域から赤外域、 パッケージタイプは、 バタフライ型、チップオンサブマウント型、Cマウント型を取り揃えております。その他のFP半導体レーザにつきましては、当社までお問い合わせください。

へテロ構造半導体レーザ

へテロ構造の採用により、室温でCW動作する半導体レーザが幅広く開発されるようになりました。 最初に開発されたのは単一へテロ構造(SH)ですが、その後すぐにダブルヘテロ構造(DH)半導体レーザが開発されました。 DH半導体レーザは、現在最も普及している半導体レーザです。 DH半導体レーザの特長は、電流密度の閾値が低く、室温動作し、高効率であることです。

DH Laser Diode Structure

図2. ダブルヘテロ(DH)半導体レーザの構造

ダブルヘテロ構造半導体レーザは、2つの厚い(1~2 μm)クラッド層に囲まれた1つの薄い活性領域(100~200 nm)で成り立っており、これらはpn接合を形成しています。 図2は典型的なDH半導体レーザの構造を示しています。 この例では、GaAs活性領域の厚さは0.15 μmで、p-Al0.3Ga0.7Asとn-Al0.3Ga0.7Asからなるクラッド層の厚さはそれぞれ1 μmです。 これらは、厚いGaAs基板上に形成されています。 この構造により、閾値電流密度はJth ≈ 1 - 3 kA/cm2まで小さくなり、単一接合半導体レーザと比べて高効率になりました。それには、下記の要因が関係しています。

  1. GaAsの屈折率 (n = 3.6)が、p型およびn型クラッド層の屈折率(n = 3.4)より大きいことによりGaAs活性領域に光子を閉じ込めている。
  2. GaAsのバンドギャップ(Eg ≈ 1.5 eV)が、p型およびn型クラッド層のバンドギャップ(Eg ≈ 1.8 eV)より小さいことにより、キャリアを閉じ込めている。
  3. 活性層とクラッド層のバンドギャップに差があるため、活性層以外への光子吸収が小さくなっている。 ただし、バンドギャップが大きい方のクラッド層よりも大きなエネルギを持つ光子が発生した場合は、その光子は吸収される。 これは、発光プロファイルの青色側でごくわずかに起きる吸収となる。

DH半導体レーザには、波長範囲と性能に影響するいくつかの制限があります。 DH半導体レーザの最も大きな欠点は、格子整合の条件が厳しいことです。 格子不整合が0.1%より大きいとき、活性層とクラッド層の界面間の歪みにより、放射が伴わない電子-正孔再結合が起こります。 このような格子整合の制約により、活性層とクラッド層に使うことのできる元素の種類が制限されます。その結果、波長範囲が制限され、Jthが大きくなります。

当社では可視域近赤外域で様々なDH半導体レーザをご提供しています。

量子井戸半導体レーザ

量子井戸(QW)半導体レーザは、特殊なDH半導体レーザの一種で、活性領域がド・ブロイ波長Dまで薄くなっています。

D = λdeBroglie ≈ h/p
(1)
 

QW構造を用いることで、DHまたはバルク構造に勝る多くの利点を得ることができます。 ここでは、最も重要なことのみを説明します。 QWとバルクの光学特性を比較したより詳しい情報につきましては、参考文献1~5をご参照ください。 標準的なバルクのDH構造と比較して、QW構造では差動利得の増加が大きくなります。 また、このQW構造の差動利得は、類似したバルク構造と比較して、温度変化による利得の影響が小さいことも長所となります。

QW Laser Diode Structure

図3. QW半導体レーザの構造

左にある図3は、単純なQW構造を示しています。 QWは、2つのAl0.2Ga0.8As閉じ込め層(厚さ100 nm)、それらに囲まれた10 nm厚のGaAs活性領域で成り立っています。 この閉じ込め層はさらに、厚さ1 μmで高いバンドギャップを持ち低屈折率材料のAl0.6Ga0.4Asで構成されている2つの層で囲まれています。

この構造により、閾値電流密度は、DHへテロ構造の閾値電流密度(Jth ≈ 100 - 300 A/cm2)の5分の1程度になります。 このような特殊な外部クラッド/閉じ込め構造により、厚さは薄くなり、光子閉じ込めは増大します。 また、QW構造はバルク構造と比較して利得が増加するので、デバイスの性能の向上を示します。

量子井戸構造はまた、DH構造に見られる厳しい格子整合条件を緩和します。 非常に薄いQW構造においては、格子不整合は1~3%程度です。 QW半導体レーザでは、界面における格子不整合がある程度大きな場合でも、DH半導体レーザにつきものである境界不整合の問題(放射を伴わない電子-正孔再結合)が無い状態で動作することができます。 この種類のQW構造は、一般的に歪量子井戸(SQW)と呼ばれ、DH半導体レーザでは得ることのできなかった新しい波長範囲を開拓しました。 SQW構造は、歪みの無いQW構造と比べて、吸収特性、効率、閾値電流密度を向上させることができます。 SQW構造の詳細については、参考文献5をご参照ください。

MQW Laser Diode Structure

図4. MQWエネルギ図

QW構造には、2つの高バンドギャップ材料のみによる構成と、QW(狭いバンドギャップ)/障壁(高いバンドギャップ)材料が交互に配置された構成があります。 この後者の配列は、多重量子井戸(MQW)構成と言います。 右の図4はMQW構造を示しています。 この構造では、小さいバンドギャップの5 nmの層と大きいバンドギャップの4 nmの層の反復構造が、pn接合の間に堆積されています。

QWの組成材料や障壁(層または障壁の厚さ)を変えるか、QW構造数を変えることで(例えば、ML725B8F)、MQWの発光特性を変えることができます。6MQW構成の唯一の条件は、大きく効率を下げる原因となる電子トンネル効果を起こさせないように十分大きなバンドギャップの材料(厚さとバンドギャップ)を用いることです。

当社では可視域近赤外域MQWレーザを多種にわたりご提供しています。

分布帰還型(DFB)半導体レーザ

分布帰還(DFB)型半導体レーザでは、DH半導体レーザの活性層を囲むクラッド層の1つに回折格子が形成されています。 エッチング(または蒸着)により形成される回折格子により、DH半導体レーザと比較して、レーザの線幅が非常に狭くなり、かつ高い温度安定性を持つようになります。 回折格子により利得媒質中に存在する波長が選択されるため、DFB半導体レーザではチップ端面での反射は必要ありません。

DFB Laser Diode Structure

図5. DFB半導体レーザの構造

右の図5にDFB半導体レーザを示します。 λ = 1550 nmの発光に相当するバンドギャップを持つInGaAsP活性層が、λ = 1300 nmの発光に相当する少し大きいバンドギャップを持つInGaAsPクラッド層で囲まれています。 クラッド層の1つは、厚さが周期Λで変化します。各クラッド層の片側は、高いバンドギャップを持つ低屈折率材料(p型InPまたはn型InP)に接しています。

クラッド層の変化は、z軸方向に依存する屈折率neffを決定します。

neff(z) = <n(x, z)>x
(2)

 

 

 

ここで、<>は縦方向に垂直なx軸方向にわたった平均値を示しています。 x座標に沿ったこの横方向のビームプロファイルは幅が狭く、ほとんど完全に活性領域とクラッド層内に収まります。 z軸に沿った周期的な屈折率変化は、次の式で与えることができます。

neff(z) = n0 +n1sin[(2πz/Λ) + φ]
(3)

 

 

 

ここで、n0n1はそれぞれクラッド層と基板の屈折率、Λは境界における屈折率変化の周期、φは位相因子です。 回折格子またはその他の周期的な元素によって成立するブラッグの条件を用いると、下式の条件が成り立つとき、前方と後方に伝搬するビームが結合されます。

λ = λB= 2<neffΛ
(4)

 

 

 

ここで<neff>は、z軸方向に沿った平均屈折率です。この簡易的な解析により、周期Λで与えられるただ1つの波長だけしか存在できないということが分かります。詳細につきましては、参考文献7と8をご参照ください。 当社は1310 nm1550 nmで動作する2種類のDFB半導体レーザをご提供しています。 その他のDFB半導体レーザにつきましては、当社までお問い合わせください。

垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)

VCSEL

図6. VCSELのエネルギ図

垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)は、特殊な半導体レーザの一種で、活性領域/接合面と垂直に発振します。 この点において、これまで説明してきた接合面と平行に光が伝搬/増幅する半導体レーザと大きく異なります。 VCSELは一般的に、Jth ≈ 3 - 5 kA/cm2という低い閾値電流を持ち、エミッタの高密度集積が求められます。 活性領域が小さいため、実際にレーザ発振までに注入する電流の閾値は数ミリアンペア前後で、FP半導体レーザより遥かに小さい値となっています。

短い活性領域/増幅媒質は散乱と吸収が抑えられるので、効率が向上します。 短い活性領域により、VCSELは閾値レベルより大きい電流が流れた時でもTEM00で動作することができます。 VCSELでは、垂直発光と短い活性領域により利得長が制限されるため、高出力用途には向いていません。

右の図6にVCSELの共振器を示します。 VCSELの発光は接合面に垂直なため、狭い領域でもエミッタを高密度に集積することができます。 また、VCSELはエミッタを通常のPF半導体レーザと比較して密集させることができるため、非常に高密度でパッケージングが可能です。

VCSELの活性領域は、約5~10 nmの厚さの数種類の歪QW層、および量子井戸間は厚さが4~6 nm大きいバンドギャップ材料で成り立っています。 図7aは、VCSELの活性領域を構成する歪QW構造を示しています。

VCSEL

図7a. VCSELの活性領域

VCSEL

図7b. VCSELのレーザ共振器

VCSEL

図7c. VCSELの垂直構造

歪量子井戸は、図7bに示す2つのクラッド層を含んでいます。 これらのクラッド層がVCSELのレーザ共振器を作っています。 レーザ共振器の厚さは約1λです。 近赤外領域(λ = 1~3 um)で動作するVCSELは、モード間隔Δλ ≈ 100~300 nmです。 この大きなモード間隔により、入力電流が変化しても単一縦モード発振することができます。

レーザ共振器内には、λ/4厚の高屈折率/低屈折率層の周期構造があります。 複数の(15〜25程度の)ブラッグ反射層の形成により、ピークを有する1つのモードを生成し、利得媒質により増幅されます。 共振器内に存在する他のモードは、λ/4の層との干渉により相殺されます。 この垂直構造を図7cに示します。 この構造は厚い基板と金属接触により固定されています。 発光表面は、λ/2厚の層(位相整合のため)を持ち、約5~10 μmの円形開口部と金属接触をしています。

当社は、近赤外域のパッケージ化されたVCSELをご提供しています。 その他の波長でのVCSELにつきましては、当社までお問い合わせください。

1 Hall, R.N., Fenner, G.E., Kinhsley, J.D., Dills, F.H., Lasher, G., Coherent Light Emission from GaAs Junctions,Phys. Rev. Lett. 9, 366 (1962).
2 Nathan, M.I., Dumke, W.P., Burns, G., Dills, F.H., Lasher, G., Simulated Emission of Radiation from GaAsp-n Junctions, Appl. Phys. Lett.1, 62 (1962).
3 Holonyak, Jr., N. and Bevacqua, S.F., Coherent (Visible) Light Emission from Ga(As1-xPx) Junctions, Appl. Phys. Lett. 1, 82 (1962).
4 Quist, T.M., Keyes, R.J., Krag, W.E., Lax, B., McWhorter, A.L., Rediker, R.H., Zeiger, H.J., Semiconductor Maser of GaAs, Appl. Phys. Lett. 1, 91 (1962).
5 Svelto, O. and Hanna, D.C., Principles of Lasers, 4th ed., Plenum Press, New York (1998).
6 Kittel, C., Introduction to Solid-State Physics, 6th ed., Wiley, New York (1986).
7 Kogelnik, H. and Shank, C.V., Stimulated Emission in a Periodic Structure, Appl. Phys. Lett. 18, 152 (1971).
8 Otsuka, K., Winner-Takes-All and Antiphase States in Multimode Lasers, Phys. Rev. Lett. 67, 1090 (1991).

半導体レーザは長期に渡り安定した周波数、安定した光出力で動作しますが、その動作を実現するシステムの構築は簡単ではありません。 半導体レーザは損傷を受けやすく、高い温度での動作は短命化につながります。また様々な環境条件により、破壊に至る可能性もあります。 このチュートリアルでは、半導体レーザーシステムを構築する際に留意すべき半導体レーザの取扱い方法や駆動方法の基礎について取り組みます。 下記では損傷メカニズム、仕様、半導体レーザーパッケージ、マウントおよびドライバ、そして半導体レーザの不安定性や損傷を招くような実験環境に関する情報を提供します。

1: 損傷メカニズム

半導体レーザを使用する上で、半導体レーザがどのように損傷を受けるかということを理解しておくことは重要です。 安定、高信頼、長寿命に動作させるためには、半導体レーザを適切に取扱い、また使用する必要があります。 半導体レーザは特に静電気、高熱、過剰な光出力による損傷を受けやすいデバイスです。 ここでは半導体レーザ動作時における一般的な損傷メカニズムについて説明していきます。

電気的損傷

電気による損傷は、半導体レーザの破局故障を招く最大の要因です。 その中でも一番よく知られているのは静電気放電です。 人は実験環境で歩き回ったり、様々な設備を触ったりしているうちに身体の中に少しずつ静電気を溜めています。 適切に保護しないと、半導体レーザに静電気が放電し、早期故障につながります。 よって半導体レーザを取り扱う間は、接地状態を保つことが重要です。 当社では、テーブルマットやリストストラップを含む静電気防止製品をご用意しております。

過渡電流も半導体レーザに大きな影響を及ぼします。 高速なオーバーシュートだけで半導体レーザが破壊することもあるのです。 このような電気的現象は様々な原因、時には予測していなかったことで起こります。 コンセントから伝わるサージ電流、雷などの環境的影響、停電は、半導体レーザに致命的となるサージ電流を生成する事象の例です。 このような事象はサージプロテクタを使用することにより防ぐことができます。

電源が入った電流源に半導体レーザを接続・切断すると、電気スパイクが発生することがありますので避けるべきです。 また、突然の電力供給の停止(停電や、電流値をゼロに下げる前に電流源のスイッチを切るなど)も電気スパイクが起こる原因となります。 電流源がゼロに設定されているのを確認してから半導体レーザの電源を入れたり、切ったりするのが一般的に推奨されます。 また、使用する電流源が半導体レーザへ電流供給するための設計となっていることを確認してください。 半導体レーザ用以外の電源は、雑音が比較的大きくなるので性能が不安定になる場合があります。しかし、さらに重大なことは、そのような電源では、ON/OFF時に大きなスパイクを起こす可能性があることです。

高熱ならびに過剰出力による損傷

Catastrophic Front Facet Damage
半導体レーザの出力端面の損傷画像。裂け目や小さな粒が鮮明に見えます。 矢印は、pn接合の位置を示しています。[1]

半導体レーザのほとんどは特に温度変化に敏感です。 中でも寿命、閾値電流、発振波長、発振出力、モードホッピングならびに線幅は、半導体レーザの温度に大きく影響されます。 例として、レーザは温度が10 °C上がる度に寿命が半分に減ると一般的に言われています。 環境温度の変動は、半導体レーザの温度も変動させます。 適切な温度調節を行っていないと、半導体レーザ自体の動作で温度が上昇します。 適切な温度調節と、絶対定格を十分に下回る温度での動作をお勧めいたします。

過剰出力による損傷は手遅れになるまで見過ごされることが多いので、常に注意する必要があります。 過剰出力のよる損傷は部分的には熱的影響に関連しています。 (出力増加のため)電流を増加することにより、レーザーチップに大量の熱を送ることになるからです。従って、温度調節を適切に行っていない場合、熱的影響や損傷が起こります。 後方反射の影響についてはあまり知られていないかもしれませんが、 反射が大きいシステムにおける高出力動作は、レーザーチップの出力端面を損傷するリスクがあります。 戻り光の光パワーが半導体レーザの損傷レベルを超えていないか判断するためにも、システム内の反射量を把握することは重要です。 後方反射率が大きなシステムでは、光アイソレータを用いることにより戻り光を低減することができます。

損傷の兆候

半導体レーザの故障はどのように判断しますか? 半導体レーザは故障していてもレーザ発振するかもしれませんが、その性能は公称値を明らかに下回ります。 出力パワーの大幅な低下、電流閾値の著しい増加、または出力プロファイルの目立った変化が故障の判断材料となりえます。 レーザーチップが損傷を受けた場合、レーザの集光やコリメートにも影響が見られます。 ビームがより大きく拡散したり、以前ほど小さいスポット径に集光できなくなることもあります。 レーザの発振構造内で損傷を受けている場合、自然放出光のみが観測されます。 故障した半導体レーザを修復するのは不可能ですが、故障メカニズムを特定することは、将来の故障防止に役立ちます。

2: 半導体レーザの仕様

L785P090 Absolute Rating
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半導体レーザL785P090の絶対最大定格表。
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インフォアイコンは、半導体レーザ製品ページの表内にあります。

半導体レーザを数値化するパラメータは多くありすぎて戸惑うかもしれません。 ここでは仕様における重要なパラメータと、動作条件の値を設定する上で考慮すべき点について説明します。 各半導体レーザには、温度の規定に関して、「絶対最大定格」(Absolute Maximum Rating)と記載された一覧表が付いています(右のイメージ図をご覧ください)。 このCW出力パワー、逆方向電圧、そして動作ならびに保管温度の絶対最大定格は決して超えてはいけません。 絶対最大定格は、仕様書のほかにも当社ウェブサイトの青いインフォアイコンをクリックしてご覧いただけます(右下のイメージ図をご覧ください)。

最大出力

最大定格は出力パワーについて規定されており、駆動電流の規定ではないのでご注意ください。 駆動電流についても仕様化されており、適切な電流範囲のガイドラインとしてご参照いただけます。一方で、半導体レーザの性能には常にわずかなバラツキが存在します。 最大電流の仕様値は、規定の最大出力パワーを得るために必要な電流値であり、必ずしも半導体レーザに印加できる最大電流ではありません。 半導体レーザーシステムをセットアップ(温度調整機能を含む)後に、光出力vs.電流の測定を行い性能を確認することをお勧めします。

上記の「損傷メカニズム」で説明したように、反射による戻り光は考慮すべき重要な要素です(特に、絶対最大値近くの出力パワーでレーザを動作させている場合)。 レーザへの戻り光が大きいシステムにおける出力パワーの絶対最大値は、仕様書の値よりも低くなる場合があります。 これは半導体レーザーチップの出力端面に入射する光子の流入量が多くなり、半導体レーザの損傷につながる恐れがあるからです。 出力パワーの絶対最大値近くでレーザを動作させている際には、細心の注意を払って半導体レーザの損傷を防ぐ必要があります。

最大温度

温度の絶対最大定格も注意が必要な仕様値です。 温度の影響については上記の「損傷メカニズム」でも説明していますが、 半導体レーザを高温度で動作させると、寿命は大幅に短くなります。 温度の絶対最大定格に記載されている上限値は動作可能温度になりますが、一般的には上限値まで上げない方が良いとされます。 高温での動作は半導体レーザの寿命を短くするだけでなく、過渡的な温度上昇または一時的に温度調節ができなくなるような事態を招く可能性もあり、その場合、絶対最大定格を超えるようなレーザ温度の急上昇が起こり得ます。

多くの仕様書における電気/光学特性は、想定されている温度が記載されており、ほとんどの場合20~25 °Cとなっております。 記載されている温度は、仕様値を測定した時の半導体レーザの調節温度です。 温度はこれらの特性に対して重要な影響を及ぼします。 例えば、温度が上昇すると閾値電流も増加します。高温での動作により半導体レーザの実閾値電流が電気/光学特性欄に規定された閾値電流よりも大きくなる可能性があります。 標準調節温度は、寿命や光出力を考慮し、通常20~25 °Cの間で設定されています。 しかし、最終的な半導体レーザの調節温度はお客様ご自身でご判断ください。

3: 半導体レーザパッケージ

半導体レーザを選ぶ上で最も重要な要素は、多くの場合「波長」ですが、 半導体レーザーパッケージも重要な要素の1つです。 半導体レーザーパッケージには様々な形状があり、それぞれメリットとデメリットが伴います。 パッケージは一般的にTO Can型(ファイバーピグテール付きを含む)、バタフライ/DIL型、そしてサブマウント/Cマウント型に分類されます(下のイメージ図をご覧ください)。 「適正な」パッケージの選択には、使用目的と研究におけるの必要条件が大きく左右します。また使用する半導体レーザの要求に一番マッチしたパッケージが選べるよう、パッケージ種類を慎重に吟味する必要があります。

TO-Can/ファイバーピグテール付きTO-Canパッケージ

TO-Canは、半導体レーザーパッケージの中で最も普及しているパッケージの1つです。 単純な円筒形をしており、多くは密閉式となっています。 当社ではØ3.8 mm、Ø5.6 mm、Ø9 mm、Ø9.5 mmおよびTO-46の5つのサイズをご用意しております。 TO-Canパッケージは、レーザーチップ、後端面から出力される光のモニタに使用するフォトダイオード、ならびにヒートシンクで構成されています。 TO-Canはサイズが標準化されているため容易に交換できます(ピン配置には注意してください)。 また多数の波長で広く提供されており、価格も比較的安価でお求めいただけます。 TO-Can型半導体レーザの駆動には、お客様による設定が若干必要となります。 例えば、外部共振器を構築すると、半導体レーザの波長を制御することができます。 またほかの半導体レーザと同様温度調節が必要なので、お客様ご自身でご用意いただく必要があります。

TO-Canパッケージは、シングルモードファイバ、偏波保持ファイバ、マルチモードファイバーピグテール付きでもご用意しております。

バタフライパッケージ

バタフライパッケージは、TO-Can型と同じチップを使用します。 しかしTO-Can型とは異なり、多くの部品がパッケージに入っています。 これによりTO-Can型よりもバタフライ型の方が「お客様の設定事項が少ない」パッケージとなっております。 パッケージにはTO-Can型と同様、レーザーチップとモニタ用フォトダイオードが入っているほかにTECならびにサーミスタが内蔵されています。 温度素子がパッケージに内蔵されているため、チップの温度測定がより正確になり、PID温度コントローラを適切に使用した場合の温度調節性能も向上します。 光通信用の波長では、パッケージにシングルモードファイバ、偏波保持ファイバが結合したバージョンもご用意しています。

Cマウント/サブマウント型パッケージ

Cマウントならびにサブマウント型半導体レーザは特殊なパッケージで、通常高出力の半導体レーザや中赤外域光源に使用します。 サブマウント型ならびにCマウントパッケージは、レーザーチップとパッケージの熱接触性がほかよりも高く、よって、より効率的に温度調節が可能です。 現在、当社の中赤外域半導体レーザはすべて2タブ型Cマウントパッケージでご提供しています。 パッケージはTO-Can型と同様、追加設定が必要です。 モニタ用フォトダイオードが付いていないので過剰出力に留意しなければなりません。 温度調節機能もお客様ご自身でご用意いただく必要があります(TECやサーミスタは内蔵していません)。 Cマウントならびにサブマウント型パッケージは、製品組み込み用途(OEM用途)や中赤外域での用途に適しています。

 

4: マウントおよびドライバの選択

半導体レーザが決まったら、次にマウントやドライバを選択します。 一般的に、半導体レーザや用途に合ったマウントやドライバを選ぶ必要があります。 例えば温度調節が必要な場合(ほとんどの用途で必要となりますが)、TEC内蔵のマウントを選択することが望まれます。またレーザの電流定格だけでなくTECの要件にもマッチするドライバーシステムが必要です。 マウントやドライバを選択する上で基本的に考慮すべき事柄は以下の通りです。

LM9F and 5.6 mm Laser Diode
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Ø5.6 mm用アダプタと半導体レーザを取り付けた
マウントLM9F
LM9F and 5.6 mm Laser Diode
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アダプタS1TM09ならびに非球面レンズを取り付けたマウントLDM9T(/M)

半導体レーザ用マウント

TO-Can型半導体レーザ用には温度調整機能付き、または無しの豊富な種類のマウントがあります。温度調節機能のないマウントは、温度調節が必要のない用途や温度調節機能が別途組み込まれているシステムの用途向けです。 なお温度調節がされていない半導体レーザを長期的に動作させる場合、レーザの寿命がかなり短くなることにご留意ください。 温度調節機能のないマウントには、半導体レーザーコリメート用チューブ、ケージシステム対応コリメーターパッケージ、半導体レーザ用(パッシブ型)マウントなどが含まれます。

  • コリメータ用チューブは、TO-Can型半導体レーザによく使用されるマウントです。コリメート用の非球面レンズが付いていて、通常外部温度調節機能付きのシステムに組み込まれます。
  • ケージシステム対応コリメート用マウントキットは、Ø5.6 mm、Ø9 mm、TO3 Canレーザを30 mmケージシステムに組み込む際に使用できます。キットには半導体レーザーコリメート用取付け用部品がすべて入っていますが、用途に適した非球面レンズを選ぶ必要があります。
  • 半導体レーザ用(パッシブ型)マウントは最もシンプルなマウントです。 Ø5.6 mmとØ9 mmのTO Canレーザ、ならびにファイバーピグテール付きTO-Canレーザ用があります。

当社では、TO-Canレーザ用に様々な温度調整機能付きマウントもご用意しております。 冷却素子内蔵のマウントをお選びになる際には、半導体レーザが必要とする電流に対応可能か、そして十分な熱除去性能が備わっているかを確認してください。

  • 高出力レーザ用には、最大20 Wまでの温度調節能力と、2 Aまでの半導体レーザ電流をサポートするTEC付き半導体レーザーマウントが適しています。 こちらのマウントは半導体レーザ電流の変調が可能です。 電流ならびに温度制御用外部ドライバが必要ですが、このマウントと共にキットに含まれています。 アダプタS1TM09により、コリメート用の非球面レンズを取り付けることができます。
  • マウントLDM21は、マウントTCLDM9の小型版です。 最大2 Wまでの温度調節能力と500 mAまでの半導体レーザ電流をサポートしますが、電流を変調する機能が付いておりません。 上記と同じアダプタS1TM09により、コリメート用の非球面レンズを取り付けることができます。
  • マウントLDM9T/Mは、低出力の半導体レーザ用に設計されています。 最大0.5 Wまでの温度調節能力と1 Aまでの半導体レーザ電流をサポートし、電流変調用の入力端子が付いています。 温度コントローラ用のドライバはマウントに内蔵されているので、電流用の外部ドライバのみが必要となります。 低ノイズのファンが熱を除去して、温度の安定化を補助します。 アダプタS1TM09により、コリメート用の非球面レンズを取り付けることができます。
  • HLD001は、最大6.3 Wまでの温度調節能力をサポートするシンプルな温度制御付きマウントです。 当社の多軸フレクシャーステージに組み込めるよう設計されています。
  • マウントLDM9LPは、ファイバーピグテール付きTO-Canレーザ用の設計となっております。 最大7 Wまでの温度調節能力と1 Aまでの半導体レーザ電流をサポートします。 レーザ電流は変調可能です。 こちらのマウントには、電流と温度制御用外部ドライバが別途必要となります。

ドライバ

電流源と温度コントローラはほとんどの用途で必要です。 半導体レーザは電流デバイスなので、電流源と電圧源が必要なことに留意しなければなりません。 電圧源は電流を細かく制御しないため、電流が急激に変化し半導体レーザを損傷する恐れがあります。 電流源には様々なラインナップがあるので、ドライバを選択するにはいくつかのオプションを見ると良いでしょう。 出力短絡(レーザが動作していない間、出力リード線が同じ電位に保たれている状態)は、半導体レーザ電流用ドライバの特長で、静電気放電による損傷を防ぐのに役立つ機能です。 スローまたはソフトスタート機能は、出力時に電流をゆっくり増加させます。 この機能により電気的過渡現象や過電流が防げます。 意図しない過電流を防ぐには、調整可能な電流リミット機能がお勧めです。 また電流リミット機能には、リミット値近くで電流を変調していても回路がハードリミットを超えないよう保護する変調クランプ機能が付いていることが望まれます。 必ずご使用の半導体レーザに適した電流リミット値を設定してください。 そのほかに役立つ機能として、過電圧保護機能や交流電源からの過渡現象抑制機能などがあります。 電流源としては、ご使用になる半導体レーザの最大動作電流値に近い最大電流を有するものをお選びください。 そうすればオーバードライブが防止できるだけでなく、過渡現象が生じた場合でも電流源の最大電流定格に制限されることになります。

  • LDCシリーズの電流コントローラは、ほとんどの半導体レーザに対応可能なポピュラーな製品で、低出力モデルならびに高出力モデルの両方をご用意しております。 この電流源は静かなうえ、出力短絡、スロースタート、そして変調クランプ付きの調整可能電流リミット機能が付いています。
  • PRO8 ラックコントローラには、LDCシリーズの半導体レーザ動作に必要な保護機能がすべて備わっています。 より産業用途向けに設計されたこのコントローラは、複数の半導体レーザを安全に動作させることができます。 イーサネット機能のオプションによりリモート操作も可能です。

半導体レーザの冷却技術は一般的に熱電冷却素子(TEC)を中心に発展しています。 レーザの温度は、TECによって電流を制御することにより予め設定した温度に調節できます。 温度調節は、半導体レーザの安定性と寿命に強く関わるため例外なく必要です。 温度コントローラにはシステムを冷却するのに必要な電流を供給する機能と、電流リミット機能が必要となります。 電流リミット値をTECの最大定格を下回る値に設定して損傷を防ぎます。 ご自身で冷却システムを構築する場合には、回路性能をチューニングし、システムの温度条件を満たすように調整できるPID回路付きの温度コントローラが必要です。 適切な温度サーボには、一般的にPIDループ制御が必要となります。

  • TEDシリーズ温度コントローラは、ほとんどの温度調節機能に対応します。 このシリーズは優れた安定性、分解能、温度範囲、調整可能PIDパラメータ、そして大きな温度計表示機能が備わっています。TED200Cは、±2 Aで最大12 Wの温度調節能力を提供します。さらに熱除去が必要な用途には、±15 Aで最大225 Wの温度調節能力を供給するTED4015が適しています。
  • T-Cube温度コントローラTTC001は、長期にわたり温度を安定化させます。調整可能なPID設定機能が備わり、±1 Aで最大4 Wまでの温度調節能力を供給します。また、当社のAPTソフトウェアでPC制御が可能です。
  • PRO8 ラック温度コントローラは、優れた安定性、調整可能PIDパラメータのほか、16 W~64 Wの冷却能力が備わります。より産業用途向けに設計されたこのコントローラは、複数の半導体レーザを安全に制御します。 イーサネット機能のオプションによりリモート操作も可能です。

当社では、半導体レーザ用に電流コントローラと温度コントローラが組み合わさった製品も豊富にご用意しております。 このデュアルコントローラは、それぞれで高い信頼性と保護機能が備わっていながら、コンパクトかつ便利な1つのパッケージになっている製品です。 これまでの個々の機能の考察もすべてこのデュアルコントローラに当てはまります。 デュアルコントローラをご検討の際には、特性や機能を調べた上でご使用になるシステムに適切かどうか評価してください。

役に立つ情報

半導体レーザーシステムは、適切な構築設計と制御により、高い安定性と信頼性が100,000時間以上に渡り持続できます。 時間と労力をかければ、安全性と保護機能が向上した半導体レーザシステムが構築可能なのです。 半導体レーザをお選びになる際には、仕様書をよく読み、最大定格を確認し、適切なドライバを組み合わせてください。 グローブや静電防止リストストラップ着用など適切な取扱い方法は必ず守ってください。 半導体レーザに接触する機器(はんだごてなど)と作業面も適切に接地する必要があります。 温度調節システムをご自身で設計する際には、半導体レーザだけでなく、実験環境にも適合していることを確認してください。 熱はどこに放出されるでしょうか? サーマルマスは半導体レーザからの熱を十分に吸収できるくらい大きいですか?(小さくて熱を速く除去できない場合には、熱暴走を引き起こす場合があります)

半導体レーザ、マウントならびにドライバを選択する上での注意事項をすべて守っていたとしても、半導体レーザーシステムを構築する際には環境面で考慮すべき点が常に存在します。 簡単で当然と思えることもあれば、直感では思いつかないこともあります。 電気的接続はすべて隙間なく固定されていること、そしてはんだ接合部が強固であることを確認してください。不完全な接続は、半導体レーザの性能に大きな影響を及ぼします。 ケーブルは誤って引っかけたり引っ張ったりしないよう光学テーブルに固定します。 長いワイヤ対はできるだけ避けましょう。 長いリード線やワイヤはアンテナとなり、周囲のノイズを拾う可能性があります。 長いケーブルが必要な場合には、ツイストペアを使用し、インダクタンスによる低周波ノイズを低減します。 高周波ノイズが問題になった場合、接地ブレイドでケーブルをシールドするとノイズ低減に役立ちます。 シールド付きのケーブルが高周波ノイズを拾うことがありますが、その場合は外部シールドを追加する必要があることもあります。 シールドの両端が低インダクタンス接地デバイスに接続されていることを確認してください。

半導体レーザのノイズならびに性能の問題に大きく起因するのは接地ループ、電気的高速過渡現象、過渡放射です。 このような原因をたどることは比較的難しいですが、性能を議論する際には頭に入れておくべきことです。 システムを設計時には機器の間に十分なスペースを保ち、電波干渉を防いでください。高電流スイッチングなどはかなりの電圧を誘導するので、レーザの性能に影響を及ぼし、さらには損傷させる場合もあります。 適切な接地と実験環境のプランニングが半導体レーザの長寿命化と健全性につながります。 半導体レーザの選択や動作に関する疑問点は当社までお問い合わせください。

[1]: D. A. Shaw, P. R. Thornton, "Catastrophic and Latent Damage in GaAs Laser Diodes," Solid State Electronics, 12, 919-24 (1970).

半導体レーザを取り扱う際に見過ごされがちですが、システムへの取付方法はしっかり考慮する必要があります。 「取付方法」には、コリメートなどのために半導体レーザをマウントに取り付けるという物理的メカニズムだけでなく、半導体レーザがどのように組み込むかという考慮まで含みます。 ケーブルの長さはどれぐらいありますか? ケーブルはシールドされていますか? マウントはアースグランドまたは光学テーブルから電気的に絶縁されていますか? 近くにはどんな設備が置かれていますか? それは性能にどのような影響を及ぼしますか? このような事柄をすべて考慮しなければなりません。

1: 半導体レーザ用マウント

対象としている半導体レーザに適したマウントを選択するためには、半導体レーザーパッケージならびに用途を考慮する必要があります。 例えば、アライメント光として使用する低出力のTO-Can型半導体レーザには温度調節は必要ありません。標準の半導体レーザーマウントで十分です。 一方で、波長や光出力を安定させることが必要な高出力バタフライパッケージ型レーザには、安定した電流ならびに温度制御が可能なマウント(CLD1015など)が必要です。

半導体レーザの標準的な用途の多くには温度の安定化が必要です。 半導体レーザを既存の温度サーボに取り付ける場合は、当社のコリメート用チューブのようにセットアップに簡単に取り付けられる温度調節機能無しのマウントが適しています。 当社では、別途温度調節システムを構築する必要がない、TEC内蔵型半導体レーザーマウント(LDM9T/Mなど)を豊富に取り揃えております。 温度調節機能が必要な場合には、お考えのレーザが要請するレーザ電流ならびに熱負荷に十分対応できるマウントをお選びください。

LM9F and 5.6 mm Laser Diode
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Ø5.6 mmアダプタと半導体レーザを組み込んだポスト取付可能マウントLM9F

温度調節機能無しのマウント

温度調節機能無しのマウントは、低出力ならびに駆動時間の短い用途、または温度調節機能を別途組込む際に適しています。 例えば、低出力で連続的に動作させないアライメントレーザは波長や出力の安定性にこだわる必要がなく、またレーザの電源を度々切ることから温度調節は必要ありません。 なお温度調節がされていない半導体レーザを長期的に動作させる場合、レーザの寿命が短くなる可能性があることにご留意ください。 これらの温度調節機能無しのマウントは半導体レーザやコリメートレンズを納めるだけの用途向けであり、電気接続部は付いていません。 当社ではご自身で半導体レーザや電子機器を電気接続されるお客様のためにソケットをご用意しております。 また、TO-Can型レーザ用静電気放電(ESD)防止ならびに応力緩和ケーブルもございます。 ケーブルの一方には、TO-Can型半導体レーザ用ソケット、もう一方にはワイヤ素線または当社の電流コントローラに対応するD89コネクタが付いております。 このケーブルを選ぶ際には、半導体レーザのピンスタイルに合っているか必ずご確認ください。

  • コリメート用チューブは、TO-Can型半導体レーザによく使用されるマウントです。 コリメート用の非球面レンズが付いていて、一般的には、外部温度調節機能付きのシステムに取り付けられます。 レンズは650~1050 nmのARコーティング付きで、単レンズ(非球面レンズ)もしくはレンズペアでご提供しております。用途に適したレンズを組み込んだ製品をお選びください。
  • ケージシステム対応コリメート用マウントキットにより、Ø5.6 mm、Ø9 mm、TO3 Canパッケージレーザを30 mmケージシステムに組込むことができます。 キットには取り付けに必要な部品がすべて含まれています。
  • 半導体レーザ用(パッシブ型)マウントは、コリメートレンズ用マウントが付いていない1番シンプルな半導体レーザーマウントです。 Ø5.6 mmまたはØ9 mmのTO-Canレーザをポストに取り付けたり、SM05またはSM1レンズチューブシステムに組込むことができます。 ファイバーピグテール付TO-Can型レーザをポストに取り付けるマウントも別途ご用意しております。
  • 1タブ型Cマウント半導体レーザ用マウントは、当社の低出力1タブ型Cマウント半導体レーザ用に設計されたマウントです。 最大2 Wのパッシブ(自然)放熱ができるヒートシンクを使用しています。 TECは内蔵されていないので、アクティブな温度調節はできません。 1タブ型Cマウント半導体レーザ用マウントは、当社の旧製品1タブ型Cマウント半導体レーザのみに対応します。
LM9F and 5.6 mm Laser Diode
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アダプタS1TM09ならびに非球面レンズを取り付けたTEC内蔵半導体レーザ用マウントLDM9T(/M)

自由空間型半導体レーザ用温度調節機能付きマウント

当社では、様々なTO-Canレーザ用温度調節機能付きマウントをご用意しております。 これらのマウントは様々なピン配置をサポートしていますが、ご購入前に対象としている半導体レーザのピンスタイルをサポートしているか必ずご確認ください。 また、半導体レーザを取り付ける際にはピンスタイルに合わせて正しい方向に取付けられているかどうか、ならびに互換性のための設定変更などが必要ないかご確認ください。 温度調節機能付きマウントには、半導体レーザを直接取付けるソケットがついています。ケーブルやソケットは別途必要ありません。 冷却素子内蔵のマウントをお選びになる際には、半導体レーザが必要としている電流に対応可能か、そして十分な熱除去性能が備わっているかを確認してください。

  • 温度制御付き半導体レーザ用マウントLDM21は、コンパクトな温度調節機能付きマウントです。 最大2 Wまでの温度調整と500 mAまでの半導体レーザ電流をサポートしますが、マウント自体には電流を変調する機能が付いておりません。 このマウントは、外部電流源と温度コントローラが必要です。 A、B、C、D、Eピン配列をサポートします。 また筐体にはSM1ネジが付いており、30 mmケージシステムに組み込み可能です。 アダプタS1TM09を用いると、コリメート用の非球面レンズを取り付けることができます。
  • LDM9T/Mは、低出力の半導体レーザ用に設計されたTEC内蔵型半導体レーザーマウントです。 最大0.5 Wまでの温度調整性能と1 Aまでの半導体レーザ電流をサポートし、電流変調用の入力端子が付いています。 温度コントローラ用のドライバはマウントに内蔵されているので、レーザ電流用の外部ドライバのみが必要となります。 低ノイズのファンが熱を除去して、温度の安定化を補助します。 LDM9T/MはA、B、C、D、E、G、Hピン配列をサポートします。 筐体には、レンズチューブ取付用のSM1ネジ、30 mmケージシステムに組み込み用のケージロッド用ネジ穴が付いています。 アダプタS1TM09により、コリメート用の非球面レンズを取り付けることができます。
  • HLD001は、最大6.3 Wまでの温度調節をサポートするシンプルな温度制御付きマウントです。 当社の多軸フレクシャーステージに組み込めるよう設計されています。
  • 高出力レーザ用には、最大8 Wまでの温度調節性能と、2 Aまでの半導体レーザ電流をサポートするTEC付き半導体レーザーマウントが適しています。 こちらのマウントは半導体レーザ電流の変調も可能です。 電流ならびに温度制御用外部ドライバが必要ですが、これらをすべて含んだキットもご用意しています。 マウントは、当社製半導体レーザのA、B、C、D、E、G、Hピンスタイルに対応します。 筐体には、レンズチューブ取付用のSM1ネジ、30 mmケージシステムに組み込み用のケージロッド用ネジ穴が付いています。 アダプタS1TM09を用いると、コリメート用の非球面レンズを取り付けることができます。
CLD1015 with Installed Butterfly Laser
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レーザードライバ&温度コントローラ付きバタフライ型マウントCLD1015

ファイバ付き半導体レーザ用の温度調節機能付きマウント

当社ではバタフライパッケージの半導体レーザ用やTO-Can型ピグテール付半導体レーザ用にレーザードライブ機能、温度調節機能、マウントが一体化した製品をご用意しております。 通常、バタフライパッケージにはTEC素子が内蔵されているので、マウントに温度コントローラを接続するだけで温度調整が実現できます。

  • LDM9LPは、ファイバーピグテール付きTO-Canレーザ用設計のTEC付き半導体レーザーマウントです。 最大7 Wまでの温度調節性能と1 Aまでの半導体レーザ電流をサポートします。 大きな表面積により熱接触性が優れており、安定的な温度調節が実現します。 また、レーザ電流の変調も可能です。 LDM9LPはA、B、C、D、E、G、Hピンスタイルをサポートします。 こちらのマウントには、電流ドライバおよび温度コントローラが別途必要となります。
  • 汎用のバタフライ型マウントLM14S2は、タイプ1、タイプ2の14ピンバタフライ型半導体レーザに対応します。 マウントにはヒートシンクが内蔵されており、半導体レーザ駆動時の熱をマウントの外へ放出するのを助けます。レーザ電流、TEC電流ともに最大5 Aまでサポートします。 バイアスTにより半導体レーザ電流を最大500 MHzまで変調できます。 LM14S2にはレーザ電流ドライバならびに温度コントローラが別途必要です。
  • レーザードライバ&温度コントローラ付きバタフライ型マウントCLD1015は、当社の14ピンバタフライ型半導体レーザすべてに対応するドライバーパッケージです。 マウント、レーザ電流ドライバ、温度コントローラが一体化しています。 1.5 Aのレーザ電流供給機能を有し、タイプ1と2両方の半導体レーザに対応可能なため、当社のすべての14ピンバタフライ型半導体レーザに対応可能です。 内蔵の温度コントローラは3.5 AのTEC電流をサポートしており、半導体レーザを設定温度に対して、0.01 °C以内の誤差に保ちます。 前面の大きなタッチパネル画面からすべて操作可能なため、PCなどのほかの機器は必要ありません。 ユニット背面にあるmini-USBコネクタからリモート操作も可能です。

2: 半導体レーザの使用環境

半導体レーザの使用環境に関しては見過ごされがちですが、それらを配慮することによりノイズや電気的過渡現象による半導体レーザの損傷の可能性を大幅に低減させる効果が期待できます。 接地設備のような単純な設備でさえ、きちんと計画を練らなければ頭を悩ますことになるかもしれません。 例えば、半導体レーザのセットアップを光学テーブルから電気的に絶縁すれば、接地ループによる影響は低減されます。 制御マウントの多くは接地されていますが、装置類(オシロスコープなど)も同様に接地されています。 これが場合によっては大きなグランドループとなり、大きな雑音を誘引する可能性があります。 マウントの下にカプトンテープを貼ると、マウントとテーブルの間に電気接触がなくなり、接地ループの影響をある程度防ぐことができます。

電気的過渡現象が起こりやすい環境で実験されている可能性もございます。 過渡雑音や過渡現象による損傷の可能性をすべて除去することはできませんが、少し配慮することによってこの影響を大幅に低減することができます。 現代の実験環境で特に懸念される電気的過渡現象には、電気的高速過渡現象(EFT)と電波障害(EMI)の2つがあります。 EFTは、高速で高周波の電気スパイクです。 一般的にモータやはんだごてなどサージ電流が多く流れる設備や、スイッチング電源が付いている機器などが発生源です。 EFTにより半導体レーザが破壊される場合もあります。 多くの実験環境で起こりうる2つ目の過渡現象はEMIです。 EMI発生源が近くにあれば、半導体レーザの電圧が誘導され損傷や破壊につながる可能性は大きくなります。 EMIは一般的に蛍光灯やガスレーザまたはエキシマレーザ用高電圧源で起こります。

熱源も配置に留意すべき重要な要素の1つです。 通常、半導体レーザを正常かつ安全に動作させるためには温度の安定化が必要になりますが、温度を適切に調節するためには周囲に熱を放出しなければなりません(一般的には、ヒートシンクやアルミニウム製ブロックなどの熱負荷を使用します)。 半導体レーザの周囲の温度が上がると、レーザから周囲に移動できる熱の排熱効率が影響を受け、熱暴走につながる場合があります。 温度調節が適切に行われないと半導体レーザの熱的損傷につながるのです。 例えば100 W出力の CO2レーザのレーザーヘッドは、大きな熱源で、近くに存在すると影響を受けます。

実験台の上に半導体レーザを取付ける際には、すぐ近くの機器を調べておくことにより、EFTまたはEMIの放出、ならびに熱源の存在を認識することができます。 一般的には、半導体レーザをこれらの影響を及ぼす機器からできるだけ離すことをお勧めします。 例として、高電圧源や高出力CO2ガスレーザのレーザーヘッドの真隣に半導体レーザを取り付けるのは避け方が良いでしょう。 また、半導体レーザに繋がっているケーブルを他のケーブルと離すことにより、他の機器のノイズを拾いにくくなります。

半導体レーザに合ったコリメート用レンズと非点隔差補正光学素子の選択

半導体レーザ(LD)の出力は大きく拡散するので、コリメートには光学素子が必要となります。 非球面レンズは、球面収差を補正する能力に優れているので、コリメート後のレーザ光線の径を1~5 mmとしたい場合は非球面レンズを用いるのが一般的です。 希望のビームの大きさと透過帯域は、使用するレンズに依存するため、半導体レーザ出力光をコリメートするためには、最適な非球面レンズを選ぶことが不可欠です。 半導体レーザのコリメート光の大きさを計算するに当たって、まず拡散について理解する必要があります。

端面発光半導体レーザの出力にもまた、かなりの非点隔差があります。ビーム発散角は、平行および垂直方向において異なり、楕円ビームをもたらします。 コリメート後にアナモフィックプリズムペアシリンドリカルレンズを挿入することによって、この楕円率を補正することができます。半導体レーザ出力の拡散は、チップの2軸の「ビーム発散角(FWHM) - 平行」と「ビーム発散角(FWHM) - 垂直」により典型値として規定されています。 半導体レーザは、ロットごとにバラツキがありますが、典型的な発散角を用いることにより、より多くの用途に適合できます。

ここでは目的の用途に合った適切なレンズを選定する上で重要な仕様について簡単な例をあげてご説明します。

:785 mm25 mWの半導体レーザL785P25、コリメート後のビーム径:Ø3 mm

ステップ 1: レーザ出力光をコリメートする

半導体レーザ L785P25の仕様書によれば、光線の垂直と平行方向における典型的な発散角はそれぞれ30oと8oです。 大きい(垂直の)ビーム発散角は図1に示されています。 小さい(平行の)ビーム発散角は図2に示されています。 2軸のこの非点隔差または非対称性により、光が発散するにつれて、光線は楕円形になっていきます。 コリメートの段階でできるだけ多くの光を集光するためにどの計算においても2つの発散角のうち、大きな方の数値を使ってください(この場合は30o)。

注: 平行と垂直表記は、半導体レーザの接合面に対して規定されます。

laser diode max divergence
図1: L785P25からの垂直方向のビーム発散角、スタイルBのLD
laser diode min divergence
2: L785P25からの平行方向のビーム発散角、スタイルBのLD

上記の概略図では、LDは半導体レーザ、 Parallel Diameter と Perpendicular Diameter は、それぞれ平行および垂直方向のビーム径、 Parallel DivergencePerpendicular Divergence は、それぞれ平行および垂直方向の発散角を表します。 図1と2の中の切り込み(Notch)は、パッケージ内部の半導体レーザの方向を決定するために利用できます。半導体レーザは通常、切り込み(Notch)に対し平行方向に設置されます。しかし、特に異なる半導体パッケージについては、多くの例外があります。 半導体レーザとその発光方向には、十分にご注意ください。

Ø3 mmのコリメート後のビーム径を得るために必要なレンズの焦点距離を計算する上で、下記の計算式を使用できます。

Collimating Eq 1

 focal length は焦点距離で 、目的とする垂直方向のビーム径 Perpendicular DiameterをもたらすLDとレンズ間の距離です。 30oの発散ビームをØ3 mmのコリメート光にコリメートするために、必要なレンズの焦点距離は、 focal length = 5.6 mmです。

計算式では、目的とする(垂直方向の)主軸径を得るための焦点距離を計算します。 次に、式から得られた焦点距離に最も近い焦点距離の非球面レンズを選定します。 ここで、レンズの直径は、目的とする主要軸のビーム径よりも大きくなければならないことにご注意ください。

当社では数多くの種類の非球面レンズをご用意しています。 この使用例における理想的なレンズは、-B ARコーテイングの施されたモールドレンズで焦点距離が約5.6 mmのものとなります。C171TMD-B (マウント付き)または354171-B (マウント無し)の非球面レンズの焦点距離は6.20 mmです。次に半導体レーザの開口数(NA)がレンズのNAより小さいことを確認してください。これは半導体レーザの放出する光がレンズに蹴られることを防ぐためです。

0.30 = NALens > NADiode ~ sin(15) = 0.26

Anamorphic Prism Pair

図3:楕円形から円形のビームに変換するための、アナモフィックプリズムペアと光線追跡図 

実際の焦点距離と主要軸の発散角を使って上記の式を解くことにより、実際の主要軸のビーム径  Perpendicular Diameter が得られます。

ステップ2: 非点隔差を補正する

図1と2に示されている通り、端面発光半導体レーザからの発光には非点隔差があります(2つの異なる軸に対して非対称です)。 これを補正し円形ビームにするには、コリメート後にアナモフィックプリズムペアシリンドリカルレンズを使って、短軸径  Parallel Diameterを拡大することが必要です。 図3は、目的とする対称ビームを得るために、短軸の楕円ビームを拡大しているアナモフィックプリズムペアを示しています。

円形ビームを作る上で短軸をどれくらい拡大する必要があるか決定するために、非球面レンズからの焦点距離focal length = 6.20 mmと、主要軸の発散角の代わりに半導体レーザの短軸の発散角 Parallel Divergence = 8oを使って式を解きます。この結果、短軸径 Parallel Diameter = 0.9 mmが得られます。 Perpendicular Diameter と Parallel Diameterを比較すると、短軸ビームを3.5倍率拡大する必要があることが分かります。この3.5倍拡大は、マウント付きアナモフィックプリズムペアPS881-Bを使って行うことができます。

レンズチューブの取付け

マウント付き非球面レンズには、当社のアダプタSM05TxxまたはS1TMxxをご使用いただけます。レンズが半導体レーザに接触しないようご注意ください。アダプタSM05TxxはSM1-SM05変換アダプタSM1A6Tをお使いいただく必要があります。

マウント無しの非球面レンズは、アダプタLMRAxxにエポキシ樹脂で接着することができ、その後SM1-SM05変換アダプタSM1A6T に取付けることができます。 アダプタのSM1ネジ切り部は、レンズ/マウント/アダプタのアセンブリを半導体レーザーマウントの前面プレートに装着するのに利用できます。 アダプタSM1A6Tには10 mmの取付け部があるため、当社の非球面レンズのほぼすべてにお使いいただけます。

上の例では、マウント付きレンズC171TMD-BにM8 x 0.5 のネジ切りが付いているので、ネジ付きアダプタS05TM08が必要となります。M8-SM05変換アダプタS05TM08は、SM1-SM05 変換アダプタSM1A6T を使って、半導体レーザーマウントに取り付けることができます。 アダプタS05TM08とSM1A6Tの両方を調整することで、半導体レーザとレンズの間の距離を補正することができます。

マウント無しの非球面レンズ354171-Bをご使用の場合は、最初にアダプタLMRA5に接着する必要があります。 その後、SM1-SM05アダプタSM1A6T に取り付けることができます。 ここでも、非球面レンズの調整はアダプタLMRA8とSM1A6Tで行うことができます。

ケージシステムへの取付け

焦点距離が8 mm以上のマウント付きまたはマウント無しの非球面レンズは、当社の30 mmケージシステムを用いてケージに取り付けることができます。 ケージロッドは、半導体レーザーマウントの前面プレートに直接取り付けることができます。ケージプレートCP33/Mを用いると、マウント付き非球面レンズが取付けられたアダプタS1TMxxを保持したり、マウント無し非球面レンズが接着されたアダプタLMRAxxをアダプタSM1A6Tに取付けて保持したりすることができます。

より長距離の移動調整には、移動量13 mmの移動ステージCT1A/Mをご使用いただけます。 CT1A/Mには直線移動距離13 mm、最小目盛10 µm(0.001インチ)のマイクロメータが付いています。キャリッジの最小移動量は約1 µmです。

アナモフィックプリズムペアの取付け

半導体レーザからの出力ビームの非点隔差は、アナモフィックプリズムまたはシリンドリカルレンズのいずれかを使って補正できます。 上記の例で選定されたように、円形ビームプロファイルを生成するには、3.5倍率のマウント付きアナモフィックプリズムペア(PS881-B)が必要になります。 マウント無しのプリズムを使用することも可能です。

マウント付きアナモフィックプリズムペアPS881-Bは、出光端にSM05ネジ切り加工ほどこされているか、あるいはSM1レンズチューブ内部に取り付けられています。 アナモフィックプリズムペアの入力光および出力光は互いに相殺し合うため、プリズムは別のケージまたはレンズチューブの光軸に取り付ける必要があります。

半導体レーザを適切に駆動し、寿命を長く保つためには、そのレーザに適したレーザ用コントローラの選択が不可欠です。 このセクションでは、お持ちの半導体レーザに適したコントローラを選択する際に考慮すべき事項について記載しています。 半導体レーザードライバの多くはレーザ発光のオンオフ変調だけでなく、アナログ直接変調も可能で、それにより線幅拡大や波長の安定化を行うことができます。 ここではドライバの変調機能の基礎と、変調時によくある落とし穴や制限についても考察します。

 

1: 半導体レーザードライバの基礎

半導体レーザ用コントローラとしては、リニアリティが高く、ノイズが少なく、正確な定電流源が理想とされます。 半導体レーザは電流駆動のデバイスなので、精密なレーザ動作には直接に電流を制御することが必要になります。 電圧制御では精密なレーザ駆動はできませんのでご留意ください。 電圧制御の電源では、電源がONになると電圧は制御されながら上昇されますが、電流は制御されていないため、著しい、時として破滅的な電流振動を半導体レーザに印加する場合があります。 そのような理由から、半導体レーザの駆動には定電圧源をご使用にならないでください。

電流コントローラは直接、線形の電流制御を行い、幅広いインピーダンスの半導体レーザ駆動を可能にします。 更に低ノイズとなっております。 電流ノイズは半導体レーザにより周波数雑音に変換されます。 このような電流ノイズは広帯域レーザの場合では、特に目立った雑音ではないかもしれませんが、 単一周波数レーザなど精密動作が必要な波長安定化レーザや狭線幅レーザには悪影響を及ぼします。

また電流源はコンプライアンス電圧に到達すると電流が増加しないよう設計されていますが、定電圧源にはこの機能はありません(繰り返しになりますが、半導体レーザの駆動には電圧源をご使用にならないください)。 コンプライアンス電圧は電流ドライバが持つ典型的な特長です。モデルによっては電圧リミットが調整可能なタイプもございます。電流ドライバのコンプライアンス電圧が、お持ちの半導体レーザに適しているかご確認ください。 なお、電流がフィードバックループで直接制御されている場合、ループの応答性を制御する必要があります。 これにより半導体レーザのオーバードライブが防げます。 フィードバックループは複数の定数の制御が必要になります。

電流源をご購入の際には一般的な事柄以外に考慮すべき重要な特徴がいくつかあります。 電流源は半導体レーザの要求に合わせることが必要です。すべてのレーザに対応可能な電流源は存在しません。 例えば、最大電流定格が180 mAの半導体レーザをお持ちの場合、最大出力がなるべく近い電流源(この場合200 mAなど)をお選びください。

電流源の電流ノイズは最大出力電流に比例します。 180 mAのレーザに1 Aの電流源を使用している場合、システムに不必要にノイズを与えてしまいます。 また(最大出力が大きい電流源を使用した場合)油断するとすぐ電流を印加しすぎてしまい、半導体レーザの寿命を短くするリスクもあります。 そのような理由から、半導体レーザに合わせたドライバの選択が必要となります。 すべての半導体レーザ用電流コントローラには、出力短絡機能、スロースタート、過電圧保護、交流電源からの過渡現象抑制、電流リミット機能が付いています。 また多くは定電流動作モードのほかに定光出力機能を備えています。

出力短絡
出力短絡機能は、半導体レーザを電流源に接続した際の静電気放電(ESD)による損傷からレーザを保護します。 出力短絡により、電流源の出力がオフの時でも出力リード線の電位は同じに保たれます。 一般的に出力はリレーもしくは電界効果トランジスタ(FET)を介して短絡されます。 リレーでは電流源本体がオフになっていても短絡保護状態を保ちますが、FETは電流本体がオンの状態になっていないと短絡保護状態を保ちません。

スロースタート
スロースタート機能は、電流源が使用可能となったときに電気的過渡現象を防ぎます。 スロースタート時、半導体レーザへの電流出力は過減衰されて、出力電流は徐々に増加します。 電気的過渡現象が抑制されると、電流源は規定値まで出力を上昇させます。 スロースタート時間は約100 msですが、電気的過渡現象が抑制されるのに十分な時間です。

過電圧保護
過電圧保護機能は、回路のインピーダンス変化による電流の変動を防ぎます。 大きなインピーダンス負荷は電流回路を飽和させるので、設定電流へ到達しにくくなります。 逆にインピーダンスがすぐ低下してしまうと、電流は出力短絡リミットに制限されてしまいます。 どちらのケースにおいてもレーザはオーバードライブとなり、損傷につながりかねません。 過電圧保護は制御ループが飽和したとき、コントローラの電流出力を切断する機能です。

交流電源の過渡現象抑制
この機能はACラインの過渡現象、高電圧サージ、高速な過渡現象(EFT)などを防ぎます。 容量性フィルタや適切に遮断されたトランスにより、電流コントローラの電源入力部から半導体レーザ本体に到達する電気的過渡現象が除去されます。 このタイプの過渡現象抑制機能は、交流電源からの過渡現象のみを遮断します。 なお、交流電源からの過渡現象抑制機能は、レーザやドライバーケーブルに直接放出される過渡現象(EFT汚染など)を防ぐことはできませんので、ご注意ください。

Current Limit Clamp
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図1:電流リミット機能つきの電流源の例(2つ)。 赤い曲線は入力変調、青い曲線は出力電流です。 Aは電流リミットなしの場合の電流源の出力値です。 Bは電流リミットありの場合の電流源の出力値です。
Current Limit Clamp
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図2:電流源が適切に変調されている場合、出力(青い曲線)は歪むことなく、入力変調信号(赤い曲線)と同じ曲線を描きます。

電流リミット値
電流リミット値は、誤調整、アナログ変調ならびに定光出力動作による過駆動電流を防ぎます。 電流リミット値は、コントローラ回路の出力にハードリミットを設定します。 この機能により、誤って半導体レーザには高すぎる電流値を設定することを防ぐだけではなく、変調により過電流が生成されても、電流出力を制限します(図1をご覧ください)。 最新の半導体レーザ用電流コントローラのほとんどには電流リミット機能が付いていますが、アナログ変調時においては異なった性能を示す場合があります。 良い電流コントローラは、電流リミット値で電流を精密に固定し、いかなる場合でも駆動電流が電流リミット値を超えないよう防ぐことができるのです。

定光出力モード
半導体レーザ用ドライバのモデルの中には定光出力動作モードが備わるものがあります。 この機能を活用できるのは、フォトダイオードが内蔵されている半導体レーザのみです。 なお、フォトダイオードがアノード接地かカソード接地か確認し、ドライバのモードが適切に選択されていることを確認してください。 光出力値は、半導体レーザの絶対最大出力定格未満に設定することをお勧めします。定光出力モードは、フォトダイオードの結合効率と応答の線形性に依存するため、定電流モードほど確度は高くありません。

 

2: 半導体レーザードライバ変調

光出力の変調にはいくつか方式がありますが、用途によっては半導体レーザの電流を変調する方式が有利な場合があります。 変調には小信号変調または大信号変調方式があります。 このために電流コントローラには通常、外部アナログ変調用とTTL用の入力端子が付いています。 小信号変調は、全体の出力電流に対して小さい割合の変調です。 線幅の拡大や波長の精密制御(波長を飽和吸収レーザやDAVレーザのロック信号などの外部信号に固定する等)に使用できます。

一方、大信号変調は電流設定値の0 %~100 %の出力を駆動できます。 これはアナログ変調またはデジタルTTLの入力端子どちらからでも行えます。 アナログ変調は半導体レーザに連続的な電流変調を可能にします。また、正弦波で駆動されている場合、全幅変調が可能です。 半導体レーザの出力パワーが歪まないよう、低い方の変調信号レベルは半導体レーザの閾値電流のすぐ上の電流値に設定する必要があります。 デジタルTTL変調は矩形波のオンオフを変調します。 なお、矩形波を使用すると機能する変調帯域幅は縮小されますのでご留意ください。 矩形波の方が高周波成分を多く持つことが理由です。

半導体レーザを変調する際、守らなければならない3つのパラメータがあります。変調係数、入力インピーダンス、変調帯域幅です。 この3つの値は電流コントローラに依存し、コントローラの仕様にも記載されています。 また、ドライバによっては低帯域幅(CW)ならびに高帯域幅出力モード機能が備わっているものがあります。 そのようなドライバでは、低帯域幅設定はCW光用に設計されており、一定の周波数を超えた小信号変調には不適切な場合があります。 高帯域幅出力モードは変調目的のためのモードで、高い変調帯域幅が特徴です。

変調係数
変調係数(または伝達関数とも呼ばれます)は、単純に変調電圧から電流出力への変換です(通常mA/Vで表されます)。 例えば、半導体レーザーコントローラLDC202Cの変調係数(定電流モード時)は20 mA/Vです。 この場合、+1 VDCの変調信号では、出力電流は設定値から20 mA増加します(よって、コントローラが100 mAに設定されている場合、DC変調信号を印加すると出力は120 mAに上昇します)。 逆に-1のVDC信号では出力は20 mA減少します。

変調は波形を使用しても得られます。ピーク‐ピーク電圧2 V(0 Vを中心)として200 kHzの正弦波を使用した場合、電流出力は200 kHzで80~120 mAに駆動されます(設定値は100 mA)。 電流源の多くは変調に任意の波形を使用可能です。ただし、正弦波以外の波形を使用する場合、変調帯域幅は縮小しますのでご留意ください。

入力インピーダンス
入力インピーダンスは変調回路が電流コントローラに組込まれた際の電気抵抗です。 公称範囲は50 Ω~10 kΩ(例えばLDC202Cの入力インピーダンスは10 kΩ)です。 ファンクションジェネレータの出力インピーダンスは大体50 Ωです。 電流コントローラの入力インピーダンスが低い場合、ファンクションジェネレータは負荷により大幅に降下し、出力の波動関数に歪みが生じることを意味しています。 この場合、出力をdisableにしたあと電流源に接続したファンクションジェネレータの変調を設定する必要があります。 そうすることにより半導体レーザの損傷リスクなく変調信号が得られます。 電流出力は、所望の変調レベルと周波数を設定後、使用可能となります。

変調帯域幅
変調帯域幅は、よく3 dBポイントに設定されますが、出力電流信号が大幅に歪むことなく使用できる変調周波数の範囲です。 LDC202CはDC~250 kHzの小信号帯域幅があります。これは電流が大幅に歪むことなく正弦波で小信号変調できるのは最大250 kHzまでということを意味しています。 また、正弦波以外の波形を使用すると機能する変調帯域幅が縮小されます。 例えば、矩形波では帯域幅は1/10になります。

変調のオーバードライブは、半導体レーザ出力の歪みやクリッピングをもたらします(図3をご覧ください)。 また、高周波の変調は、変調波形と半導体レーザの出力強度との間に約πの位相シフトをもたらすことがあります(電流源の帯域幅内だった場合、出力が大幅に歪むことはありません。図4をご覧ください)。 高周波数で矩形波を使用した変調の場合、出力曲線にリンギングが生じますのでご留意ください(高周波数が多数存在するため)。図5をご参照ください。 高精密電流クランプ付のコントローラでもこのリンギングが電流リミット値を一時的に超えることがあります。

Current Limit Clamp
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図3: 電流源が矩形波(赤い曲線)により激しくオーバードライブされる場合、出力(青い曲線)が大幅に歪み、設定した電流値に到達できません。
Current Limit Clamp
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図4: 電流源を高周波数で変調時(しかしコントローラの正帯域幅内)、入力変調(赤い曲線)と出力電流(青い曲線)との間には約πの位相シフトがあります。
Current Limit Clamp
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図5: 高周波数で矩形波を使用して変調時、電流リミット設定値を超えるリンギングが生成されます。

 

 

3: 当社の半導体レーザ用コントローラ

半導体レーザ用コントローラを選ぶ際には多くの検討すべき点があります。 しかし時間をかけてシステムの要求を評価し、半導体レーザとコントローラをマッチさせれば、適格なドライバが見つかり、精密かつ高寿命な動作を確実に得られます。 当社では多種多様な半導体レーザ用ドライバのラインナップをご用意しております。

  • LDCシリーズの電流コントローラは、ほとんどの半導体レーザに対応可能なポピュラな製品で、低出力モデルならびに高出力モデルの両方をご用意しております。 この電流源は静かなうえ、出力短絡機能、スロースタート、そして変調クランプ付きの調整可能電流リミット機能が付いています。
  • PRO8ラックコントローラには、LDCシリーズの半導体レーザ動作に必要な保護機能がすべて備わっています。 産業用途向けに設計されたこのコントローラは、複数の半導体レーザを安全に動作させることができます。 イーサネット機能のオプションによりリモート操作も可能です。

当社では、半導体レーザ用に電流コントローラと温度コントローラが組み合わさった製品も豊富にご用意しております。 このデュアルコントローラは、それぞれで高い信頼性と保護機能が備わっていながら、コンパクトかつ便利な1つのパッケージになっている製品です。 これまでの考察はすべてこのデュアルコントローラにも当てはまります。 デュアルコントローラをご検討の際には、特性や機能を調べた上でご使用になるシステムに適切かどうか評価してください。

Beam Circularization Setup
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図1: 実験セットアップ上の黄色い四角で囲まれたエリアにビーム円形化システムを設置
Spatial Filter Setup
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図4: 空間フィルターシステム
Anamorphic Prism Pair Setup
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図3: アナモルフィックプリズムペアシステム
Cylindrical Lens Pair Setup
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図2: シリンドリカルレンズペアシステム

楕円ビームの円形化技術の比較 

端面発光型半導体レーザは、発光開口部の断面が長方形になっているため、楕円形のビームを出射します。開口部の短辺から出射されるビーム成分は、これに直交するビーム成分よりも大きな広がり角を有します。一方のビーム成分がもう一方よりも大きく拡散するため、ビームの形状は円形ではなく楕円形になります。

楕円形のビーム形状は、円形のビームよりも集光ビームのスポットサイズが大きいことで放射照度(面積あたりのパワー)が低くなってしまいます。楕円ビームを円形化する技術は複数ありますが、ここではシリンドリカルレンズアナモルフィックプリズムのペア空間フィルタを利用した3種類の方法で実験を行い性能を比較しています。 円形化されたビームの特性は、M2測定、波面測定、伝送パワー測定によって評価しました。

これらの円形化技術によって楕円形の入射ビームの真円度は向上しますが、それぞれの技術ごとに円形化やビーム品質および伝送パワーの特性が異なることを示しました。この「実験データ」タブ内に記載されている結果から、用途に必要な要件を満たした円形化技術を選択するべきである事がわかりました。

実験の設計とセットアップ

この実験セットアップは図1の写真で示されています。図2~4では温度制御された670 nm半導体レーザからの楕円コリメート光をそれぞれの円形化システムに入射させています。コリメートにより、広がり角は小さくなりますが、ビーム形状はレーザ出力時と変わりません。各システムは下記の光学系をベースに構成されています。

ビーム円形化システム(右写真参照)を黄色い四角で囲まれた空きスペースに1台ずつ設置しました。このようにすることでそれぞれの円形化技術を同じ実験条件で評価できるため、実験結果を直接比較することができます。この実験上の制約により取り付け方法も制約されるため、コンパクト化という点では最適化されていません。またアナモルフィックプリズムペアについても、より便利で光学的にも調整されたマウント済みの製品を使わずに、マウント無しの製品を用いています。

それぞれの円形化システムから出射されたビームの特性は、パワーメータ波面センサならびにM2システムを使用して測定を行い、評価されました。例示目的のため、実験セットアップの写真内、テーブルの右側に、これらの評価機器がすべて表示されていますが、評価は1種類ずつ行います。 パワーメータは、ビーム円形化システムが入射ビームの強度をどの位減衰させるのかを測定するために使用します。波面センサは、出射ビームの収差を測定するために使用します。M2システムは出力ビームのビーム品質(理想のガウシアンビームからの劣化具合)の測定に使用します。円形化システムはレーザービームの減衰もされず、収差も生じず、完全なガウシアンビームを出射することが理想的です。

端面発光型半導体レーザからの発光には非点隔差があるため、直交するビーム成分の変位した焦点をオーバーラップで望ましい形状が得られます。ここで調査している3種類の円形化技術のうち、シリンドリカルレンズペアのみが非点収差も補償することができます。直交するビーム成分の焦点間の変位はこれらすべての円形化技術で測定できます。シリンドリカルレンズペアの場合、構成を調整することでレーザービーム内の非点収差を最小限に抑えます。この非点収差は規格化しています。 

実験結果

実験結果を下の表にまとめています。緑色のセルは各カテゴリ内における最も良い結果を示しています。円形化の方法にはそれぞれの利点があります。用途に最適な円形化技術は、ビーム品質、伝送パワー、セットアップの制約に対するシステムの要件によって決まります。

空間フィルタは真円度とビーム品質を著しく向上させますが、ビームの伝送パワーは低くなります。シリンドリカルレンズペアは、伝送ビームを綺麗な円形にし、バランスの良い円形およびビーム品質を実現します。また、シリンドリカルレンズペアはビームの非点収差のほとんどを補償します。アナモルフィックプリズムペアによるビームの真円度はシリンドリカルレンズペアによる真円度と比較しても遜色ありません。シリンドリカルレンズと比較して、プリズムからの出力ビームのM2値は小さく、波面誤差は少なくなりますが、伝送パワーはやや低くなります。

MethodBeam Intensity ProfileCircularityaM2 ValuesRMS WavefrontTransmitted PowerNormalized 
Astigmatismb
Collimated Source Output
(No Circularization Technique)
Collimated
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Scale in Microns
0.36X Axis: 1.28
Y Axis: 1.63
0.17Not Applicable0.67
Cylindrical Lens PairCylindrical
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Scale in Microns
0.84X Axis: 1.90
Y Axis: 1.93
0.3091%0.06
Anamorphic Prism Pair
Anamorphic
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Scale in Microns
0.82X Axis: 1.60
Y Axis: 1.46
0.1680%1.25
Spatial FilterSpatial
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Scale in Microns
0.93X Axis: 1.05
Y Axis: 1.10
0.1034%0.36
  • 真円度(Circularity)=dminor/dmajor、ここでdminorとdmajorは対応する楕円(強度:1/e)の長径と短径を表し、真円度 = 1は完全な円形ビームを表します。
  • 規格化された非点収差(Normalized Astigmatism)はビームの2つの直交する成分のウェスト位置の差で、ウェストが小さい方のビーム成分のレイリ長で割った値です。 

円形化システムに使用されている部品は、同じ実験セットアップで全ての実験を行えるように選択されています。これにより、全ての円形化技術を直接比較することができます。ただし、円形化システムのセットアップを個別に最適化した方が性能は向上します。コリメートレンズおよびアナモルフィックプリズムペア用のマウントを使用すると、操作や実験システムへの取り付けが簡単に行えます。小型のマウントを使用して、それぞれのペア同士をより精密に設置して、実験結果を向上させることもできます。 また、焦点距離をカスタマイズした受注生産品のシリンドリカルレンズを使用して、シリンドリカルレンズペアの円形化システムの実験結果を向上させることもできます。ビームプロファイルソフトウェアのアルゴリズムを用いて、真円度の計算に使用するビーム半径を決定すると、全ての実験結果に影響を与えます。

追加情報

この実験で使用したコンポーネントの選択および構築方法についての情報は、下記のリンクをクリックしてご覧いただけます。


Posted Comments:
Kurt Christenson  (posted 2019-06-15 17:52:59.143)
Really appreciate the tutorials. But as an old guy, it would be nice to have a bigger font. I can enlarge the page, but then the text goes off the edges. Could you set it up so the wrap happens at the edge of the screen regardless of the zoom?
lmorgus  (posted 2019-06-17 07:56:14.0)
A response from Laurie at Thorlabs to Kurt: Thanks, Kurt, for taking the time to let us know you found this tutorial content helpful! Concerning the font size, we are taking a look at increasing it later this year.
dave_petch  (posted 2016-08-02 08:51:53.287)
Is there any way to estimate the shelf life of a laser diode? I have an application where we want to store an optical disk drive archive system for many years and play back M-disks (BDMV Format) in the future. How long could I store a Blu-ray player in an controlled environment and still have it work?
sales  (posted 2015-10-02 12:50:34.567)
I did enjoy :-)
besembeson  (posted 2015-10-08 04:01:33.0)
Response from Bweh at Thorlabs USA: Thanks for the feedback. We are glad we enhanced your understanding of laser diodes through our tutorials.
tayade  (posted 2015-04-11 00:22:37.943)
useful info, send me details of ur products
nigel  (posted 2014-11-25 13:19:35.073)
These lasers can have emission ranges from the blue (~400 nm) to the IR by combining elements from Groups II and VI or Groups IV andVI, respectively. [From your laser diode types tab] Oh no they don't! Back to school chemistry for someone. GaN [the basis for the most used LD is a III-V semiconductor [from Groups III and V]. Group IV-VI diode would presumably be CSe? SiTe?!I also doubt if anyone is till using II-VI [ZnSe/PbS]diodes as these have been superseded by III-Vs in most case I can think of... A glance at your Periodic Table will clarify.
myanakas  (posted 2015-07-24 11:38:50.0)
Response from Mike at Thorlabs: Thank you for your feedback. Your are correct, there was an error in our presentation on the "Laser Diode Types" tab. This has been corrected. Semiconductor lasers can have emission ranges from the blue (~400 nm) to the IR by combining elements from groups III and V or groups IV and VI. We apologize for any inconvenience this may have caused.
Last Edited: Sep 04, 2013 Author: Tony Gorges