LBO結晶、第2および 第3高調波発生用

- Nonlinear Crystals for Type-I and Non-Critical Phase Matching Second Harmonic Generation and Type-II Sum Frequency Generation
- Crystal Lengths from 10 to 30 mm
- Drop-In Compatibility with Nonlinear Crystal Ovens
- Designed for Use with 1030 or 1064 nm Picosecond and Nanosecond Lasers
An NLCL8 non-critical phase matching crystal is mounted in an NLCH2 oven to maintain its temperature for phase matching.
NLCL1
Mounted LBO Crystal, Type-I SHG, 1064/532 nm, 10 mm Length
NLCL9
Mounted LBO Crystal, NCPM SHG, 1064/532 nm, 30 mm Length
NLCH1
Oven for Nonlinear Crystals up to 15 mm Long

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Key Common Specificationsa | |
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Material | Lithium Triborate (LiB3O5) |
Crystal Face Dimensions | 3.0 mm x 3.0 mm |
Clear Aperture | > 80% of Crystal Face Area |
Transmitted Wavefront Error | λ/3 @ 632.8 nm Over Clear Aperture |
Surface Quality | 20-10 Scratch-Dig |
Optic Axis Angleb Tolerance | < 0.5° |

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Figure 1.1 非臨界位相整合(NCPM)結晶NLCL8を、温度制御するために非線形光学結晶用オーブンNLCH2(/M)の中に取り付けています。
特長
- 第2高調波発生(SHG)または和周波発生(SFG)用に調整されたLBO (LiB3O5)結晶
- Type-I SHG: 基本波1030 nm/SHG 515 nm、または基本波1064 nm/SHG 532 nm
- 非臨界位相整合(NCPM) SHG: 基本波1064 nm/SHG 532 nm
- Type-II SFG: 基本波1064 nm + SHG 532 nm/第3高調波355 nm
- パルス幅> 0.5 psのパルス光に適しています。
- 結晶の表面を保護するための専用のホルダに取付け済み
- 温度制御用に非線形光学結晶用オーブンをご用意(下記にて別売り)
ピコ秒およびナノ秒のパルスレーザを用いて第2高調波発生(SHG)や和周波発生(SFG)を行うための当社製LBO(三ホウ酸リチウム、リチウムトリボレート)結晶は、SHGおよびSFGの発生効率を温度で調整することができます。SHGは、基本波長と呼ばれる波長の2つの光子が、基本波長の半分の波長の1つのSHG光子に変換される非線形プロセスです。SFGは、波長の異なる2つの光子が、それらの周波数の和に等しい周波数の1つのSFG光子に変換される非線形プロセスです。これらの1軸非線形結晶は、ナノ秒、ピコ秒マイクロチップ、Nd:YAG、Nd:YLF、Yb:YAGなどの各レーザーシステムと組み合わせて使用していただくのに適しています。
推奨される最小パルス幅(持続時間)や集光スポットサイズなどのパルスパラメータ情報は、「性能のガイドライン」タブでご覧いただけます。すべての結晶には、基本波および第2高調波の波長範囲に対して反射防止(AR)コーティングが施されています。さらに、型番NLCL6およびNLCL7の反射防止(AR)コーティングでは、和周波の波長範囲も含まれています。これらの結晶は、パルスレーザを使用するアプリケーションをサポートするために、典型的なパルス持続時間とスポットサイズに適した長さ10.00 mm~30.00 mmの範囲からお選びいただけるようにご用意しています(下表参照)。ご提供している結晶の長さとアプリケーションのレーザーパルスパラメータが完全に一致しない場合は、適した長さより短い方の結晶を選ぶことをお勧めします。下記の非線形結晶の詳しい仕様は、「仕様」タブをご覧ください。
結晶が取り付けられているマウントの寸法は幅21.0 mm、高さ10.8 mmですが、長さは結晶の長さによって異なります。光が通過できる結晶の有効開口は2.7 mm × 2.7 mmです。Type-IまたはNCPMでSHGに使用する場合は、基本波長の入射光は垂直偏光、SHG光は水平偏光でなければなりません(Figure 1.2参照)。Type-IIでSFGに使用する場合は、355 nmの偏光方向は基本波と同じになります。位相整合した状態では、SHGおよびSFGの効率が向上するため、SHG光およびSFG光の強度が結晶内での伝搬距離に応じて指数関数的に増加します。励起光強度が適切(> 50 MW/cm2)で、かつ位相整合していれば、変換効率> 10%が得られます。
結晶からの出射光から基本波を分離して第2高調波や第3高調波を取り出すために、当社では高調波ビームスプリッタを使用することを推奨しています(「SHGおよびSFG実験セットアップ」タブの図参照)。

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Figure 1.2 当社のマウント付き非線形LBO結晶に対する光の偏光方向を、写真の結晶NLCL1の上側に示しています。SFG結晶NLCL6およびNLCL7の場合、355 nmの出力光の偏光方向は、532 nmのSHG光の偏光方向と直交します。
適切なSHGを得るためのアライメント方法
LBOにおけるSHGプロセスを最適化するために、Type-IおよびType-IIの位相整合では、まず入射する基本波の偏光方向を結晶の常光軸の1つに対して平行にアライメントします。次に、光学軸と伝搬方向の間の角度(Figure 1.2のθ)を調整して、基本波と第2高調波の両方の光が同じ屈折率になるようにします(このプロセスは「SHGのチュートリアル」タブで解説しています)。下記のType-IとType-IIの結晶では、光学軸と表面法線の間の角度θが、下の各表に記載されている基本波長の光を垂直入射したときに、位相整合が最適化されるように設定されています。適切な位相整合を得るためには、一般にまだ若干の角度調整が必要です。さまざまな基本波の波長に対して最適な位相整合角に調整する方法については、「性能のガイドライン」タブをご覧ください。

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Figure 1.3 Type-Iの非線形結晶では慎重なアライメントが必要です。入射ビームの角度が1°の数分の1ずれるだけで、SHG効率は大幅に低下します。NCPM結晶は、わずかな角度偏差があっても高い効率を維持できるため、煩わしい角度調整を避けることができます。
これらの結晶は長いため、SHGとSFGの効率とアライメントには温度が重要な役割を果たします。当社では、これらのマウント付きLBO結晶をドロップインで容易に取り付けられるように設計されたオーブン(下記参照)をご用意しています(Figure 1.1参照)。これを用いて結晶の温度を一定に保つことで、一定の効率的な高調波変換を実現できます。当社のNCPM結晶(型番NLCL8およびNLCL9)は、150 °CでSHG用に調整されているため、使用するにはオーブンが必要です。位相整合の温度依存性についての詳細は「SHGチュートリアル」タブをご覧ください。その他のLBO結晶は室温で使用するように設計されていますが、温度が安定していないとSHGやSFGの効率が安定しません。当社のオーブンは、室温で使用する結晶の温度安定化にも使用することができます。当社のすべてのLBO結晶の温度依存性についての詳細は、「性能のガイドライン」タブをご覧ください。
非臨界位相整合(NCPM)
当社のLBO結晶NLCL8およびNLCL9では、非臨界位相整合(NCPM)でSHG光の生成ができます。この方法は、基本波の伝搬方向とSHGの伝搬方向が結晶の主軸に対して平行になるように結晶をカットした場合に実現できます。Type-IやType-IIの位相整合のように光学軸の角度を調整するのではなく、結晶の温度を調整して基本波とSHGの位相速度を調整します。位相整合の調整を主軸に合わせることだけに絞った結果、Figure 1.3に示すように、位相整合の角度受容性が大幅に増加(逆に角度感度は減少)します。これにより、これらの結晶の光学的なアライメントが容易になり、結晶の温度による独立したチューニングが可能になります。基本波とSHG光の両方が主軸に沿って伝搬するもう1つの利点は、結晶全体でポインティングベクトルのウォークオフがなくなることです。非臨界位相整合(NCPM)の利点についての詳細は「SHGチュートリアル」タブをご参照ください。
使用および取扱い方法
結晶の取扱いは慎重に行い、常に手袋を装着してください。結晶は傷つきやすく、吸湿性があります。そのため、湿度の高い環境といった周囲の過剰な水分から保護する必要があります。クリーニングは、必要に応じて、清潔で乾燥した空気のみを軽く吹きかけることをお勧めします。手順については、光学素子の取扱いについてのチュートリアル内の「光学素子の表面から異物等を吹き飛ばす」のセクションで詳しく説明されています。
General Specifications | |||||||||
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Item # | NLCL4 | NLCL5 | NLCL1 | NLCL2 | NLCL3 | NLCL8 | NLCL9 | NLCL6 | NLCL7 |
Application | Type-I SHG | Type-I SHG | Non-Critical Phase Matched SHG | Type-II SFG | |||||
Fundamental Wavelength (1ω) | 1030 nm | 1064 nm | 1064 nm | - | |||||
SHG Wavelength (2ω) | 515 nm | 532 nm | 532 nm | - | |||||
SFG Wavelength (1ω + 2ω = 3ω) | - | - | - | 1064 nm + 532 nm : 355 nm | |||||
Crystal Length | 10.00 mm | 20.00 mm | 10.00 mm | 15.00 mm | 20.00 mm | 20.00 mm | 30.00 mm | 10.00 mm | 15.00 mm |
Crystal Length Tolerance | ±0.05 mm | ±0.05 mm | ±0.05 mm | ±0.05 mm | |||||
Angle of Optic Axis (θ, Φ)a | 90°, 13.6° | 90°, 11.4° | 90°, 0° | 42.4°, 90° | |||||
Optic Axis Angle (θ, Φ)a Tolerance | < 0.5° | < 0.5° | < 0.5° | < 0.5° | |||||
AR Coating (AOI = 0°) | R < 0.25% at 1030 nm and 515 nm | R < 0.25% at 1064 nm and 532 nm | R < 0.25% at 1064 nm and 532 nm | R < 0.5% at 1064 nm, 532 nm, and 355 nm | |||||
AR Coating Curveb | ![]() Raw Data | ![]() Raw Data | ![]() Raw Data | ![]() Raw Data | |||||
Laser Induced Damage Thresholdc | >25 J/cm2 (1064 nm, 10 ns, 100 Hz, Ø220 μm) | >25 J/cm2 (1064 nm, 10 ns, 100 Hz, Ø220 μm) | >25 J/cm2 (1064 nm, 10 ns, 100 Hz, Ø220 μm) | >5 J/cm2 (532 nm, 5.5 ns, 100 Hz, Ø220 μm) | |||||
Crystal Face Dimensions | 3.0 mm x 3.0 mm | ||||||||
Crystal Face Dimensional Tolerance | ±0.1 mm | ||||||||
Clear Aperture | >80% of Crystal Face Area | ||||||||
Surface Quality | 20-10 Scratch-Dig | ||||||||
Transmitted Wavefront Error | λ/3 @ 632.8 nm Over Clear Aperture |
Physical and Optical Properties | |
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Material | Lithium Triborate (LiB3O5) |
Crystal Structure | Negative Biaxial, Orthorhombic mm2 |
Transparency Range | 160 - 2600 nm |
Second-Order Nonlinear Coefficientsa | d31 = 0.85 pm/V d32 = -0.67 pm/V d33 = 0.04 pm/V |
Nonlinear Refractive Index (Kerr Index)b | 2.6 x 10−20 m2/W @ 780 nm |
Sellmeier Coefficientsc | ![]() |
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Temperature Dependent Changes in the Indexc | ![]() |
![]() | |
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Thermal Conductivityd | kx = 2.7 W / m ⋅ K ky = 3.1 W / m ⋅ K kz = 4.5 W / m ⋅ K |
Mohs Hardness | 6 Mohs |
Density | 2.474 g/cm3 |
表の値は非線形光学結晶の光学性能のガイドライン(参考値)です。
Implementation Guidelines | |||||||||
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Item # | NLCL4 | NLCL5 | NLCL1 | NLCL2 | NLCL3 | NLCL8 | NLCL9 | NLCL6 | NLCL7 |
Application | Type-I SHG | Type-I SHG | Non-Critical Phase Matched SHG | Type-II SFG | |||||
Fundamental Wavelength (1ω) | 1030 nm | 1064 nm | 1064 nm | - | |||||
SHG Wavelength (2ω) | 515 nm | 532 nm | 532 nm | - | |||||
SFG Wavelength (1ω + 2ω = 3ω) | - | - | - | 1064 nm + 532 nm : 355 nm | |||||
Recommended Operating Temperature | < 60 °C | < 60 °C | 150 °C | < 60 °C | |||||
Temperature Stabilitya | ±2.6 °C | ±1.4 °C | ±2.6 °C | ±1.8 °C | ±1.4 °C | ±1.0 °C | ±0.8 °C | ±1.4 °C | ±1.0 °C |
SHG Efficiency vs. Temperatureb,c | ![]() Raw Data | ![]() Raw Data | ![]() Raw Data | ![]() Raw Data | |||||
AOI vs. Temperatureb,c | ![]() Raw Data | ![]() Raw Data | - | ![]() Raw Data | |||||
AOI vs. Wavelengthb,d | ![]() Raw Data | ![]() Raw Data | - | ![]() Raw Data | |||||
Temperature vs. Wavelengthb,c,d | - | - | ![]() Raw Data | - | |||||
Minimum Recommended Focal Spot Size (1/e2 Diameter)e | 200 µmf | 400 µmf | 175 µmf | 260 µmf | 350 µmf | 69 µmg | 85 µmg | 221 µmf,h | 330 µmf,h |
Circularity vs. Fundamental Mode Field Diameter (MFD)b,e | ![]() Raw Data | ![]() Raw Data | ![]() Raw Data | - | |||||
Minimum Recommended Pulse Duration (FWHM)e | 0.50 ps | 1.00 ps | 0.42 ps | 0.65 ps | 0.88 ps | 0.88 ps | 1.30 ps | 2.05 ps | 3.10 ps |
Phase Matching Bandwidth (FWHM)e | 3.0 nm | 1.5 nm | 3.8 nm | 2.5 nm | 1.9 nm | 1.9 nm | 1.3 nm | 0.8 nm | 0.5 nm |
第2高調波発生実験セットアップ
Figure 4.1 この図は、ピコ秒レーザQSL106Bの1064 nmの出力光から、周波数がその2倍の光を発生させるためのセットアップを示しています。レーザの出力光は、150 ℃に温度安定化した非線形結晶用オーブンNLCH2(/M)内に取り付けたNCPM結晶NLCL8を通過しています。 全てのアライメント調整ができるように、オーブンを5軸ステージPY005(/M)に取り付けることをお勧めします。ビームは、レンズLA1509-B-MLとLA1484-B-MLを用いてそれぞれコリメートと集光を行い、結晶内で最適なビーム径になるようにしています。また、1/4波長板WPQ10ME-1064と1/2波長板WPH10ME-1064を使用して直線偏光にしています。SHG出力光はダイクロイックビームスプリッタUBS24で反射し、基本波はビームブロックで遮断しています。反射ビームに残った基本波は、ショートパスフィルタFESH0800でフィルタリングしています。
和周波発生実験セットアップ
Figure 4.2 この図は、ピコ秒レーザQSL106Bの1064 nmの出力光から、和周波光発生技術を用いて355 nmの光を発生させるセットアップを示しています。レーザの出力光は、150 °Cに温度安定化した非線形結晶用オーブンNLCH2(/M)に取り付けたNCPM結晶NLCL8と、20 °Cに温度安定化した非線形結晶用オーブンNLCH1(/M)に取り付けたType-II SFG結晶NLCL6を通過しています。 全てのアライメント調整ができるように、オーブンを5軸ステージPY005(/M)に取り付けることをお勧めします。ビームは、LA1509-B-MLとLA1484-B-MLを用いてそれぞれコリメートと集光を行い、2つの結晶の間で最適なビーム径になるようにしています。また、1/4波長板WPQ10ME-1064と1/2波長板WPH10ME-1064を使用して直線偏光にしています。1番目の結晶で生成された532 nmのSHG光は、1064 nmの基本波の光とともに2番目の結晶に入射し、355 nmの和周波の光を生成します。355 nmの光はダイクロイック・ビームスプリッタHBSY13で反射し、基本波とSHG光はビームストップで遮断します。反射ビームに残った基本波とSHG光は、2番目のビームスプリッタHBSY13でフィルタリングし、反射された和周波の光を光パワーセンサS401Cで検出しています。
第2高調波および和周波発生と位相整合
非線形結晶によって発生する第2高調波および和周波の強度とビーム品質を最適化するには、入射するパルスレーザのパルス持続時間(パルス幅)に適した結晶の長さを選択し、集光スポットサイズを焦点領域における得失のバランスを考慮して決定し、位相整合を最適化する必要があります。これらについては、「性能のガイドライン」タブ内のグラフに簡潔に示されています。グラフ化されたデータの解釈の仕方や、第2高調波および和周波光を生成するうえでの結晶のより効果的な使用方法など、有用な補足情報や背景などについては以下の各セクションを展開してご覧ください。第2高調波発生(SHG)は和周波発生(SFG)の特殊な形態と言えます。このチュートリアルではSHGの特定のケースに焦点を当てますが、SFGおよびそのSHGとの相違についても触れます。
質問をクリックするとそのセクションが展開して説明が表示されます。元に戻すにはもう一度クリックしてください。各質問に対する回答では、前のセクションでの説明を参照しています。
非線形光学とは?

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Figure 5.1 ビーム光が線形媒体内を伝搬するときは、位相を積算しながら強度が減衰しますが、ビーム内の光子間に相互作用はありません。そのため、入射光の電界(Ein)と出射光の電界(Eout)は同じ周波数(ω)を有し、その強度は正比例します。

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Figure 5.2 この非線形光学媒体への入射光はFigure 5.1と同じですが、媒体内部で第2高調波が発生します。この非線形媒体の出射光には、Figure 5.1に示す基本周波数の光のほかに、周波数が2倍の第2高調波の光も含まれており、その電界強度Eout(2ω)は入射光の電界強度の2乗に比例します。
非線形光学効果とは、光が物質内を伝搬するときに、その物質の性質を変化させることで発生するさまざまな非線形現象を指します。非線形 と呼ばれるのは、物質の応答の大きさが光の電界強度の2乗、3乗、あるいはさらに高次のべき乗に比例するためです。測定可能な非線形応答を得るには、一般に強い光強度が必要とされるため、多くの場合は十分な非線形効果を得るためにレーザ光が使用されます。
物質内では、光の電界強度に比例する線形応答に加えて、非線形応答も発生します。光学系と物質が非線形現象を生成するのに適した条件にない場合は、光と物質は通常の線形相互作用をします。その場合、物質内の光波は、同じビームまたは同じパルスの一部であるかどうかにかかわらず、互いに影響を与えることなく共に伝搬します。
光に対する物質の線形応答の例をFigure 5.1に示します。ここで、入射ビームの特性は電界強度(Ein)、周波数(ω)、偏光方向(垂直)で表されています。ビームは出射するまでに位相を積算するとともに、反射や物質による吸収などによって損失を受けますが、それ以外の点では影響を受けません。物質から出射する光の電界強度(Eout)は、入射ビームの強度に正比例します。さらに、入射光と出射光の周波数と偏光方向は同じです。
非線形過程は、独立した光波が物質を介して相互作用できる条件を満たしたときに発生します。物質を介した光の相互作用として、同じビームまたはパルスの光波が相互作用することもあれば、著しく異なる周波数や偏光を有する光波が相互作用することもあります。非線形現象には、新しい光周波数の発生、均一な物質内を伝搬するレーザ光のレンズ効果、変調効果などがあります。新たに周波数が生成される場合は、非線形物質からの出射光に、入射ビームに含まれる如何なる周波数とも異なる周波数が含まれることになります。
Figure 5.2は、光が非線形光学材料に入射し、非線形効果によって別の周波数が発生する例を示しています。入射光はFigure 5.1と同じですが、この材料は第2高調波を発生することができます。結晶から出射する光には、入射ビームの2倍の周波数を有する、新しい色の光が含まれています。この2倍の周波数の光の強度は、入射光の電界強度の2乗に比例します。入射光の基本周波数を有するビームから失われたエネルギー(反射や吸収などの一般的な原因による損失は除く)は、2倍の周波数に変換された光に含まれることになります。
第2高調波発生(SHG)とは?

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Figure 5.3 このエネルギー図では、左側に入射した光子、右側に発生した光子を示しています。第2高調波発生では、出射する周波数(2ω)は入射光子の周波数(ω)のちょうど2倍になります。

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Figure 5.4 この非線形光学媒体では、入射光はFigure 5.1と同じですが第2高調波を発生します。出射光にはFigure 5.1と同様に基本周波数の光が含まれますが、それに加えて周波数が2倍の光(倍波)も含まれており、その電界強度Eout(2ω)は入射光の電界強度の2乗に比例します。SHGの発生効率は、入射光強度の2乗に物質のパラメータχ(2)を乗じた値に比例します。
第2高調波発生(SHG)は、同じ周波数の2つの光子のエネルギーが、物質を介して1つの光子に変換される非線形光学現象です。この非線形過程は、光とその周囲の物質との相互作用によって生じます。入射光が単一周波数の場合、その周波数(ω)は基本周波数と呼ばれます。発生した光子の周波数(2ω)は基本周波数の正確な2倍になります。この出射光は入射光の第2高調波(second harmonic)と呼ばれます。これがSHGの名前の由来です。
SHGが発生するには、入射光子の周波数が全て正確に同じであることを必要としているかのようですが、そうではありません。一般に、ビームまたはパルスの入射光の周波数には幅があり、基本周波数近傍のスペクトル域内の周波数を有する光子も存在します。このスペクトル域内の光子であれば、周波数が2倍の光を発生することが可能です。このような場合でも、その非線形現象はやはりSHGと呼ばれ、出射する光子の周波数は2倍であるとして記述されます。このことは、広帯域幅のフェムト秒パルスの入射光にも当てはまります。ただし、この後でのSHGについての説明を簡潔にするために、すべての入射光子が同じ基本周波数を有するものと仮定しておきます。
すべての光子は、その周波数に比例するエネルギーを持っています。Figure 5.3に示すエネルギー図では、この性質を利用して非線形光学過程における入射光子と出射光子の関係を示しています。それぞれの矢印は単一光子のエネルギーを表し、その光子の周波数が横に記載されています。上向きの矢印は入射光子、下向きの矢印は生成された光子を表しています。水平の点線は通常、一般に仮想エネルギーレベルと呼ばれ、物質のエネルギーレベルとは関係がありません。
このエネルギー図は、第2高調波発生のような非線形過程ではエネルギーの損失は生じず、従って物質がエネルギーを獲得したり損失したりはしないという注目すべき事実を示しています。物質は非線形過程が発生するために必要な環境を提供し、また光子との間に相互作用はありますが、この過程で物質によるエネルギーの吸収や放出はありません。これが、2つの入射光子の合計エネルギーと、SHGで生成された出射光子のエネルギーとが正確に等しくなる理由です。
光が物質内を伝搬するときに、すべての入射光子が第2高調波発生に寄与するわけではありません。Figure 5.4に示すように、第2高調波発生の効率は、入射光強度の2乗に物質固有のパラメータ(χ(2)、「カイ ツー」と読みます)を乗じた値に比例します。通常、χ(2)の値は非常に小さいため(10-13 m/V程度)、第2高調波発生を効率的に行うには大きな入射光強度(Io)が必要です。入射光強度が増大したとき、2倍の周波数の光(I2ω)の強度の増大率は、基本周波数の出射光(Iω)の増大率よりも大きくなります。
SHGは和周波発生の特殊なケース
和周波発生(SFG)は、入射した2つのビームまたはパルスの光子が物質を介して変換され、2つの入射光の周波数の和に等しい周波数の出射光が生成される非線形光学現象です。2つの入射光子の間の最大周波数差には制限がありません。SFGという用語は、一般に複数の異なる光源からの光を入射した場合や、入射するビームやパルスのスペクトル域が重ならない場合に使用されます。
第2高調波発生はSFGの特殊なケースと言えます。非線形光学現象のなかで、2つの入射光子が同じビームまたはパルスに属し、かつ入射光の周波数を2倍にする場合にSHGと呼ばれます。SHGは同じエネルギーを有する入射光子によって生じるため、第2高調波発生はSFGの縮退したケースになります。
すべての結晶はSHGに使用できるか?
非ゼロのχ(2)パラメータを持つ光学材料だけしかSHGに使用できませんが、すべての結晶がこの要件を満たしているわけではありません。SHGに使用できる結晶の例としてはβ-BBOが挙げられます。原子、イオン、または分子の繰り返しパターンで構成されている物質は結晶と呼ばれます。結晶のパターンが対称になる中心点がない場合(すなわち、結晶が中心対称性を有しない場合)、結晶は非ゼロのχ(2)パラメータを有し、SHGに使用できます。

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Figure 5.6 光の振動電場が物質と相互作用すると、物質内の電子にはポテンシャルエネルギーが誘起されます。物質が中心対称性を有する場合、そのポテンシャルエネルギーは電子の平衡位置からの変位(x)の関数として表され、xの偶数乗の項からなる多項式で表されます。

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Figure 5.5 この立方晶構造は、AとBの2種類の異なるイオンの繰り返しパターンで構成されています。この結晶構造は、点(x、y、z)と点(-x、-y、-z)における構造が一致しているため、中心対称性を有します。

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Figure 5.8 光の振動電場が非中心対称の物質と相互作用するときは、電子に誘起されるポテンシャルエネルギーを電子の平衡位置からの変位(x)の関数として表すと、大きな変位では非対称になります。この曲線は、xの偶数乗の項と奇数乗の項で構成される多項式によって表されます。

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Figure 5.7 このウルツ鉱型の結晶構造は、AとBの異なる2種類のイオンの繰り返しパターンで構成されています。この結晶構造は中心対称性を有しないため、点(u、v、w)と点(-u、-v、-w)とで構造が一致しない点が少なくとも1組あります。
中心対称結晶
中心対称結晶の繰返し結晶パターンの一例を図5に示します。すべての中心対称結晶に当てはまることですが、点(x、y、z)と点(-x、-y、-z)の構造が一致しています。この結晶構造の対称性により、入射光の電場ベクトルの向きを反転させても、物質の応答は同じです。
光に対する物質の応答は、光の振動電場と物質内の電子との相互作用によって生じます。物質内の原子に束縛された電子は、その原子と光の電場、および物質内の周囲の原子から力を受けます。Figure 5.6の青い曲線は、それらの力を考慮し、原子の古典力学的アプローチであるローレンツモデルを使用して計算したものです。このモデルはχ(2)パラメータの推定にも使用できます。
Figure 5.6におけるX軸は電子の位置を表し、平衡状態にある電子の位置はx = 0です。入射光の振動電場は、電子を正の変位と負の変位の間で往復させます。電場の強度が大きいほど、電子の変位は大きくなります。中心の原子と周囲の原子は、変位した電子に復元力を与え、平衡状態に戻そうとします。この復元力は電子にポテンシャルエネルギーを与えます。このエネルギーはY座標の値で示され、電子が平衡状態から離れるほど増加します。
中程度の変位までは、大部分の復元力は中心原子により与えられ、それに伴う電子のポテンシャルエネルギーは対称な放物線に近い形になります(灰色の点線は放物線でフィットしたものです)。光の強度が大きくなると電子の変位も大きくなり、電子の復元力やポテンシャルエネルギーに対する周囲の原子からの寄与が大きくなります。そのような大きな変位でも、電子のポテンシャルエネルギーは放物線から逸脱しますが、対称性は維持されます。
物質の応答が対称であるのは、結晶が中心対称の構造を有するためです。SHGを発生させるには、この曲線を非対称にする必要があります。数学的には、非ゼロのχ(2)パラメータを得るには、曲線を記述する多項式に xの奇数乗の項が含まれることが必要です。しかし、図6の曲線を記述する多項式にはxの偶数乗の項しか含まれません。
非中心対称結晶
Figure 5.7に非中心対称結晶の一例を示します。このような物質の場合、位置(u、v、w)と位置(-u、-v、-w)とで結晶構造が異なる点が、常に少なくとも1組は存在します。
この場合の電子のポテンシャルエネルギーを、非中心対称物質に対して原子のローレンツモデルを適用して計算し、平衡位置からの変位の関数として示しています(Figure 5.8)。入射光の強度が小さい場合、電子の平衡位置からの変位は小さく、大部分の復元力は中心原子によって与えられます。この限られた範囲内では、電子のポテンシャルエネルギーは放物線に近い対称な関数で表され、これは線形光学材料の応答に対応します。照射する光の強度を徐々に強くしていくと、電子の変位は大きくなり、復元力に対する周囲の原子からの寄与が大きくなります。このとき周囲の原子の分布は対称ではないため、そのような大きな変位に対しては、復元力もポテンシャルエネルギーの井戸も非対称になります。
この非対称曲線をモデル化した多項式には、xの偶数乗の項だけでなく奇数乗の項も含まれます。非ゼロのχ(2)パラメータは、この多項式の非ゼロの3次(x3)項から得られます。x3項は線形光学モデルに対する最低次の補正であるため、χ(2)パラメータによって定量化される2次の非線形性を生成するには、多項式項に3次の項が必要です。非対称の応答は電子の変位が大きい場合にのみ顕著になるため、SHGを誘起するには高強度の光が必要です。
一軸性結晶
第2高調波光を効率的に生成するための2つ目の要件は、いわゆる位相整合条件です(下のセクションで詳しく説明します)。大まかにいえば、位相整合とは入射した基本周波数の光と第2高調波の光の間の位相速度を整合させることです。これは、しばしば光学異方性材料の複屈折を利用することで実現されます。
一軸性結晶は特殊なタイプの異方性材料で、3つの主屈折率のうち2つが同じになります。「一軸性」という名前は、これらの結晶内に光学軸またはc軸と呼ばれる単一の伝搬軸が存在することに由来しており、その軸上での屈折率はすべての偏光方向の光に対して同じになります。方解石、石英、サファイア、β-BBOなど、多くの一般的な光学材料が一軸性の結晶クラスに属します。
参考文献:
Robert W. Boyd, Nonlinear Optics (Academic Press, New York, 1992) pp. 17 - 52.
結晶の屈折率は結晶内での光の偏光方向に依存するか?
屈折率が光の偏光方向に依存する物質が存在します。例としては、β-BBOのような一軸性結晶を含む複屈折材料があります。一軸性結晶の特徴として、常光屈折率(no)と異常光屈折率(ne)と呼ばれる2つの主屈折率があります。主屈折率は、その材料が示す屈折率の最大値と最小値になります。光の電場(E)は伝搬方向(k)に対して常に垂直方向を向いているため、光の各偏光成分にとっての屈折率を決定するには、伝搬方向と偏光状態の両方を知る必要があります。
結晶の光学軸(c)方向をZ軸としたデカルト座標系を使用すると、光の偏光成分(Ex、Ey、およびEz)を複屈折結晶の幾何学と関連付けることができます。
一軸性結晶では、結晶の光学軸(c)に対する伝搬方向と偏光方向の角度を知ることで屈折率を求められます。
結晶は一軸性であるため、結晶の光学軸に対して電場が垂直方向を向いた光の屈折率はnoになります。結晶の光学軸に対して電場が平行な光の場合は、屈折率はneになります。一軸性結晶では、結晶の光学軸に対して垂直な2つの偏光成分(Ex、Ey)の屈折率は共にnoになります。結晶の光学軸に平行な偏光成分(Ez)の屈折率はneになります。
複屈折材料の屈折率がnoとneの間の値になることもありますが、それについては次のセクションで説明します。

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Figure 5.9 左側の図は、入射光の伝搬方向(k)が結晶の光学軸(c)の方向を向いていることを示しています。入射光は、互いに垂直な偏光成分であるExとEyに分解できます。右側の図は屈折率楕円体であり、XY平面に断面(赤い円)が示してあります。この半径が一定の円は、屈折率が常にnoであり、結晶は光の偏光に影響を与えないことを示しています。
光学軸に対して平行に伝搬する光
(例:光学ウィンドウ)
複屈折材料の光学軸(Z軸)に沿って伝搬する光の屈折率は、常にnoになります。これは光学軸を決定づける特性です。
Figure 5.9の左側の図は、結晶の光学軸に沿って伝搬する光の電場成分を示しています。この偏光状態では、成分としてExとEyの両方が含まれる可能性がありますが、Ezは含まれません。これは、電場ベクトルはZ軸に直交しており、従ってその角度θは90°であると表現することもできます。ExとEyの比は角度αに依存します。
図9の右側の図では、楕円体(いわゆる屈折率楕円体)を用いて、光の伝搬方向と偏光方向のすべての組み合わせに対して、この材料で得られる屈折率をマッピングしています。この材料の場合、最大屈折率はneで、最小屈折率はnoです。他の材料では逆の場合があります。楕円体上に描かれた赤い円は、光学軸に沿って伝搬する光にとっての屈折率を表す断面です。Ex成分とEy成分の屈折率は、共にnoになります。このため、XY平面内のEベクトルの方向に関係なく、Eの屈折率はnoになります。したがって、Ex成分とEy成分は同じ位相速度で移動するため、光が伝搬するときにその偏光状態は変化しません。
サファイアなどの一軸性結晶で作られた光学ウィンドウ(例えば、製品番号WG31050)は、一般に垂直入射された光が光学軸に平行に伝搬するように切断または研磨されています。これは、上記のように、ウィンドウが透過光の偏光状態に影響を与えないようにするためです。このように端面が光学軸に対して直交している場合、その結晶はしばしばZカットやCカットと呼ばれます。

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Figure 5.10 左側の図は入射光の伝搬方向(k)と偏光方向 (E)を示しており、これらは直交成分ExおよびEzに分解できます。伝搬方向はY軸に合わせてあり、結晶の光学軸(c)に対して垂直(θ = 90°)になっています。右側の図は屈折率楕円体で、XZおよびXY平面に断面(赤い楕円)が描かれています。異常光成分(Ee = Ez)の屈折率(ne)はZ軸と楕円の交点で示され、常光成分(Eo = Ex)の屈折率(no)はX軸と楕円の交点で示されています。角度φから2つの成分の大きさの比が求められます。

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Figure 5.11 左側の図に示す入射光の伝搬方向(k)は、結晶の光学軸(c)に直交(θ = 90°) するY軸に一致しています。φは0°であるため、偏光成分はEzだけになり、これは異常光成分でもあります。右側の図は、この成分の屈折率がneであることを示しています。

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Figure 5.12 左側の図に示す入射光の伝搬方向(k)は、結晶の光学軸(c)に直交(θ = 90°) するY軸に一致しています。φは0°であるため、偏光成分はExだけになり、これは常光成分でもあります。右側の図は、この成分の屈折率がnoであることを示しています。
光学軸に対して垂直に伝搬する光
(例:波長板)
複屈折材料に入射する直線偏光が光学軸に対して直交する方向(θ = 90°)に伝搬するとき、光には光学軸(Z軸)に対して平行な偏光と垂直な偏光の両方の成分が含まれる場合があります。これをFigure 5.10に示していますが、光の伝搬方向は便宜上Y軸に合わせています。光学軸に対して平行な電場成分(Ez)の屈折率はneになり、光学軸に対して垂直な成分(Ex)の屈折率はnoになります。この材料内では、これが2つの偏光成分間に生じる最大の屈折率差です。
Figure 5.10の右側の図に示す垂直の赤い円は屈折率楕円体の断面で、kベクトルに対して平行な平面です。水平の赤い楕円の断面は、直交する主偏光軸と
の屈折率の違いを示しています。
2つの偏光成分は屈折率が異なるため、材料中を伝搬する速度が異なります。そのため、2つの偏光成分EzとExの間に位相シフトが生じます。
多くの波長板は一軸性の複屈折材料から作られており、研磨された光学素子は垂直に入射した光が光学軸に対して直交する方向に伝搬するように取り付けられています。製品番号WPQ05M-266のような波長板の筐体上のマークや、光学素子の外周のフラットな面によって常光軸と異常光軸の方向を識別できます。石英結晶製の一般的な波長板の場合は、これらの軸はそれぞれファスト軸、スロー軸と呼ばれます。
偏光方向がファスト軸に平行な光は、スロー軸に平行な光よりも屈折率が小さいため、材料内での速度が相対的に早くなります。一般的な波長板の材料である石英は、常光屈折率が異常光屈折率に比べて小さい正の一軸性結晶です。そのため、石英のファスト軸は常光軸になります。
波長板を調整するときは、光学軸に対して光の伝搬方向を垂直に保持しながら、光学素子をXZ平面内でY軸を中心に回転させる必要があります。この回転ではθ = 90°を維持した状態で角度φが変化します。
角度φが 0°と90°の間にある場合、直線偏光には直交するExおよびEzの両成分が含まれ、波長板によって一方の成分は他方の成分に対して遅延します。ただしθは変化しないため、方向と
方向に沿った2つの直交する主偏光方向の屈折率は変化しないことにご注意ください。
φ = 0°の場合は、Figure 5.11に示すように光の偏光方向は光学軸に沿っています。このときは常光成分を含まれず、異常光成分(Ez = Ee)だけになります。この成分の屈折率はneです。偏光成分が1つだけであるため、波長板は偏光状態に影響を与えません。
直線偏光の方向をX軸(φ = 90°)に合わせた場合も、Figure 5.12に示すように偏光状態は影響を受けません。この場合は、異常光成分を含まない常光成分(Ex = Eo)のみの状態になり、屈折率はnoになります。

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Figure 5.13 左側の図では、入射光の伝搬方向(k)と一軸性複屈折結晶の光学軸(c)は同一平面(XZ面)内にあります。kとcの間の角度(θ)は任意に設定できます。入射光(基本波)の電場は赤いベクトルで表されており、Y軸に対して平行です。SHG光は垂直方向に偏光しており、XZ平面内に緑のベクトルで示されています。SHG光の偏光はEx成分とEz成分には分解せず、通常は屈折率n'eの異常光(E'e)として記述されます。右側の図で、n'eはθに依存し、赤い楕円で示される断面とXZ平面との交点で表されます。

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Figure 5.15 実験セットアップ内でのθとγの定義。

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Figure 5.14 上の図では、入射光の伝搬方向(k)と一軸性複屈折結晶の光学軸(c)は同一平面(XZ面)内にあります。kとcの間の角度(θ)は任意に設定できます。ここでは、入射光(基本波)の電場(E)(赤いベクトル)が実験室の参照フレームから角度Yだけ回転しています。そのため、基本波の電場の一部(Eoγ)だけがSHGによって偏光E'eに変換されます(緑色のベクトル)。
任意の角度で伝搬する光
(例: 非線形結晶)
一軸性結晶を用いたType Iの第2高調波発生(SHG)では、偏光方向をFigure 5.13のように設定します。kベクトルは光学軸から角度θに設定し、かつXZ平面内に置きます。入射光(基本波)の電場(Eo)は常光軸(この場合はY軸)に平行であり、屈折率はnoになります。常光軸方向(
軸に対して平行)に偏光した光の屈折率は、θの変化の影響は受けません。
SHG光はXZ平面に偏光しており、Eoおよびkベクトルの両方に対して直交します。SHG光の偏光はEx成分とEz成分には分解せず、通常は異常光(E'e)として記述されます。この異常光の屈折率n'eはθの関数であり、 n'e(θ)はFigure 5.13の式を用いて計算できます。異常光の屈折率をθの関数として決定する楕円は、屈折率楕円体の断面で与えられます。2つの極端なケースとしては、1)電場が常光軸の方向を向いて屈折率がnoとなるθ = 0°の場合と、2)電場が異常光軸
の方向を向いて屈折率がneとなるθ = 90°の場合があります。(')の表記は、θがこの2つの極端なケースの間にあるときの屈折率であることを示します。
Figure 5.14はType I SHGの理想的な偏光条件からずれている場合を示しています。ここでは、入射光(基本波)は直線偏光ですが、常光軸から角度γだけ回転しています。このとき、Type I SHGのプロセスに寄与している基本波の電場は、入射光の電場のEoγ成分です。γ = 90°ではSHGに寄与する電場はEoγ = 0となるため、SHG出力はゼロになります。
実際問題として、実験室の参照フレームで設定された光の偏光状態が結晶系固有の主軸と整合しない場合、γはゼロにはなりません。従って、例えば光学テーブル上のレーザの偏光を結晶のに平行にするなど、2つのフレームを整合させる必要があります。そのために、非線形結晶を回転ステージに取り付け、まず筐体のマークを用いて目視でγをゼロに調整します。次に、必要に応じて、SHG出力光のパワーをフィードバック用に使用します。Figure 5.15は実験フレーム内で結晶を回転する場合のγの方向を示しています。この例では、非線形結晶は回転ステージRP01(/M)の上に取り付けられた回転マウントRSP1(/M)に保持されています。γとθを変更することで、光学軸
の方向を調整します。この場合、γの調整は、光学軸
を水平面に合わせ、かつ常光軸の1つを垂直にアライメントするのに使用されます。垂直に偏光した入射ビームの場合、この向きで回転ステージを用いてθを調整できます。
なぜSHGには位相整合(角度調整)が必要なのか?

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Figure 5.17 Type-I位相整合はβ-BBOのような負の1軸性結晶でご使用いただけます。この場合、周波数(ω)の基本波の偏光方向は、光の伝搬ベクトル(k)と結晶の光学軸(c)を含む平面に対して垂直である必要があります。第2高調波の偏光方向は、その平面に対して平行です。角度θを調整するときは、結晶をY軸中心に回転します。

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Figure 5.16 位相整合しない場合、発生する第2高調波の強度I(2ω)は低い閾値以下のままです。位相整合すると、この強度は指数関数的に増大します。

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Figure 5.19 異常光の屈折率(ne')は、結晶の光学軸と入射した常光の伝搬方向の間の角度(θ)を調整することで、neとnoの間で変化させることができます。角度23.37°で、1030 nmの基本波は515 nmのSHG光と位相整合します。

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Figure 5.18 β-BBOの常光屈折率と異常光屈折率は、分散と呼ばれる材料特性により周波数(波長)によって変化します。分散は真空を除くすべての媒質に存在します。
Table 5.20 Refractive Index Orientations | ||
---|---|---|
Wave Type | Angle | Refractive Index |
Ordinary | k ⊥ ![]() | no |
Extraordinary | θ = 0° | no |
0° < θ < 90° | ne'(θ ) | |
θ = 90° | ne |

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Figure 5.21 Type-Iの非線形結晶では慎重なアライメントが必要です。入射ビームの角度が1°の数分の1ずれるだけで、SHG効率は大幅に低下します。しかし、NCPM結晶は、わずかな角度偏差があっても高い効率を維持できるため、煩わしい角度調整を避けることができます。
位相整合することで、SHGの変換効率は大幅に向上します。位相整合をしなくても第2高調波を生成することはできますが、アプリケーション用として十分な強度の第2高調波(倍波)を得るには位相整合が必要です。SHG光(I2ω)の出力光強度に対する位相整合の効果をFigure 5.16に示します。位相整合していない場合、SHG光の強度は増加と減少を繰り返しますが、一般に強度は低いレベルに留まります。これに対して位相整合した場合は、SHG光の強度は物質内での伝搬距離に応じて指数関数的に増大します。位相整合は、SHG結晶に対して基本周波数(ω)の光を適切な方向から入射することで実現します(Figure 5.17)。
理想的に位相整合しているときは、基本波(ω)と第2高調波(2ω)が同じ位相速度で伝搬するため、光路に沿って生成されるすべての第2高調波の光は強め合います。位相速度は、搬送波電場、すなわち正弦波が物質内を移動する速度です。光パルスの包絡線が物質中を移動する速度は群速度と呼ばれ、物質中を伝わる光パルスを包含するエネルギー波束の速度と定義されています。
2つの周波数の屈折率が同じ場合、位相速度は等しくなります。しかし、真空を除くすべての媒質には分散特性があるため、一般にはこれら2つの周波数の光の屈折率は等しくありません。これは、物質の屈折率が光の周波数に依存することを意味します。例として、可視(VIS)~赤外(IR)域の周波数範囲におけるβ-BBOの常光屈折率と異常光屈折率をFigure 5.18に示します。この範囲では、周波数が高いほど屈折率は大きくなります。
位相整合を実現して、基本波と第2高調波の屈折率を等しくする方法は幾つかあります。それらの中に、Type-0、-Iおよび-IIの臨界位相整合と非臨界位相整合(NCPM)があります。
Type-0位相整合
W現在、Type-0位相整合の可能な非線形結晶はご提供していませんが、これを説明することはSHGの位相整合を理解するうえで有用です。Type-0の臨界位相整合(critical phase matching)では、結晶に対して異常光の偏光方向(光学軸に平行)を有する基本周波数(ω)の光を入射し、その励起光の2つの光子から2倍の周波数(2ω)と異常光の偏光方向を有する1つのSHG光子を生成します。これはee-eと呼ばれる構成で、入射光子とSHG光子の偏光方向は異常光の平面内にあります。Type-0位相整合は、しばしば周期分極反転された材料での擬似位相整合(quasi-phase matching)と組み合わせて使用されます。
Type-I位相整合
Type-Iの臨界位相整合では直線偏光を使用し、常光および異常光の屈折率の差を利用します。これはno > neの性質を有する負の一軸性結晶に対する一般的なアプローチです。Type-I位相整合における基本波の入射ビームと生成された第2高調波の出射ビームの方向をFigure 5.17に示します。これはいわゆるoo-eと呼ばれる構成で、基本波の2つの光子の偏光方向は常光軸方向であり、第2高調波の光子の偏光方向は異常光の平面内にあります。注目すべきは、Type-I位相整合では、基本波と第2高調波の屈折率が等しいことです。
直線偏光の基本波の偏光方向は、結晶に対して常光屈折率の軸(y軸)方向を向くようにアライメントされており、光の伝搬ベクトル(k)と結晶の光学軸(c)を含む平面に対しては直交しています。第2高調波は異常光として生成され、その偏光方向は基本波の常光に対して直交しています。
y軸を中心に結晶を回転させると、伝搬ベクトルと結晶の光学軸の間の角度(θ)を調整できます。そうすることで、Figure 5.19に示すように異常光の屈折率(n'e(θ))neとnoの間で変化させることができます。ここで赤の曲線はn'e(90°) = neを表し、青の曲線noを表します。緑の曲線の位置はθに依存します。この図の場合は、515 nmの光の屈折率が1030 nmの光の屈折率と一致するように角度θを調整しています。この角度で、1030 nmの入射光を基本波としてSHG光を発生させるためのType-I位相整合条件に最適化されています。
当社を含む一部のメーカーのSHG結晶は、特定の基本周波数の光を垂直入射したときに、ほぼ位相整合条件を満たします。これらのSHG結晶は、垂直入射光と光学軸との間の角度が、特定の周波数に対して位相整合角となるように結晶の面が研磨されています。この位相整合角は、y軸を中心に結晶を回転させることで調整できます。通常、数度以内の調整で、セットアップ内の結晶の性能を最適化したり、結晶の動作範囲内の別の基本周波数に整合させたりすることができます。
Type-II位相整合
Type-IIの臨界位相整合では、基本周波数とSHG周波数の屈折率は異なります。直交する偏光方向(1つは常光、1つは異常光)を有する基本周波数(ω)の2つの光子から、2倍の周波数(2ω)と常光の偏光方向を有する1つのSHG光子が生成されます。これはいわゆるoe-o配置であり、2つの入射光子の偏光方向は直交しており、得られるSHG光子の偏光方向は常光の振動面内にあります。Type-Iと同様に、Type-IIの結晶をy軸中心に回転させると、伝搬ベクトルと結晶の光学軸の間の角度(θ)を調整できます。そうすることで、異常光の屈折率(n'e(θ)) をneとnoの間で変化させることができます。
当社のType-II結晶(型番NLCL6、 NLCL7)は、実際にはSHGではなく和周波発生(SFG)用に設計されています。波長1064 nmの基本周波数を有する常光の光子と、532 nmの異常光のSHG光子(当社の波長1064 nm用のType-I SHG結晶で生成された光子など)を組み合わせると、波長1064 nmの第3高調波である波長355 nmの常光の光子が生成されます。これらの波長の光を入射することは、真空中において基本周波数281.8 THzと第2高調波周波数563.5 THzの光子を入射することに対応し、それらを加算して355 nmの波長に対応する845.3 THzの和周波光子を生成していることになります。
非臨界位相整合(NCPM)
当社のLBO結晶NLCL8およびNLCL9では、非臨界位相整合(NCPM)でSHG光の生成ができます。非臨界位相整合(NCPM)は、基本波の偏光方向とSHGの偏光方向が結晶の主軸に対して平行になるように結晶をカットした場合に実現できます。Type-IやType-IIの位相整合のように光学軸の角度を調整するのではなく、結晶の温度を調整して基本波とSHGの位相速度を調整します。位相整合の調整を主軸に合わせることだけに絞った結果、Figure 5.21に示すように、位相整合の角度受容性が大幅に増大(逆に角度感度は減少)します。これにより、これらの結晶の光学的なアライメントが容易になり、結晶の温度による独立したチューニングが可能になります。基本波とSHG光の両方の偏光方向が主軸に対して平行になることのもう1つの利点は、結晶全体でポインティングベクトルのウォークオフがなくなることです。非線形結晶の温度依存性についての詳細は下のセクションで説明しています。
NCPMでは効率を最適化するためのアライメントを単純化できるだけでなく、Type-I SHG結晶と比較して角度に対する感度の低いため、小さなモードフィールド径(MFD)、すなわち高い光強度でビームの円形性とSHG効率を維持できるという利点があります。このことは、Type-I結晶とNCPM結晶のSHG効率をMFDの焦点サイズの関数として示した、Figures 5.22および5.23のグラフから見ることができます。MFDが300 µmの場合には2つの結晶の性能は同等ですが、MFDが100 µm以下になるとType-I結晶によるSHG生成の性能は急速に低下します。NCPMでは、励起レーザ光の円形性を維持したまま、より小さなスポットに集光して、より高い励起光強度にすることができます。そのため、Type-I結晶やType-II結晶に比べて非常に多くのSHG光子に変換することができます。

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Figure 5.23 集光スポットサイズが大きい場合は、Type-IとNPCMの非線形結晶のSHG変換効率は同程度です。しかしモードフィールド径を小さくして光強度を高めた場合には、NCPMはType-Iよりも優れたSHG変換効率を示します。

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Figure 5.22 集光スポットサイズが大きい場合は、Type-IとNPCMの非線形結晶ではともに比較的円形のビームを形成できます。しかし、モードフィールド径を小さくして光強度を高めると、Type-I結晶からのSHG光の円形性は著しく低下します。一方、NCPM結晶の場合は良好な円形性を維持します。
なぜSHGではパルス幅の狭さが問題になるのか?
SHG結晶を選ぶ際は、レーザ光源のパルス幅を考慮する必要があります。パルス幅と結晶の厚さが整合していないと、理想的な条件下で得られるSHGパルスよりも持続時間が長くなり、スペクトルは狭くなります。
第2高調波発生(SHG)に超短パルスを使用する場合、パルスが短いほど帯域幅が広くなりますが、理想的な位相整合状態は1つの基本周波数(波長)に対してのみしか得られないという問題が生じます。このため、広帯域パルスのスペクトルの端部では、位相整合の品質が大幅に低下する可能性があります。もう一つの問題は、第2高調波と基本周波数のパルスの群速度が異なるため、2つのパルスが伝搬するときに一方のパルスがもう一方のパルスより遅れることです。これは時間的ウォークオフと呼ばれ、最適な位相整合条件下でも発生します。
広帯域パルスと時間的ウォークオフは、どちらも変換効率だけでなく第2高調波パルスの光学的な品質も低下させます。それらを最小限に抑えるには、結晶の厚さを適切に選ぶ必要があります。

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Figure 5.24 左のグラフでは、基本波の入射光パルス(赤い実線)のスペクトル幅は、基準パルスのスペクトル幅(黒い破線)よりも狭くなっています。したがって、右のグラフに示す第2高調波パルスのスペクトルは、理想的な場合とほぼ同じスペクトル幅を有しています。基本波パルスのすべての周波数(スペクトル)成分が、同時に位相整合されることが理想です。

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Figure 5.25 左のグラフでは、基本波の入射光パルス(赤い実線)のスペクトル幅は、基準パルスのスペクトル幅(黒い破線)よりも広くなっています。したがって、右のグラフに示す第2高調波パルスのスペクトル(青い曲線)は、理想的な場合よりもスペクトル幅が狭くなっています。基本波パルスのすべての周波数(スペクトル)成分が、同時に位相整合されることが理想です。
位相整合帯域幅の制限
「なぜSHGには位相整合(角度調整)が必要なのか?」のセクションで説明したように、光の伝搬方向と結晶の光学軸の間の角度を調整することで、入射光パルスの特定の基本周波数(ω)の屈折率がその2倍の周波数(2ω)の屈折率と正確に等しくなるようにできます。その際、パルスの帯域幅のほぼ中央の周波数に対して、位相整合条件を最適化するのが一般的です。β-BBOのような分散特性を有する結晶の屈折率は、周波数に対して線形的には変化しないため、入射光パルスのスペクトル範囲内のすべての周波数成分と、それぞれに対応して生成される第2高調波パルスの周波数成分との位相整合を、すべて最適化することは不可能です。
結晶の長さを仮定すると、適切に位相整合可能な最大のスペクトル範囲を有する基準パルスを定義できます。このスペクトル帯域幅の制限は、通過帯域が結晶の特性とパルスの中心周波数の両方に依存する「SHGフィルタ」の考え方を用いて扱うこともできます。このフィルタの通過帯域外の周波数はSHGプロセスから除外されます。
入射光パルスのスペクトル範囲が基準パルスと同じかそれより狭い場合、生成される第2高調波パルスの持続時間は 1/√2倍になり、スペクトル幅は√2倍になります。基本波のスペクトルが基準パルスのスペクトル内に十分に収まる場合は、物理的にSHGパルスの強度プロファイルは基本波の強度プロファイルの2乗となり、持続時間は効果的に短縮されます。このことはFigure 5.24に示されています。
入射光パルスのスペクトル範囲が基準パルスのスペクトル幅を超える場合(Figure 5.25)、第2高調波パルスのスペクトル(青い曲線)は、入射光パルスのすべての周波数が位相整合している場合(灰色の曲線)よりも狭くなります。このスペクトル的に狭くなったSHGパルスのスペクトルは、アポダイズ(apodize)されていると言われます。その理由は、入射した基本波のパルス光が最大許容帯域幅を超えている場合、SHGパルスのスペクトルから高域側と低域側の周波数成分が除去されるためです。
SHG結晶の長さは、基準パルスのスペクトル幅、あるいは SHGフィルタの帯域幅に大きな影響を与えます。Table 5.2に示すように、結晶が短くなると基準パルスのスペクトルは広くなります。この表では、基本波の中心波長を近赤外域(NIR)に想定しています。
Table 5.26 Crystal Lengths | |
---|---|
β-BBO Crystal Length | Pulse Durationa |
Less than One Millimeter | Less than 100 Femtoseconds |
Several Millimeters | Hundreds of Femtoseconds |
Tens of Millimeters | Picoseconds |
時間的ウォークオフ
光学媒体内の光の伝搬速度には、位相速度と群速度の2つが定義されています。位相速度は、電場の振動である搬送波の速度を表しています。位相整合させるためには、基本波周波数と第2高調波周波数の位相速度を整合させます。真空中の光の速度に対する物質中の位相速度の比は、その屈折率によって決定されます。

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Figure 5.27 上の図は、中心周波数が異なる2つのパルスが物質に入射する様子を示しています。物質に入射するときのパルス間の群速度遅延はゼロです。下の4つのグラフは、パルスが物質中を伝搬するにつれて、群速度遅延(時間的ウォークオフ)が増加することを示しています。各グラフは距離Z0からZ3における時間的ウォークオフを表しています。
群速度はパルスの速度ですが、より正式には電場の包絡線の速度です。群指数も同様に真空中の光の速度に対する包絡線の速度の比を決定しますが、これは材料分散に依存します。群速度と位相速度は等しくありませんが、これは搬送波の正弦波とパルスの包路線が光媒体中を異なる速度で移動することを意味します。
基本波パルスと第2高調波パルスの群速度も、たとえ位相整合していても異なっています。これらの群速度の不一致の大きさは、結晶の特性とパルスの光周波数に依存します。場合によっては、不一致が小さい場合もあります。たとえば、β-BBO結晶を使用して1550 nmの光の周波数を2倍にして775 nmの光を得る場合、群速度の不一致は1ミリメートルあたりわずか数フェムト秒です。
しかし、多くの場合は、基本波と第2高調波のパルス速度の違いにより、一方のパルスが他方のパルスより大幅に遅れます。速いパルスに対する遅いパルスの時間的ウォークオフは、パルス持続時間に対して大きな割合になる場合があります。その様子をFigure 5.27に示しています。
時間的ウォークオフは、時間的な遅れが基本波パルスの持続時間を超える場合に、しばしば深刻な問題になることが懸念されます。深刻なウォークオフによる時間的な遅れに伴い、出射される第2高調波パルスの持続時間が修復不可能なほどに増大してしまう可能性があります。このプロセスのダイナミクスは実験パラメータに大きく左右されるため、第2高調波パルスへの正確な影響を適切に予測することは困難です。これらの効果には、第2高調波が基本波に戻る逆変換や、SHGパルスのスペクトル狭窄化といった効果も含まれます。
結晶の長さの選択
結晶の長さは、特定の入射光パルスのパラメータに対してSHGプロセスを最適化する際に考慮すべき重要なパラメータです。位相整合や時間的ウォークオフなどの問題が無ければ、SHGによる出射光は結晶の長さに応じて指数関数的に増大します。SHG結晶を選ぶ際は、結晶の長さと基本波パルスによって決定される制限とのバランスを取る必要があります。結晶の長さを短くすると、それに直接関係する位相整合帯域幅の制限と時間的ウォークオフの両方の影響が軽減されます。例えば、ある長さの結晶内を伝搬する基本波パルスを考えてみます。時間的ウォークオフが基本波パルスの持続時間よりも大きい場合、このパルスのスペクトル帯域幅も基準パルスのスペクトル幅を大幅に超えることになります。両方の物理的効果に関連する有害な影響を制限するための一般的な方法は、基本波と第2高調波の時間的ウォークオフを基本波パルスの持続時間以下に制限するように結晶の長さを選択することです。
なぜ集光スポットサイズが重要なのか?
一般にSHGを発生させるときには、結晶内で入射光を集光する必要があります。これは第2高調波光を効率的に発生させるには、109 W/cm2のような高いピーク強度の光が必要であるためです。ナノジュール領域の中程度のエネルギーのフェムト秒パルスを使用する場合、必要とされるピーク強度を得るには小さなスポットに集光する必要があります。非線形結晶にフェムト秒パルスレーザを集光するときのガイドラインとしては、レイリー長をSHG結晶の長さの少なくとも数倍に設定することが推奨されています。そうすることで、結晶が損傷を受ける可能性が最小限に抑えられ、空間的な位相不整合や空間的な(ポインティングベクトルの)ウォークオフなどのマイナスの効果も低減できます。
Table 5.28 Tiberius Pulse Parameters | ||
---|---|---|
Wavelength | ![]() | 800 nm |
FWHM Duration | T | 140 fs |
Energy | E | 30 nJ |
β-BBO Crystal | ||
Thickness | d | 0.6 mm |
Focused Pulse Parameters | ||
Mode Field Diametera | MFD | 13.5 µm |
Effective Areab | ![]() | 7.16 x 10-7 cm2 |
Peak Power | ![]() | 201 kW |
Peak Irradiancec | ![]() | 281 GW/cm2 |

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Figure 5.29 上の図は、1軸性複屈折材料内でのビームの集光領域を示しています。光線を表す直線は、ビームウェストの中心を通って描かれています。ビームウェストから離れるにつれてビームが広がり、ビームのエネルギーはより大きな断面積に分散されます。結晶軸はcで示されています。主光線は、位相整合を最適化する角度(θ)の方向と平行です。変換効率は、主光線に平行な光線に対しては最適化されますが、主光線に対して大きな角度(ψ)の光線では低下します。
レイリー長と結晶の長さの関係
レーザ光を集光したとき、ビーム径はそのビームウェストで集光スポットサイズとなり、その後のビームの広がり方はレイリー長(zR)に関係します。レイリー長は、ビームウェスト近傍でビーム径がほぼ一定になる範囲を、ビームウェストからの距離で表して定量化したものです。レイリー長が短いほど、ビームの発散角は大きくなります。
レイリー長が結晶の厚さより小さい場合、最適なビーム強度を保持できる距離も結晶の厚さより短くなります。SHGプロセスの効率は、基本波のビームが焦点から広がるにつれて大幅に低下しますが、これはパルスエネルギーが大きなビーム断面積内に分散されるためです。
フェムト秒パルスの場合、位相整合/時間的ウォークオフの制限により、結晶の長さは比較的短く設定(サブミリ~数ミリ)されます。以下に示すように、SHG位相整合プロセスには集光開口数(NA)の制限があります。これは、前のセクション(なぜSHGではパルス幅の狭さが問題になるのか?位相整合帯域幅の制限)で説明した、スペクトルによる位相整合の制限と類似した現象です。SHGプロセスにおけるこの空間的な集光に対する制限により、一般に結晶の長さは入射する集光パルスのレイリー長よりも常に短くなります。
結晶の損傷
超短パルスを小さなスポットサイズに集光すると、レーザ損傷閾値(LIDT)を超える危険性があります。例として、当社のTiberiusレーザからのフェムト秒パルスを考えてみましょう(Table 5.28参照)。結晶の最大長さと位相整合/時間的ウォークオフによる制限とのバランスをとるために、結晶の長さをパルス持続時間に基づいて選択すると、800 nm、140 fsのレーザーパルスに対しては0.6 mmの結晶が推奨されます。「2zR = 結晶の長さ」となるように集光状態を調整すると、焦点のスポットサイズは13.5 μmになります。表に示した式を用いると、30nJのガウシアンパルスを入射したとき、結晶の入射面に281 GW/cm2の非常に高いピーク強度(放射照度)を与えると推定できます。
空間位相整合
タイプIの位相整合プロセスは、基本周波数と第2高調波周波数の常光と異常光の整合の程度に依存し、ベストな整合は結晶の光学軸と入射光の伝搬ベクトルの方向とを精密に調整することで実現されます。集光されたパルスレーザやレーザービームには、小さな集光スポットを生成するための角度成分(正式には空間周波数と呼ばれる)が含まれています。この角度成分の大きさを表すのに開口数(NA)が使用されます。基本波のレーザ光は結晶全体を通過するようにコリメートされるのが理想です。これはコリメートされた光は、同じ方向に整列した、NAがゼロの光線のグループに似ているためです。
光線モデルの視点で、伝搬方向をFigure 5.29の中心光線(主光線)の方向に決定します。SHGプロセスは入射光が伝搬する角度の範囲によって影響を受けます。これは、主光線に平行でない光は主光線に比べて位相整合の効率が低下するためです。基準パルスのパワースペクトルがアポダイゼーションフィルタを構成するのに代わり、空間領域ではNAがフィルタの役割を果たします。ただし、角度領域のアポダイゼーションフィルタは、kとによる平面で定義される1次元のみに限定されます。
集光ビームの角度成分は、レンズから焦点までの光線を追跡することによって視覚化できます。レンズから焦点まで強く絞り込まれた各光線(Figure 5.29)は、主光線とは異なる角度(ψ)を有し、角度の大きさはNAとともに増加します。角度範囲が基準NAフィルタ(または角度領域アポダイゼーション フィルタ)の幅を超えて大きくなると、フィルタの幅の外側の光線の位相整合のレベルが低下し、それらの光線のSHG変換効率は低下します。このような角度フィルタを経て得られたSHGパルスやSHGビームの角度成分は、理想的な場合よりも減少します。これに直交する方向には角度フィルタが無いため、SHGビームは入射ビームの角度成分を保持します。非対称なNA(水平方向と垂直方向で非対称)を有する発散ビームは、楕円形のビームになります。
空間的な(ポインティングベクトルの)ウォークオフ
第2高調波が伝搬するとき、そのエネルギーの伝搬方向は基本波の伝搬方向とは異なります。空間的ウォークオフの角度は、ビームのサイズと結晶の長さに依存します。この角度は非常に大きくなる場合もありますが、一般的には小さく、通常は10 mrad程度で無視できます。
タイプIの位相整合でβ-BBO結晶を使用する場合、基本波は結晶内を異常光として伝搬しますが、第2高調波は常光として伝搬します。両方の光のエネルギーは、ポインティングベクトルによって決定される方向に伝搬します。スネルの法則はエネルギーの流れる方向は表していませんが、結晶内のkベクトルの方向を計算するためには使用できます。
なぜ温度が重要なのか?

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Figure 5.30 長さ10 mm(NLCL1)、15 mm(NLCL2)、20 mm(NLCL3)の非線形結晶によるSHG発生効率の温度依存性を示すグラフ。結晶長が長くなると、結晶内の光路長が長くなるため、温度依存性も大きくなります。
温度により結晶の屈折率が変化しますが、この変化は結晶を通過する光路が長ければ長いほど位相整合条件に与える影響が大きくなります。位相整合した状態ではSHGプロセスの効率が向上するため、SHG光およびSFG光の強度は結晶内での伝搬距離に応じて指数関数的に増大します。
当社のSHG用LBO結晶はSHG用β-BBO結晶よりも大変長いため、位相整合の感度が高くなり、それに伴って結晶の温度制御が非線形プロセスにおいて一層重要な役割を果たします。この依存性は、一般に結晶が長い非臨界位相整合(NCPM)結晶(型番NLCL8、NLCL9)では、特に顕著になります。このことは、結晶NLCL1、NLCL2およびNLCL3 のSHG効率の温度依存性をプロットしたFigure 5.30をご覧いただくと明らかです。これらの結晶は、長さが10 mm(型番NLCL1)~20 mm(型番NLCL3)と異なること以外は、全く同じです。20 mmの結晶ではわずかな温度変化が効率に大きな影響を与えるのに対し、10 mmの結晶ではより広い温度範囲でSHGの整合性を維持します。したがって、基本波の光を第2高調波または和周波の光に確実かつ効率的に変換するためには、これらの長いLBO非線形結晶の温度を一定に制御することが重要です。
Figure 5.31は、長さ10 mmの2つの臨界位相整合LBO結晶を用いて得られる、Type-I SHGおよびType-II SFGの発生効率の温度依存性を示しています。個々の非線形プロセスの温度依存性の大きさは様々ですが、当社のType-IおよびType-IIの臨界位相整合LBO結晶は、すべて温度20 °Cで入射角が約0°の場合に発生効率が最大になるように設計されています。しかし、温度が20 °Cからわずかに2°Cまたは3°Cずれるだけで、第2高調波および和周波の発生効率は半分に減少します。Figure 5.32は、NCPM結晶(型番NLCL8、NLCL9)によるSHG発生効率の温度依存性を、位相整合温度からの温度偏差の関数として示しています。発生効率は150 °C付近で最大になっています。結晶が長く、位相整合の温度依存性が大きくなると、感度曲線から1 °Cの偏差でSHG効率が半分に低下するため、安定した温度制御が必要になります。

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Figure 5.32 NCPM非線形結晶によるSHG発生効率の温度依存性を示すグラフ。位相整合温度から1°Cの偏差が生じただけで、高調波発生効率は大きく低下します。

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Figure 5.31 長さ10 mmのType-IおよびType-II非線形結晶による、SHGおよびSFGの発生効率の温度依存性を示すグラフ。数°Cの偏差で高調波発生効率は大きく低下します。
Table 6.1 Damage Threshold Specificationsa | |
---|---|
Item # | Damage Threshold |
NLCL4 | > 25 J/cm2 (1064 nm, 10 ns, 100 Hz, Ø220 μm) |
NLCL5 | |
NLCL1 | |
NLCL2 | |
NLCL3 | |
NLCL8 | |
NLCL9 | |
NLCL6 | > 5 J/cm2 (532 nm, 5.5 ns, 100 Hz, Ø220 μm) |
NLCL7 |
当社のLBO結晶の損傷閾値データ
Table 6.1の仕様は、第2高調波よび和周波発生用LBO結晶の測定値です。
レーザによる損傷閾値について
このチュートリアルでは、レーザ損傷閾値がどのように測定され、使用する用途に適切な光学素子の決定にその値をどのようにご利用いただけるかを総括しています。お客様のアプリケーションにおいて、光学素子を選択する際、光学素子のレーザによる損傷閾値(Laser Induced Damage Threshold :LIDT)を知ることが重要です。光学素子のLIDTはお客様が使用するレーザの種類に大きく依存します。連続(CW)レーザは、通常、吸収(コーティングまたは基板における)によって発生する熱によって損傷を引き起こします。一方、パルスレーザは熱的損傷が起こる前に、光学素子の格子構造から電子が引き剥がされることによって損傷を受けます。ここで示すガイドラインは、室温で新品の光学素子を前提としています(つまり、スクラッチ&ディグ仕様内、表面の汚染がないなど)。光学素子の表面に塵などの粒子が付くと、低い閾値で損傷を受ける可能性があります。そのため、光学素子の表面をきれいで埃のない状態に保つことをお勧めします。光学素子のクリーニングについては「光学素子クリーニングチュートリアル」をご参照ください。
テスト方法
当社のLIDTテストは、ISO/DIS 11254およびISO 21254に準拠しています。
初めに、低パワー/エネルギのビームを光学素子に入射します。その光学素子の10ヶ所に1回ずつ、設定した時間(CW)またはパルス数(決められたprf)、レーザを照射します。レーザを照射した後、倍率約100倍の顕微鏡を用いた検査で確認し、すべての確認できる損傷を調べます。特定のパワー/エネルギで損傷のあった場所の数を記録します。次に、そのパワー/エネルギを増やすか減らすかして、光学素子にさらに10ヶ所レーザを照射します。このプロセスを損傷が観測されるまで繰返します。損傷閾値は、光学素子が損傷に耐える、損傷が起こらない最大のパワー/エネルギになります。1つのミラーBB1-E02の試験結果は以下のようなヒストグラムになります。

上の写真はアルミニウムをコーティングしたミラーでLIDTテストを終えたものです。このテストは、損傷を受ける前のレーザのエネルギは0.43 J/cm2 (1064 nm、10 ns pulse、 10 Hz、Ø1.000 mm)でした。

Example Test Data | |||
---|---|---|---|
Fluence | # of Tested Locations | Locations with Damage | Locations Without Damage |
1.50 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
1.75 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
2.00 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
2.25 J/cm2 | 10 | 1 | 9 |
3.00 J/cm2 | 10 | 1 | 9 |
5.00 J/cm2 | 10 | 9 | 1 |
試験結果によれば、ミラーの損傷閾値は 2.00 J/cm2 (532 nm、10 ns pulse、10 Hz、 Ø0.803 mm)でした。尚、汚れや汚染によって光学素子の損傷閾値は大幅に低減されるため、こちらの試験はクリーンな光学素子で行っています。また、特定のロットのコーティングに対してのみ試験を行った結果ではありますが、当社の損傷閾値の仕様は様々な因子を考慮して、実測した値よりも低めに設定されており、全てのコーティングロットに対して適用されています。
CWレーザと長パルスレーザ
光学素子がCWレーザによって損傷を受けるのは、通常バルク材料がレーザのエネルギを吸収することによって引き起こされる溶解、あるいはAR(反射防止)コーティングのダメージによるものです[1]。1 µsを超える長いパルスレーザについてLIDTを論じる時は、CWレーザと同様に扱うことができます。
パルス長が1 nsと1 µs の間のときは、損傷は吸収、もしくは絶縁破壊のどちらかで発生していると考えることができます(CWとパルスのLIDT両方を調べなければなりません)。吸収は光学素子の固有特性によるものか、表面の不均一性によるものかのどちらかによって起こります。従って、LIDTは製造元の仕様以上の表面の質を有する光学素子にのみ有効です。多くの光学素子は、ハイパワーCWレーザで扱うことができる一方、アクロマティック複レンズのような接合レンズやNDフィルタのような高吸収光学素子は低いCWレーザ損傷閾値になる傾向にあります。このような低い損傷閾値は接着剤や金属コーティングにおける吸収や散乱によるものです。
線形パワー密度におけるLIDTに対するパルス長とスポットサイズ。長パルス~CWでは線形パワー密度はスポットサイズにかかわらず一定です。 このグラフの出典は[1]です。

繰返し周波数(prf)の高いパルスレーザは、光学素子に熱的損傷も引き起こします。この場合は吸収や熱拡散率のような因子が深く関係しており、残念ながらprfの高いレーザが熱的影響によって光学素子に損傷を引き起こす場合の信頼性のあるLIDTを求める方法は確立されておりません。prfの大きいビームでは、平均出力およびピークパワーの両方を等しいCW出力と比較する必要があります。また、非常に透過率の高い材料では、prfが上昇してもLIDTの減少は皆無かそれに近くなります。
ある光学素子の固有のCWレーザの損傷閾値を使う場合には、以下のことを知る必要があります。
- レーザの波長
- ビーム径(1/e2)
- ビームのおおよその強度プロファイル(ガウシアン型など)
- レーザのパワー密度(トータルパワーをビームの強度が1/e2の範囲の面積で割ったもの)
ビームのパワー密度はW/cmの単位で計算します。この条件下では、出力密度はスポットサイズとは無関係になります。つまり、スポットサイズの変化に合わせてLIDTを計算し直す必要がありません(右グラフ参照)。平均線形パワー密度は、下の計算式で算出できます。
ここでは、ビーム強度プロファイルは一定であると仮定しています。次に、ビームがホットスポット、または他の不均一な強度プロファイルの場合を考慮して、おおよその最大パワー密度を計算する必要があります。ご参考までに、ガウシアンビームのときはビームの強度が1/e2の2倍のパワー密度を有します(右下図参照)。
次に、光学素子のLIDTの仕様の最大パワー密度を比較しましょう。損傷閾値の測定波長が光学素子に使用する波長と異なっている場合には、その損傷閾値は適宜補正が必要です。おおよその目安として参考にできるのは、損傷閾値は波長に対して比例関係であるということです。短い波長で使う場合、損傷閾値は低下します(つまり、1310 nmで10 W/cmのLIDTならば、655 nmでは5 W/cmと見積もります)。
この目安は一般的な傾向ですが、LIDTと波長の関係を定量的に示すものではありません。例えば、CW用途では、損傷はコーティングや基板の吸収によってより大きく変化し、必ずしも一般的な傾向通りとはなりません。上記の傾向はLIDT値の目安として参考にしていただけますが、LIDTの仕様波長と異なる場合には当社までお問い合わせください。パワー密度が光学素子の補正済みLIDTよりも小さい場合、この光学素子は目的の用途にご使用いただけます。
当社のウェブ上の損傷閾値の仕様と我々が行った実際の実験の値の間にはある程度の差があります。これはロット間の違いによって発生する誤差を許容するためです。ご要求に応じて、当社は個別の情報やテスト結果の証明書を発行することもできます。損傷解析は、類似した光学素子を用いて行います(お客様の光学素子には損傷は与えません)。試験の費用や所要時間などの詳細は、当社までお問い合わせください。
パルスレーザ
先に述べたように、通常、パルスレーザはCWレーザとは異なるタイプの損傷を光学素子に引き起こします。パルスレーザは損傷を与えるほど光学素子を加熱しませんが、光学素子から電子をひきはがします。残念ながら、お客様のレーザに対して光学素子のLIDTの仕様を照らし合わせることは非常に困難です。パルスレーザのパルス幅に起因する光学素子の損傷には、複数の形態があります。以下の表中のハイライトされた列は当社の仕様のLIDT値が当てはまるパルス幅に対する概要です。
パルス幅が10-9 sより短いパルスについては、当社の仕様のLIDT値と比較することは困難です。この超短パルスでは、多光子アバランシェ電離などのさまざまなメカニクスが損傷機構の主流になります[2]。対照的に、パルス幅が10-7 sと10-4 sの間のパルスは絶縁破壊、または熱的影響により光学素子の損傷を引き起こすと考えられます。これは、光学素子がお客様の用途に適しているかどうかを決定するために、レーザービームに対してCWとパルス両方による損傷閾値を参照しなくてはならないということです。
Pulse Duration | t < 10-9 s | 10-9 < t < 10-7 s | 10-7 < t < 10-4 s | t > 10-4 s |
---|---|---|---|---|
Damage Mechanism | Avalanche Ionization | Dielectric Breakdown | Dielectric Breakdown or Thermal | Thermal |
Relevant Damage Specification | No Comparison (See Above) | Pulsed | Pulsed and CW | CW |
お客様のパルスレーザに対してLIDTを比較する際は、以下のことを確認いただくことが重要です。
エネルギ密度におけるLIDTに対するパルス長&スポットサイズ。短パルスでは、エネルギ密度はスポットサイズにかかわらず一定です。このグラフの出典は[1]です。
- レーザの波長
- ビームのエネルギ密度(トータルエネルギをビームの強度が1/e2の範囲の面積で割ったもの)
- レーザのパルス幅
- パルスの繰返周波数(prf)
- 実際に使用するビーム径(1/e2 )
- ビームのおおよその強度プロファイル(ガウシアン型など)
ビームのエネルギ密度はJ/cm2の単位で計算します。右のグラフは、短パルス光源には、エネルギ密度が適した測定量であることを示しています。この条件下では、エネルギ密度はスポットサイズとは無関係になります。つまり、スポットサイズの変化に合わせてLIDTを計算し直す必要がありません。ここでは、ビーム強度プロファイルは一定であると仮定しています。ここで、ビームがホットスポット、または他の不均一な強度プロファイルの場合を考慮して、おおよその最大パワー密度を計算する必要があります。ご参考までに、ガウシアンビームのときは一般にビームの強度が1/e2のときの2倍のパワー密度を有します。
次に、光学素子のLIDTの仕様と最大エネルギ密度を比較しましょう。損傷閾値の測定波長が光学素子に使用する波長と異なっている場合には、その損傷閾値は適宜補正が必要です[3]。経験則から、損傷閾値は波長に対して以下のような平方根の関係であるということです。短い波長で使う場合、損傷閾値は低下します(例えば、1064 nmで 1 J/cm2のLIDTならば、532 nmでは0.7 J/cm2と計算されます)。
波長を補正したエネルギ密度を得ました。これを以下のステップで使用します。
ビーム径は損傷閾値を比較する時にも重要です。LIDTがJ/cm2の単位で表される場合、スポットサイズとは無関係になりますが、ビームサイズが大きい場合、LIDTの不一致を引き起こす原因でもある不具合が、より明らかになる傾向があります[4]。ここで示されているデータでは、LIDTの測定には<1 mmのビーム径が用いられています。ビーム径が5 mmよりも大きい場合、前述のようにビームのサイズが大きいほど不具合の影響が大きくなるため、LIDT (J/cm2)はビーム径とは無関係にはなりません。
次に、パルス幅について補正します。パルス幅が長くなるほど、より大きなエネルギに光学素子は耐えることができます。パルス幅が1~100 nsの場合の近似式は以下のようになります。
お客様のレーザのパルス幅をもとに、光学素子の補正されたLIDTを計算するのにこの計算式を使います。お客様の最大エネルギ密度が、この補正したエネルギ密度よりも小さい場合、その光学素子はお客様の用途でご使用いただけます。ご注意いただきたい点は、10-9 s と10-7 sの間のパルスにのみこの計算が使えることです。パルス幅が10-7 sと10-4 sの間の場合には、CWのLIDTも調べなければなりません。
当社のウェブ上の損傷閾値の仕様と我々が行った実際の実験の値の間にはある程度の差があります。これはロット間の違いによって発生する誤差を許容するためです。ご要求に応じて、当社では個別のテスト情報やテスト結果の証明書を発行することも可能です。詳細は、当社までお問い合わせください。
[1] R. M. Wood, Optics and Laser Tech. 29, 517 (1998).
[2] Roger M. Wood, Laser-Induced Damage of Optical Materials (Institute of Physics Publishing, Philadelphia, PA, 2003).
[3] C. W. Carr et al., Phys. Rev. Lett. 91, 127402 (2003).
[4] N. Bloembergen, Appl. Opt. 12, 661 (1973).
レーザーシステムが光学素子に損傷を引き起こすかどうか判断するプロセスを説明するために、レーザによって引き起こされる損傷閾値(LIDT)の計算例をいくつかご紹介します。同様の計算を実行したい場合には、右のボタンをクリックしてください。計算ができるスプレッドシートをダウンロードいただけます。ご使用の際には光学素子のLIDTの値と、レーザーシステムの関連パラメータを緑の枠内に入力してください。スプレッドシートでCWならびにパルスの線形パワー密度、ならびにパルスのエネルギ密度を計算できます。これらの値はスケーリング則に基づいて、光学素子のLIDTの調整スケール値を計算するのに用いられます。計算式はガウシアンビームのプロファイルを想定しているため、ほかのビーム形状(均一ビームなど)には補正係数を導入する必要があります。 LIDTのスケーリング則は経験則に基づいていますので、確度は保証されません。なお、光学素子やコーティングに吸収があると、スペクトル領域によってLIDTが著しく低くなる場合があります。LIDTはパルス幅が1ナノ秒(ns)未満の超短パルスには有効ではありません。

Figure 71A ガウシアンビームの最大強度は均一ビームの約2倍です。
CWレーザの例
波長1319 nm、ビーム径(1/e2)10 mm、パワー0.5 Wのガウシアンビームを生成するCWレーザーシステム想定します。このビームの平均線形パワー密度は、全パワーをビーム径で単純に割ると0.5 W/cmとなります。
しかし、ガウシアンビームの最大パワー密度は均一ビームの約2倍です(Figure 71A参照)。従って、システムのより正確な最大線形パワー密度は1 W/cmとなります。
アクロマティック複レンズAC127-030-CのCW LIDTは、1550 nmでテストされて350 W/cmとされています。CWの損傷閾値は通常レーザ光源の波長に直接スケーリングするため、LIDTの調整値は以下のように求められます。
LIDTの調整値は350 W/cm x (1319 nm / 1550 nm) = 298 W/cmと得られ、計算したレーザーシステムのパワー密度よりも大幅に高いため、この複レンズをこの用途に使用しても安全です。
ナノ秒パルスレーザの例:パルス幅が異なる場合のスケーリング
出力が繰返し周波数10 Hz、波長355 nm、エネルギ1 J、パルス幅2 ns、ビーム径(1/e2)1.9 cmのガウシアンビームであるNd:YAGパルスレーザーシステムを想定します。各パルスの平均エネルギ密度は、パルスエネルギをビームの断面積で割って求めます。
上で説明したように、ガウシアンビームの最大エネルギ密度は平均エネルギ密度の約2倍です。よって、このビームの最大エネルギ密度は約0.7 J/cm2です。
このビームのエネルギ密度を、広帯域誘電体ミラーBB1-E01のLIDT 1 J/cm2、そしてNd:YAGレーザーラインミラーNB1-K08のLIDT 3.5 J/cm2と比較します。LIDTの値は両方とも、波長355 nm、パルス幅10 ns、繰返し周波数10 Hzのレーザで計測しました。従って、より短いパルス幅に対する調整を行う必要があります。 1つ前のタブで説明したようにナノ秒パルスシステムのLIDTは、パルス幅の平方根にスケーリングします:
この調整係数により広帯域誘電体ミラーBB1-E01のLIDTは0.45 J/cm2に、Nd:YAGレーザーラインミラーのLIDTは1.6 J/cm2になり、これらをビームの最大エネルギ密度0.7 J/cm2と比較します。広帯域ミラーはレーザによって損傷を受ける可能性があり、より特化されたレーザーラインミラーがこのシステムには適していることが分かります。
ナノ秒パルスレーザの例:波長が異なる場合のスケーリング
波長1064 nm、繰返し周波数2.5 Hz、パルスエネルギ100 mJ、パルス幅10 ns、ビーム径(1/e2)16 mmのレーザ光を、NDフィルタで減衰させるようなパルスレーザーシステムを想定します。これらの数値からガウシアン出力における最大エネルギ密度は0.1 J/cm2になります。Ø25 mm、OD 1.0の反射型NDフィルタ NDUV10Aの損傷閾値は355 nm、10 nsのパルスにおいて0.05 J/cm2で、同様の吸収型フィルタ NE10Aの損傷閾値は532 nm、10 nsのパルスにおいて10 J/cm2です。1つ前のタブで説明したように光学素子のLIDTは、ナノ秒パルス領域では波長の平方根にスケーリングします。
スケーリングによりLIDTの調整値は反射型フィルタでは0.08 J/cm2、吸収型フィルタでは14 J/cm2となります。このケースでは吸収型フィルタが光学損傷を防ぐには適した選択肢となります。
マイクロ秒パルスレーザの例
パルス幅1 µs、パルスエネルギ150 µJ、繰返し周波数50 kHzで、結果的にデューティーサイクルが5%になるレーザーシステムについて考えてみます。このシステムはCWとパルスレーザの間の領域にあり、どちらのメカニズムでも光学素子に損傷を招く可能性があります。レーザーシステムの安全な動作のためにはCWとパルス両方のLIDTをレーザーシステムの特性と比較する必要があります。
この比較的長いパルス幅のレーザが、波長980 nm、ビーム径(1/e2)12.7 mmのガウシアンビームであった場合、線形パワー密度は5.9 W/cm、1パルスのエネルギ密度は1.2 x 10-4 J/cm2となります。これをポリマーゼロオーダ1/4波長板WPQ10E-980のLIDTと比較してみます。CW放射に対するLIDTは810 nmで5 W/cm、10 nsパルスのLIDTは810 nmで5 J/cm2です。前述同様、光学素子のCW LIDTはレーザ波長と線形にスケーリングするので、CWの調整値は980 nmで6 W/cmとなります。一方でパルスのLIDTはレーザ波長の平方根とパルス幅の平方根にスケーリングしますので、1 µsパルスの980 nmでの調整値は55 J/cm2です。光学素子のパルスのLIDTはパルスレーザのエネルギ密度よりはるかに大きいので、個々のパルスが波長板を損傷することはありません。しかしレーザの平均線形パワー密度が大きいため、高出力CWビームのように光学素子に熱的損傷を引き起こす可能性があります。
フェムト秒パルスレーザ用ならびにピコ秒レーザ用光学素子を幅広くご用意しています。詳細は下表をご参照ください。
Dielectric Mirror | High-Power Mirrors for Picosecond Lasers | Metallic Mirrors | Low-GDD Pump-Through Mirrors | ||
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Dual-Band Dielectric Mirror, 400 nm and 800 nm | Ytterbium Laser Line Mirrors, 250 nm - 1080 nm | Ultrafast-Enhanced Silver Mirrors, 750 - 1000 nm | Protected Silver Mirrors, 450 nm - 20 µm | Unprotected Gold Mirrors, 800 nm - 20 µm | Pump-Through Mirrors, 1030 - 1080 nm and 940 - 980 nm |
Deterministic GDD Beamsplitters | Low-GDD Harmonic Beamsplitters | Low-GDD Polarizing Beamsplitters | β-BBO Crystals | Dispersion-Compensating Optics | |
---|---|---|---|---|---|
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Beamsplitters & Windows, 600 - 1500 nm or 1000 - 2000 nm | Harmonic Beamsplitters, 400 nm and 800 nm or 500 nm and 1000 nm | High-Power, Broadband, High Extinction Ratio Polarizers, 700 - 1300 nm | β-BBO Crystals for Second Harmonic Generation | Dispersion-Compensating Mirrors, 650 - 1050 nm | Dispersion-Compensating Prisms, 700 - 900 nm |
Posted Comments: | |
Clémence Bonvin
 (posted 2025-04-24 08:29:26.92) Hello
your Tutorial are very good! and easy to understand!
Dou you also provide PDF of them?
KR
Clémence Bonvin tdevkota
 (posted 2025-04-28 01:42:48.0) Thank you for contacting Thorlabs. We currently don’t have a PDF version of the tutorial available but adding that option is a great idea. I will make sure to pass your suggestion along to our internal forum, where we collect ideas for new products and product improvements. |

Key Specificationsa | ||
---|---|---|
Item # | NLCL4 | NLCL5 |
Crystal Length | 10.00 mm | 20.00 mm |
Angle of Optic Axis (θ, Φ)b | 90°, 13.6° | |
Application | Type-I SHG | |
AR Coating (AOI = 0°)c | R < 0.25% at 1030 nm and 515 nm | |
Fundamental Wavelength (1ω) | 1030 nm | |
SHG Wavelength (2ω) | 515 nm |
Implementation Guidelinesa | ||
---|---|---|
Item # | NLCL4 | NLCL5 |
Recommended Operating Temperature | < 60 °C | |
Temperature Stabilityb | ±2.6 °C | ±1.4 °C |
Minimum Recommended Focal Spot Size (1/e2 Diameter)c,d | 200 µm | 400 µm |
Minimum Recommended Pulse Duration (FWHM)c | 0.50 ps | 1.00 ps |
Phase Matching Bandwidth (FWHM)c | 3.0 nm | 1.5 nm |
Recommended Oven (Optional)e | NLCH1(/M) or NLCH2(/M) | NLCH2(/M) |
- マウント付きLBO結晶、515 nmおよび1030 nm 用 AR コーティング付き
- 1030 nmのナノ秒、ピコ秒、Nd:YAG、Nd:YLF、Yb:YAGの各レーザを用いたType-I SHG 用に設計
- 結晶の温度安定化用オーブンを別途ご用意(下記参照)
これらのLBO結晶は、中心波長1030 nm の入射ビームからType-I SHGで515 nmの光を生成するように設計されています。長さは10.00 mmと20.00 mmがあり、何れにも基本波と第2高調波の表面反射を低減するためのARコーティングが施されています。結晶を取り付けた筐体の寸法は、幅21.0 mm、高さ10.8 mm、長さ11.0 mm(型番NLCL4)または21.0 mm(型番NLCL5)で、結晶の有効開口は2.7 mm x 2.7 mmです。これらのマウント付き結晶を使用すると、型番QSL103Aなどのナノ秒およびピコ秒レーザから出力される、1030 nmの光の周波数を2逓倍することができます。 SHG用の実験セットアップ例については、「SHGおよびSFG実験セットアップ」タブをご覧ください。
これらのLBO結晶は長いため、SHGの効率は温度と温度変動に非常に敏感です(詳細は「SHGチュートリアル」タブをご覧ください)。入射角0°では、これらの結晶のSHG効率は約20° Cでピークを示します。SHG出力光を安定化するために、当社では温度を上げて温度制御をする非線形結晶用オーブン(別売り、下記参照)の使用をお勧めしています。LBO結晶NLCL4とNLCL5の温度に関する要件の詳細は、「性能のガイドライン」タブをご覧ください。

Key Specificationsa | |||
---|---|---|---|
Item # | NLCL1 | NLCL2 | NLCL3 |
Crystal Length | 10.00 mm | 15.00 mm | 20.00 mm |
Angle of Optic Axis (θ, Φ)b | 90°, 11.4° | ||
Application | Type-I SHG | ||
AR Coating (AOI = 0°)c | R < 0.25% at 1064 nm and 532 nm | ||
Fundamental Wavelength (1ω) | 1064 nm | ||
SHG Wavelength (2ω) | 532 nm |
Implementation Guidelinesa | |||
---|---|---|---|
Item # | NLCL1 | NLCL2 | NLCL3 |
Recommended Operating Temperature | < 60 °C | ||
Temperature Stabilityb | ±2.6 °C | ±1.8 °C | ±1.4 °C |
Minimum Recommended Focal Spot Size (1/e2 Diameter)c,d | 175 µm | 260 µm | 350 µm |
Minimum Recommended Pulse Duration (FWHM)c | 0.42 ps | 0.65 ps | 0.88 ps |
Phase Matching Bandwidth (FWHM)c | 3.8 nm | 2.5 nm | 1.9 nm |
Recommended Oven (Optional)e | NLCH1(/M) or NLCH2(/M) | NLCH2(/M) |
- マウント付きLBO結晶、532 nmおよび1064 nm用 AR コーティング付き
- 1064 nmのナノ秒、ピコ秒、Nd:YAG、Nd:YLF、Yb:YAGの各レーザを用いたType-I SHG 用に設計
- 結晶の温度安定化用オーブンを別途ご用意(下記参照)
これらのLBO結晶は、中心波長1064 nmの入射ビームからType-I SHGで532 nmの光を生成するように設計されています。長さは10.00 mm、15.00 mm、および20.00 mmがあり、何れにも基本波と第2高調波の表面反射を低減するためのARコーティングが施されています。結晶を取り付けた筐体の寸法は、何れも幅21.0 mm、高さ10.8 mmですが、長さは11.0 mm(型番 NLCL1)、16.0 mm (型番NLCL2)、または21.0 mm(型番NLCL3)です。また、結晶の有効開口は2.7 mm x 2.7 mmです。こちらのマウント付き結晶を使用すると、型番QSL106Bなどのナノ秒またはピコ秒レーザから出力される、1064 nmの光の周波数を2逓倍することができます。 SHG用の実験セットアップ例については、「SHGおよびSFG実験セットアップ」タブをご覧ください。
これらのLBO結晶は長いため、SHGの効率は温度と温度変動に非常に敏感です(詳細は「SHGチュートリアル」タブをご覧ください)。入射角0°では、結晶のSHG効率は約20° Cでピークを示します。SHG出力光を安定化するために、当社では温度を上げて温度制御をする非線形結晶用オーブン(別売り、下記参照)の使用をお勧めしています。LBO結晶NLCL1、NLCL2、NLCL3 の温度に関する要件の詳細は、「性能のガイドライン」タブをご覧ください。
NLCL1、NLCL2、およびNLCL3は、1064 nmの入射光のType-I SHG用に調整されています。当社では、同じ波長での非臨界位相整合によるSHG用に設計されたLBO結晶もご用意しています(下記参照)。これを使用すると、ビームの円形性を低下させることなく、低出力レーザに対するSHG効率を向上させることができます。

Key Specificationsa | ||
---|---|---|
Item # | NLCL8 | NLCL9 |
Crystal Length | 20.00 mm | 30.00 mm |
Angle of Optic Axis (θ, Φ)b | 90°, 0° | |
Application | Non-Critical Phase Matched SHG | |
AR Coating (AOI = 0°)c | R < 0.25% at 1064 nm and 532 nm | |
Fundamental Wavelength (1ω) | 1064 nm | |
SHG Wavelength (2ω) | 532 nm |
Implementation Guidelinesa | ||
---|---|---|
Item # | NLCL8 | NLCL9 |
Recommended Operating Temperature | 150 °C | |
Temperature Stabilityb | ±1.0 °C | ±0.8 °C |
Minimum Recommended Focal Spot Size (1/e2 Diameter)c,d | 69 µm | 85 µm |
Minimum Recommended Pulse Duration (FWHM)c | 0.88 ps | 1.30 ps |
Phase Matching Bandwidth (FWHM)c | 1.9 nm | 1.3 nm |
Recommended Ovene | NLCH2(/M) |
- マウント付きLBO結晶、532 nmおよび1064 nm用 AR コーティング付き
- 1064 nmのナノ秒、ピコ秒、Nd:YAG、Nd:YLF、Yb:YAGの各レーザを用いたNCPM SHG 用に設計
- 位相整合には結晶用オーブンが必要です(別売り、下記参照)
これらのLBO結晶は、中心波長1064 nmの入射ビームからNCPM SHGで532 nmの光を生成するように設計されています。長さは20.00 mmと30.00 mmがあり、何れにも基本波と第2高調波の表面反射を低減するためのARコーティングが施されています。結晶を取り付けた筐体の寸法は、幅21.0 mm、高さ10.8 mm、長さ21.0 mm(型番NLCL8)または31.0 mm(型番NLCL9)で、結晶の有効開口は2.7 mm x 2.7 mmです。これらのマウント付き結晶を使用すると、型番QSL106Bなどのナノ秒またはピコ秒レーザから出力される、1064 nmの光の周波数を2逓倍することができます。SHG用の実験セットアップ例については、「SHGおよびSFG実験セットアップ」タブをご覧ください。
NCPM SHG結晶のNLCL8とNLCL9では、当社のType-I SHG結晶(上記参照)と比べて角度受容幅が広くなっています。これにより、円形性を低下させることなく強く集光することができ、それに伴う入射光強度の増大によりSHG変換効率が向上します。非臨界位相整合では、角度調整に代わって、結晶の温度調整で位相整合を実現します。励起波長が1064 nmの場合、位相整合するには結晶温度を150℃にする必要があります。当社ではLBO結晶の温度制御用として、非線形結晶用オーブンNLCH2/Mの使用をお勧めします。これは、LBO結晶用に設計されており、優れた温度安定性を得ることができます。LBO結晶NLCL8とNLCL9 の温度に関する要件の詳細は、「性能のガイドライン」タブをご覧ください。

Key Specificationsa | ||
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Item # | NLCL6 | NLCL7 |
Crystal Length | 10.00 mm | 15.00 mm |
Angle of Optic Axis (θ, Φ)b | 42.4°, 90° | |
Application | Type-II SFG | |
AR Coating (AOI = 0°)c | R < 0.5% at 1064 nm, 532 nm, and 355 nm | |
Fundamental Wavelengths (1ω + 2ω) | 1064 nm + 532 nm | |
SFG Wavelength (3ω) | 355 nm |
Implementation Guidelinesa | ||
---|---|---|
Item # | NLCL6 | NLCL7 |
Recommended Operating Temperature | < 60 °C | |
Temperature Stabilityb | ±1.4 °C | ±1.0 °C |
Minimum Recommended Focal Spot Size (1/e2 Diameter)c,d | 221 µm | 330 µm |
Minimum Recommended Pulse Duration (FWHM)c | 2.05 ps | 3.10 ps |
Phase Matching Bandwidth (FWHM)c | 0.8 nm | 0.5 nm |
Recommended Ovene | NLCH1(/M) or NLCH2(/M) |
- マウント付きLBO結晶、355 nm、532 nmおよび1064 nm用 AR コーティング付き
- 1064 nmのナノ秒、ピコ秒、Nd:YAG、Nd:YLF、Yb:YAGレーザと上記のType-IまたはNCPM SHG結晶を組み合わせたType-II SFG用に設計
- 1064 nmと532 nmのビームの偏光方向の再調整は不要
- 結晶の温度安定化用オーブンを別途ご用意(下記参照)
これらのLBO結晶は、1064 nmとその第2高調波532 nmから、Type-II SFGで355 nmの第3高調波を生成するように設計されています。長さは10.00 mmと15.00 mmがあり、何れにも基本波、第2高調波、および和周波の波長で表面反射を低減するためのARコーティングが施されています。結晶を取り付けた筐体の寸法は、幅21.0 mm、高さ10.8 mm、長さ11.0 mm(型番NLCL6)または16.0mm(型番NLCL7)で、結晶の有効開口は2.7 mm x 2.7 mmです。これらのマウント付き結晶を上記のSHG結晶のいずれかと組み合わせて用いると、型番QSL106Bのような1064 nmのナノ秒またはピコ秒レーザの出力光とその第2高調波から、355 nmの和周波の光子を生成することができます。SFG用の実験セットアップ例については、「SHGおよびSFG実験セットアップ」タブをご覧ください。
これらのLBO結晶は長いため、SFGの効率は温度と温度変動に非常に敏感です(詳細は「SHGチュートリアル」タブをご覧ください)。入射角0°では、これらの結晶のSHG効率は約20° Cでピークを示します。SFG出力光を安定化するために、当社では温度を上げて温度制御をする非線形結晶用オーブン(別売り、下記参照)の使用をお勧めしています。LBO結晶NLCL6とNLCL7の温度に関する要件の詳細は、「性能のガイドライン」タブをご覧ください。

Specifications | ||
---|---|---|
Item # | NLCH1(/M) | NLCH2(/M) |
Crystal Length | Up to 15.00 mma | Up to 30.00 mma,b |
Max Operating Temperature | 200 °C | |
Clear Aperture | Ø0.18" (4.6 mm)c | |
Beam Height | 1.00" (25.4 mm) | |
Operating Voltage | 24 V | |
Electrical Connection | 6-Pin Female Hirosed | |
Dimensions (H x W x D) | 1.87" x 2.51" x 1.95" (47.4 mm x 63.8 mm x 49.5 mm) | 1.87" x 2.51" x 2.50" (47.4 mm x 63.8 mm x 63.5 mm) |
Weight | 0.22 kg | 0.27 kg |
Recommended Controllere | TC300B |
- 周囲温度~200 °Cまで加熱可能
- このページでご紹介しているLBO結晶の取付けが可能
- 最大長さ30.00 mmまでの結晶を取り付けられる製品をご用意
- TC300B(別売り、下記参照)のような温度コントローラが別途必要

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Figure G5.1 オーブン上面の4本のネジを外してカバーを開くと、ヒーターデッキにアクセスできます。

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Figure G5.2 内部の2本のネジを外すと、オーブン内に非線形結晶を取り付けることができます。
非線形結晶用オーブンNLCLH1/MとNLCLH2/Mは、このページでご紹介している非線形LBO結晶の温度を制御し、安定化するための製品です。長さ15.00 mm以下のLBO結晶はどちらのオーブンにも取り付け可能ですが、長さ20.00~30.00 mmのLBO結晶はNLCH2/Mオーブンにのみ取り付け可能です。LBO結晶を取り付けるには、まずFigure G5.1に示す4本のM2.5 x 0.45キャップスクリュを外し、オーブンのカバーを取り外します。続いて、Figure G5.2に示すオーブン内の2本のネジも外します。次に、結晶をオーブン内に置き、オーブン内の2本のØ2.0 mm位置決めピンに合わせます。最後に、先にオーブン内部から外した2本のキャップスクリュを使って結晶を固定します。
各オーブンの前面と背面には4つの#4-40ネジ穴があります。これらを用いて当社の30 mmケージシステムに取り付けられるため、光路に簡単に組み込むことができます。オーブンは当社の5軸ステージPY005/Mに直接取り付けることもできます。その際は、オーブン底面の2つのØ3.2 mm位置決めピン用穴(位置決めピンは付属していません)とステージ中央のM4ザグリ穴を使用します。オーブンを使用するには、当社のTC300B(別売り、下記参照)などの温度コントローラと、それに付属する6ピンHiroseコネクタの付いた接続用ケーブルが必要です。非線形結晶用オーブンについての詳細は製品紹介ページをご参照ください。

Key Specificationsa | |
---|---|
Output Power per Channel | 48 W (Max) |
Output Current per Channel | 2 A (Max) |
Output Voltage per Channel | 24 V (Max) |
Temperature Setting Range | -200 to 400 °Cb |
Set Point Resolution | 0.1 °C / 0.001 °Cc |
Temperature Stability | ±0.1 °C |
Output Connector Type | Hirose HR10A-7R-6S(73) |
USB Interface | USB 2.0 Type-B |
Power Supply | 100 - 240 VAC, 50 - 60 Hz, 165 VA Max |
Operating Temperature | 0 - 40 °C |
Storage Temperature | -15 - 65 °C |
Dimensions (H x W x D) | 86.6 mm x 154.3 mm x 327.8 mm (3.41” x 6.07” x 12.91”) |
Weight | 1.7 kg |
- 温度制御の範囲:-200 °C~400 °C
- 単独操作またはソフトウェアによるPC制御
- プログラム可能なオートチューニング機能付きPID設定
ヒータ&TEC温度コントローラTC300Bは、48 Wまでの抵抗加熱素子および熱電冷却デバイス(TEC)を制御できる、2チャンネルのベンチトップ型コントローラです。上記の非線形結晶用オーブンに対しては、周囲温度から200 °Cまでの温度制御用にご使用いただけます。最高温度と電流/電圧リミット値はお客様ご自身で設定することができ、それにより接続した加熱素子のオーバーヒートやオーバードライブを防止できます。そのほかの安全機構として、温度センサが接続されていない時や断線している時にドライバをシャットダウンする、オープンセンサーアラームなどが付いています。
シンプルなキーパッドインターフェースを用いて単独で操作することが可能ですが、付属のUSB Type Bのケーブルを介してPCに接続し、TC300B用ソフトウェア、LabVIEW®*ドライバ、 LabWindowsドライバ、または簡単なコマンドラインインターフェイスを用いて制御することもできます。
コントローラTC300Bの機能についての詳細は、製品紹介ページをご覧ください。
*LabVIEW®はNational Instruments社の登録商標です。

- Two 80 TPI Adjusters for ±4° of Fine Tip and Tilt Control
- Platform can be Removed and Secured to Either Arm Enabling a Horizontal or Vertical Configuration
- Removable Knobs Expose Adjuster Screws with Hex Socket
- #8 (M4) Through Holes in Back Plate of Mounts for Ø1/2" Post Mounting
- Fabricated from Black Anodized Aluminum
Thorlabs offers mounts for kinematic control over the LBO and PPKTP Crystals, as well as our Crystal Ovens. The mounts feature a similar design to our KM100PM (above) with a modified mounting platform designed to accommodate the crystals and ovens. Please note that, when mounted, the crystal's axis will be laterally centered over the optical post.
The KM100LM(/M) mount features a modified mounting platform designed to mount the crystals using the two 3-48 (M2.5 x 0.45) tapped holes. The mounting platform also features two Ø2 mm dowel pin holes (dowel pins not included) to aid in alignment if desired. Additionally, the KM100LM(/M) features 6-32 (M4 x 0.7) taps to mount our PM3(/M) and PM4(/M) Clamping Arms. The KM200HM mounting plate has two #8 (M4) counterbored thru holes for mounting the crystal ovens, along with four optional Ø1/8" dowel pin holes (dowel pins not included) near the front of the plate.
The two-piece mounting platform assembly can be configured for either horizontal or vertical mounting via the four 4-40 (M3 x 0.5) tapped holes. The two pieces of the mounting platform assembly are held together with two 3-48 screws (5/64" [2.0 mm] hex). If desired, the mounting plate can also be removed and replaced with a user-supplied alternative, enabling custom mounting options. See the blue info icon () in the table below for more information.