テクスチャー広帯域反射防止ウィンドウ、Infrasil®(光学石英)製
- Antireflective Performance Provided by Subwavelength Surface Structures
- <0.25% Average Reflectance from 1000 to 1700 nm
- Ideal for Applications Requiring Long-Term Beam Stability
WGN101T2M
Ø1", 1.0 mm Thick,
2 AR Textured Sides,
Mounted
Lower Reflectance Over a Broad Wavelength Range*
Higher Laser Damage Threshold*
Lower Angular Sensitivity*
*When Compared to Thorlabs' -C Broadband Antireflective (BBAR) Coating
(See the Comparison Tab for Details)
WGN053T2
Ø1/2", 3.0 mm Thick,
2 AR Textured Sides
WGN105FT2
Ø1", 5.0 mm Thick,
1 AR Textured Side
WGN051T2M
Ø1/2", 1.0 mm Thick,
2 AR Textured Sides,
Mounted
Please Wait
Key Specificationsa | |
---|---|
Wavelength Range | 1000 - 1700 nm |
Damage Thresholdb | > 30 J/cm2 at 1064 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø0.23 mm |
Reflectance Over Wavelength Rangec | Ravg < 0.25% |
Transmission Over Wavelength Ranged | Tabs ≥ 98.0% |
Reflectance Data (Click for Graph) | Raw Data |
Click to Enlarge
ナノ構造のウィンドウ表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で上から見た画像
特長
- Ø12.7 mm(Ø1/2インチ)およびØ25.4 mm(Ø1インチ)をご用意
- 片面または両面に反射防止のテクスチャー加工
- 1000~1700 nm用に設計
- 反射防止面1面あたりの平均反射率< 0.25%
- 両面がテクスチャー加工されたウィンドウの透過率≥98%
- マウント無しとマウント付きをご用意
- ビームの長期安定性を必要とする近赤外(NIR)域の用途に適した製品
- レーザ誘起損傷に対する高い耐性
Infrasil®†(光学石英)製のテクスチャー反射防止(AR)ウィンドウは、ナノ構造(モスアイ構造)表面を有する高性能なウィンドウで、両面がナノ構造表面の場合の透過率は1000~1700 nmにわたり98%以上です。基板の表面に薄膜を蒸着するARコーティングに対して、これらのテクスチャーウィンドウはバルクの基板から材料の一部を除去する方法で作成されています。この方法は、サブ波長の構造を作製するために最適化された独自の製造プロセスです。ウィンドウ表面にテクスチャー加工を施すことで、広い波長範囲にわたり反射光を抑制する実行屈折率を有する層が形成されます。構造化されたウィンドウ表面の走査型電子顕微鏡(SEM)によるイメージを、右上の写真でご覧いただけます。
構造化表面を含むことで、これらのテクスチャーウインドウは、薄膜コーティングよりも広い波長範囲と入射角で低反射率(1表面あたり0.25%未満)を実現します。さらに、構造化表面は光学部品の一部であるため、広帯域反射防止(BBAR)コーティングと比較して、レーザの損傷閾値が大幅に高くなります(> 30 J/cm2)。その結果、このテクスチャーウインドウは動作中にダメージを受けにくく、長期にわたって安定した性能を発揮するため、ビームの長期安定性を必要とする用途に適しています。T2テクスチャー表面とBBARコーティングの詳細な比較については「比較」タブを、当社のテクスチャーウィンドウの技術と性能の詳細については右上のApp Highlightをご覧ください。
当社では厚さ1.0 mmまたは3.0 mmのØ12.7 mm(Ø1/2インチ)ウィンドウと、厚さ1.0 mmまたは5.0 mmのØ25.4 mm(Ø1インチ)ウィンドウをご用意しています。どちらのサイズも片面または両面にテクスチャー加工を施した製品がございます。また両面にテキスチャー加工を施したØ12.7 mm(Ø1/2インチ)ウィンドウとØ25.4 mm(Ø1インチ)ウィンドウはマウント付きでもご用意しています。カスタム品については当社までお問い合わせください。
Flat Window Selection Guide | |
---|---|
Wavelength Range | Substrate Material |
180 nm - 8.0 μm | Calcium Fluoride (CaF2) |
185 nm - 2.1 μm | UV Fused Silica |
200 nm - 5.0 μm | Sapphire |
200 nm - 6.0 μm | Magnesium Fluoride (MgF2) |
220 nm to >50 µm | CVD Diamond Windows |
230 nm - 1.1 µm | UV Fused Silica, Textured Antireflective Surface |
250 nm - 1.6 µm | UV Fused Silica, for 45° AOI |
250 nm - 26 µm | Potassium Bromide (KBr) |
300 nm - 3 µm | Infrasil® |
350 nm - 2.0 μm | N-BK7 |
600 nm - 16 µm | Zinc Selenide (ZnSe) |
1 - 1.7 µm | Infrasil®, Textured Antireflective Surface |
1.2 - 8.0 μm | Silicon (Si) |
1.9 - 16 μm | Germanium (Ge) |
2 - 5 μm | Barium Fluoride (BaF2) |
V-Coated Laser Windows |
当社では、230~450 nmまたは400~1100 nmの波長域において同様の性能を示すUV溶融石英(UVFS)製テクスチャーウィンドウもご用意しております。また、多種多様な種類のレーザや産業用途向けに、様々な基板材料から加工された高精度なウィンドウ もラインナップしています。さらに、一般的なレーザの中心波長用にAR Vコーティングを施したレーザーウィンドウやウェッジ付きレーザーウィンドウのほか、p偏光の反射を除去するブリュースターウィンドウなどもご用意しております。
取付例
ウィンドウ両面のナノ構造部分に取付部や固定リングが接触するとダメージを与える可能性があり、局所的に性能が低下する恐れがあります。マウント無しウィンドウの接触する面を最小限に抑えるために、LMR05/MやLMR1/MなどのSM05またはSM1ネジ付きマウントに低応力固定リングSM05LTRRまたはSM1LTRR を用いて取り付けることをお勧めいたします。また、両面がテクスチャー加工のØ12.7 mm(Ø1/2インチ)とØ25.4 mm(Ø1インチ)ウィンドウは、それぞれSM05またはSM1ネジマウント付きでもご用意しています。
取扱い上の注意およびクリーニング
当社のテクスチャーウィンドウは、水分、指紋、エアロゾルのほか、ほんの少しの研磨性材料に接触しただけで汚染されたり損傷したりする場合があります。 手指の油がテクスチャー表面に付着するのを防ぐため、ラテックス製手袋または同様の保護カバーを着用してください。マウント無しのウィンドウについては必要時のみ取り扱うようにし、常にピンセットTZ2またはTZ3で側面だけを保持するようにしてください。
レンズの表面が汚れた場合は、以下の方法でクリーニングしてください。
- クリーンエアまたは窒素で埃を吹き飛ばす。
- イソプロピルアルコールなどの溶剤で汚れを洗い流し、クリーンエアまたは窒素を吹きかけて乾燥させる。
- 塩基性水溶液(水酸化アンモニウムと過酸化水素の混合液)、もしくは酸性溶液(塩化水素と過酸化水素の混合液)に浸し、イソプロピルアルコールで洗い流し、クリーンエアまたは窒素を吹きかけて乾燥させる(マウント無しウィンドウのみ)。
一般的なクリーニング方法では、さらに汚染することになるため避けてください。化学洗浄による方法は危険な場合があるため、適切な設備を使用し、かつ安全対策を講じて行ってください。
†Infrasilは、Heraeus Quarzglas社の登録商標です。
テクスチャー広帯域反射防止ウィンドウ、Infrasil®(光学石英)製
Unmounted Item # | WGN051T2 | WGN053T2 | WGN101T2 | WGN105T2 |
---|---|---|---|---|
Mounted Item # | WGN051T2M | WGN053T2M | WGN101T2M | WGN105T2M |
Wavelength Range | 1000 - 1700 nm | |||
Diametera | Ø1/2" (12.7 mm) | Ø1" (25.4 mm) | ||
Diameter Tolerancea | +0.0 / -0.2 mm | |||
Thicknessa | 1.0 mm | 3.0 mm | 1.0 mm | 5.0 mm |
Thickness Tolerancea | ±0.1 mm | ±0.3 mm | ±0.1 mm | ±0.3 mm |
Clear Aperture | ≥Ø10.16 mm | ≥Ø21.59 mm | ||
Parallelism | < 5 arcmin | < 3 arcmin | < 5 arcmin | < 3 arcmin |
Surface Quality | 10-5 Scratch-Dig | |||
Transmitted Wavefont Error | < λ/10 at 633 nm | |||
Substrate Material | Infrasil® 302b | |||
Damage Threshold | > 30 J/cm2 at 1064 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø0.23 mm | |||
Reflectance Over Wavelength Rangec (Click for Plot) | Ravg < 0.25% | |||
Transmission Over Wavelength Ranged | Tabs ≥ 98.0% | |||
Transmission Data (Click for Plot) | Raw Data | Raw Data | Raw Data | Raw Data |
片面テクスチャー広帯域反射防止ウィンドウ、Infrasil®(光学石英)製
Item # | WGN051FT2 | WGN053FT2 | WGN101FT2 | WGN105FT2 |
---|---|---|---|---|
Wavelength Range | 1000 - 1700 nm | |||
Diameter | Ø1/2" (12.7 mm) | Ø1" (25.4 mm) | ||
Diameter Tolerance | +0.0 / -0.2 mm | |||
Thickness | 1.0 mm | 3.0 mm | 1.0 mm | 5.0 mm |
Thickness Tolerance | ±0.1 mm | ±0.3 mm | ±0.1 mm | ±0.3 mm |
Clear Aperture | ≥Ø10.16 mm | ≥Ø21.59 mm | ||
Parallelism | < 5 arcmin | < 3 arcmin | < 5 arcmin | < 3 arcmin |
Surface Quality | 10-5 Scratch-Dig | |||
Transmitted Wavefont Error | < λ/10 at 633 nm | |||
Substrate Material | Infrasil® 302a | |||
Damage Threshold | > 30 J/cm2 at 1064 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø0.23 mm | |||
Reflectance Over Wavelength Rangeb (Click for Plot) | Ravg < 0.25% | |||
Transmission Data (Click for Plot) | Raw Data | Raw Data | Raw Data | Raw Data |
Coating or Surface Designation (Item # Suffix) | Wavelength Range | Reflectance (Average)a |
---|---|---|
T2 | 1000 - 1700 nm | < 0.25% |
-C | 1050 - 1700 nm | < 0.5% |
当社のT2テクスチャ―表面付きのInfrasil®は、1~1.7 µmの波長範囲において反射を防止する性能があります。下のグラフでは、T2テクスチャー表面の性能と1050~1700 nm (-C)の広帯域反射防止(BBAR)コーティングとの比較を示しています。
T2表面とBBARコーティング面の平均反射率を右の表に示します。どちらの面も、入射角0°~30°、開口数(NA)0.5までの範囲で優れた性能を発揮します。
反射率
右の性能グラフでは、当社の-C BBARコーティングとT2テクスチャー加工された表面の反射率を比較しています。青色の矢印は-C BBARコーティングの仕様波長範囲(1050~1700 nm)を示しています。赤色の矢印はT2表面の仕様波長範囲(1000 nm~1700 nm)を示しています。
入射角(AOI)と偏光
各グラフは、厚さ1.0 mmのInfrasil製T2テクスチャー表面(型番WGN101T2)、または厚さ1.0 mmのUV溶融石英(UVFS)製ウィンドウ(型番WG41010-C)の-Cコーティング面に、いくつかの異なる入射角でs偏光またはp偏光を入射したときの反射率を示しています。T2表面は角度に対する感度が低く、そのs偏光と p偏光の反射率は共に広い角度範囲にわたって比較的小さいことが分かります。これに対して-Cコーティングの場合は、s偏光の反射率は入射角が大きくなると急激に大きくなり、p偏光の反射率は増加する前にわずかに減少することが分かります。青色の網掛け領域はテクスチャー面およびコーティング面の仕様波長範囲を示しています。
Damage Threshold Specifications | |
---|---|
Item # Suffix | Damage Threshold |
T2 | > 30 J/cm 2 at 1064 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø0.23 mm |
当社のテクスチャー反射防止ウィンドウの損傷閾値データ
右表は、T2テクスチャ―表面付きInfrasil®ウィンドウの測定データです。
レーザ誘起損傷に対する高い耐性を実証するために、テクスチャーウィンドウWGN101T2に対して、最大エネルギーフルエンス71 J/cm2までのLIDT試験を実施しました。露光に対して損傷した箇所の数が下のヒストグラムに赤色で表示されていますが、71 J/cm2のエネルギーフルエンスに曝されるまでは、テクスチャーウィンドウに損傷は観察されていません。LIDTの試験方法についての詳細は、下記の「レーザによる損傷閾値についての中の「テスト方法」セクションをご覧ください。
WGN101T2 LIDT Testing Dataa | |||
---|---|---|---|
Fluence | # of Tested Locations | Locations with Damage | Locations Without Damage |
8 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
16 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
24 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
32 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
40 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
48 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
56 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
60 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
64 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
69 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
71 J/cm2 | 10 | 1 | 9 |
Click to Enlarge
テクスチャーウィンドウWGN101T2のLIDT試験結果のヒストグラム。測定用ビームのパラメータ:1064 nm、10 ns、10 Hz、Ø0.23 mm
レーザによる損傷閾値について
このチュートリアルでは、レーザ損傷閾値がどのように測定され、使用する用途に適切な光学素子の決定にその値をどのようにご利用いただけるかを総括しています。お客様のアプリケーションにおいて、光学素子を選択する際、光学素子のレーザによる損傷閾値(Laser Induced Damage Threshold :LIDT)を知ることが重要です。光学素子のLIDTはお客様が使用するレーザの種類に大きく依存します。連続(CW)レーザは、通常、吸収(コーティングまたは基板における)によって発生する熱によって損傷を引き起こします。一方、パルスレーザは熱的損傷が起こる前に、光学素子の格子構造から電子が引き剥がされることによって損傷を受けます。ここで示すガイドラインは、室温で新品の光学素子を前提としています(つまり、スクラッチ&ディグ仕様内、表面の汚染がないなど)。光学素子の表面に塵などの粒子が付くと、低い閾値で損傷を受ける可能性があります。そのため、光学素子の表面をきれいで埃のない状態に保つことをお勧めします。光学素子のクリーニングについては「光学素子クリーニングチュートリアル」をご参照ください。
テスト方法
当社のLIDTテストは、ISO/DIS 11254およびISO 21254に準拠しています。
初めに、低パワー/エネルギのビームを光学素子に入射します。その光学素子の10ヶ所に1回ずつ、設定した時間(CW)またはパルス数(決められたprf)、レーザを照射します。レーザを照射した後、倍率約100倍の顕微鏡を用いた検査で確認し、すべての確認できる損傷を調べます。特定のパワー/エネルギで損傷のあった場所の数を記録します。次に、そのパワー/エネルギを増やすか減らすかして、光学素子にさらに10ヶ所レーザを照射します。このプロセスを損傷が観測されるまで繰返します。損傷閾値は、光学素子が損傷に耐える、損傷が起こらない最大のパワー/エネルギになります。1つのミラーBB1-E02の試験結果は以下のようなヒストグラムになります。
上の写真はアルミニウムをコーティングしたミラーでLIDTテストを終えたものです。このテストは、損傷を受ける前のレーザのエネルギは0.43 J/cm2 (1064 nm、10 ns pulse、 10 Hz、Ø1.000 mm)でした。
Example Test Data | |||
---|---|---|---|
Fluence | # of Tested Locations | Locations with Damage | Locations Without Damage |
1.50 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
1.75 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
2.00 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
2.25 J/cm2 | 10 | 1 | 9 |
3.00 J/cm2 | 10 | 1 | 9 |
5.00 J/cm2 | 10 | 9 | 1 |
試験結果によれば、ミラーの損傷閾値は 2.00 J/cm2 (532 nm、10 ns pulse、10 Hz、 Ø0.803 mm)でした。尚、汚れや汚染によって光学素子の損傷閾値は大幅に低減されるため、こちらの試験はクリーンな光学素子で行っています。また、特定のロットのコーティングに対してのみ試験を行った結果ではありますが、当社の損傷閾値の仕様は様々な因子を考慮して、実測した値よりも低めに設定されており、全てのコーティングロットに対して適用されています。
CWレーザと長パルスレーザ
光学素子がCWレーザによって損傷を受けるのは、通常バルク材料がレーザのエネルギを吸収することによって引き起こされる溶解、あるいはAR(反射防止)コーティングのダメージによるものです[1]。1 µsを超える長いパルスレーザについてLIDTを論じる時は、CWレーザと同様に扱うことができます。
パルス長が1 nsと1 µs の間のときは、損傷は吸収、もしくは絶縁破壊のどちらかで発生していると考えることができます(CWとパルスのLIDT両方を調べなければなりません)。吸収は光学素子の固有特性によるものか、表面の不均一性によるものかのどちらかによって起こります。従って、LIDTは製造元の仕様以上の表面の質を有する光学素子にのみ有効です。多くの光学素子は、ハイパワーCWレーザで扱うことができる一方、アクロマティック複レンズのような接合レンズやNDフィルタのような高吸収光学素子は低いCWレーザ損傷閾値になる傾向にあります。このような低い損傷閾値は接着剤や金属コーティングにおける吸収や散乱によるものです。
繰返し周波数(prf)の高いパルスレーザは、光学素子に熱的損傷も引き起こします。この場合は吸収や熱拡散率のような因子が深く関係しており、残念ながらprfの高いレーザが熱的影響によって光学素子に損傷を引き起こす場合の信頼性のあるLIDTを求める方法は確立されておりません。prfの大きいビームでは、平均出力およびピークパワーの両方を等しいCW出力と比較する必要があります。また、非常に透過率の高い材料では、prfが上昇してもLIDTの減少は皆無かそれに近くなります。
ある光学素子の固有のCWレーザの損傷閾値を使う場合には、以下のことを知る必要があります。
- レーザの波長
- ビーム径(1/e2)
- ビームのおおよその強度プロファイル(ガウシアン型など)
- レーザのパワー密度(トータルパワーをビームの強度が1/e2の範囲の面積で割ったもの)
ビームのパワー密度はW/cmの単位で計算します。この条件下では、出力密度はスポットサイズとは無関係になります。つまり、スポットサイズの変化に合わせてLIDTを計算し直す必要がありません(右グラフ参照)。平均線形パワー密度は、下の計算式で算出できます。
ここでは、ビーム強度プロファイルは一定であると仮定しています。次に、ビームがホットスポット、または他の不均一な強度プロファイルの場合を考慮して、おおよその最大パワー密度を計算する必要があります。ご参考までに、ガウシアンビームのときはビームの強度が1/e2の2倍のパワー密度を有します(右下図参照)。
次に、光学素子のLIDTの仕様の最大パワー密度を比較しましょう。損傷閾値の測定波長が光学素子に使用する波長と異なっている場合には、その損傷閾値は適宜補正が必要です。おおよその目安として参考にできるのは、損傷閾値は波長に対して比例関係であるということです。短い波長で使う場合、損傷閾値は低下します(つまり、1310 nmで10 W/cmのLIDTならば、655 nmでは5 W/cmと見積もります)。
この目安は一般的な傾向ですが、LIDTと波長の関係を定量的に示すものではありません。例えば、CW用途では、損傷はコーティングや基板の吸収によってより大きく変化し、必ずしも一般的な傾向通りとはなりません。上記の傾向はLIDT値の目安として参考にしていただけますが、LIDTの仕様波長と異なる場合には当社までお問い合わせください。パワー密度が光学素子の補正済みLIDTよりも小さい場合、この光学素子は目的の用途にご使用いただけます。
当社のウェブ上の損傷閾値の仕様と我々が行った実際の実験の値の間にはある程度の差があります。これはロット間の違いによって発生する誤差を許容するためです。ご要求に応じて、当社は個別の情報やテスト結果の証明書を発行することもできます。損傷解析は、類似した光学素子を用いて行います(お客様の光学素子には損傷は与えません)。試験の費用や所要時間などの詳細は、当社までお問い合わせください。
パルスレーザ
先に述べたように、通常、パルスレーザはCWレーザとは異なるタイプの損傷を光学素子に引き起こします。パルスレーザは損傷を与えるほど光学素子を加熱しませんが、光学素子から電子をひきはがします。残念ながら、お客様のレーザに対して光学素子のLIDTの仕様を照らし合わせることは非常に困難です。パルスレーザのパルス幅に起因する光学素子の損傷には、複数の形態があります。以下の表中のハイライトされた列は当社の仕様のLIDT値が当てはまるパルス幅に対する概要です。
パルス幅が10-9 sより短いパルスについては、当社の仕様のLIDT値と比較することは困難です。この超短パルスでは、多光子アバランシェ電離などのさまざまなメカニクスが損傷機構の主流になります[2]。対照的に、パルス幅が10-7 sと10-4 sの間のパルスは絶縁破壊、または熱的影響により光学素子の損傷を引き起こすと考えられます。これは、光学素子がお客様の用途に適しているかどうかを決定するために、レーザービームに対してCWとパルス両方による損傷閾値を参照しなくてはならないということです。
Pulse Duration | t < 10-9 s | 10-9 < t < 10-7 s | 10-7 < t < 10-4 s | t > 10-4 s |
---|---|---|---|---|
Damage Mechanism | Avalanche Ionization | Dielectric Breakdown | Dielectric Breakdown or Thermal | Thermal |
Relevant Damage Specification | No Comparison (See Above) | Pulsed | Pulsed and CW | CW |
お客様のパルスレーザに対してLIDTを比較する際は、以下のことを確認いただくことが重要です。
- レーザの波長
- ビームのエネルギ密度(トータルエネルギをビームの強度が1/e2の範囲の面積で割ったもの)
- レーザのパルス幅
- パルスの繰返周波数(prf)
- 実際に使用するビーム径(1/e2 )
- ビームのおおよその強度プロファイル(ガウシアン型など)
ビームのエネルギ密度はJ/cm2の単位で計算します。右のグラフは、短パルス光源には、エネルギ密度が適した測定量であることを示しています。この条件下では、エネルギ密度はスポットサイズとは無関係になります。つまり、スポットサイズの変化に合わせてLIDTを計算し直す必要がありません。ここでは、ビーム強度プロファイルは一定であると仮定しています。ここで、ビームがホットスポット、または他の不均一な強度プロファイルの場合を考慮して、おおよその最大パワー密度を計算する必要があります。ご参考までに、ガウシアンビームのときは一般にビームの強度が1/e2のときの2倍のパワー密度を有します。
次に、光学素子のLIDTの仕様と最大エネルギ密度を比較しましょう。損傷閾値の測定波長が光学素子に使用する波長と異なっている場合には、その損傷閾値は適宜補正が必要です[3]。経験則から、損傷閾値は波長に対して以下のような平方根の関係であるということです。短い波長で使う場合、損傷閾値は低下します(例えば、1064 nmで 1 J/cm2のLIDTならば、532 nmでは0.7 J/cm2と計算されます)。
波長を補正したエネルギ密度を得ました。これを以下のステップで使用します。
ビーム径は損傷閾値を比較する時にも重要です。LIDTがJ/cm2の単位で表される場合、スポットサイズとは無関係になりますが、ビームサイズが大きい場合、LIDTの不一致を引き起こす原因でもある不具合が、より明らかになる傾向があります[4]。ここで示されているデータでは、LIDTの測定には<1 mmのビーム径が用いられています。ビーム径が5 mmよりも大きい場合、前述のようにビームのサイズが大きいほど不具合の影響が大きくなるため、LIDT (J/cm2)はビーム径とは無関係にはなりません。
次に、パルス幅について補正します。パルス幅が長くなるほど、より大きなエネルギに光学素子は耐えることができます。パルス幅が1~100 nsの場合の近似式は以下のようになります。
お客様のレーザのパルス幅をもとに、光学素子の補正されたLIDTを計算するのにこの計算式を使います。お客様の最大エネルギ密度が、この補正したエネルギ密度よりも小さい場合、その光学素子はお客様の用途でご使用いただけます。ご注意いただきたい点は、10-9 s と10-7 sの間のパルスにのみこの計算が使えることです。パルス幅が10-7 sと10-4 sの間の場合には、CWのLIDTも調べなければなりません。
当社のウェブ上の損傷閾値の仕様と我々が行った実際の実験の値の間にはある程度の差があります。これはロット間の違いによって発生する誤差を許容するためです。ご要求に応じて、当社では個別のテスト情報やテスト結果の証明書を発行することも可能です。詳細は、当社までお問い合わせください。
[1] R. M. Wood, Optics and Laser Tech. 29, 517 (1998).
[2] Roger M. Wood, Laser-Induced Damage of Optical Materials (Institute of Physics Publishing, Philadelphia, PA, 2003).
[3] C. W. Carr et al., Phys. Rev. Lett. 91, 127402 (2003).
[4] N. Bloembergen, Appl. Opt. 12, 661 (1973).
Posted Comments: | |
No Comments Posted |
- 両面がテキスチャー広帯域反射防止面のInfrasil®ウィンドウ
- Ø12.7 mm(Ø1/2インチ)およびØ25.4 mm(Ø1インチ)をご用意
- 反射防止面1面あたりの平均反射率: 0.25%以下
- 1100~1700 nmにおける透過率: 98.0%以上
こちらのマウント無しØ12.7 mm(Ø1/2インチ)およびØ25.4 mm(Ø1インチ)ウィンドウは、両面に反射防止テクスチャー表面加工が施されており、1000 ~1700 nm の波長範囲用に設計されています。ウィンドウのナノ構造表面は、低い反射率(反射防止面1面あたり0.25%以下)とレーザ損傷への高い耐性を示します。 これらのウィンドウの透過率は、設計波長の全範囲にわたり98%以上です。 詳細は「仕様」タブをご覧ください。
- 両面がテキスチャー広帯域反射防止面のInfrasil®ウィンドウ
- Ø12.7 mm(Ø1/2インチ)とØ25.4 mm(Ø1インチ)のウィンドウをご用意
- 反射防止面1面あたりの平均反射率: 0.25%以下
- 1100~1700 nmにおける透過率: 98.0%以上
- SM05またはSM1ネジマウント付き
こちらのマウント付きØ12.7 mm(Ø1/2インチ)およびØ25.4 mm(Ø1インチ)ウィンドウは、マウント無し製品と同様の光学性能ですが、SM05またはSM1内ネジ&外ネジ付きのマウント(刻印付き)に取り付け済みです。マウント付き製品は識別がしやすく、マウントにはめ込まれていることにより汚染から保護されやすいという利点があります。SMネジ付きマウントは、当社のSMネジ付きレンズチューブ製品に取り付け可能なため、当社のオプトメカニクス部品に簡単に組み込めます。マウント付きØ12.7 mm(Ø1/2インチ)とØ25.4 mm(Ø1インチ)ウィンドウは、それぞれテクスチャー表面を保護するSM05またはSM1ネジ付きエンドキャップが2つ付属します。エンドキャップの交換が必要な場合、Ø12.7 mm(Ø1/2インチ)ウィンドウには型番SM05CP1とSM05CP2、Ø25.4 mm(Ø1インチ)ウィンドウには型番SM1CP1とSM1CP2のご使用をお勧めいたします。
- 片面がテクスチャー広帯域反射防止面のØ25.4 mm(Ø1インチ)Infrasil®ウィンドウ
- ウィンドウのもう一方の面はテクスチャー加工やコーティング無し
- Ø12.7 mm(Ø1/2インチ)およびØ25.4 mm(Ø1インチ)をご用意
- 1000~1700 nm用に設計
- 反射防止面の平均反射率: 0.25%以下
こちらのマウント無しØ12.7 mm(Ø1/2インチ)およびØ25.4 mm(Ø1インチ)ウィンドウは、片面に反射防止テクスチャー表面加工が施されており、1000~1700 nmの波長範囲用に設計されています。ウィンドウのナノ構造表面は、低い反射率(反射防止面1面あたり0.25%以下)とレーザ損傷への高い耐性を示します。もう一方の面は何も加工が施されていないので、従来のクリーニング方法が適用できます。ウィンドウのエッジ部分にある矢印はテクスチャー反射防止面を示しています。詳細は「仕様」タブをご覧ください。