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せん断ピエゾアクチュエータは、チップ型、多段チップ型の何れも横方向に変位します。この図はバイアス電圧(±V)、ピエゾの分極(P)、電界(E)の関係を表しています。チップの緑色の側面は変位の方向を示しています。詳細については「取扱い」タブをご参照ください。

特長

• 低電圧で動作するチップ型ピエゾアクチュエータ、多段チップ型ピエゾアクチュエータ、多軸ポジショナ
  • せん断ピエゾアクチュエータ(チップ型、多段チップ型)の電圧範囲:±200 V
  • 型番PN5FC2およびPN5FC3に含まれる各せん断ピエゾアクチュエータの電圧範囲:±200 V
  • 型番PN5FC3の縦方向に変位するピエゾアクチュエータの電圧範囲:0 V～150 V
• サブマイクロメートルの分解能
• 5.0 mm × 5.0 mmの取付け面
• 開ループシステムでの実験用
• カスタム仕様のサイズも承ります。詳細は当社までお問い合わせください。
• フラットエンドプレートは追加購入も可能

当社ではチップ型および多段チップ型のせん断ピエゾアクチュエータとともに、複数の多段チップ型せん断ピエゾアクチュエータを組み込んだ多軸ポジショナをご用意しております。当社のチップ型せん断ピエゾアクチュエータの横軸方向の最大変位量は1.3 µm、多段チップ型せん断ピエゾアクチュエータの横方向の最大変位量は7.0 µmです。多軸ポジショナについては1軸につき7.0 µmの変位量が得られます。詳しい仕様については下の表をご覧ください。

「取扱い」タブでは、ピエゾアクチュエータへの負荷の取り付け方法や、操作上の注意などについてご覧いただけます。 ピエゾアクチュエータの寸法、電圧範囲、コーティングについては、カスタム仕様によるご注文も承ります。詳細は当社までお問い合わせください。

せん断ピエゾアクチュエータ
チップ型のせん断ピエゾアクチュエータが横軸に沿ってプラスあるいはマイナスのどちらの方向に変位するかは、バイアス電圧の極性によって決まります。上の図ではチップ型ピエゾアクチュエータの上面ならびに底面にある電極に電圧が印加されたときの応答を表しています。底面の位置が固定されているとき、上面に正のバイアスをかけると、上面は緑色の側面の方向に移動します。負のバイアスをかけると上面は反対方向に移動します。

多段チップ型せん断ピエゾアクチュエータと多軸ポジショナ
多段チップ型のせん断ピエゾアクチュエータは、エポキシ接着剤と銅箔で接着された複数のせん断ピエゾチップで構成されています。エポキシ接着剤はアクチュエータの上面と底面にフラットなアルミナエンドプレートを接着するのにも使用されています。多段型せん断ピエゾアクチュエータは、チップ型の場合と同様に、正あるいは負のバイアスをかけることにより、横軸のプラス方向あるいはマイナス方向に変位させることができます。2つの横軸方向に変位を生じさせるポジショナでは、1個のせん断ピエゾアクチュエータの上面のエンドプレートに、もう1個のせん断ピエゾアクチュエータの底面のエンドプレートが結合されています。3軸のポジショナでは、せん断ピエゾアクチュエータ2個に縦方向に変位するピエゾアクチュエータ1個が接着されており、これによりアクチュエータの表面に直交する方向の変位を生じさせます。なお、縦方向のピエゾアクチュエータはプラス方向にのみ変位しますのでご注意ください。このアクチュエータに逆バイアスをかけることはできず、せん断ピエゾアクチュエータとは駆動電圧範囲が異なります。各アクチュエータにはワイヤ線が2本ずつ付いています。そのため、各アクチュエータを個々に制御して、ポジショナの上面を精密に位置決めすることが可能です。 

せん断歪みと軸方向歪みの比較
せん断ピエゾ素子では、ピエゾ素材の分極方向とバイアス電圧による電界方向が直交します。せん断ピエゾを仕様の通りに使用して電極にバイアス電圧をかけると、ピエゾ素子内にせん断歪みが生じます。これは分極方向を全体的に印加された電界方向に整列させようと、ピエゾ素子内に微視的で可逆的な変化が発生するためです。一方、より一般的な縦方向に変位するピエゾアクチュエータでは、ピエゾ素子の分極方向に平行に電界をかけるため、電極面に対して垂直な軸方向に変位します。 なお、ピエゾセラミックのせん断歪みのヒステリシスは最大40%になる場合があります。これはピエゾ素子に縦方向の変位をもたらす軸方向の歪みのヒステリシスより大きくなっています。 

ピエゾドライバ
チップ型せん断ピエゾアクチュエータの駆動には、高電圧増幅器HVA200の使用をお勧めいたします。多軸ポジショナPN5FC3に使用する場合、HVA200はアクチュエータを縦方向に駆動することができますが、HVA200の比較的低い電流とアクチュエータの高静電容量の組み合わせにより、最大の駆動電圧周波数が制限されます。また、アクチュエータの駆動電圧の制限値を超えないよう注意が必要です。PN5FC3に組み込まれた縦変位のアクチュエータにより良く対応するドライバには、開ループコントローラのMDT69xBやKPZ101、ならびに閉ループコントローラのBPC301やBPC303がございます。

X-Axis Positioning	X- and Y-Axis Positioning	X-, Y-, and Z-Axis Positioning
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チップ型せん断アクチュエータや、1個の多段チップで作られているせん断アクチュエータPN5FC1は、横軸の1方向にのみ変位します。PN5FC2は接着された2個のせん断アクチュエータで構成されており、横軸の両方向に変位します。PN5FC3は、横方向に変位するアクチュエータ2個に縦方向に変位するアクチュエータ1個が接着されており、3次元の位置決めが可能です。

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図1 緑色の側面は、せん断ピエゾアクチュエータの横変位の方向を示しています。 電極面に正の電圧をかけると、その電極面は緑色の側面方向に向かって変位します。

使用上の注意点

バイアス電圧とせん断歪み

当社のせん断ピエゾチップの上面と底面の大きさは5 mm x 5 mmで、それぞれ金の電極が化学蒸着されています。これらの電極に電圧(最大±200 V)が印加されると、ピエゾ素子内部にせん断歪みが生じます。せん断歪みによってできた変形によって2つの平行な側面が同調して傾斜し、結果的に上面が底面に対して横方向に移動します。

この横方向の移動がせん断ピエゾアクチュエータの特長であり、印加された電界(E)がピエゾ素子の分極方向(P)と直交していることにより発生します。分極方向、電界方向、およびチップ表面の変位方向の関係を図1に示します。上面の電極に正のバイアス電圧を印加した場合、上面は緑色の側面の方向に移動します。つまり上面は白の矢印が示している横方向に動くことになります。 なお、5 mm x 5 mmのチップの表面を利用して負荷を移動させるには、反対側の面(底面)を固定しておく必要があります。詳細については下記のピエゾ素子への負荷の取付け方の段落をご覧ください。

こちらのせん断ピエゾチップの上面と底面の電極は互いに同等であるため、せん断歪みも対称になります。従って、こちらのアクチュエータはバイポーラ電源で駆動できます。当社では高電圧増幅器HVA200のご使用をお勧めしています(下記参照)。

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図2 この図は、駆動電圧範囲が±100 Vのときのストローク量は、±200 Vの時の約30%であることを示しています。両駆動条件下における相対ヒステリシスもご覧いただけます。

ヒステリシスと横変位
チップ型あるいは多段チップ型ピエゾアクチュエータの変位量は、その時の駆動電圧とピエゾ素子の過去の駆動履歴により決まります。このヒステリシスはピエゾ素子固有の特性によるものです。変位量と電圧の関係を示す左のグラフでは、チップ型または多段チップ型のせん断ピエゾアクチュエータの底面を固定し、駆動電圧を-200 Vから+200 Vまで変化させたときの上面の横変位のヒステリシスを示しています。ピエゾセラミックのせん断歪みのヒステリシスは最大で40%になる場合があり、これはピエゾ素子の軸方向歪みのヒステリシスよりも大きな値です。せん断ピエゾアクチュエータを使用する際は、このヒステリシスの大きさを考慮しなければなりません。

左のグラフに示すように、駆動電圧範囲を±200 Vから±100 Vに下げると、全変位量は最大定格ストロークの約30%にまで減少します。

PL5FBの外部電極への電気的接続
PL5FBの取付け面にはフラットプレートは付いていないため、銅製のリードも付いていません。PL5FBの外部電極に電気的に接続するには、機械的接触、導電性接着剤による接着、またはワイヤーボンディングなどの方法があります。接触面に直接はんだ付けすると、平面度や荷重分布に変化が生じ、性能面でネガティブな影響が生じます。

PL5FBP3の電極へのリード線のはんだ付け
PL5FBP3の取付け面にはフラットプレートが付いており、また電極には電気的接続のための銅製のリードも付いています。リード線を電極に接続する場合、はんだ付けは370 °C以下、1つの電極(リード)あたり2秒以内で行ってください。リード線は電極の中心にはんだ付けし、できるだけ熱が広がらないようにしてください。

注:駆動後のピエゾアクチュエータには電荷が蓄積しています。プラスとマイナスのワイヤを直接接続すると放電し、火花の発生や、さらには故障する危険性もあります。 この電荷を解放するために、当社ではワイヤの間に抵抗(>1 kΩ)を挿入することをお勧めしています。

ピエゾアクチュエータへの負荷の取付け方
せん断ピエゾチップは、上面と底面が相対的に変位するため、チップをアクチュエータとして使用するにはどちらかの表面を固定された基板に取り付ける必要があります。せん断ピエゾチップは、機械的なクランプまたは接着剤によって取り付けることができます。下の図では取り付け方の正しい例と誤った例を示しています。

負荷はできるだけチップの取付け面の中心に取り付け、また荷重が取付け面に対してできるだけ均一にかかるようにしてください。荷重の方向がチップの負荷取付け面に対して垂直になるようにしてください。アクチュエータと負荷の接着面は、表面粗さ10 µm以下の高い平面度と滑らかさ、およびモース硬度6以上の硬さが必要です。当社ではアルミナエンドプレート(型番PKFEP4)のご使用をお勧めしています。そのモース硬度は9で、また接触面を覆って絶縁層の役割も果たします。また絶縁にはポリイミドフィルムを使用することも可能です。圧力をかける前に2つの接着面に十分な平行度があることを確認してください。

機械的なクランプにより取り付ける場合は、クランプに伴う軸方向の圧力をよく調整する必要があります。この圧力が弱すぎると滑ってしまいますし、強すぎるとセラミックが破損する恐れがあります。接触面が適切な状態で、かつせん断力が小さい場合には、1～3 MPaの圧力をお勧めします。ピエゾアクチュエータの動作を妨げないよう、負荷の取付け機構の動作方向の剛性はできるだけ低くなるようにします。

接着剤を用いる場合、せん断ピエゾチップと基板の間の接着剤は薄くすることが重要です(下図参照)。これは、一般に粘度の低い接着剤を使用することで実現できます。接着剤を硬化させる過程ではある程度の圧力(例えば3 Mpa以下)をかける必要があります。ピエゾアクチュエータに負荷を取り付ける場合、接着剤としてEPO-TEK 353NDやLoctite^® Hysol^® 9340など、80 °C以下の温度で硬化するエポキシ樹脂のご使用をお勧めします。負荷はピエゾアクチュエータの変位する面に取り付けてください。変位しない面に負荷を取付けるとアクチュエータの故障につながりますのでご注意ください。

下の図では、ピエゾアクチュエータに負荷を取り付ける際の正しい方法と誤った方法について説明しています。

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図3 機械的にクランプする場合、負荷を取り付けるのにバネを使用するのも正しい方法です。なお、右の誤った方法では、チップと負荷の間にエンドプレートがありません。

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図4 ピエゾ素子を接着する場合は、左の図のように固定します。右の図のように接着した場合は、ピエゾ素子の横方向への移動が妨げられます。

真空対応製品のクリーニングについて
当社のピエゾアクチュエータで真空に対応している製品については、青いinfoアイコン()をクリックしてご覧いただける仕様表に、対応する真空レベルが記載されています。この真空レベルに到達するのに特別なクリーニングは必要ありませんが、実際のご使用時には、これらの製品をイソプロピルアルコール(IPA)で超音波洗浄を行い、さらに60 °Cで2時間ベーキングすることをお勧めします。デバイスをそのほかの有機溶剤には浸漬しないでください。