偏光ファイバー


  • Polarizes Light Transmitted Through Fiber
  • High Birefringence Produces High Polarization Extinction Ratios
  • Design Wavelength: 830, 1064, or 1550 nm
  • ~100 nm, Broad, Stable Polarizing Window

"Bow-Tie" Style PZ Fiber

Aligned
Polarization-Maintaining
Fiber

Coiled
Polarizing
Fiber

Single Mode
Fiber

Unpolarized
Light

Splicing Area

Polarized Light

Splicing Area

Polarized Light

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Polarization Window, Straight vs. Coiled
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このPZファイバの偏光ウィンドウは、ファスト軸が20 dBの損失、スロー軸が3 dBの損失の間の波長と定義されています。各ファイバのグラフについては「グラフ」タブをご参照ください。
Bow-Tie PM Fiber Cross Section
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ボウタイ型PMファイバの断面図
Custom Fiber Patch Cables  Optical Fiber Manufacturing

特長

  • 約100 nmの偏光ウィンドウ
  • 消光比: ≥30 dB
  • 設計波長: 830 nm、1064 nm、1550 nm
  • 用途:
    • 光ファイバージャイロスコープ
    • コヒーレント通信
    • 電流センサ

当社のZing™として知られる偏光(PZ)ファイバは、1つの偏光だけを伝搬できる特殊な光ファイバです。 他の全ての偏光方向の光は著しい光学損失により、ファイバを伝搬しません。 そのために、当社のPZファイバはボウタイ形状で、非常に高い複屈折を有しています。 この複屈折性によって、他の全ての偏光方向が高損失となる一方、ただ1つだけ適切な偏光方向の光をファイバに伝播させることができます。

このPZファイバは、広い偏光ウィンドウ(約100 nm)を有し、高消光比(≥30 dB)、低損失となっています。偏光性能はØ89 mmコイルに16巻きした約5 m長のファイバで規定しています。詳細は「仕様」タブをご覧ください。 この偏光ウィンドウと消光比はPZファイバを巻くこと(ファイバの配置)で調整できます。 ファイバをより小さい径で巻くと、偏光ウィンドウは狭くなり、短波長側へと移動します(詳細は「グラフ 」タブ参照)。 なお、Ø89 mm以外のコイル径ではファイバの性能は保証されませんのでご注意ください。偏光ウィンドウは、ファスト軸偏光が20 dBの損失となる波長、スロー軸偏光が3 dBの損失となる波長の間の波長幅として定義されています(右グラフ参照)。

PZファイバはインライン型の偏光子よりも低挿入損失、高消光比で、さらに複雑な部品の組み立ては必要なく、サイズも大きくならず、全てファイバで構成できるといった利点があります(「PZチュートリアル 」タブ参照)。 この価格的にも優れたファイバは、高い消光比(ER)を示し、ファイバに応力がかかっても設計波長(HB830Zは830 nm、HB1060Zは1064 nm、HB1550Zは1550 nm)で偏光する非常に広い帯域幅を有しています。温度に対し、消光比と挿入損失は安定的で、使用時の長期信頼性があります。 当社のPZファイバは他のファイバと同様にクリーブ、融着などが可能で、標準の偏波保持(PM)ファイバシステム(PANDA型とボウタイ型の両タイプ)とも 併用できます。 このファイバも、低応力エポキシと軸に対するキーのアライメントが必要な他のPMファイバと同様にコネクタ付けできます。

PZファイバは、 偏波保持(PM)ファイバと全く同じではないことにご注意ください。 偏光方向が複屈折軸と一致している直線偏光の場合のみPMファイバは直線偏光状態を保持しますが、他の偏光方向も伝搬されます。 PMファイバとは異なり、PZファイバは偏光クロストークが生じないため、偏光の変化の影響を受けやすい用途に適しています。

このファイバはコネクタ付きパッチケーブルとしてもご注文いただけます。詳細はカスタムファイバーパッチケーブルのページをご参照ください。


Item #aOperating
Wavelengthb
Cladding
Diameter
Coating
Diameter
MFDdNAeCladding
Indexf
Core
Indexf
Cut-Off
(Typ.)g
AttenuationBeat
Length
Extinction
Ratiob
20 dB Fast
Edgeb,c
3 dB Slow
Edgeb,c
HB830Z830 nm80 ± 1 µm170 ± 10 µm4.1 - 7.7 µm
@ 830 nm
0.14830 nm:
1.45954
830 nm:
1.45282
400 - 600 nm≤0.02 dB/m
@ 830 nm
≤1.04 mm
@ 830 nm
≥30 dB≤790 nm≥860 nm
HB1060Z1064 nm125 ± 1 µm245 ± 15 µm6 - 8 µm
@ 1064 nm
0.141064 nm:
1.45635
1064 nm:
1.44963
< 1000 nm ≤0.02 dB/m
@ 1060 nm
≤0.8 mm
@ 633 nm
≥30 dB≤1015 nm≥1105 nm
HB1550Z1550 nm125 ± 1 µm245 ± 15 µm10.0 - 12.5 µm
@ 1550 nm
0.9-0.111550 nm:
1.44683g
1550 nm:
1.44402g
1150 nm≤0.02 dB/m
@ 1550 nm
≤2.5 mm
@ 1550 nm
≥30 dB≤1500 nm≥1600 nm
  • 仕様の詳細は「仕様」タブをご参照ください。
  • 5 mのファイバをØ89 mmで巻いた状態の典型的な偏光性能。
  • 定義については右上のグラフをご参照ください。
  • モードフィールド径(MFD)は公称値です。 ニアフィールド1/e2出力レベルにおける直径です。 詳しくは「MFDの定義」タブを参照ください。
  • 開口数(NA)は公称値です。
  • 屈折率は、公称値の動作波長における公称値です。
  • 典型値です。実際のカットオフ波長はファイバの配置により異なります。
  • この屈折率はNA0.9での値です。
Polarization Window, Straight vs. Coiled
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このPZファイバの偏光ウィンドウは、ファスト軸が20 dBの損失、スロー軸が3 dBの損失の間の波長と定義されています。各ファイバのグラフについては「グラフ」タブをご参照ください。
FiberaHB830ZHB1060ZHB1550Z
Operating Wavelengthb830 nm1064 nm1550 nm
Cladding Diameter80 ± 1 µm125 ± 1 µm125 ± 1 µm
Coating Diameter170 ± 10 µm245 ± 15 µm245 ± 15 µm
Mode Field Diameterd4.1 - 7.7 µm @ 830 nm6 - 8 µm @ 1064 nm10.0 - 12.5 µm @ 1550 nm
Numerical Aperturee0.140.140.9-0.11
Core Indexf830 nm: 1.459541064 nm: 1.456351550 nm: 1.44683g
Cladding Indexf830 nm: 1.452821064 nm: 1.449631550 nm: 1.44402g
Cut-Off Wavelength (Typical)h400 - 600 nm< 1000 nm1150 nm
Attenuation≤0.02 dB/m @ 830 nm≤0.02 dB/m @ 1060 nm≤0.02 dB/m @ 1550 nm
Beat Length≤1.04 mm @ 830 nm≤0.8 mm @ 633 nm≤2.5 mm @ 1550 nm
Extinction Ratiob≥30 dB
20 dB Fast Edgeb,c≤790 nm≤1015 nm≤1500 nm
3 dB Slow Edgeb,c≥860 nm≥1105 nm≥1600 nm
Core-Cladding Concentricity≤1 µm
Coating-Cladding Offset≤10 µm
Coating MaterialDual Acrylate
Operating Temperature-40 to 85 °C
Proof Test Level1% (100 kpsi)
  • ファイバの性能は補強用チューブ無しで測定されました。チューブ付きの場合の性能は保証されません。
  • 5 mのファイバをØ89 mmで巻いた状態の典型的な偏光性能
  • 定義については右のグラフをご参照ください。
  • モードフィールド径(MFD)は公称値です。 ニアフィールド1/e2出力レベルにおける直径です。
  • 開口数(NA)は公称値です。
  • 屈折率は、公称値の動作波長における公称値です。
  • この屈折率はNA0.9での値です。
  • 典型値です。実際のカットオフ波長はファイバの配置により異なります。

HB830Z

Polarization Window, Straight vs. Coiled
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*「 仕様」タブのすべての仕様はØ89 mmコイルに巻いた、チューブ無し、長さ5 mのファイバで測定されています。ファイバをより小さい径のコイルに巻くと、上および下の図のようにファイバの動作帯域幅が狭くなり、中心波長が短波長側にシフトします。

Polarization Window For Random Deployment
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*標準配置ではPZファイバを定格で使用しています。


HB1060Z

Polarization Window For Random Deployment
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*ランダム配置ではPZファイバをランダムに巻いています。


HB1550Z

Polarization Bandwidth of HB1550Z
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このデータは5 mのHB1550Zを直径60 mmで巻いたサンプルで取得されています。

PZファイバ概要

偏光(PZ)ファイバ(例:Zing™ファイバ)は、1つの偏光方向のみ伝搬する特殊な光ファイバです。この単一偏光透過型は、シングルモード(SM)または偏波保持(PM)ファイバと比較して、いくつかの利点があります。PMファイバは複屈折軸に沿って偏光方向を保持する一方で、他の偏光方向も導波するため偏光クロストークが発生します。SMファイバは複屈折が誘起される応力がかかってしまい(手動型ファイバ偏光コントローラ参照)、波長板とよく似た動きが生じます。この場合、偏光軸は操作されますが、SMファイバは光を偏光しません。

対照的に、PZファイバは1つの偏光方向だけを導波し、他のすべての偏光方向は導波されません。結果として、PZファイバは、ファイバに導波された光を偏光し、導波しない偏光方向の光は強く抑制されます。インライン型偏光子は不要な偏光方向の抑制が20~30 dBの範囲である一方、PZファイバは設計波長において30 dB以上の抑制を実現しています。さらにファイバに応力を加えることにより、35 dB以上の抑制も実現できます。なぜなら、PZファイバに加えられる応力はファイバの取り回しによって変化するためで、ファイバの"配置"が重要となります。配置とは、どのようにファイバを置くのか、ということで、まっすぐに置くのか、コイル状に巻いて置くのか、ランダムに重ねて置くのか、ということです。

PZファイバの使用

PZファイバの配置が、性能に大きく影響することは重要な点です。 当社のPZファイバの偏光に対するウインドウ(帯域幅)の幅と中心波長は、ファイバの配置に依存します(「グラフ」タブ参照)。 設計波長近傍におけるファイバの定格での使用であれば、PZファイバはどのような配置でも偏光することができます。 しかし、定格外での使用については、帯域が光源の帯域と重なるように配置を変えて偏光に対するウィンドウをシフトさせてください。 この使用法は、レーザなどの狭い線幅の光源に適しています。 広帯域の光源に対しては、PZファイバは偏光に対するウィンドウの幅や中心波長が、光源の偏光の帯域幅や中心波長と重なるように、適切に巻く必要があります。

あらゆるタイプの偏光子で起こりうる出力変動を避け、光が均一に偏光されることを確実にするためには、PZファイバの入射部分において、デポラライザの使用が有効です。 デポラライザは、45°回転させてつなぎ合わされた2本のPMファイバで構成されています(長さは光源によります)。 このシステムにおいて、PZファイバは一般的に、デポラライズ効果を最大限に活用するため、45°で無偏光化した出力にも結合されます(注:パッチケーブルを使用する場合は、ファイバ端をキーに対して45°オフセット持たせることにより、デポラライザファイバとPZファイバを接続するところで、相対的に45°回転させられます)。 PZファイバへの入射光がデポラライズされていれば、PZファイバのファスト軸とスロー軸上の入射光は均等であり、その結果、3 dB損失の安定した出力となります。下の図は、無偏光の光源と当社のPZファイバを使用したシステム例です。図の下の表には、このシステムで使用する部品をPZファイバごとに掲載しています。

PZ Fiber Random Deployment
FiberABCD
HB830Z830 nm Laser
Source
SM800 FiberCoiled HB830Z FiberAligned PM780-HP Fiber
HB1060Z1060 nm Laser
Source
SM980 FiberCoiled HB1060Z FiberAligned PM980-XP Fiber
HB1550Z1550 nm Laser
Source
SMF-28-J9, CCC1310-J9,
1550BHP, or 1310BHP Fiber
Coiled HB1550Z FiberAligned PM1550-XP Fiber

PZファイバをより小径で巻き付けると、偏光に対するウィンドウが狭まり、また中心波長が短波長へシフトします。 PZファイバの巻き付けは、損失をさらに引き起こすとはいえ、優れた偏光消光比をもたらします。 損失が高すぎる場合は、巻きつけの径が小さすぎます。逆に偏光消光比が低すぎる場合、巻きつけの径が大きすぎます。例えば、PZファイバHB1060Zを使って35 dBの消光比を得たい場合、2 mのPZファイバを5 cmのループで巻きます。 実施方法を上の略図に示しています。 無偏光光がPZファイバに入力され、ファイバは適切な効果が出るように巻かれています。 その後、PZファイバはシステム外のPMファイバと接続されています。 さらに性能の安定性を高めるには、3~5 mのファイバHB1060Z、または4~10 mのファイバHB830ZおよびHB1550Zのご使用をお勧めします。 PZファイバの高い複屈折性によって、偏光に対するウィンドウは幅広く保たれ、多様なパッケージングや配置が可能です。

MFD Definition
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左の図は、ファイバを伝搬するビームの出力光強度のプロファイルを示しています。右の図は、標準的なビームの強度プロファイルで、図中にMFDおよびコア径を示しています。

モードフィールド径の定義

モードフィールド径(MFD)はシングルモードファイバを伝搬する ビームサイズの測定値です。 波長、コア半径、およびコアとクラッドの屈折率によって決まります。 光ファイバ内ではほとんどの光がファイバのコアに閉じ込められますが、クラッド内もわずかに伝搬します。 ガウス出力分布において、光出力が最大値に対し1/e2減少したところの直径がMFDとなります。

MFDの測定
MFD はファーフィールド可変開口法(VAMFF)によって測定します。 開口がファイバ出力のファーフィールドに配置され、その強度が測定されます。 ビームに小さな開口が連続配置して、各開口の強度を測定します。データは、光出力対開口の半角の正弦(またはSMファイバの開口数)としてプロットされます。

MFDは次に、特定の出力分布形状を想定しない数理モデルのペーターマンⅡの定義で決定されます。 ニアフィールドにおけるMFDは、ハンケル変換を用いてこのファーフィールド測定法から求められます。

レーザによる石英ファイバの損傷

このチュートリアルではコネクタ無し(素線)ファイバ、コネクタ付きファイバ、およびレーザ光源に接続するその他のファイバ部品に関連する損傷メカニズムを詳しく説明しています。そのメカニズムには、空気/ガラス界面(自由空間結合時、またはコネクタ使用時)ならびにファイバ内における損傷が含まれます。ファイバ素線、パッチケーブル、または溶融型カプラなどのファイバ部品の場合、損傷につながる複数の可能性(例:コネクタ、ファイバ端面、機器そのもの)があります。ファイバが対処できる最大パワーは、常にそれらの損傷メカニズムの中の最小の限界値以下に制限されます。

損傷閾値はスケーリング則や一般的なルールを用いて推定することはできますが、ファイバの損傷閾値の絶対値は利用方法やユーザ定義に大きく依存します。このガイドは、損傷リスクを最小に抑える安全なパワーレベルを推定するためにご利用いただくことができます。適切な準備と取扱い方法に関するガイドラインにすべて従えば、ファイバ部品は規定された最大パワーレベルで使うことができます。最大パワーの値が規定されていない場合は、部品を安全に使用するために下表の「実用的な安全レベル」の範囲に留めてご使用ください。 パワー処理能力を低下させ、ファイバ部品に損傷を与える可能性がある要因は、ファイバ結合時のミスアライメント、ファイバ端面の汚れ、あるいはファイバそのものの欠陥などですが、これらに限られるわけではありません。特定の用途におけるファイバのパワー処理能力に関するお問い合わせは当社までご連絡ください。

Power Handling Limitations Imposed by Optical Fiber
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損傷のないファイバ端
Power Handling Limitations Imposed by Optical Fiber
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損傷のあるファイバ端

空気/ガラス界面における損傷

空気/ガラス界面ではいくつかの損傷メカニズムが存在する可能性があります。自由空間結合の時、またはコネクタで2本のファイバを結合した時、光はこの界面に入射します。高強度の光は端面を損傷し、ファイバのパワー処理能力の低下や恒久的な損傷につながる場合があります。コネクタ付きのファイバで、コネクタがエポキシ接着剤でファイバに固定されている場合、高強度の光によって発生した熱により接着剤が焼けて、ファイバ端面に残留物が残る可能性があります。

Estimated Optical Power Densities on Air / Glass Interfacea
TypeTheoretical Damage ThresholdbPractical Safe Levelc
CW
(Average Power)
~1 MW/cm2~250 kW/cm2
10 ns Pulsed
(Peak Power)
~5 GW/cm2~1 GW/cm2
  • すべての値はコネクタ無し(素線)の石英ファイバに対する仕様で、クリーンな状態のファイバ端面への自由空間結合に適用されます。
  • 損傷リスク無しでファイバ端面に入射できる最大パワー密度の推定値です。これはシステムに大きく依存するため、ハイパワーで使用する前に光学系内のファイバ部品の性能ならびに信頼性の確認をお客様ご自身で実施していただく必要があります。
  • ほとんどの使用状態でファイバを損傷することなく端面に入射できる安全なパワー密度の推定値です。

ファイバ素線端面での損傷メカニズム

ファイバ端面での損傷メカニズムはバルクの光学素子の場合と同様なモデル化ができ、UV溶融石英(UVFS)基板の標準的な損傷閾値を石英ファイバに当てはめることができます。しかしバルクの光学素子とは異なり、光ファイバの空気/ガラス界面においてこの問題に関係する表面積やビーム径は非常に小さく、特にシングルモードファイバの場合はそれが顕著です。 パワー密度が与えられたとき、ファイバに入射するパワーは、小さいビーム径に対しては小さくする必要があります。

右の表では光パワー密度に対する2つの閾値が記載されています。理論的な損傷閾値と「実用的な安全レベル」です。一般に、理論的損傷閾値は、ファイバ端面の状態も結合状態も非常に良いという条件で、損傷のリスク無しにファイバの端面に入射できる最大パワー密度の推定値を表しています。「実用的な安全レベル」のパワー密度は、ファイバ損傷のリスクが極めて小さくなる値を示しています。ファイバまたはファイバ部品をこの実用的な安全レベルを超えて使用することは可能ですが、その時は取扱い上の注意事項を適切に守り、使用前にローパワーで性能をテストする必要があります。

シングルモードの実効面積の計算
シングルモードファイバの実効面積は、モードフィールド径(MFD)、すなわちファイバ内の光が伝搬する部分の断面積によって定義されます。この面積にはファイバのコアとクラッドの一部が含まれます。シングルモードファイバとの結合効率を良くするためには、入射ビーム径をファイバのモードフィールド径に合致させなければなりません。

例として、シングルモードファイバSM400を400 nmで使用した時のモードフィールド径(MFD)は約Ø3 µmで、SMF-28 Ultraを1550 nmで使用したときのモードフィールド径(MFD)はØ10.5 µmです。これらのファイバの実効面積は下記の通り計算します。

SM400 Fiber: Area = Pi x (MFD/2)2 = Pi x (1.5 µm)2 = 7.07 µm= 7.07 x 10-8 cm2

 SMF-28 Ultra Fiber: Area = Pi x (MFD/2)2 = Pi x (5.25 µm)2 = 86.6 µm= 8.66 x 10-7 cm2

ファイバ端面が対応できるパワーを推定するには、パワー密度に実効面積を乗じます。なおこの計算は均一な強度プロファイルを想定しています。しかしほとんどのレーザービームでは、シングルモード内でガウス分布を示すため、ビームの端よりも中央のパワー密度が高くなります。よって、これらの計算は損傷閾値または実用的安全レベルに対応するパワーとは若干異なることを考慮する必要があります。連続光源を想定して上記のパワー密度の推定値を使用すると、それぞれのパワーは下記のように求められます。

SM400 Fiber: 7.07 x 10-8 cm2 x 1 MW/cm2 = 7.1 x 10-8 MW = 71 mW (理論的損傷閾値)
     7.07 x 10-8 cm2 x 250 kW/cm2 = 1.8 x 10-5 kW = 18 mW (実用的な安全レベル)

SMF-28 Ultra Fiber: 8.66 x 10-7 cm2 x 1 MW/cm2 = 8.7 x 10-7 MW = 870 mW (理論的損傷閾値)
           8.66 x 10-7 cm2 x 250 kW/cm2 = 2.1 x 10-4 kW = 210 mW (実用的な安全レベル)

マルチモードの実効面積
マルチモードファイバの実効面積は、そのコア径によって定義されますが、一般にシングルモードファイバのMFDよりもはるかに大きくなります。当社では最適な結合を得るためにコア径のおよそ70~80%にビームを集光することをお勧めしています。マルチモードファイバでは実効面積が大きくなるほどファイバ端面でのパワー密度は下がるので、より大きな光パワー(通常キロワットオーダ)を入射しても損傷は生じません。

フェルール・コネクタ付きファイバに関する損傷メカニズム

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コネクタ付きシングルモード石英ファイバに入力可能なパワー処理限界値(概算)を示したグラフ。各線はそれぞれの損傷メカニズムに応じたパワーレベルの推定値を示しています。 入力可能な最大パワーは、損傷メカニズムごとに制限されるパワーのうちの一番小さな値(実線で表示)によって制限されます。

コネクタ付きファイバのパワー処理能力に関しては、ほかにも考慮すべき点があります。ファイバは通常、エポキシ接着剤でセラミック製またはスチール製のフェルールに取り付けられています。光がコネクタを通してファイバに結合されると、コアに入射せずにファイバを伝搬する光は散乱されてファイバの外層からフェルール内へ、さらにフェルール内でファイバを保持する接着剤へと伝搬します。光の強度が大きいとエポキシ接着剤が焼け、それが蒸発して残留物がコネクタ端面に付着します。これによりファイバ端面に局所的に光を吸収する部分ができ、それに伴って結合効率が減少して散乱が増加するため、さらなる損傷の原因となります。

エポキシ接着剤に関連する損傷は、いくつかの理由により波長に依存します。一般に、光の散乱は長波長よりも短波長で大きくなります。短波長用のMFDの小さなシングルモードファイバへの結合時には、ミスアライメントに伴ってより多くの散乱光が発生する可能性があります。

エポキシ樹脂が焼損するリスクを最小に抑えるために、ファイバ端面付近のファイバとフェルール間にエポキシ接着剤の無いエアギャップを有するファイバーコネクタを構築することができます。当社の高出力用マルチモードファイバーパッチケーブルでは、このような設計のコネクタを使用しております。

複数の損傷メカニズムがあるときのパワー処理限界値を求める方法

ファイバーケーブルまたはファイバ部品において複数の損傷要因がある場合(例:ファイバーパッチケーブル)、入力可能なパワーの最大値は必ずファイバ部品構成要素ごとの損傷閾値の中の一番小さな値により決まります。この値が一般的にはパッチケーブルの端面に入射可能な最大のパワーを表します(出力パワーではありません)。 

右のグラフは、シングルモードパッチケーブルにおけるファイバ端面での損傷とコネクタでの損傷に伴うパワー処理限界の推定値を例示しています。 ある波長におけるコネクタ付きファイバの総合的なパワー処理限界値は、その波長に対する2つの制限値の小さい方の値(実線)によって制限されます。488 nm付近で使用しているシングルモードファイバは主にファイバ端面の損傷(青い実線)によって制限されますが、1550 nmで使用しているファイバはコネクタの損傷(赤い実線)によって制限されます。

マルチモードファイバの実効面積はコア径で定義され、シングルモードファイバの実効面積より大きくなります。その結果、ファイバ端面のパワー密度が小さくなり、大きな光パワー(通常キロワットオーダ)を入射してもファイバに損傷は生じません(グラフには表示されていません)。しかし、フェルール・コネクタの損傷による限界値は変わらないため、マルチモードファイバが処理できる最大パワーはフェルールとコネクタによって制限されることになります。

上記の値は、取り扱いやアライメントが適切で、それらによる損傷が生じない場合のパワーレベルです。また、ファイバはここに記載されているパワーレベルを超えて使用されることもあります。しかし、そのような使い方をする場合は一般に専門的な知識が必要で、まずローパワーでテストして損傷のリスクを最小限に抑える必要があります。その場合においても、ハイパワーで使用するファイバ部品は消耗品と捉えた方が良いでしょう。

ファイバ内の損傷閾値

空気/ガラス界面で発生する損傷に加え、ファイバのパワー処理能力はファイバ内で発生する損傷メカニズムによっても制限されます。この制限はファイバ自体が本質的に有するもので、すべてのファイバ部品に適用されます。ファイバ内の損傷は、曲げ損失による損傷とフォトダークニングによる損傷の2つに分類されます。

曲げ損失
ファイバが鋭く曲げられると、コア内を伝搬する光がコア/クラッド界面において反射する際に、その反射角が全反射臨界角よりも大きくなります。曲げ損失は、このように内部全反射ができなくなることにより生じる損失です。このような状況下では、光はファイバから局所的に漏れだします。漏れる光のパワー密度は一般に大きく、ファイバのコーティングや補強チューブが焼損する可能性があります。

特殊ファイバに分類されるダブルクラッドファイバは、コアに加えてファイバのクラッド(2層目)も導波路として機能するため、曲げ損失による損傷のリスクが抑えられます。クラッドと被覆の界面の臨界角をコアとクラッドの界面の臨界角より大きくすることで、コアから漏れた光はクラッド内に緩く閉じ込められます。その後、光はセンチメートルからメートルオーダーの距離に渡って漏れ出しますが、局所的ではないため損傷リスクは最小に留められます。当社ではメガワットレベルの大きなパワーにも対応するNA 0.22のダブルクラッドマルチモードファイバを製造、販売しております。

フォトダークニング
もう1つのファイバ内の損傷メカニズムとして、特にコアにゲルマニウムが添加されたファイバをUVや短波長の可視光で使用した時に起こるフォトダークニングまたはソラリゼーションがあります。これらの波長で使用されたファイバは時間の経過とともに減衰量が増加します。 フォトダークニングが発生するメカニズムはほとんど分かっていませんが、その現象を緩和するファイバはいくつか開発されています。例えば、水酸イオン(OH)が非常に低いファイバはフォトダークニングに耐性があることが分かっています。またフッ化物などのほかの添加物もフォトダークニングを低減させる効果があります。

しかし、上記の対応をとったとしても、UV光や短波長に使用したファイバはいずれフォトダークニングが生じます。よってこれらの波長で使用するファイバは消耗品としてお考えください。

光ファイバの準備ならびに取扱い方法

一般的なクリーニングならびに操作ガイドライン
この一般的なクリーニングならびに操作ガイドラインはすべてのファイバ製品向けにお勧めしております。さらに付属資料やマニュアルに記載された個々の製品に特化したガイドラインも遵守してください。損傷閾値の計算は、すべてのクリーニングおよび取扱い手順に適切に従ったときにのみ適用することができます。

  1. (コネクタ付き、またはファイバ素線に関わらず)ファイバを設置または組み込む前に、すべての光源はOFFにしてください。これにより、損傷の可能性のあるコネクタまたはファイバの脆弱な部分に集光されたビームが入射しないようにすることができます。

  2. ファイバやコネクタ端面の品質がファイバのパワー処理能力に直結します。ファイバを光学系に接続する前に必ずファイバ端を点検してください。端面はきれいで、入射光の散乱を招く汚れや汚染物質があってはなりません。ファイバ素線は使用前にクリーブし、クリーブの状態が良好であることを確認するためにファイバ端面の点検をしてください。

  3. ファイバを光学系に融着接続する場合、ハイパワーで使用する前にまずローパワーで融着接続の状態が良いことを確認してください。融着接続の品質が良くないと接続面での散乱が増え、ファイバ損傷の原因となる場合があります。

  4. システムのアライメントや光結合の最適化などの作業はローパワーで行ってください。これによりファイバの(コア以外の)他の部分の露光が最小に抑えられます。ハイパワーのビームがクラッド、被覆またはコネクタに集光された場合、散乱光による損傷が発生する可能性があります。

ハイパワーでファイバを使用するための要点
光ファイバやファイバ部品は一般には安全なパワー限界値内で使用する必要がありますが、アライメントや端面のクリーニングがとても良い理想的な条件下では、ファイバ部品のパワー限界値を上げることができる場合があります。入力または出力パワーを増加させる前に、システム内のファイバ部品の性能と安定性を確認し、またすべての安全ならびに操作に関する指示に従わなければなりません。下記はファイバ内またはファイバ部品内の光パワーをの増大させること加を検討していするときに役立つご提案です。

  1. ファイバースプライサを使用してファイバ部品をシステムに融着接続すると、空気/ファイバ界面での損傷の可能性を最小化できます。品質の高い融着接続が実現されるよう、すべて適切なガイドラインに則って実施する必要があります。融着接続の状態が悪いと、散乱や融着接続面での局所的な加熱などが発生し、ファイバを損傷する可能性があります。

  2. ファイバまたはファイバ部品の接続後、ローパワーでシステムのテストやアライメントを実施してください。システムパワーを必要な出力パワーまで徐々に上昇させ、その間、定期的にすべての部品が適切にアライメントされ、結合効率が入力パワーによって変動していないことを確認します。

  3. ファイバを鋭く曲げると曲げ損失が発生し、ファイバのストレスを受けた部分から光が漏れる可能性があります。ハイパワーで使用している時は、大量の光が小さな局所領域(歪みのある領域)から流出すると局所的に加熱され、ファイバが損傷する可能性があります。使用中はファイバの曲げが生じないよう配慮し、曲げ損失を最小限に抑えてください。

  4. また、用途に適したファイバを選ぶことも損傷防止に役立ちます。例えば、ラージモードエリアファイバは、標準的なシングルモードファイバをハイパワー光用として用いる場合の良い代替品となります。優れたビーム品質を有しながらMFDも大きいため、空気/ファイバ界面でのパワー密度は小さくなります。

  5. ステップインデックスシングルモード石英ファイバは、一般にUV光やピークパワーの大きなパルス光には使用しませんが、これはその用途に伴う空間パワー密度が大きいためです。


Posted Comments:
Miguel Ribera Vicent  (posted 2023-09-11 08:08:38.67)
Hello Thorlabs team, My comment is not feedback itself, but rather a doubt that is unclear to me about the product, "Polarizing optical fiber". I am not clear about the direction of propagation of the polarization. It is said that it will only propagate in one direction, but which one is it? From the graphs that you put, it is deduced that it is the one that propagates along the slow axis of the fiber. But in terms of the electric field, which would be this direction, the one aligned with this axis or its perpendicular? I hope the question is understood. Thank you!! Best regards, Miguel
jpolaris  (posted 2023-09-14 03:57:35.0)
Thank you for contacting Thorlabs. Your understanding of the propagation axis is correct. Light propagates down the slow axis because above the Fast Edge wavelength, attenuation in the fast axis is very large (e.g., < -20 dB). At the Fast Edge wavelength, the attenuation in the slow axis is minimal and approximately constant with respect to wavelength. As wavelength increases further, there will be a point where the attenuation in the slow axis begins to grow. The point at which the slow axis attenuation reaches -3 dB defines the Slow Edge wavelength. Please note that typical polarization performance is with deployment conditions of 5 m fiber length in a Ø89 mm (Ø3.5") coil. In terms of the electric field, this fiber will only transmit polarization states in which the electric field is parallel with the slow axis. Any electric field components orthogonal to the slow axis will be heavily attenuated.
Danny Nguyen  (posted 2022-07-18 13:54:44.33)
This is a generic comment and not directed toward any specific product. I believe your tutorial on PZ fiber has a critical error. To make depolarizer, you need to splice 2 PM fibers at 45o. Splicing 2 SM fiber at 45o will produce nothing, and will have no effect on polarization state of the light.
ppestre  (posted 2022-07-26 02:07:25.0)
Thank you for your feedback! This has now been corrected to say PM fiber for the depolarizer.
teraoka  (posted 2017-02-01 09:43:08.35)
HB1550Z 1550 nm 125 ± 1 µm 245 ± 15 µm 10.0 - 12.5 µm @ 1550 nm 0.09 - 0.11 1550 nm: 1.64263g 1550 nm: 1.63985g This fiber is not a silica fiber? What is it made of?
tcampbell  (posted 2017-02-03 10:02:19.0)
Response from Tim at Thorlabs: Thank you for your feedback. This fiber has a germanosilicate core (Ge-doped silica). That is all the information we can provide on the fiber composition at this time.
ak-suzuki  (posted 2016-08-02 12:42:03.017)
My name is Akinori Suzuki, resercher from Magnescale in Japan. Please refer to our company's profile from the following link. http://www.magnescale.com/mgs/language/english/ We develop and sell many kinds of positioning sensor for precision processing machine in Japan. We are strongly interested in polarizing fiber (HB830Z). We want to order the product because it can solve some problems that our clients have. As we would like to judge if it can solve the problems before we place an order officially, would you provide details as bellow 1.PZ fiber ER at random deployment or straight deployment. 2. How to deploy fast axis(or slow axis) to fiber coil plane.
user  (posted 2013-02-23 01:59:17.947)
Polarizing fiber and Polarizing fiber patch cords for wavelength from 780 nm to 852 nm will be useful.
cdaly  (posted 2013-03-06 14:16:00.0)
Response from Chris at Thorlabs: At the moment we are still looking into providing this as a stock component, but in the meantime we may be able to offer it as a custom. I will contact you directly to discuss this further.
jlow  (posted 2012-08-09 09:38:00.0)
Response from Jeremy at Thorlabs: The polarizing fiber for that wavelength range is currently under development but may not be available in the near future. With regard to supplying the fiber with FC connector, we are currently looking into adding this to our regular offering. In the meantime, we can make these to order. I will get in contact with you directly regarding this.
parkse  (posted 2012-08-07 07:56:18.0)
Please supply polarizing fiber operating from 780 nm to 850 nm range. And also supply PZ fiber patch calbes with FC connectors.
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