イッテルビウム(Yb)フェムト秒ファイバーレーザー、1030 nm
- User-Tunable Repetition Rate from 1 - 11 MHz
- Clean Ultrafast Pulses with Industry-Leading
Temporal Strehl Ratio of >0.85 - µJ-Class Pulse Energy
FSL1030X2
Ytterbium Femtosecond
Fiber Laser, 1030 nm
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Key Specificationsa | |||
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Item # | FSL1030X1 | FSL1030X2 | |
Center Wavelength | 1030 ± 5 nm | ||
User Tunable Repetition Rateb | 1 - 11 MHz | ||
Pulse Width | Typical | < 250 fs | < 130 fs |
Max | < 275 fs | < 150 fs | |
Avg. Power at Max Rep Rateb, Min | > 24 W | > 20 W | |
Pulse Energyc, Max | 12 µJ | 2 µJ | |
Temporal Strehl Ratiod | Typical | > 0.90 | |
Min | > 0.85 |
特長
- 高パルスエネルギの用途向け
- FSL1030X1:12 µJ、< 250 fs(典型値)
- 短パルス幅の用途向け
- FSL1030X2:2 µJ、< 130 fs(典型値)
- パルス裾幅も狭い超短パルス
- 中心波長:1030 nm
- 1~11 MHzで調整可能な繰り返し周波数
- 最大繰返し周波数での出力パワー: 20 W以上
- 高いパルスエネルギ(右の表参照)
- ダウンロード可能なソフトウェアによる制御でハンズフリー操作が可能(「ソフトウェア」タブ参照)
- PC制御によるパルス幅の前置補償
- コンパクトサイズ: 569.0 mm x 320.0 mm x 237.7 mm
用途
- 多光子顕微鏡
- 神経科学分野における光刺激によるオプトジェネティクス
- 生体組織または眼科組織の処置
- 組織、ガラス、プラスチックを高精度に微細加工
- 光パラメトリック増幅器(OPA)の励起
- 白色スーパーコンティ二ウム光発生
- 非同軸光パラメトリック増幅器(NOPA)の励起
- 化学分光法
- テラヘルツ発生
Cascaded Domain Multiphoton Spatial Frequency Modulation Imaging
D. Scarbrough, A. Thomas, J. Field, R. Bartels, & J. Squier
イッテルビウムフェムト秒ファイバーレーザFSL1030X1およびFSL1030X2は高ピークパワーの近赤外域(NIR)レーザで、中心波長1030 nmのクリーンな超短パルスを発生させます。こちらのファイバーレーザは、超短パルス幅、µJのパルスエネルギ、調整可能な1~11 MHzの繰返し周波数の性能を備えており、眼科学分野をはじめとして、多光子顕微鏡法、オプトジェネティクス、精密機械加工などの幅広い用途に適用できます。この高エネルギパルスでは、ピコ秒レベルのバックグラウンドの原因となっているパルス裾の広がりが小さいため、パルスあたりの使用可能な出力パワーが大きくなり、テンポラルストレールレシオは0.90以上となります。これは、神経科学の環境における多光子刺激などのように、熱による試料の劣化やフォトブリーチングを防ぐために、入力する励起エネルギーを減少させることが望ましい用途に適しています。仕様の詳細については「仕様」タブをご覧ください。
イッテルビウムレーザFSL1030X2固有の特長は、繰り返し周波数に対するパルスエネルギが一定で、1~11 MHzの調整可能な繰り返し周波数全体に、2 µJのパルスを出力することです。FSL1030X1は、高いパルスエネルギを得る代わりに、1~2 MHzで12 µJと一定で、そこでの最大平均パワーは24 Wです。しかし、2 MHz以上の繰り返し周波数では、繰り返し周波数が増加すると、パルスエネルギが減少します(平均パワーは24 Wに維持されます)。仕様の詳細は「仕様」タブをご参照ください。
レーザーシステムFSL1030X1とFSL1030X2の主な違いはパルスエネルギと持続時間です。レーザFSL1030X1は、正味出力に重点を置いた非線形周波数変換など、エネルギが主要な要件である用途に適しています。これに対し、レーザFSL1030X2は、眼科組織の修正や多光子顕微鏡法など、パルス幅を短縮することが信号レベルを改善させるために最も有効な方法である場合に適しています。
さらに高いパルスエネルギまたは短いパルス幅が必要な場合は当社までお問い合わせください。カスタム仕様のパルス圧縮システムの例も「用途例」タブで説明されています。
イッテルビウムファイバーレーザはハンズフリー操作に対応し、長期信頼性に優れています。繰返し周波数や出力パワー、パルス幅などのパラメータは、操作が容易なGUIで制御できます。PC制御によってパルス幅を設定すると、外部のプリズムや回折格子を使用せずにパルス幅の事前補正を行うことができます。ダウンロード可能なGUIの詳細ついては「ソフトウェア」タブをご覧ください。
レーザーヘッドには、取付用クランプCL5Aが3つ、取り外し可能なハンドルが2つ付属します。レーザのビーム高さは120.7 mmで、筐体側面に位置を示す印が付いています。各レーザにはチラーと電子ユニットが付属し、どちらもラックに取り付け可能です。
繰返し周波数のチューニング
ファイバーレーザは、発振器、パルスピッカー、チャープパルス増幅器を基本要素として動作し、信頼性の高いターンキー動作と優れた長期信頼がもたらされます。このパルスピッキングシステムでは、56 ± 2 MHzで動作するフェムト秒発振器の周波数分割が行われます。使用可能な繰返し周波数は、この発振器の周波数を5から発振器の周波数の値までの整数で割った数値となります。例えば、発振器の周波数が56 MHzの場合、除数を56にすると1 MHzで増幅されたパルス列が生成され、56個ごとに1個のパルスがパルスピッカーを通過して増幅器に到達します。除数が小さくなると、アクセス可能な繰返し周波の間の間隔が粗くなります。例えば、得られる繰返し周波数は除数が56のとき1.00 MHz、55のとき1.02 MHzとなり、除数が6では9.33 MHz、5では11.20 MHzとなります。この発振器の最大繰返し周波数は11.2 MHzとなります。対応可能な繰返し周波数は、GUIソフトウェア内のドロップダウンメニューからお選びいただけます。
イッテルビウムプラットフォーム
イッテルビウム超短パルスレーザープラットフォームは垂直に積み重ね可能な構造のため、イッテルビウム光パラメトリック増幅器(OPA)のような追加のモジュールをレーザと同じ筐体内に組み込むことができます。波長変換をする場合、これまでは別の筐体や自由空間のアライメントが必要でしたが、このイッテルビウムプラットフォームを使用することでアライメントの安定性が向上し、システムの再構築が容易になります。イッテルビウムレーザを使用したカスタム仕様の波長変換モジュールについての詳細は当社までお問い合わせください。
Item # | FSL1030X1 | FSL1030X2 | ||
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Optical Specifications | ||||
Center Wavelength | 1030 ± 5 nm | |||
User Tunable Repetition Ratea | 1 - 11 MHz | |||
Pulse Duration (FWHM)b | Typical | < 250 fs | < 130 fs | |
Max | < 275 fs | < 150 fs | ||
Temporal Strehl Ratioc | Typical | > 0.90 | ||
Min | > 0.85 | |||
Pulse Energy, Maxd | 12 µJ | 2 µJ | ||
Average Power at Max Rep Rate, Min | > 24 W | > 20 W | ||
Beam Diameter (1/e2), Typical | 2.0 - 2.5 mm | |||
Mode Ellipticity | Typical | > 0.9 | ||
Min | > 0.8 | |||
Beam Quality (M2) | Typical | < 1.15 | ||
Max | < 1.2 | |||
Polarization | Linear, Vertical | |||
Polarization Extinction Ratio | > 200:1 | |||
Power Stabilitye | < 1% RMS Over 12 Hours | |||
Pointing Stabilitye, Typical | < 10 μrad/°C | |||
Beam Height | 120.7 mm (4.75") | |||
Dispersion Compensation | -1 x 105 fs2 to 1 x 105 fs2 | |||
Optical Head Dimensions (L x W x H) | 569.0 mm x 320.0 mm x 237.7 mm (22.40" x 12.60" x 9.36") | |||
Optical Head Weight | 36 kg (79 lbs) | |||
Electrical Requirements | ||||
Input Voltage | 100 - 240 V | |||
Frequency | 50 - 60 Hz | |||
Power Consumption, Max | Controller: 400 W Chiller: 600 W | |||
Environmental Requirements | ||||
Room Temperature Range | 17 to 25 °C (63 to 77 °F) | |||
Room Temperature Stability | < 3 °C (5.4 °F) Over 24 Hours |
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レーザーヘッドの寸法
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レーザの前面パネル
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レーザの背面パネル
Front Panel | |
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Callout | Description |
1 | Laser Output Aperture |
2 | Emission Indicator |
3 | Manual Aperture Wheel to Open/Close Shutter |
4 | Aperture Shutter Position Indicator |
5 | Mounting Location for Removable Handles (4 Places) |
6 | Included CL5A Clamp Location (2 Places) |
Back Panel | |
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Callout | Description |
1 | Water In |
2 | Water Out |
3 | Fixed Optical Umbilical |
4 | Mounting Location for Removable Handles (4 Places) |
5 | USB 2.0 Type-B Connector |
6 | Sub-D 25 Pin Umbilical to Controller |
7 | Included CL5A Clamp Location |
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レーザーコントローラの前面パネル
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レーザーコントローラの背面パネル
Front Panel | |
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Callout | Description |
1 | Emission Indicator |
2 | Laser Enable Switch |
3 | Laser Synchronization Signal (BNC Female, TTL) |
4 | Remote Interlock (BNC Female, Open/Closed) |
Back Panel | |
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Callout | Description |
1 | AC Power On/Off Switch |
2 | Fuse Tray |
3 | AC Power Cord Connector |
4 | USB 2.0 Type A Connector to Laser |
5 | Ethernet Port to Computer |
6 | Oscillator Pulse Train Monitor (BNC Female, 50 Ω, < 1 V) |
7 | Sub-D 25 Umbilical to Laser |
8 | Fixed Optical Umbilical to Laser |
9 | Fixed Water Lines (2 Places) |
フェムト秒ファイバーレーザFSL1030X1およびFSL1030X2には下記のコンポーネントが含まれます。
- レーザーヘッドおよび電子ユニット(長さ2.5 mの取り外し不可のケーブルで接続)
- バルブ式クイック接続フィッティング(長さ2.5 m)付き気体-液体チラーおよびウォーターライン(水吸収帯)
- チラー用にあらかじめミックスされた防腐剤(型番CDTX)
- 日本国内向けの電源コード2本、長さ各1.8 m
- イーサネットケーブル、長さ2.5 m
- USB 2.0 A型-B型ケーブル、長さ2.5 m
- イーサネット-USB変換器
- 取付用テーブルクランプCL5A 3個
- 持ち運び用ハンドル 2個
- ソフトウェアとシステムの性能データが納められたUSBメモリ
無停電電源装置(UPS)は、必要に応じてレーザの購入時にアドオンとしてお買い求めいただけます。
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イッテルビウムレーザ用のGUIソフトウェア
Windows®用のソフトウェアパッケージをご用意しております。レーザーシステムに組み込まれた増幅器のシードスペクトル、システムのパワーレベル、インターロックの状態などの診断に関するシステムフィードバックを得ながらレーザ制御を行うことができます。ソフトウェアについての詳細はマニュアル内でご覧いただけます。
Recommended System Requirements | |
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Operating System | Windows® 10 (64 Bit) |
Memory (RAM) | 5 GB |
Hard Drive | 30 MB (Min) of Available Disk Space |
Interface | Ethernet or USB 2.0 |
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非線形パルス圧縮システムの内部構造図
用途例:非線形パルス圧縮システム
超短パルスレーザは、超短パルス光源の用途の成熟が進む一方で、使いやすさを維持しながら、より短いパルス幅でより多くのパワーを得られることが望まれるようになってきました。パルス幅を短縮することで恩恵を受ける用途の例としては、生体材料の改変、マイクロマシニング、時間分解分光法、テラヘルツ(THz)光発生などがあります。こちらでご紹介しているシステムは、イッテルビウム(Yb)ファイバーレーザ用にカスタマイズされており、出力パルス幅は39 fs以下となっています。この実験は「Conference on Lasers and Electro-Optics (CLEO) 2022」で発表されました1。
近赤外域(NIR)の超短パルスイッテルビウム(Yb)ファイバーレーザは、高いパルスエネルギと高い繰返し周波数を兼ね備えていますが、一般にゲイン帯域幅とゲイン狭小化の制限により、パルス持続時間は数百フェムト秒となっています。この制限を克服するために、さまざまな光学システムおよび材料での自己位相変調によるスペクトル拡張技術が開発され、パルス持続時間が短縮されました(シングルモードファイバ:数十nJ 2、特殊なラージモードエリアフォトニック結晶ファイバ:数百nJ~数µJ 3、ガス充填中空コアファイバ:µJ~数mJ 4、複数の薄い光学ウィンドウ通過時:µJ~数mJ 5、薄型プレートまたは高圧ガスを使用したマルチパスセル:mJ以上6)。
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マルチモードファイバの出力コリメート空間モードは、スペクトルを5倍に広げながら、出射された LP0,1モードを維持していることを示しています。
ファイバをベースとしたシステムは、基本的な光導波路モードが元の出力ビーム品質と高いポインティング安定性を保証するという点で有効です。あらゆるタイプのファイバにおけるスペクトル拡張についての主な課題の1つは、ファイバの入力面に対する損傷の可能性です。ここで、µJのエネルギレベルではセルフフォーカス機能が拡張機能を制限する上で重要な役割を果たします。数十nJ を超えるパルスエネルギのスペクトル拡張は、特殊ファイバまたは真逆な性質を持つ光ファイバを必要とし、レーザーポインティングに対して非常に高い感度を有するためシステムは複雑になり、コストは高くなります。これらの問題に対処するために、シンプルなシングルモードファイバの非線形スペクトル拡張の利点を維持しながら、一般的なマルチモードファイバの基本的な LP0,1空間モードを使用する方法を開発しました。
この方法を使用した1例をご紹介します。当社のイッテルビウム(Yb)ファイバーレーザFSL1030X1を長さ100 mm以下、計算上のLP0,1モードフィールド径が約65 µmのマルチモードファイバに接続しました。そして、1035 nm、繰返し周波数9.5 MHz、200 fsの入力パルスを、490 nJ(平均パワー4.7 W)のパルス エネルギで36 fsの半値全幅(FWHM)の変換制限パルス持続時間となるようなスペクトル帯域幅に拡張しました。
当社のM² 測定システムにより、M2値が1.05、楕円率が96%の元の空間モードプロファイルが確認されました。これは導波路をベースとしたスペクトル拡張から予想できます(右の空間モードの画像参照)。プリズムコンプレッサからの出力パルスは39 fsの半値全幅(FWHM)および10 MWのピークパワーを有し、これはピークパワーのフーリエ限界の約90%となります。このパルスは第2高調波発生周波数分解光ゲート法(SHG-FROG)により測定されます。
下のグラフでは入力パルス(上)と出力パルス(下)の性能を示しています。各グラフのセットでは、SHG-FROGの測定データが左側、再構成されたスペクトルと位相が中央に示されています。フーリエ変換限界および再構築された強度は右に示されており、ピークパワーとパルス幅が表示されています。
ここでの重要な結果は、このスペクトル拡張の方法はにおいて、ファイバ端面のパワー密度は使用されているファイバの損傷閾値を下回っており、1,000時間を超える実行時間が確認できているということです。
パルス圧縮システムの詳細については当社までお問い合わせください。
FSL1030X1 Input Pulse | Click to Enlarge 入力の第2高調波発生周波数分解光ゲート法(SHG-FROG)測定 | Click to Enlarge 入力パルスの強度 | |
Nonlinear Compressed Output Pulse | Click to Enlarge 出力のSHG-FROG測定 | Click to Enlarge 出力パワーのスペクトル | Click to Enlarge 出力パルスの強度 |
参考文献
- L. Wooldridge, S. R. Domingue, M. S. Kirchner, and P. Fendel, "Degradation-Free Spectral Broadening in a Multimode Fiber with ~0.5 μJ Pulses," in Conference on Lasers and Electro-Optics, Optica Technical Digest (Optica Publishing Group, 2022), paper JW3A.51.
- S. R. Domingue and R. A. Bartels, "Nearly transform-limited sub-20-fs pulses at 1065 nm and >10 nJ enabled by a flat field ultrafast pulse shaper," Optics Letters. 2015; 40(2), 253-256.
- T. Eidam, F. Roser, O. Schmidt, J. Limpert, and A. Tunnermann, "57 w, 27 fs pulses from a fiber laser system using nonlinear compression," Applied Physics B: Lasers and Optics. 2008; 92, 9–12.
- T. Nagy et al, "Generation of three-cycle multi-millijoule laser pulses at 318 w average power," Optica. 2019; 6(11), 1423-1424.
- M. Seo, K. Tsendsuren, S. Mitra, M. Kling, and D. Kim, "High-contrast, intense single-cycle pulses from an all thin-solid-plate setup," Optics Letters. 2020; 45(2), 367-370.
- P. Rueda, F. Videla, T. Witting, G. A. Torchia, and F. J. Furch, "8 fs laser pulses from a compact gas-filled multi-pass cell," Optics Express. 2021; 29(17), 27004-27013.
パルスレーザ:パワーとエネルギーの計算
パルスレーザからの放射光が、使用するデバイスや用途に適合するかどうかを判断する上で、レーザの製造元から提供されていないパラメータを参照しなければならない場合があります。このような場合、一般には入手可能な情報から必要なパラメータを算出することが可能です。次のような場合を含めて、必要な結果を得るには、ピークパルスパワー、平均パワー、パルスエネルギ、その他の関連するパラメータを必要とすることがあります。
- 生物試料を損傷させないように保護する
- フォトディテクタなどのセンサにダメージを与えることなくパルスレーザ光を測定する
- 物質内で蛍光や非線形効果を得るために励起を行う
パルスレーザ光のパラメータは下の図1および表に示します。参照用として、計算式の一覧を以下に示します。資料を ダウンロードしていただくと、これらの計算式のほかに、パルスレーザ光の概要、異なるパラメータ間の関係性、および計算式の適用例がご覧いただけます。
計算式 | ||||
、 | ||||
平均パワーから算出するピークパワー、ピークパワーから算出する平均パワー : | ||||
、 | ||||
平均パワーおよびデューティーサイクルから算出するピークパワー*: | ||||
*デューティーサイクル() はレーザのパルス光が放射されている時間の割合です。 |
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図1: パルスレーザ光の特性を記述するためのパラメータを、上のグラフと下の表に示します。パルスエネルギ (E)は、パルス曲線の下側の黄色の領域の面積に対応します。このパルスエネルギは斜線で表された領域の面積とも一致します。
パラメータ | シンボル | 単位 | 説明 | ||
---|---|---|---|---|---|
パルスエネルギ | E | ジュール[J] | レーザの1周期中に放射される1パルスの全放射エネルギ。 パルスエネルギはグラフの黄色の領域の面積に等しく、 これは斜線部分の面積とも一致します。 | ||
周期 | Δt | 秒 [s] | 1つのパルスの開始から次のパルスの開始までの時間 | ||
平均パワー | Pavg | ワット[W] | パルスとして放射されたエネルギが、1周期にわたって 均一に広がっていたと仮定したときの、 光パワーの大きさ(光パワー軸上の高さ) | ||
瞬時パワー | P | ワット[W] | 特定の時点における光パワー | ||
ピークパワー | Ppeak | ワット [W] | レーザから出力される最大の瞬時パワー | ||
パルス幅 | 秒 [s] | パルスの開始から終了までの時間。一般的にはパルス形状の 半値全幅(FWHM)を基準にしています。 パルス持続時間とも呼ばれます。 | |||
繰り返し周波数 | frep | ヘルツ [Hz] | パルス光が放射される頻度を周波数で表示した量。 周期とは逆数の関係です。 |
計算例
下記のパルスレーザ光を測定するのに、最大入力ピークパワーが75 mW
のディテクタを使用するのは安全かどうかを計算してみます。
- 平均パワー: 1 mW
- 繰り返し周波数: 85 MHz
- パルス幅: 10 fs
1パルスあたりのエネルギは、
と低いようですが、ピークパワーは、
となります。このピークパワーはディテクタの
最大入力ピークパワーよりも5桁ほど大きく、
従って、上記のパルスレーザ光を測定するのに
このディテクタを使用するのは安全ではありません。
レーザの安全性とクラス分類
レーザを取り扱う際には、安全に関わる器具や装置を適切に取扱い、使用することが重要です。ヒトの目は損傷しやすく、レーザ光のパワーレベルが非常に低い場合でも障害を引き起こします。当社では豊富な種類の安全に関わるアクセサリをご提供しており、そのような事故や負傷のリスクの低減にお使いいただけます。可視域から近赤外域のスペクトルでのレーザ発光がヒトの網膜に損傷を与えうるリスクは極めて高くなります。これはその帯域の光が目の角膜やレンズを透過し、レンズがレーザーエネルギを、網膜上に集束してしまうことがあるためです。
安全な作業および安全に関わるアクセサリ
- クラス3または4のレーザを取り扱う場合は、必ずレーザ用保護メガネを装着してください。
- 当社では、レーザのクラスにかかわらず、安全上無視できないパワーレベルのレーザ光線を取り扱う場合は、ネジ回しなどの金属製の器具が偶然に光の方向を変えて再び目に入ってしまうこともあるので、レーザ用保護メガネを必ずご使用いただくようにお勧めしております。
- 特定の波長に対応するように設計されたレーザ保護眼鏡は、装着者を想定外のレーザ反射から保護するために、レーザ装置付近では常に装着してください。
- レーザ保護眼鏡には、保護機能が有効な波長範囲およびその帯域での最小光学濃度が刻印されています。
- レーザ保護カーテンやレーザー安全保護用布は実験室内での高エネルギーレーザの遮光にご使用いただけます。
- 遮光用マテリアルは、直接光と反射光の両方を実験装置の領域に封じ込めて外に逃しません。
- 当社の筺体システムは、その内部に光学セットアップを収納し、レーザ光を封じ込めて危険性を最小限に抑えます。
- ピグテール付き半導体レーザは、他のファイバに接続、もしくは他のファイバとの接続を外す際には、レーザ出力をOFFにしてください。パワーレベルが10 mW以上の場合には特にご注意ください。
- いかなるビーム光も、テーブルの範囲で終端させる必要があります。また、レーザ使用中には、研究室の扉は必ず閉じていなければなりません。
- レーザ光の高さは、目線の高さに設定しないでください。
- 実験は光学テーブル上で、全てのレーザービームが水平を保って直進するように設定してください。
- ビーム光路の近くで作業する人は、光を反射する不要な装飾品やアクセサリ(指輪、時計など)をはずしてください。
- レンズや他の光学装置が、入射光の一部を、前面や背面で反射する場合がありますのでご注意ください。
- あらゆる作業において、レーザは必要最小限のパワーで動作するようにご留意ください。
- アライメントは、可能な限りレーザの出力パワーを低減して作業を行ってください。
- ビームパワーを抑えるためにビームシャッタや フィルタをお使いください。
- レーザのセットアップの近くや実験室には、適切なレーザ標識やラベルを掲示してください。
- クラス3Rやクラス4のレーザ(安全確保用のインターロックが必要となるレーザーレベルの場合)で作業する場合は、警告灯をご用意ください。
- ビームトラップの代用品としてレーザービュワーカードを使用したりしないでください。
レーザ製品のクラス分け
レーザ製品は、目などの損傷を引き起こす可能性に基づいてクラス分けされています。国際電気標準会議(The International Electrotechnical Commission 「IEC」)は、電気、電子工学技術関連分野の国際規格の策定および普及を行う国際機関で、IEC60825-1は、レーザ製品の安全性を規定するIEC規格です。レーザ製品のクラス分けは下記の通りです
Class | Description | Warning Label |
---|---|---|
1 | ビーム内観察用の光学機器の使用を含む、通常の条件下での使用において、安全とみなされているクラス。このクラスのレーザ製品は、通常の使用範囲内では、人体被害を及ぼすエネルギーレベルのレーザを発光することがないので、最大許容露光量(MPE)を超えることはありません。このクラス1のレーザ製品には、筐体等を開かない限り、作業者がレーザに露光することがないような、完全に囲われた高出力レーザも含まれます。 | |
1M | クラス1Mのレーザは、安全であるが、望遠鏡や顕微鏡と併用した場合は危険な製品になり得ます。この分類に入る製品からのレーザ光は、直径の大きな光や拡散光を発光し、ビーム径を小さくするために光を集束する光学素子やイメージング用の光学素子を使わない限り、通常はMPEを超えることはありません。しかし、光を再び集光した場合は被害が増大する可能性があるので、このクラスの製品であっても、別の分類となる場合があります。 | |
2 | クラス2のレーザ製品は、その出力が最大1 mWの可視域での連続放射光に限定されます。瞬目反射によって露光が0.25秒までに制限されるので、安全と判断されるクラスです。このクラスの光は、可視域(400~700 nm)に限定されます。 | |
2M | このクラスのレーザ製品のビーム光は、瞬目反射があるので、光学機器を通して見ない限り安全であると分類されています。このクラスは、レーザ光の半径が大きい場合や拡散光にも適用されます。 | |
3R | クラス3Rのレーザ製品は、直接および鏡面反射の観察条件下で危険な可視光および不可視光を発生します。特にレンズ等の光学機器を使用しているときにビームを直接見ると、目が損傷を受ける可能性があります。ビーム内観察が行われなければ、このクラスのレーザ製品は安全とみなされます。このクラスでは、MPE値を超える場合がありますが、被害のリスクレベルが低いクラスです。可視域の連続光のレーザの出力パワーは、このレベルでは5 mWまでとされています。 | |
3B | クラス3Bのレーザは、直接ビームを見た場合に危険なクラスです。拡散反射は通常は有害になることはありませんが、高出力のクラス3Bレーザを使用した場合、有害となる場合もあります。このクラスで装置を安全に操作するには、ビームを直接見る可能性のあるときにレーザ保護眼鏡を装着してください。このクラスのレーザ機器にはキースイッチと安全保護装置を設け、さらにレーザ安全表示を使用し、安全照明がONにならない限りレーザがONにならないようにすることが求められます。Class 3Bの上限に近いパワーを出力するレーザ製品は、やけどを引き起こすおそれもあります。 | |
4 | このクラスのレーザは、皮膚と目の両方に損傷を与える場合があり、これは拡散反射光でも起こりうるとみなされています。このような被害は、ビームが間接的に当たった場合や非鏡面反射でも起こることがあり、艶消し面での反射でも発生することがあります。このレベルのレーザ機器は細心の注意を持って扱われる必要があります。さらに、可燃性の材質を発火させることもあるので、火災のリスクもあるレーザであるとみなされています。クラス4のレーザには、キースイッチと安全保護装置が必要です。 | |
全てのクラス2以上のレーザ機器には、上記が規定する標識以外に、この三角の警告標識が表示されていなければいけません。 |
Posted Comments: | |
Viktor Petrovsky
 (posted 2022-01-27 17:17:43.033) Please privide with price Femtosecond Ytterbium (Yb) Fiber Laser cdolbashian
 (posted 2022-01-31 05:18:45.0) Thank you for reaching out to us at Thorlabs. A member of our laser division will be in contact with you to discuss pricing and lead time. Artem Bogatyrev
 (posted 2021-12-06 09:00:30.91) Hello,
My university is looking for purchasing a laser. My department asks for a quote on this model: Thorlabs' Y-Fi™ Femtosecond Ytterbium Fiber, so that they can understand the standard pricing and potentially consider it for purchasing. Would you be so kind as to provide a quote for us?
The university is:
University of Nottingham
University Park
Nottingham, NG7 2RD
United Kingdom
Thank you, YLohia
 (posted 2021-12-23 12:17:33.0) Hello, quotes for this item should be requested by emailing LaserSales@thorlabs.com or your local Thorlabs Sales office. |